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番外編2

レオ・ペルガメント7

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 領地に着くと、父はまだ生きていた。風邪を引いて、それから呼吸がし辛くなっているようで、起き上がれない父に向って、『ミミとビビ』を見せた。

 母も同じ風邪で寝込んでおり、別の部屋にいる。

「サリーの書いた小説だ。サリーの訳で、二十四ヶ国語で発売されており、世界の多く人がサリー・オールソンのことを知っている。小説家にもなったんだ、知らなかっただろう?」

 二十四ヶ国語が発売され、肖像画が出版社に贈られたとクオンから聞き、慌てて見に行った。大きな変化はないが、亡くなる前のサリーくらいの年だろうと思った。

 両親は知ることも見ることもない。

「な、なん、だと…」
「あなたの娘は亡くなっても、さらに有名なった。何も知らないまま、あなたはこのまま朽ちていく」

 レオは睨み付けられたが、呼吸が荒くなり、その場を去った。

 息を引き取ったと聞いてから部屋に行き、看取ることもしなかった。

 父上が亡くなったと聞いた母は無理をして、結局一ヶ月後に追う様に亡くなったが、父と同じ言葉を告げ、同じ顔をしているのが無様であった。

 両親はレオにサリーに無理やり与え続けていた、だからこそ与えてもやらない、知らせてもやらない。それがレオの罰だった。

 それが両親にとって、悔しいことなのかは分からないが、知らないことには悔しそうな顔をしていたので、それで良しとすることにした。

 やり切った感はないが、両親に何を言っても響くことはない、ならば相手にしないこと、それがレオもサリーも一致していた答えだった。

 両親の心を折ることは極めて困難だった。

 だからこそ、恥だとも思わず、サリーに話し掛け、悪いのは子どもたちの方だと決め付ける。似たもの夫婦だった。

 正直、レオは両親が亡くなってホッとした。これで妻や子ども、孫にこれで二度と迷惑を掛けることはない。

 リール殿下は再婚するかと思ったが、そのような素振りも見せず、国王となり、王妃はサリーだけだと言い切った。

 今さら遅いとは思うが、正直、そんなことになれば、ミーラ殿下を国王にした方が言い出し兼ねないほど、サリーの力は強かった。

 ジェシカ、ノーラ公爵家の制裁も水面下で進められて、あの毒を盛った者たちは隅の方で大人しくしている。

 特に効果があったのはジェシカが開催した『ミミとビビ』の中にあった食べ物や、服、食器を模して行った茶会であった。

 冒険中に住まいにしていた部屋で行われる二人の茶会を、ジェシカとサネリがそのまま茶会にしたのだ。まるで物語の中に入り込んだような世界観に、この茶会は夫人の間でも、子どもの間でも大人気となった。

 だが、毒を盛った者は、子どもも含めて、一切呼ばれることはない。どの面下げて参加する気だ?と言わんばかりに、招待を願っても断られてしまう。ジェシカなりの報復のやり方は効果てきめんだった。

 私もサリーの兄というだけで得られた信頼は数えきれない。

 サリーは侯爵家のことは何も関わっておらず、何も頼んだことはなかったが、サリーはレオが侯爵になってから、取引のある国には兄がお世話になっていますと挨拶を必ず交わしていたそうだ。

「サリー様から聞いています」
「お二人は似てらっしゃいますね」

 私はサリーの兄ということを、心から誇りに思っていた。王太子妃でなくても、語学が堪能ではなくても、意地が悪くても、何も変わらない。

 だがサリーは力になってこそ意味があると両親に刷り込まれていたのだろう。

 私こそ、サリーが生きていてくれさえすればいいと、心から思っていた。

 息子に爵位を譲って、最期の時が来ても、私はサリーの兄で良かったと思える人生だったと思いながら、旅立つことが出来た。

「しっかり生きたよ、サリー」


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お読みいただきありがとうございます。

これにてレオ編、終了です。
次は元側妃見習い、レベッカ編です。

よろしくお願いいたします。
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