179 / 203
番外編2
リール・オールソン5
しおりを挟む
「国外からも同じです。皆、国際会議でのサリーを見ていますから、正妃にどうだろうかという愚かな国はありませんでした。むしろ、そのような愚か者がいるなら見てみたいと、そう言われたのですよね?リール?」
「はい、議長に打診するのは愚か者の証だとおっしゃっておりました。通常の精神の持ち主なら、指名されても辞退する方が余程、理解出来ると」
「私は亡くなってはおりますが、サリーを王妃の扱いでよろしいのではないかと思っております。皆様はいかがですか?」
「賛成の者は挙手を」
クリコットが決議を取ると、ほぼすべての者が手を挙げたが、未だ諦められない様子のゴーラウズ伯爵と、一部の者は挙げなかったが、可決された。
そして、お披露目の際にリールは告げた。
「王妃は、私の愛する妻であるサリーだけだ」
割れんばかりの歓喜の声と拍手が起こり、皆そうだそうだ、我が国の王妃様は二十四ヶ国語が出来るんだぞ、通訳で翻訳家でもあるんだぞ、しかも自身も小説家でもあるんだと、『コルボリット大好き』『ミミとビビも大好き』という、サリーを誇らしいと思う言葉で溢れた。
そして、同時にミーラが王太子となることも告げられ、ミーラとルミナが現れると、さらに歓声は大きくなっていった。
王妃の代理が必要な場合は、アン前王妃かミーラ王太子がサリーの代わりを務める。二人は語学は及ばないとしても、ちゃんとサリーの代わりの出来る人物である。
その後、ゴーラウズ伯爵は会議では難しかったが、陛下に直接、娘たちを勧めれば分かってくれるはずだと思っていたが、会って貰うことすら出来なかった。
「陛下にとってもいい話なのです」
「愛妾にしろとでも言うのか?予算が勿体ないだけだ」
「愛妾?愛妾ではなく」
「まだこの国には愚か者がおったのか?」
「いえ、ですが会って貰えば…」
ゴーラウズ伯爵は両親も亡くなっており、親類も年上の煩い者がいない、ゆえに愚かさを止める者もいなかった。
「ならば、二十五ヶ国語でも話せるというのなら、連れて来い」
「っあ、それは」
「二十四ヶ国語以上、話せる者としか会わぬ!」
いるはずもないが、いるならば会うだけならば会ってみたい存在ではある。サリーはこうだったなどと、話をしてみたい。
「いい断り方でしたね」
やり取りを聞いていたクリコットは、満足そうに頷きながら、言った。
「いいだろう?私にしか断れない方法だろう?」
「それを言うなら、サリー様が二十四ヶ国語を話せるからだとは思いますけど?」
「それはそうだな、ちょっと傲慢だったな。反省だ、肖像画に謝る」
「そうしてください」
国王として、歩み出したリールだが、毎日肖像画には必ず会いに行っている。
ゴーラウズ伯爵はというと、急成長の礎であった輸出入も契約延長が出来ずに、みるみる切られることになった。なぜだと気付いた時には、相手国はサリーの功績を知っている者たちであり、契約期間中は我慢したが、信用出来ないと判断されていた。
どちらかを正妃にと伝えていた娘たちは、真に受けて、私がなるのよと争っていたが、急速に落ちぶれていき、慌てて爵位の低い貴族に嫁ぐしかなかった。
他に手を挙げなかった者はゴーラウズ伯爵の息の掛かった者たちで、ゴーラウズ伯爵が落ち目になって、失敗したことに気付いた。その者たちもじわじわと、影響が出始めるようになったからである。
王家と高位貴族、そして他国も敵にしたことにようやく気付いたが、もう遅かった。今後数十年、いや数百年は冷ややかな目で見られることだろう。
「はい、議長に打診するのは愚か者の証だとおっしゃっておりました。通常の精神の持ち主なら、指名されても辞退する方が余程、理解出来ると」
「私は亡くなってはおりますが、サリーを王妃の扱いでよろしいのではないかと思っております。皆様はいかがですか?」
「賛成の者は挙手を」
クリコットが決議を取ると、ほぼすべての者が手を挙げたが、未だ諦められない様子のゴーラウズ伯爵と、一部の者は挙げなかったが、可決された。
そして、お披露目の際にリールは告げた。
「王妃は、私の愛する妻であるサリーだけだ」
割れんばかりの歓喜の声と拍手が起こり、皆そうだそうだ、我が国の王妃様は二十四ヶ国語が出来るんだぞ、通訳で翻訳家でもあるんだぞ、しかも自身も小説家でもあるんだと、『コルボリット大好き』『ミミとビビも大好き』という、サリーを誇らしいと思う言葉で溢れた。
そして、同時にミーラが王太子となることも告げられ、ミーラとルミナが現れると、さらに歓声は大きくなっていった。
