188 / 203
番外編2
レベッカ・ウィンダム1
しおりを挟む
クオン・パトラーが帰り、目の前に残された小説と文をじっと見つめていた。
本当に素晴らしい人だった、意地が悪いと言っていたけど、報復は相応だと思ったし、サリー様が意地が悪かったら、私は極悪人になってしまう。
正妃と側妃という立場で出会ってしまったけど、そうでなかったら近づくことも本来は恐れ多い存在だった。いえ、恐れ多いことだと気付かされた。
私は驕っていた、本当に情けないほどに。
華やかな見た目と、伯爵家であるが、母親が公爵家の出であることをまるで、公爵家の令嬢のように振舞っていた。
本当に恥ずかしい。
サリー様に言った言葉を過去に戻れるのならば、一つ残らず回収したい。
殿下にも散々馬鹿なことを言ったとは思うが、正直今となってはどうでもいい。コイツは駄目だと思われたままで問題ない。だって、サリー様に酷いことをした男に、何と思われていてもいい。むしろ、会いたくない。
殿下は私を含めて、女を見る目が本当にないことは確かである。報復を行ったという女性は、全く知らない人もいたが、評判が良くない人も多かった。
ミアローズ・エモンド、カリー・カイサック、ミサモエス・ラーダなんて、私だって聞いてことがある。エマ・ネイリーなんて、頭がおかしすぎて論外だった。
一番許せなかったのは、ルアンナ・アズラー。まさか王太子妃教育の担当であるティファナ・アズラーの娘が、いじめのようなことを行っていたなんて信じられなかった。社交界からはいなくなったそうだが、自業自得だ。
側妃になった時とは考えが丸っきり変わってしまったが、一切の曇りはない。
サリー様は、減ったとは言ってもあれだけの公務をして、頼まれた翻訳をして、子育てもして、小説まで書いていたなんて。二十四ヶ国語って…本当に信じられない。
私が側妃だったら手伝えたが、もはや側妃になりたいわけではなかったせいか、ノワンナ語は取得できたが、アペラ語で躓き、カベリ語に挑戦したが、書くことは出来るようになったが、会話が難しく、挨拶程度が限界だった。
そして、翻訳が生き甲斐だとまで言っていた。無理をしたんじゃないかなんて、つい言ってしまったが、努力をしている人に言っていい言葉ではなかった。
でも、あまりに早すぎる死だった、あっという間だった。それなのに本人はそんなことはないと笑っていた。私が怒れば怒る分、笑っていた。
私の方が要らない存在なのに、どうしてサリー様を選んだのかと、恨み言で呪ってしまいたくなった。その代わりに、礼拝堂で祈り続けた。
亡くなった部屋は、まだあのままにしてあるそうだ。
私は葬儀が終わるとすぐさま陛下に願い出て、側妃見習いを辞め、サリー財団の理事に就任した。
サリー様の残した道筋をなくしてはならない。私にこれから生きる希望を与えてもくださった。どこまで見据えられる人なのかと感心するしかない。
完全にレベッカ・ウィンダムに戻り、伯父様からクリンピア公爵家の使われていなかった邸を財団にして、使わせてもらっている。
大きく息を吐いて、文を開けた。
―――――――――――――――――――――
レベッカへ
驚いた?
しっかり財団はやってくれているかしら?
やっていると文句を言ってそうね。
マリーヌは元気かしら?
