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番外編2
レオ・ペルガメント4
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「サリーが取引相手の他国に話していたら、どうなっていたと思います?」
「はっ!そんなもの何の影響もないわ」
「そうよ」
「国際会議の議長の隣の席がサリーなのですよ、取りまとめ、通訳し、議事録を起こす。今後は苦労することになると言われています。そのような、博識の女性を蔑ろにしていたなんて、サリーが他国のトップに止めて欲しいと言えば、すぐに止まったはずです。ただそこまではしなかっただけです」
「そ、そんなはずない!そんな力があるもんか」
「そうよ」
実際に起こっていないので、両親が信用するとは思っていないが、実際に起こり得たことである。
「でも、例えば手記でも出したら、この国の者は信じるでしょうね。夜会で会話にもならないことを皆、見ていますから。王太子妃様に嫌われているご両親が、ペルガメント前侯爵夫妻ですから」
両親は嫌われているとも、周りにそう思われていることもまだ認めていない。
「あれはあの子が言うことを聞かないから」
「そうよ、訳の分からない言葉で喋って」
訳の分からない言葉ではない、あの恥ずかしげもなく、三人の通訳を連れて来た時以外には、サリーは三ヶ国語で話していた。
「なぜ分からないのです?王太子妃の両親が、三ヶ国語すら分からないと知らしめて、サリーに恥ずかしい思いをさせたのは、あなたたちの方でしょう?」
「っ」
「それは…」
「聞かれませんでしたか?どうやって、サリーのような賢い子になったのかと…でも聞かれなくなった。それはそうです、自分たちは話せないのですから」
サリーのことでちやほやされていたことは知っている、だが王太子妃になってからは一気に距離を置かれていた。
「語学が堪能な王太子妃様のご両親なら、さぞ賢いだろうと思われていたとしても、あれで台無しですよ?」
「私は得意ではないのだから仕方ないじゃないか」
「そうよ、通訳を雇えばいいことだわ」
開き直るのもいつものことだ。人のせいにして、強い立場の人間には媚びへつらう、金を稼ぐことには長けていたようだが、親だと思うことは出来ない。
「サリーは記憶力が良かったおかげで、三ヶ国語に苦労はなかったそうですが、娘には強いておいて、両親は馬鹿なんだなと思われているのですよ?」
「あれは頭が良かっただけだろう」
「そうよ、頭しか良くなかったじゃない」
十分過ぎるほど素晴らしいことだと、なぜ気付けないのだろうか。
「王太子妃にしてやったのは私だと?」
「そうだ、私が推薦しなければなれなかったんだ」
「感謝することが当たり前なのですよ」
死に間際にでも言ってやろうと思っていたが、サリーの残した毒を読んでは、気持ちが抑えられなかった。一番長く毒を盛り続けたのはこの二人だ。
「違いますよ、サリーの記憶力を知った、ミース前国王陛下とクレア前王妃陛下がサリーを保護しただけです」
「は?」
「そんなことあるわけないじゃない」
「事実です。サリーは群を抜いて記憶力が良かった、あなたたちに利用されないために、王太子の婚約者にして手を出させない様にしたのです。万が一何か起きても、王家が動けますからね」
「っな」
「そんなはずないわ」
信じないだろうとは思った、だが紛れもない事実だ。私も両陛下から聞いている。
「あなたたちならサリーを簡単に売ったでしょう?」
「そんなことするわけないじゃないか」
「そうよ、私は母親ですよ」
どの口がそんなことを言えるのか、王太子の婚約者なんて大変な立場にと思ったが、守るためだと聞かされて、サリーも両陛下と過ごせることに嬉しそうだった。
だが、両陛下が生きている間だけだった。
今は改善されたようだが、現国王夫妻もサリーをいいように使い、王太子も不貞三昧。素晴らしい親の子どもが、素晴らしいとは限らない。
「はっ!そんなもの何の影響もないわ」
「そうよ」
「国際会議の議長の隣の席がサリーなのですよ、取りまとめ、通訳し、議事録を起こす。今後は苦労することになると言われています。そのような、博識の女性を蔑ろにしていたなんて、サリーが他国のトップに止めて欲しいと言えば、すぐに止まったはずです。ただそこまではしなかっただけです」
「そ、そんなはずない!そんな力があるもんか」
「そうよ」
実際に起こっていないので、両親が信用するとは思っていないが、実際に起こり得たことである。
「でも、例えば手記でも出したら、この国の者は信じるでしょうね。夜会で会話にもならないことを皆、見ていますから。王太子妃様に嫌われているご両親が、ペルガメント前侯爵夫妻ですから」
両親は嫌われているとも、周りにそう思われていることもまだ認めていない。
「あれはあの子が言うことを聞かないから」
「そうよ、訳の分からない言葉で喋って」
訳の分からない言葉ではない、あの恥ずかしげもなく、三人の通訳を連れて来た時以外には、サリーは三ヶ国語で話していた。
「なぜ分からないのです?王太子妃の両親が、三ヶ国語すら分からないと知らしめて、サリーに恥ずかしい思いをさせたのは、あなたたちの方でしょう?」
「っ」
「それは…」
「聞かれませんでしたか?どうやって、サリーのような賢い子になったのかと…でも聞かれなくなった。それはそうです、自分たちは話せないのですから」
サリーのことでちやほやされていたことは知っている、だが王太子妃になってからは一気に距離を置かれていた。
「語学が堪能な王太子妃様のご両親なら、さぞ賢いだろうと思われていたとしても、あれで台無しですよ?」
「私は得意ではないのだから仕方ないじゃないか」
「そうよ、通訳を雇えばいいことだわ」
開き直るのもいつものことだ。人のせいにして、強い立場の人間には媚びへつらう、金を稼ぐことには長けていたようだが、親だと思うことは出来ない。
「サリーは記憶力が良かったおかげで、三ヶ国語に苦労はなかったそうですが、娘には強いておいて、両親は馬鹿なんだなと思われているのですよ?」
「あれは頭が良かっただけだろう」
「そうよ、頭しか良くなかったじゃない」
十分過ぎるほど素晴らしいことだと、なぜ気付けないのだろうか。
「王太子妃にしてやったのは私だと?」
「そうだ、私が推薦しなければなれなかったんだ」
「感謝することが当たり前なのですよ」
死に間際にでも言ってやろうと思っていたが、サリーの残した毒を読んでは、気持ちが抑えられなかった。一番長く毒を盛り続けたのはこの二人だ。
「違いますよ、サリーの記憶力を知った、ミース前国王陛下とクレア前王妃陛下がサリーを保護しただけです」
「は?」
「そんなことあるわけないじゃない」
「事実です。サリーは群を抜いて記憶力が良かった、あなたたちに利用されないために、王太子の婚約者にして手を出させない様にしたのです。万が一何か起きても、王家が動けますからね」
「っな」
「そんなはずないわ」
信じないだろうとは思った、だが紛れもない事実だ。私も両陛下から聞いている。
「あなたたちならサリーを簡単に売ったでしょう?」
「そんなことするわけないじゃないか」
「そうよ、私は母親ですよ」
どの口がそんなことを言えるのか、王太子の婚約者なんて大変な立場にと思ったが、守るためだと聞かされて、サリーも両陛下と過ごせることに嬉しそうだった。
だが、両陛下が生きている間だけだった。
今は改善されたようだが、現国王夫妻もサリーをいいように使い、王太子も不貞三昧。素晴らしい親の子どもが、素晴らしいとは限らない。
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