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番外編2
リール・オールソン3
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ミーラはサリーが病に倒れた時も、亡くなった時も、葬儀の時も、泣かなったわけではないが、気丈に振舞っていた。
だが、この絵はミーラが一番知る、ミーラしか得られない顔だったのだろう。
「美しいな…」
皆が見れるようにと廊下に飾られたサリーの肖像画に、私は毎日会いに行った。何を話し掛けても、サリーは微笑んでくれる、卑怯者と言われても、幸せだった。
その後、ペルガメント侯爵家、サリー財団にも届けられたことを知り、財団はすぐに見に行けたが、ペルガメント侯爵家は敷居が高かったが、無理を承知で、お願いをして見せて貰うことも出来た。
ルアース・ベルア氏にはさすがに会いに行けず、新聞でどのような肖像画なのかを確認するしかなかった。
その後、二十四ヶ国語が発売されると、出版社にもサリーの肖像画が届けられた。入り口に飾られたサリーは、おそらく目立つことを好む質ではないので、嫌がるかもしれないが、凛としており美しかった。
「フィラビ・ロエンは何者なんでしょうか」
「探すようなことはするなよ」
「分かっております」
私の元にもサリーの肖像画が欲しくなかったと言えば嘘になるが、ミーラからフィラビ・ロエンをサリーは友人で、表には出たくないと言っていると言っていたそうだ。クオン・パトラーもそう言っていた。
クリコットにも探るようなことはするなと伝えていた。
それから、父であるパール国王陛下が亡くなり、私が国王になることが決まった。私は横にサリーがずっと側にいるつもりで、頑張って来た。
だが、会議で王妃を娶るべきだと声が出た。出席者は王家からリール、ミーラ、アン。公爵家、侯爵家、一部伯爵家と当主、そして大臣。
実はサリーが亡くなった際も、娶るべきだという声はあった。
その際は、サリー以外を娶るならば、リールは王太子を降りる、妻子のいるミーラが王太子となればいいと告げた。そもそも王家も全ての公爵家は、ミーラがいるのだから必要ないと判断しため、抑え込むことが出来た。
「サリー以外に正妃は要らない」
「ですが王妃がいないというのは…不自由もありますでしょう」
言い出したのはゴーラウズ伯爵。急成長している伯爵家で、十九歳と十八歳の娘がいる。娘を正妃にと思っているのだろうと分かっている者もおり、前に愚かなことをした子爵令嬢を知らないのかという目で見ていた。
あの者は男爵家に形だけの後妻として嫁がされ、前妻の子どもがいるため、子を産ませることもなく、離れで軟禁されている。
「相応しい者がいるというのですか?」
そう言ったのは、前王妃となったアン。
「ええ、年は離れておりますが」
ゴーラウズ伯爵は分かり易くにやにやして、揉み手はしていないが、しているようにすら見える。
「本当ですか?三ヶ国語を話し、いえ、サリー殿下と後となれば、三ヶ国語では足りませんね。そのような者がいるのですか?」
声を上げたのはルアンナ・アズラーの元夫で、クリジアン公爵となったルイソード・クリジアンであった。
「ですが、外交は王太子殿下が行うのですから…」
三ヶ国語は必要ないのではないかと言いたいのだろう。
「では二十四ヶ国語かしら?」
次に声を上げたのは、アン前王妃の生家であるスワン公爵家、アンの姪・ユナが継いでいる。サリーには何度か、通訳をお願いしたことのある間柄である。
「へ?」
「だって、そうではありませんか?国内、いえ国外でもサリー殿下は二十四ヶ国語が出来ると分かっているのですよ?それなのに、その後が三ヶ国語さえ話せないなんて、あり得ませんでしょう?」
今までも語学が堪能だとは思われていたが、『ミミとビビ』が出版されたことで、サリー・オールソンは二十四ヶ国語が出来ると皆が知ることになっている。
だが、この絵はミーラが一番知る、ミーラしか得られない顔だったのだろう。
「美しいな…」
皆が見れるようにと廊下に飾られたサリーの肖像画に、私は毎日会いに行った。何を話し掛けても、サリーは微笑んでくれる、卑怯者と言われても、幸せだった。
その後、ペルガメント侯爵家、サリー財団にも届けられたことを知り、財団はすぐに見に行けたが、ペルガメント侯爵家は敷居が高かったが、無理を承知で、お願いをして見せて貰うことも出来た。
ルアース・ベルア氏にはさすがに会いに行けず、新聞でどのような肖像画なのかを確認するしかなかった。
その後、二十四ヶ国語が発売されると、出版社にもサリーの肖像画が届けられた。入り口に飾られたサリーは、おそらく目立つことを好む質ではないので、嫌がるかもしれないが、凛としており美しかった。
「フィラビ・ロエンは何者なんでしょうか」
「探すようなことはするなよ」
「分かっております」
私の元にもサリーの肖像画が欲しくなかったと言えば嘘になるが、ミーラからフィラビ・ロエンをサリーは友人で、表には出たくないと言っていると言っていたそうだ。クオン・パトラーもそう言っていた。
クリコットにも探るようなことはするなと伝えていた。
それから、父であるパール国王陛下が亡くなり、私が国王になることが決まった。私は横にサリーがずっと側にいるつもりで、頑張って来た。
だが、会議で王妃を娶るべきだと声が出た。出席者は王家からリール、ミーラ、アン。公爵家、侯爵家、一部伯爵家と当主、そして大臣。
実はサリーが亡くなった際も、娶るべきだという声はあった。
その際は、サリー以外を娶るならば、リールは王太子を降りる、妻子のいるミーラが王太子となればいいと告げた。そもそも王家も全ての公爵家は、ミーラがいるのだから必要ないと判断しため、抑え込むことが出来た。
「サリー以外に正妃は要らない」
「ですが王妃がいないというのは…不自由もありますでしょう」
言い出したのはゴーラウズ伯爵。急成長している伯爵家で、十九歳と十八歳の娘がいる。娘を正妃にと思っているのだろうと分かっている者もおり、前に愚かなことをした子爵令嬢を知らないのかという目で見ていた。
あの者は男爵家に形だけの後妻として嫁がされ、前妻の子どもがいるため、子を産ませることもなく、離れで軟禁されている。
「相応しい者がいるというのですか?」
そう言ったのは、前王妃となったアン。
「ええ、年は離れておりますが」
ゴーラウズ伯爵は分かり易くにやにやして、揉み手はしていないが、しているようにすら見える。
「本当ですか?三ヶ国語を話し、いえ、サリー殿下と後となれば、三ヶ国語では足りませんね。そのような者がいるのですか?」
声を上げたのはルアンナ・アズラーの元夫で、クリジアン公爵となったルイソード・クリジアンであった。
「ですが、外交は王太子殿下が行うのですから…」
三ヶ国語は必要ないのではないかと言いたいのだろう。
「では二十四ヶ国語かしら?」
次に声を上げたのは、アン前王妃の生家であるスワン公爵家、アンの姪・ユナが継いでいる。サリーには何度か、通訳をお願いしたことのある間柄である。
「へ?」
「だって、そうではありませんか?国内、いえ国外でもサリー殿下は二十四ヶ国語が出来ると分かっているのですよ?それなのに、その後が三ヶ国語さえ話せないなんて、あり得ませんでしょう?」
今までも語学が堪能だとは思われていたが、『ミミとビビ』が出版されたことで、サリー・オールソンは二十四ヶ国語が出来ると皆が知ることになっている。
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