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番外編2
リール・オールソン4
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「まさか、三ヶ国語も出来もしない者を王妃になどと考えてはおりませんよね?」
次に声を上げたのは、ミアローズ・エモンドの兄・エディン。愚かな両親と妹を持ったがゆえに、愚か者を非常に嫌悪している。
ミーラの妻・ルミナの生家であるノーラ公爵家、側妃見習いは辞したが、レベッカの母の生家であるクリンピア公爵家は、敢えて声は上げなかった。
勿論、サリーの兄であるレオ・ペルガメントも同じである。だが、ふざけるなよと、ゴーラウズ伯爵や、同意していた者の顔をきっちり覚えていた。
「ですが、殿下もまだお若いのですから」
「では私の母で、サリー殿下の王太子妃教育をしておりました、ティファナ・アズラーがその者を見極めましょう。連れて来てください」
次に声を上げたのは、ティファナの息子で、ルアンナの弟である、アズラー侯爵となったルトアス・アズラー。
「あの…」
「母は二十四ヶ国語が御出来になるサリー殿下には劣りますが、王太子妃教育はサリー殿下からも、お墨付きを貰っております。さあ、どなたですか?お名前は?とりあえず成績表を取り寄せましょう」
「それがいいわね、ティファナが適任だわ」
「いや、それは…」
ゴーラウズ伯爵の娘たちは成績がいいわけでもなければ、三ヶ国語が出来るわけでもない、売りと言えば若さだけだろう。
本来はミーラ殿下の側妃にしようと企んでいた、当時は三ヶ国語のことも知らなかった。だが、王子夫妻から立て続けに王女も王子も生まれており、公に側妃も愛妾も娶らないことが発表された。
リールと同じで、ミーラにも三ヶ国語を分かっていない者や、分かっていても愛妾にと勧めて来る者がいるため、わざわざ発表をした。『娶る気はないから、二度と勧めて来るな』という意味である。
ルミナは気にしていないと言えば嘘になるが、お義母様がいたら、きっと言語を駆使して、ねじ伏せたでしょうねと笑っていた。ミーラも同意見だった、母は意外と意地が悪い上に、持っている武器も強いのだ。
ゴーラウズ伯爵もさすがに諦め、その時にようやく三ヶ国語のことを知り、どちらにしても無理だったと分かった。
だが、これまで王妃が最初からいないことは歴史上少なく、王妃であれば外交は王太子夫妻に任されるため、三ヶ国語がなくても大丈夫なのではないか。孫が王になることは難しいが、正妃となるだけで伯爵家の価値は上がると考えた。
殿下も正妃が亡くなって時間が経ち、まだ四十代の男なのだから、二十歳以上も若い令嬢であれば絆されるに違いないと思い、どうにか会わせられないかと動いたが、機会など一堂に会する時にしかなく、伯爵家など話はほとんど出来ない。
だから、会議で殿下に言えば興味を持つのではないかと考えていた。
言葉にはしなかったが、癒しが必要なのではないか、だが周りの状況を見る限り、厳しい状態だ。やはり個人的に話すべきだったと後悔した。
「優秀なのですよね?正妃に相応しい方なのですから」
「あっ、成績は、あの」
「我々に向かって、嘘を付いたのですか?」
しどろもどろのゴーラウズ伯爵に、アン前王妃の冷ややかな視線が突き刺さる。
「そもそも、サリーの代わりに立つなんて、私とミーラくらいしか、納得しないのではありませんか?二十四ヶ国語ですよ?恐れ多くて立てないのが普通の感覚ではありませんこと?サリーはそんなつもりではなかったのだろうけど、私でも恐ろしい功績を残したものだわと思ったもの」
アンの言葉に皆、黙って頷いている。
「サリーが亡くなった際も、同じような声はありましたが、今回と同じです。サリーの代わりなどいない。それが結論でした」