あなたは本なんて読まないでしょうけど、
眠れない時にでも読んで頂戴ね。
私の分までよろしくね、元気に生きるのよ。
サリー
―――――――――――――――――――――
最期の手紙とは思えないほど明るい。まるで旅先からの手紙のようだ、きっと私に合わせてくれたのでしょうね、そういう人だから。
私になんて優しくする必要もないのに、サリー様は許し、優しくしてくれた。
私にもマリーヌにも語学を教えてくれて、私は無理だったけど、マリーヌは先生が良かったのか、リール殿下の遺伝子のおかげなのか、中途半端でも王族として恥ずかしくない様に、三ヶ国語もちゃんと覚えることが出来た。
そして学んだ上で嫁がせることが出来た。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
お読みいただきありがとうございます。
元側妃見習い、レベッカの回となります。
レベッカも本編に描いてますので、全3回の予定です。
よろしくお願いいたします。
本当に素晴らしい人だった、意地が悪いと言っていたけど、報復は相応だと思ったし、サリー様が意地が悪かったら、私は極悪人になってしまう。
正妃と側妃という立場で出会ってしまったけど、そうでなかったら近づくことも本来は恐れ多い存在だった。いえ、恐れ多いことだと気付かされた。
私は驕っていた、本当に情けないほどに。
華やかな見た目と、伯爵家であるが、母親が公爵家の出であることをまるで、公爵家の令嬢のように振舞っていた。
本当に恥ずかしい。
サリー様に言った言葉を過去に戻れるのならば、一つ残らず回収したい。
殿下にも散々馬鹿なことを言ったとは思うが、正直今となってはどうでもいい。コイツは駄目だと思われたままで問題ない。だって、サリー様に酷いことをした男に、何と思われていてもいい。むしろ、会いたくない。
殿下は私を含めて、女を見る目が本当にないことは確かである。報復を行ったという女性は、全く知らない人もいたが、評判が良くない人も多かった。
ミアローズ・エモンド、カリー・カイサック、ミサモエス・ラーダなんて、私だって聞いてことがある。エマ・ネイリーなんて、頭がおかしすぎて論外だった。
一番許せなかったのは、ルアンナ・アズラー。まさか王太子妃教育の担当であるティファナ・アズラーの娘が、いじめのようなことを行っていたなんて信じられなかった。社交界からはいなくなったそうだが、自業自得だ。
側妃になった時とは考えが丸っきり変わってしまったが、一切の曇りはない。
サリー様は、減ったとは言ってもあれだけの公務をして、頼まれた翻訳をして、子育てもして、小説まで書いていたなんて。二十四ヶ国語って…本当に信じられない。
私が側妃だったら手伝えたが、もはや側妃になりたいわけではなかったせいか、ノワンナ語は取得できたが、アペラ語で躓き、カベリ語に挑戦したが、書くことは出来るようになったが、会話が難しく、挨拶程度が限界だった。
そして、翻訳が生き甲斐だとまで言っていた。無理をしたんじゃないかなんて、つい言ってしまったが、努力をしている人に言っていい言葉ではなかった。
でも、あまりに早すぎる死だった、あっという間だった。それなのに本人はそんなことはないと笑っていた。私が怒れば怒る分、笑っていた。
私の方が要らない存在なのに、どうしてサリー様を選んだのかと、恨み言で呪ってしまいたくなった。その代わりに、礼拝堂で祈り続けた。
亡くなった部屋は、まだあのままにしてあるそうだ。
私は葬儀が終わるとすぐさま陛下に願い出て、側妃見習いを辞め、サリー財団の理事に就任した。
サリー様の残した道筋をなくしてはならない。私にこれから生きる希望を与えてもくださった。どこまで見据えられる人なのかと感心するしかない。
完全にレベッカ・ウィンダムに戻り、伯父様からクリンピア公爵家の使われていなかった邸を財団にして、使わせてもらっている。
大きく息を吐いて、文を開けた。
―――――――――――――――――――――
レベッカへ
驚いた?
しっかり財団はやってくれているかしら?
やっていると文句を言ってそうね。
マリーヌは元気かしら?
