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番外編2

フィラビ・ロエン4

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「こんなことをしていても、受け入れて貰えないということですか?」
「おそらく謝罪されて、なかったことにされる」
「そんな…」

 怒りで一杯だったが、冷静になると、王家もペルガメント侯爵夫妻も、確かにサリー様を解放してくれるとは、確かに思えなかった。

「でも、あがいてみたくなる日が来るかもしれない。そうでなくても、国を揺るがすほどのことは求めないけど、いずれ報いは受けて貰う。私、意地が悪いでしょう?」
「私の方が悪いです」
「ふふっ、意地悪コンビね。逃げ出したい気持ちはずっとあるのよ」
「じゃあ」
「でもね、私は正々堂々と表から出なくてはいけない」

 二人で逃げようとも何度も考えたが、サリー様は何も悪くないのに、こっそり出て行っていたら、いずれ私もなぜこそこそしなければならないのか、もっと堂々と生きて行けたはずだと、悔しい気持ちになったはずだ。

 エマ・ネイリーの時に、サリー様は一度だけあがいてみると婚約解消を求めた。きっかけはリール殿下の嘘と、思いやりのなさだった。

 だから、ミーラ殿下を出産後のあの日が、最後のチャンスだった。

 そして、あの日、部屋に戻ったサリー様は私に宣言した。

「ラビ、意地悪という名の報復を始めるわ」
「集めてあります」
「嫌な役回りをごめんね」
「いえ、使っていただけるのならば、本望です」

 サリー様はクレア前王妃陛下に教えたられた通りに、一番力を持った状態で、サリー様らしいやり方で報復を始めた。

 意地悪の規模を超えていたが、サリー様は意地悪でしょうと満足そうだったので、敢えて言わなかった。フィラビもずっと腸が煮えくり返る思いを、ずっと閉じ込めていたのだから、結果には満足であった。

 そして、サリー様は小説を私たちだと言った。

「これは私とラビ」
「私が猫ですか?」
「いいえ、両方よ。私がミミなら、あなたはビビ、私がビビなら、あなたはミミ。どう転んでも私たちは一緒よ.。それで、どうだった?」
「面白かったです」
「本当?」

 珍しく不安そうな顔をしており、サリー様もさすがに初めてで、自信がなかったのだろう。だが、お世辞でもなく楽しく読むことが出来た。

「あの日出て行くことが出来ていたら、こんな日々が待っていたのではないかと思いました」
「そう思って書いたの」

 やはりそうだったのかと思った、サリー様は私にもきっと言えないことはあったと思うが、嘘を付いたことは一度もなかった。

「もし発表することが出来たら、絵をラビが描いてくれない?」
「絵ですか?」
「そう、表紙と挿絵をラビが描いて、本にして。顔を晒さなくても、私とあなたの名前が並ぶの」
「それは…」

 あの男が退場しても、フィーナに顔が似ている、だから嫌な思いをするかもしれないと、苦しそうな顔で言われた時に、サリー様と並ぶことは諦めたのだ。それが名前だけでも並べるのなら、こんなに嬉しいことはない。

 クレア王妃陛下が付けてくださったフィラビ、公に名乗ることはないが、フィーナのロエン、フィラビ・ロエンという名をとても気に入っている。

 サリー様だけがラビと呼ぶのも、とても幸せな気持ちになる。

 名を書かなくてはいけない時は、フィーナが呼んでいた、捨て子なので苗字はないと、クーと書いている。

 フィーナには言わなかったが、母が呼んでいた名前を覚えてはいた。でも二度と使うことはない。

 なぜかというと他にも異母兄弟が本当におり、男ならダール、女ならダリアと名付けようとあの男が皆に言っていたことが分かったからだ。

 別の方が伯爵家を任されているのに、子どもだと言って乗り込んでいたこともあったそうだ。下劣な男の子どもだと名乗る者の気が知れなかった。

「素敵でしょう?」
「…はい、とても」

 フィラビはサリーと相談しながら絵を描き、夢のような時間だった。

 サリー様は時折、具合の悪さを見せていたが、もうちょっとだからと言いながら、ついに倒れてしまった。そして病状は深刻であった。
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