王妃の代理が必要な場合は、アン前王妃かミーラ王太子がサリーの代わりを務める。二人は語学は及ばないとしても、ちゃんとサリーの代わりの出来る人物である。
その後、ゴーラウズ伯爵は会議では難しかったが、陛下に直接、娘たちを勧めれば分かってくれるはずだと思っていたが、会って貰うことすら出来なかった。
「陛下にとってもいい話なのです」
「愛妾にしろとでも言うのか?予算が勿体ないだけだ」
「愛妾?愛妾ではなく」
「まだこの国には愚か者がおったのか?」
「いえ、ですが会って貰えば…」
ゴーラウズ伯爵は両親も亡くなっており、親類も年上の煩い者がいない、ゆえに愚かさを止める者もいなかった。
「ならば、二十五ヶ国語でも話せるというのなら、連れて来い」
「っあ、それは」
「二十四ヶ国語以上、話せる者としか会わぬ!」
いるはずもないが、いるならば会うだけならば会ってみたい存在ではある。サリーはこうだったなどと、話をしてみたい。
「いい断り方でしたね」
やり取りを聞いていたクリコットは、満足そうに頷きながら、言った。
「いいだろう?私にしか断れない方法だろう?」
「それを言うなら、サリー様が二十四ヶ国語を話せるからだとは思いますけど?」
「それはそうだな、ちょっと傲慢だったな。反省だ、肖像画に謝る」
「そうしてください」
国王として、歩み出したリールだが、毎日肖像画には必ず会いに行っている。
ゴーラウズ伯爵はというと、急成長の礎であった輸出入も契約延長が出来ずに、みるみる切られることになった。なぜだと気付いた時には、相手国はサリーの功績を知っている者たちであり、契約期間中は我慢したが、信用出来ないと判断されていた。
どちらかを正妃にと伝えていた娘たちは、真に受けて、私がなるのよと争っていたが、急速に落ちぶれていき、慌てて爵位の低い貴族に嫁ぐしかなかった。
他に手を挙げなかった者はゴーラウズ伯爵の息の掛かった者たちで、ゴーラウズ伯爵が落ち目になって、失敗したことに気付いた。その者たちもじわじわと、影響が出始めるようになったからである。
王家と高位貴族、そして他国も敵にしたことにようやく気付いたが、もう遅かった。今後数十年、いや数百年は冷ややかな目で見られることだろう。
475
お気に入りに追加
6,886
あなたにおすすめの小説
巻き戻り令嬢は長生きしたい。二度目の人生はあなた達を愛しません
せいめ
恋愛
「アナ、君と私の婚約を解消することに決まった」
王太子殿下は、今にも泣きそうな顔だった。
「王太子殿下、貴方の婚約者として過ごした時間はとても幸せでした。ありがとうございました。
どうか、隣国の王女殿下とお幸せになって下さいませ。」
「私も君といる時間は幸せだった…。
本当に申し訳ない…。
君の幸せを心から祈っているよ。」
婚約者だった王太子殿下が大好きだった。
しかし国際情勢が不安定になり、隣国との関係を強固にするため、急遽、隣国の王女殿下と王太子殿下との政略結婚をすることが決まり、私との婚約は解消されることになったのだ。
しかし殿下との婚約解消のすぐ後、私は王命で別の婚約者を決められることになる。
新しい婚約者は殿下の側近の公爵令息。その方とは個人的に話をしたことは少なかったが、見目麗しく優秀な方だという印象だった。
婚約期間は異例の短さで、すぐに結婚することになる。きっと殿下の婚姻の前に、元婚約者の私を片付けたかったのだろう。
しかし王命での結婚でありながらも、旦那様は妻の私をとても大切にしてくれた。
少しずつ彼への愛を自覚し始めた時…
貴方に好きな人がいたなんて知らなかった。
王命だから、好きな人を諦めて私と結婚したのね。
愛し合う二人を邪魔してごめんなさい…
そんな時、私は徐々に体調が悪くなり、ついには寝込むようになってしまった。後で知ることになるのだが、私は少しずつ毒を盛られていたのだ。
旦那様は仕事で隣国に行っていて、しばらくは戻らないので頼れないし、毒を盛った犯人が誰なのかも分からない。
そんな私を助けてくれたのは、実家の侯爵家を継ぐ義兄だった…。
毒で自分の死が近いことを悟った私は思った。
今世ではあの人達と関わったことが全ての元凶だった。もし来世があるならば、あの人達とは絶対に関わらない。
それよりも、こんな私を最後まで見捨てることなく面倒を見てくれた義兄には感謝したい。
そして私は死んだはずだった…。
あれ?死んだと思っていたのに、私は生きてる。しかもなぜか10歳の頃に戻っていた。
これはもしかしてやり直しのチャンス?