あなたは本なんて読まないでしょうけど、
眠れない時にでも読んで頂戴ね。
私の分までよろしくね、元気に生きるのよ。
サリー
―――――――――――――――――――――
最期の手紙とは思えないほど明るい。まるで旅先からの手紙のようだ、きっと私に合わせてくれたのでしょうね、そういう人だから。
私になんて優しくする必要もないのに、サリー様は許し、優しくしてくれた。
私にもマリーヌにも語学を教えてくれて、私は無理だったけど、マリーヌは先生が良かったのか、リール殿下の遺伝子のおかげなのか、中途半端でも王族として恥ずかしくない様に、三ヶ国語もちゃんと覚えることが出来た。
そして学んだ上で嫁がせることが出来た。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
お読みいただきありがとうございます。
元側妃見習い、レベッカの回となります。
レベッカも本編に描いてますので、全3回の予定です。
よろしくお願いいたします。
453
お気に入りに追加
7,120
あなたにおすすめの小説
君のためだと言われても、少しも嬉しくありません
みみぢあん
恋愛
子爵家の令嬢マリオンの婚約者、アルフレッド卿が王族の護衛で隣国へ行くが、任期がながびき帰国できなくなり婚約を解消することになった。 すぐにノエル卿と2度目の婚約が決まったが、結婚を目前にして家庭の事情で2人は…… 暗い流れがつづきます。 ざまぁでスカッ… とされたい方には不向きのお話です。ご注意を😓
さよなら、皆さん。今宵、私はここを出ていきます
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【復讐の為、今夜私は偽の家族と婚約者に別れを告げる―】
私は伯爵令嬢フィーネ・アドラー。優しい両親と18歳になったら結婚する予定の婚約者がいた。しかし、幸せな生活は両親の突然の死により、もろくも崩れ去る。私の後見人になると言って城に上がり込んできた叔父夫婦とその娘。私は彼らによって全てを奪われてしまった。愛する婚約者までも。
もうこれ以上は限界だった。復讐する為、私は今夜皆に別れを告げる決意をした―。
※マークは残酷シーン有り
※(他サイトでも投稿中)
婚約破棄を望むなら〜私の愛した人はあなたじゃありません〜
みおな
恋愛
王家主催のパーティーにて、私の婚約者がやらかした。
「お前との婚約を破棄する!!」
私はこの馬鹿何言っているんだと思いながらも、婚約破棄を受け入れてやった。
だって、私は何ひとつ困らない。
困るのは目の前でふんぞり返っている元婚約者なのだから。


【完結】断罪された悪役令嬢は、全てを捨てる事にした
miniko
恋愛
悪役令嬢に生まれ変わったのだと気付いた時、私は既に王太子の婚約者になった後だった。
婚約回避は手遅れだったが、思いの外、彼と円満な関係を築く。
(ゲーム通りになるとは限らないのかも)
・・・とか思ってたら、学園入学後に状況は激変。
周囲に疎まれる様になり、まんまと卒業パーティーで断罪&婚約破棄のテンプレ展開。
馬鹿馬鹿しい。こんな国、こっちから捨ててやろう。
冤罪を晴らして、意気揚々と単身で出国しようとするのだが、ある人物に捕まって・・・。
強制力と言う名の運命に翻弄される私は、幸せになれるのか!?
※感想欄はネタバレあり/なし の振り分けをしていません。本編より先にお読みになる場合はご注意ください。

もう、愛はいりませんから
さくたろう
恋愛
ローザリア王国公爵令嬢ルクレティア・フォルセティに、ある日突然、未来の記憶が蘇った。
王子リーヴァイの愛する人を殺害しようとした罪により投獄され、兄に差し出された毒を煽り死んだ記憶だ。それが未来の出来事だと確信したルクレティアは、そんな未来に怯えるが、その記憶のおかしさに気がつき、謎を探ることにする。そうしてやがて、ある人のひたむきな愛を知ることになる。

貴方の運命になれなくて
豆狸
恋愛
運命の相手を見つめ続ける王太子ヨアニスの姿に、彼の婚約者であるスクリヴァ公爵令嬢リディアは身を引くことを決めた。
ところが婚約を解消した後で、ヨアニスの運命の相手プセマが毒に倒れ──
「……君がそんなに私を愛していたとは知らなかったよ」
「え?」
「プセマは毒で死んだよ。ああ、驚いたような顔をしなくてもいい。君は知っていたんだろう? プセマに毒を飲ませたのは君なんだから!」

婚約解消したら後悔しました
せいめ
恋愛
別に好きな人ができた私は、幼い頃からの婚約者と婚約解消した。
婚約解消したことで、ずっと後悔し続ける令息の話。
ご都合主義です。ゆるい設定です。
誤字脱字お許しください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる