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【アイルーン】白紙
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「お話とは何でしょうか?」
アイルーン・デリア侯爵令嬢の元へ、同じく侯爵家の婚約者であるマーク・ファドットが、急に話をしたいことがあると訪ねて来ていた。
「アイルーン嬢、すまないが、私は番と出会ったんだ。君には本当に申し訳ないと思っているが、結婚は出来なくなった」
「つがい…?」
ミリオン王国には獣の魂を始祖に持つために、見た目はヒトとほとんど変わらないが、番うというお互いの本能のような結びつきがある。
だが、それは同じ時間に現れることがなければ、なかなか出会えないとされており、百以上ある貴族の中でも番夫婦は十分の一にも満たない。
素晴らしいことだとはされているが、問題になることも多く、真摯に対応しなければ、ミリオン王国から退去を命じられることもある。
貴族の場合は、離縁や婚約解消し、番と結婚した場合は、王家主催のパーティーなどは五年間、出席が出来ないというペナルティもある。
それは番によって、傷付けられた者が、さらに仲睦まじい二人を見て、傷付かないようにするためで、マークは番と結婚しても、五年間は何があっても、王家主催のパーティーには呼ばれない。
これは平民と違って、貴族は簡単に国を離れたり出来ないからである。
それでも、番ではないと虚偽の申告をするよりも、解消は仕方ないということで進められやすく、教会には番同士が触れると手の甲に同じ印を浮かび上がらせる水晶もあり、確認することも可能である。
アイルーンは第三者のように、彼は出会えたのねと思っている自分も、心の端の方にいた。
「本当にすまないと思っている。君に落ち度がないように婚約は白紙にして、勿論、慰謝料も、結婚式の費用も全て支払う」
「私が何も言っても変わらないってことね…」
「すまない…君は何も悪くない」
「そう…」
「本当にすまない、君の幸せを願っている。それだけは信じて欲しい」
そう言うと、彼は深く頭を下げて、出て行った。今までアイルーンを置き去りに出て行くことも、アイルーンも彼を見送らないこともなかった。
別室では父が彼の父親と、話をしていることだろう。
見付かった番と離れたくなくて、わざわざ腕にぶら下げて、婚約を解消したいと言われた者も過去にはいると聞くが、そのようなことがなかっただけでも、良かったのだろうか。
それでも早々に出て行ったことから、私といる時間は不快なものに変わってしまったのか。
お互いが好意を持って、結ばれた婚約ではなかったが、彼を婚約期間中に愛していた。彼もいつも優しく、好ましいと言ってくれていた。
それでも現実を少なからず聞いていた私は、一生お互いが思い続けるなんて思ってはいなかった。いつか浮気、愛人問題に悩まされることもあるかとは思っていた。
でも、今ではないと思っていた。
それなのに、本能というものでなくしてしまった。
結婚式の八日前であった。
婚約は元からなかった白紙となり、十分すぎるほどの慰謝料も支払われたが、アイルーンは気持ちをどこに置けばいいのか分からなかった。
本当なら八日後に、結婚式だったのだから。
籠っていてはさらに落ち込むだけだと、友人に誘われて、カフェに行くと、ある男性と強く目が合ったが、すぐに目を逸らした。
その後は友人たちにマークには会わないように私たちがするからと、励まされて、少し軽くなった心で邸に戻った。
だが、翌日、デリア侯爵家に、竜帝国の方がやって来た。真ん中にいたのは、あのカフェで目のあった男性であった。
「ご令嬢が、ディオエル皇帝の番だと判明しました」
皇帝の側近なのか、横の眼鏡を掛けた男性が話し始めた。
「また、つがい?」
アイルーンは同席させられて、今はあまり聞きたくない言葉であったために、思わず口に出していた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
お読みいただきありがとうございます。
新しい話を書きたい、また番の話を書きたい、
ちょっと悲しい話が書きたい気持ちがたまっており、
現在、連載中の一作に終わりの目途が立ったので、