ゴーラウズ伯爵は、その際まだ伯爵にはなっていなかったため、参加していない。勿論、他にも参加していない者はいるが、納得しているだけである。
次に声を上げたのは、ミアローズ・エモンドの兄・エディン。愚かな両親と妹を持ったがゆえに、愚か者を非常に嫌悪している。
ミーラの妻・ルミナの生家であるノーラ公爵家、側妃見習いは辞したが、レベッカの母の生家であるクリンピア公爵家は、敢えて声は上げなかった。
勿論、サリーの兄であるレオ・ペルガメントも同じである。だが、ふざけるなよと、ゴーラウズ伯爵や、同意していた者の顔をきっちり覚えていた。
「ですが、殿下もまだお若いのですから」
「では私の母で、サリー殿下の王太子妃教育をしておりました、ティファナ・アズラーがその者を見極めましょう。連れて来てください」
次に声を上げたのは、ティファナの息子で、ルアンナの弟である、アズラー侯爵となったルトアス・アズラー。
「あの…」
「母は二十四ヶ国語が御出来になるサリー殿下には劣りますが、王太子妃教育はサリー殿下からも、お墨付きを貰っております。さあ、どなたですか?お名前は?とりあえず成績表を取り寄せましょう」
「それがいいわね、ティファナが適任だわ」
「いや、それは…」
ゴーラウズ伯爵の娘たちは成績がいいわけでもなければ、三ヶ国語が出来るわけでもない、売りと言えば若さだけだろう。
本来はミーラ殿下の側妃にしようと企んでいた、当時は三ヶ国語のことも知らなかった。だが、王子夫妻から立て続けに王女も王子も生まれており、公に側妃も愛妾も娶らないことが発表された。
リールと同じで、ミーラにも三ヶ国語を分かっていない者や、分かっていても愛妾にと勧めて来る者がいるため、わざわざ発表をした。『娶る気はないから、二度と勧めて来るな』という意味である。
ルミナは気にしていないと言えば嘘になるが、お義母様がいたら、きっと言語を駆使して、ねじ伏せたでしょうねと笑っていた。ミーラも同意見だった、母は意外と意地が悪い上に、持っている武器も強いのだ。
ゴーラウズ伯爵もさすがに諦め、その時にようやく三ヶ国語のことを知り、どちらにしても無理だったと分かった。
だが、これまで王妃が最初からいないことは歴史上少なく、王妃であれば外交は王太子夫妻に任されるため、三ヶ国語がなくても大丈夫なのではないか。孫が王になることは難しいが、正妃となるだけで伯爵家の価値は上がると考えた。
殿下も正妃が亡くなって時間が経ち、まだ四十代の男なのだから、二十歳以上も若い令嬢であれば絆されるに違いないと思い、どうにか会わせられないかと動いたが、機会など一堂に会する時にしかなく、伯爵家など話はほとんど出来ない。
だから、会議で殿下に言えば興味を持つのではないかと考えていた。
言葉にはしなかったが、癒しが必要なのではないか、だが周りの状況を見る限り、厳しい状態だ。やはり個人的に話すべきだったと後悔した。
「優秀なのですよね?正妃に相応しい方なのですから」
「あっ、成績は、あの」
「我々に向かって、嘘を付いたのですか?」
しどろもどろのゴーラウズ伯爵に、アン前王妃の冷ややかな視線が突き刺さる。
「そもそも、サリーの代わりに立つなんて、私とミーラくらいしか、納得しないのではありませんか?二十四ヶ国語ですよ?恐れ多くて立てないのが普通の感覚ではありませんこと?サリーはそんなつもりではなかったのだろうけど、私でも恐ろしい功績を残したものだわと思ったもの」
アンの言葉に皆、黙って頷いている。
「サリーが亡くなった際も、同じような声はありましたが、今回と同じです。サリーの代わりなどいない。それが結論でした」
ゴーラウズ伯爵は、その際まだ伯爵にはなっていなかったため、参加していない。勿論、他にも参加していない者はいるが、納得しているだけである。
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