【完結】愛しくない、あなた

野村にれ

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【テイラー】再会

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「君が番だ…」

 テイラーは首を傾けて、怪訝な表情を浮かべるしかなかった。

「間違いではございませんか、私は何にも感じません」

 テイラーはディオエルに、好意的な感情は一切なかった。

「番を感じ取れない種族ですか?」
「いいえ」
「ディオエル様を見ても、何も感じないと?」
「はい」
「なぜだ!」

 ディオエルの大きな声に皆の視線が集まり、イオリクがディオエルに告げた。

「ここではあれですから、お部屋をお借りしましょう」
「そうだな」
「あなたも付いて来てください」
「私は仕事で来ております」

 エレサーレ王太子殿下がやって来て、配膳はこちらで貸すからと話を付け、シンディーは心配そうに見つめるしかなく、どうすることも出来なかった。

 テイラーはエレサーレ王太子殿下に案内された応接室で、ディオエルと向き合って座ることになった。

「名前は」
「テイラーです」
「どこの貴族だ?」
「平民です」
「平民?」

 これまで皇帝の番が平民であったことはなかったために、目を見開いた。

「本当に平民ですか?」

 同席したエレサーレ王太子殿下が、離れた場所からテイラーに問い掛けた。

「その瞳は、平民ではあり得ない色です」

 テイラーは、思わず溜息をついた。

 テイラーも、鏡に映った自身の濃いレッドブラウンの瞳を見た時に、アイルーンの生まれ変わりなのだと気付き、全ての記憶が戻っていた。

 テイラーにとって、この人生はアイルーンの延長のような気分であった。

 前回とは違った形にはなったが、再び、今度は本人から番にだと言われることになったのである。

「本当に現在は平民ですが、元は子爵家でした」
「ならば、戻すことは可能ですね」

 貴族の籍に入れてということは竜帝国ではあり得ないために、イオリクは平民などと内心、気分が悪いと思っていたために、ホッとした。

「はあ…いくら払ったのですか?」
「何をだ?」
「アイルーン・デリアが殺されたのにもかかわらず、病死だと偽った料金ですよ」
「っな」
「何も知らない癖に失礼なことを言うな!彼女は病死だ」
「嘘を付くな、間違いなくアイルーン・デリアは腹の子と共に殺されている」

 その言葉に、瞳孔を大きくしたのはディオエルであった。

「腹の子…?」

 呟いたのは、エレサーレ王太子殿下であった。

「ご存じありませんでしたか?アイルーン・デリアは、殺された当時、妊娠六ヶ月でした」
「そんな…」

 王太子は当時、まだ幼く、その後に歴史として病死したことしか知らなかった。

「事実です。そのような令嬢を殺して置いて、竜帝国は病死だと偽ったのです」
「外傷もなく、毒物も見付かっていない!」
「睡眠薬はどうですか?」
「睡眠、薬?」
「ええ、強い睡眠薬です」

 アイルーンはあのだるさを、睡眠薬だったことを死ぬ間際で知った。

「君は…アイルーンなのか?」
「令嬢でしょう?アイルーンなどと呼ばなかった癖に、殺したからと勝手に呼んで貰って困ります」
「っ」

 それは認める言葉ではなかったが、ディオエルにとって、アイルーンしか知らないことであった。

「それで、いくら払ったのですか?」
「賠償金と慰謝料は払ったが、それは偽りたかったわけではない。本当に殺されたというのか?」
「ええ、間違いなく。皇帝ならば、番を殺されたのですから、調べたはずですよね?いえ、それとも、やはりあなたが仕向けたのかしら?」

 アイルーンの話し方ではなかったが、その言葉はアイルーンへの後悔と共に、ディオエルの胸を抉った。

「私はそんなことしていない」
「では、犯人は?見付けたのでしょうね?皇族殺しですよ?」
「アイルーン殿は、妃にはなっていない!」
「眼鏡の方、そんな大きな声を出さずとも、分かっておりますよ。私が言っているのは、お腹の子です」
「そ、れは…」

 生まれていなくても皇帝の子を殺されたとなれば、明らかに皇族殺しとなる。

「一族郎党、公開処刑ですわよね?新聞などには書いてありませんでしたが、されたのですよね?」
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