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番外編2

リール・オールソン5

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「国外からも同じです。皆、国際会議でのサリーを見ていますから、正妃にどうだろうかという愚かな国はありませんでした。むしろ、そのような愚か者がいるなら見てみたいと、そう言われたのですよね?リール?」
「はい、議長に打診するのは愚か者の証だとおっしゃっておりました。通常の精神の持ち主なら、指名されても辞退する方が余程、理解出来ると」
「私は亡くなってはおりますが、サリーを王妃の扱いでよろしいのではないかと思っております。皆様はいかがですか?」

「賛成の者は挙手を」

 クリコットが決議を取ると、ほぼすべての者が手を挙げたが、未だ諦められない様子のゴーラウズ伯爵と、一部の者は挙げなかったが、可決された。

 そして、お披露目の際にリールは告げた。

「王妃は、私の愛する妻であるサリーだけだ」

 割れんばかりの歓喜の声と拍手が起こり、皆そうだそうだ、我が国の王妃様は二十四ヶ国語が出来るんだぞ、通訳で翻訳家でもあるんだぞ、しかも自身も小説家でもあるんだと、『コルボリット大好き』『ミミとビビも大好き』という、サリーを誇らしいと思う言葉で溢れた。

 そして、同時にミーラが王太子となることも告げられ、ミーラとルミナが現れると、さらに歓声は大きくなっていった。

 王妃の代理が必要な場合は、アン前王妃かミーラ王太子がサリーの代わりを務める。二人は語学は及ばないとしても、の出来る人物である。

 その後、ゴーラウズ伯爵は会議では難しかったが、陛下に直接、娘たちを勧めれば分かってくれるはずだと思っていたが、会って貰うことすら出来なかった。

「陛下にとってもいい話なのです」
「愛妾にしろとでも言うのか?予算が勿体ないだけだ」
「愛妾?愛妾ではなく」
「まだこの国には愚か者がおったのか?」
「いえ、ですが会って貰えば…」

 ゴーラウズ伯爵は両親も亡くなっており、親類も年上の煩い者がいない、ゆえに愚かさを止める者もいなかった。

「ならば、二十五ヶ国語でも話せるというのなら、連れて来い」
「っあ、それは」
「二十四ヶ国語以上、話せる者としか会わぬ!」

 いるはずもないが、いるならば会うだけならば会ってみたい存在ではある。サリーはこうだったなどと、話をしてみたい。

「いい断り方でしたね」

 やり取りを聞いていたクリコットは、満足そうに頷きながら、言った。

「いいだろう?私にしか断れない方法だろう?」
「それを言うなら、サリー様が二十四ヶ国語を話せるからだとは思いますけど?」
「それはそうだな、ちょっと傲慢だったな。反省だ、肖像画に謝る」
「そうしてください」

 国王として、歩み出したリールだが、毎日肖像画には必ず会いに行っている。

 ゴーラウズ伯爵はというと、急成長の礎であった輸出入も契約延長が出来ずに、みるみる切られることになった。なぜだと気付いた時には、相手国はサリーの功績を知っている者たちであり、契約期間中は我慢したが、信用出来ないと判断されていた。

 どちらかを正妃にと伝えていた娘たちは、真に受けて、私がなるのよと争っていたが、急速に落ちぶれていき、慌てて爵位の低い貴族に嫁ぐしかなかった。

 他に手を挙げなかった者はゴーラウズ伯爵の息の掛かった者たちで、ゴーラウズ伯爵が落ち目になって、失敗したことに気付いた。その者たちもじわじわと、影響が出始めるようになったからである。

 王家と高位貴族、そして他国も敵にしたことにようやく気付いたが、もう遅かった。今後数十年、いや数百年は冷ややかな目で見られることだろう。
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