今回はバレンタインに向けて、恋愛強めで書き始めたいとは思っています。
どうぞよろしくお願いいたします。
アイルーン・デリア侯爵令嬢の元へ、同じく侯爵家の婚約者であるマーク・ファドットが、急に話をしたいことがあると訪ねて来ていた。
「アイルーン嬢、すまないが、私は番と出会ったんだ。君には本当に申し訳ないと思っているが、結婚は出来なくなった」
「つがい…?」
ミリオン王国には獣の魂を始祖に持つために、見た目はヒトとほとんど変わらないが、番うというお互いの本能のような結びつきがある。
だが、それは同じ時間に現れることがなければ、なかなか出会えないとされており、百以上ある貴族の中でも番夫婦は十分の一にも満たない。
素晴らしいことだとはされているが、問題になることも多く、真摯に対応しなければ、ミリオン王国から退去を命じられることもある。
貴族の場合は、離縁や婚約解消し、番と結婚した場合は、王家主催のパーティーなどは五年間、出席が出来ないというペナルティもある。
それは番によって、傷付けられた者が、さらに仲睦まじい二人を見て、傷付かないようにするためで、マークは番と結婚しても、五年間は何があっても、王家主催のパーティーには呼ばれない。
これは平民と違って、貴族は簡単に国を離れたり出来ないからである。
それでも、番ではないと虚偽の申告をするよりも、解消は仕方ないということで進められやすく、教会には番同士が触れると手の甲に同じ印を浮かび上がらせる水晶もあり、確認することも可能である。
アイルーンは第三者のように、彼は出会えたのねと思っている自分も、心の端の方にいた。
「本当にすまないと思っている。君に落ち度がないように婚約は白紙にして、勿論、慰謝料も、結婚式の費用も全て支払う」
「私が何も言っても変わらないってことね…」
「すまない…君は何も悪くない」
「そう…」
「本当にすまない、君の幸せを願っている。それだけは信じて欲しい」
そう言うと、彼は深く頭を下げて、出て行った。今までアイルーンを置き去りに出て行くことも、アイルーンも彼を見送らないこともなかった。
別室では父が彼の父親と、話をしていることだろう。
見付かった番と離れたくなくて、わざわざ腕にぶら下げて、婚約を解消したいと言われた者も過去にはいると聞くが、そのようなことがなかっただけでも、良かったのだろうか。
それでも早々に出て行ったことから、私といる時間は不快なものに変わってしまったのか。
お互いが好意を持って、結ばれた婚約ではなかったが、彼を婚約期間中に愛していた。彼もいつも優しく、好ましいと言ってくれていた。
それでも現実を少なからず聞いていた私は、一生お互いが思い続けるなんて思ってはいなかった。いつか浮気、愛人問題に悩まされることもあるかとは思っていた。
でも、今ではないと思っていた。
それなのに、本能というものでなくしてしまった。
結婚式の八日前であった。
婚約は元からなかった白紙となり、十分すぎるほどの慰謝料も支払われたが、アイルーンは気持ちをどこに置けばいいのか分からなかった。
本当なら八日後に、結婚式だったのだから。
籠っていてはさらに落ち込むだけだと、友人に誘われて、カフェに行くと、ある男性と強く目が合ったが、すぐに目を逸らした。
その後は友人たちにマークには会わないように私たちがするからと、励まされて、少し軽くなった心で邸に戻った。
だが、翌日、デリア侯爵家に、竜帝国の方がやって来た。真ん中にいたのは、あのカフェで目のあった男性であった。
「ご令嬢が、ディオエル皇帝の番だと判明しました」
皇帝の側近なのか、横の眼鏡を掛けた男性が話し始めた。
「また、つがい?」
アイルーンは同席させられて、今はあまり聞きたくない言葉であったために、思わず口に出していた。
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お読みいただきありがとうございます。
新しい話を書きたい、また番の話を書きたい、
ちょっと悲しい話が書きたい気持ちがたまっており、
現在、連載中の一作に終わりの目途が立ったので、
今回はバレンタインに向けて、恋愛強めで書き始めたいとは思っています。
どうぞよろしくお願いいたします。
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