元々はお転婆で割と自由に育ってきたんだし、あの自分を押し殺した王妃教育とかもうやりたくたい。
よし!殿下や公爵とは今世では関わらないで、平和に長生きするからね!
しかし、私は気付いていなかった。
自分以外にも、一度目の記憶を持つ者がいることに…。
一度目は暗めですが、二度目の人生は明るくしたいです。
誤字脱字、申し訳ありません。
相変わらず緩い設定です。
あなたが望んだ、ただそれだけ
cyaru
恋愛
いつものように王城に妃教育に行ったカーメリアは王太子が侯爵令嬢と茶会をしているのを目にする。日に日に大きくなる次の教育が始まらない事に対する焦り。
国王夫妻に呼ばれ両親と共に登城すると婚約の解消を言い渡される。
カーメリアの両親はそれまでの所業が腹に据えかねていた事もあり、領地も売り払い夫人の実家のある隣国へ移住を決めた。
王太子イデオットの悪意なき本音はカーメリアの心を粉々に打ち砕いてしまった。
失意から寝込みがちになったカーメリアに追い打ちをかけるように見舞いに来た王太子イデオットとエンヴィー侯爵令嬢は更に悪意のない本音をカーメリアに浴びせた。
公爵はイデオットの態度に激昂し、処刑を覚悟で2人を叩きだしてしまった。
逃げるように移り住んだリアーノ国で静かに静養をしていたが、そこに1人の男性が現れた。
♡注意事項~この話を読む前に~♡
※胸糞展開ありますが、クールダウンお願いします。
心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。
※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義です。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。イラっとしたら現実に戻ってください。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
公爵令嬢の立場を捨てたお姫様
羽衣 狐火
恋愛
公爵令嬢は暇なんてないわ
舞踏会
お茶会
正妃になるための勉強
…何もかもうんざりですわ!もう公爵令嬢の立場なんか捨ててやる!
王子なんか知りませんわ!
田舎でのんびり暮らします!
【完結】貴方の望み通りに・・・
kana
恋愛
どんなに貴方を望んでも
どんなに貴方を見つめても
どんなに貴方を思っても
だから、
もう貴方を望まない
もう貴方を見つめない
もう貴方のことは忘れる
さようなら
〖完結〗幼馴染みの王女様の方が大切な婚約者は要らない。愛してる? もう興味ありません。
藍川みいな
恋愛
婚約者のカイン様は、婚約者の私よりも幼馴染みのクリスティ王女殿下ばかりを優先する。
何度も約束を破られ、彼と過ごせる時間は全くなかった。約束を破る理由はいつだって、「クリスティが……」だ。
同じ学園に通っているのに、私はまるで他人のよう。毎日毎日、二人の仲のいい姿を見せられ、苦しんでいることさえ彼は気付かない。
もうやめる。
カイン様との婚約は解消する。
でもなぜか、別れを告げたのに彼が付きまとってくる。
愛してる? 私はもう、あなたに興味はありません!
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
沢山の感想ありがとうございます。返信出来ず、申し訳ありません。
あなたへの想いを終わりにします
四折 柊
恋愛
シエナは王太子アドリアンの婚約者として体の弱い彼を支えてきた。だがある日彼は視察先で倒れそこで男爵令嬢に看病される。彼女の献身的な看病で医者に見放されていた病が治りアドリアンは健康を手に入れた。男爵令嬢は殿下を治癒した聖女と呼ばれ王城に招かれることになった。いつしかアドリアンは男爵令嬢に夢中になり彼女を正妃に迎えたいと言い出す。男爵令嬢では妃としての能力に問題がある。だからシエナには側室として彼女を支えてほしいと言われた。シエナは今までの献身と恋心を踏み躙られた絶望で彼らの目の前で自身の胸を短剣で刺した…………。(全13話)
彼女の光と声を奪った俺が出来ること
jun
恋愛
アーリアが毒を飲んだと聞かされたのは、キャリーを抱いた翌日。
キャリーを好きだったわけではない。勝手に横にいただけだ。既に処女ではないから最後に抱いてくれと言われたから抱いただけだ。
気付けば婚約は解消されて、アーリアはいなくなり、愛妾と勝手に噂されたキャリーしか残らなかった。
*1日1話、12時投稿となります。初回だけ2話投稿します。
【完結】旦那様、わたくし家出します。
さくらもち
恋愛
とある王国のとある上級貴族家の新妻は政略結婚をして早半年。
溜まりに溜まった不満がついに爆破し、家出を決行するお話です。
名前無し設定で書いて完結させましたが、続き希望を沢山頂きましたので名前を付けて文章を少し治してあります。
名前無しの時に読まれた方は良かったら最初から読んで見てください。
登場人物のサイドストーリー集を描きましたのでそちらも良かったら読んでみてください( ˊᵕˋ*)
第二王子が10年後王弟殿下になってからのストーリーも別で公開中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる