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【アイルーン】別れ
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異変に気付いたのは、翌朝であった。
アイルーンは、動けなかったはずが、お腹を覆うようにして亡くなっていた。
ディオエルは昨夜からソワソワ、ゾワゾワする感覚を抑えられず眠ることが出来なかった。今日はローズミーが、一緒にいなくて良かったと思っていた。
「陛下!」
ノックもせず、飛び込んで来たのはライシードであった。
「アイルーン嬢がお亡くなりになりました」
「っなん、だと」
ディオエルはそこでようやく、この感覚の正体が分かった。
「なぜだ…」
「大丈夫ですか?」
「ああ、だい、じょうぶ、だ」
「分かりませんが、朝、声を掛けても応答がなく、部屋に入ると亡くなっていたとのことでした」
「げん、いんは」
駆け付けたい気持ちを抑えながら、訊ねた。
「妊娠のせいか、貧血が原因の心臓の病ではないかと…」
「ひんけつ?」
「はい、アイルーン嬢は酷い貧血で、治療中だったとお伝えしたはずですが?」
三人の医師が呼ばれて、導き出した死因であった。
ディオエルは妊娠してから、アイルーンを遠くから見ることはあっても、近くで見ることすらなくなっていた。
「ああ、そう、だったな」
「ミリオン王国にも伝えなくてはなりません。非常に、非常に残念です…」
その言葉にディオエルは、ようやく頭が働いた。
「毒などの可能性はないのだな?」
「それも今、念のため調べております」
「しっかり調べてくれ」
「はい、向かわれますか?」
「ああ…」
ディオエルが到着すると、ベットの上には丸まったままのアイルーンの亡骸があった。目にしただけで、ディオエルの目から、涙が真っすぐに流れ落ちた。
「陛下…」
「あっ、ああ…大丈夫だ」
ライシードが不安そうな顔でディオエルを見つめ、涙を拭って、しっかりとアイルーンを見つめた。胸を鷲掴みにされて、極限まで掴まれ続けるような息苦しさを感じたが、小さく息を吐いた。
「ご家族が着くまで、丁寧に扱ってくれ」
「え?」
驚きの声を上げたのは、先に部屋にいたイオリクであった。
「何だ?」
「連絡したのですか?」
「当たり前だろう!」
既にライシードによって、早馬を手配して、ミリオン王国へ向かっている。
「そ、そうですが、私がしようと思っておりましたので」
「既に連絡した。娘に会わせてやらなくてはならないだろう」
「はい、そう…ですね」
「きちんと原因を調べてくれ」
「はい」
ディオエルは部屋から去り、ライシードが付き添った。
アイルーンの亡骸を目にするのは限界であり、今にもあの部屋も、自分も破壊してしまいたいほどであった。
「お具合は大丈夫ですか?」
「ああ、問題ないとは言えないが、大丈夫だ。歴史のように、壊れたりはしない」
番を失った竜種は狂い、自我を失うこともあった。
だが、ディオエルはアイルーンが番だと分かる前から、衝動を抑える儀式を教会で受けていた。それでも、番だと認識し、ローズミーのことは過ったが、側に置きたいと本能的に思った。
イオリクも側に置いた方がいいと、デリア侯爵を説得をしてくれて、だが妃のことは話すが、ローズミーのことは告げない方がいいと言われ、心苦しさは感じたが、アイルーンは話し掛けて来ることもなく、嬉しそうな様子もなかった。
アイルーンは番に奪われた側であったことを知り、番に良い印象がないのだと分かった。
竜帝国に着き、ローズミーを見ると、妾でいい、目に着かない場所と言い出した時には、驚きはしたがホッとした。
だが、子どもを作らなくてはならなかった。
夢中にならないようにと気負っていたが、アイルーンはあまりに淡々としていた。その姿にディオエルも、つられる様に、義務的な作業となった。
子どもが出来たことは、ちゃんと嬉しかった。
だが、こんな結果になるなんて思ったこともなかった。また涙が零れていた。
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本日もお読みいただきありがとうございます。
本日は1日2話、投稿させていただきます。
17時にもう1話、投稿します。
どうぞよろしくお願いいたします。
アイルーンは、動けなかったはずが、お腹を覆うようにして亡くなっていた。
ディオエルは昨夜からソワソワ、ゾワゾワする感覚を抑えられず眠ることが出来なかった。今日はローズミーが、一緒にいなくて良かったと思っていた。
「陛下!」
ノックもせず、飛び込んで来たのはライシードであった。
「アイルーン嬢がお亡くなりになりました」
「っなん、だと」
ディオエルはそこでようやく、この感覚の正体が分かった。
「なぜだ…」
「大丈夫ですか?」
「ああ、だい、じょうぶ、だ」
「分かりませんが、朝、声を掛けても応答がなく、部屋に入ると亡くなっていたとのことでした」
「げん、いんは」
駆け付けたい気持ちを抑えながら、訊ねた。
「妊娠のせいか、貧血が原因の心臓の病ではないかと…」
「ひんけつ?」
「はい、アイルーン嬢は酷い貧血で、治療中だったとお伝えしたはずですが?」
三人の医師が呼ばれて、導き出した死因であった。
ディオエルは妊娠してから、アイルーンを遠くから見ることはあっても、近くで見ることすらなくなっていた。
「ああ、そう、だったな」
「ミリオン王国にも伝えなくてはなりません。非常に、非常に残念です…」
その言葉にディオエルは、ようやく頭が働いた。
「毒などの可能性はないのだな?」
「それも今、念のため調べております」
「しっかり調べてくれ」
「はい、向かわれますか?」
「ああ…」
ディオエルが到着すると、ベットの上には丸まったままのアイルーンの亡骸があった。目にしただけで、ディオエルの目から、涙が真っすぐに流れ落ちた。
「陛下…」
「あっ、ああ…大丈夫だ」
ライシードが不安そうな顔でディオエルを見つめ、涙を拭って、しっかりとアイルーンを見つめた。胸を鷲掴みにされて、極限まで掴まれ続けるような息苦しさを感じたが、小さく息を吐いた。
「ご家族が着くまで、丁寧に扱ってくれ」
「え?」
驚きの声を上げたのは、先に部屋にいたイオリクであった。
「何だ?」
「連絡したのですか?」
「当たり前だろう!」
既にライシードによって、早馬を手配して、ミリオン王国へ向かっている。
「そ、そうですが、私がしようと思っておりましたので」
「既に連絡した。娘に会わせてやらなくてはならないだろう」
「はい、そう…ですね」
「きちんと原因を調べてくれ」
「はい」
ディオエルは部屋から去り、ライシードが付き添った。
アイルーンの亡骸を目にするのは限界であり、今にもあの部屋も、自分も破壊してしまいたいほどであった。
「お具合は大丈夫ですか?」
「ああ、問題ないとは言えないが、大丈夫だ。歴史のように、壊れたりはしない」
番を失った竜種は狂い、自我を失うこともあった。
だが、ディオエルはアイルーンが番だと分かる前から、衝動を抑える儀式を教会で受けていた。それでも、番だと認識し、ローズミーのことは過ったが、側に置きたいと本能的に思った。
イオリクも側に置いた方がいいと、デリア侯爵を説得をしてくれて、だが妃のことは話すが、ローズミーのことは告げない方がいいと言われ、心苦しさは感じたが、アイルーンは話し掛けて来ることもなく、嬉しそうな様子もなかった。
アイルーンは番に奪われた側であったことを知り、番に良い印象がないのだと分かった。
竜帝国に着き、ローズミーを見ると、妾でいい、目に着かない場所と言い出した時には、驚きはしたがホッとした。
だが、子どもを作らなくてはならなかった。
夢中にならないようにと気負っていたが、アイルーンはあまりに淡々としていた。その姿にディオエルも、つられる様に、義務的な作業となった。
子どもが出来たことは、ちゃんと嬉しかった。
だが、こんな結果になるなんて思ったこともなかった。また涙が零れていた。
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17時にもう1話、投稿します。
どうぞよろしくお願いいたします。
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