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番外編2
リール・オールソン2
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私がいなくなって、妻子とも関係が良好なミーラを王太子にして、サリーが支えた方が良かった。セリー王女だって、今は分からないかもしれないが、祖父より祖母が生きていればと思うようになるだろう。
だが、サリーにしたら死ぬことも許さない。ミーラを支え続けることが贖罪だと言いたいのだろう。
ミーラを望んだのは私だという思いもあるのかもしれない、複雑な生まれとなってしまったマリーヌは辺境伯に嫁いで、幸せにやっている。レベッカもあれだけ私に媚びていたのが嘘のように、母となった。
ミーラには一番辛い思いをさせた。賢いのは良かったが、賢いゆえに両親の様子に気付いていた。しかも悪いのは私だと感じていたのだろう。さすがにミーラの前だけは仲良くなんて、都合のいいことは言えなかった。
私は女性関係のこと、報復のことを何も隠すことなく全てをミーラに話した。軽蔑する眼差しをされたことをよく覚えている。それでいいと思ったことも、事実だ。
「最低ですね」
「ああ、最低だ。サリーは何も悪くない」
「母は自分の我儘な都合で、私を道具に、捨てて行こうとしたと言いましたが、理由があると思っていました」
「その通りだ、きっかけも苦しめたのは私だ。反面教師にしてくれたらとは思うが、嫌ってくれていい」
「私は少なくとも、そのような生き方はしないでしょうね」
「ああ、しないでくれ」
ミーラはサリーに相手にされていないことを、自業自得だと思われていることも感じているが、それでいいと思っている。
サリーとは公務と、時折話をするくらいの関係だった。私の思いは不要なものとされる、いかにサリーを軽減できるかが私の使命だった。
小説はまるであの時、出て行くのを止めなかったら、サリーが行いたかった旅のようであった。ビビは一体誰だったのだろうか。私でないことは確かだろう。
そして、ミーラの誕生日にサリーの小説は発売された。ミーラ達は見に行ったそうだが、さすがに私までも見に行くことは出来なかったが、同行したリビアナにどうだったか聞かせて欲しいと頼んでいたため、話を聞くことになった。
「盛況でした」
「そうか、それは良かった」
「皆が立ち止まって、購入していて、妃殿下も見ることが出来たら、お喜びになられただろうと…」
リビアナは言葉が続かず、涙を流した。リビアナは結婚し、産休などはあったものの、ずっとサリーに仕えていた。
「そうだな、見たかっただろうな」
「はい、ミーラ殿下が母が私を叩きながら、自慢げに喜ぶ姿が見えるとおっしゃってました」
私には想像出来ないが、ミーラにはそんなサリーが見えるのだろう。
「殿下!」
書類を届けに出ていたクリコットが慌てて戻って来た。
「リビアナ、来てたのか。いや、そうではありません、ミーラ殿下宛てにフィラビ・ロエン様から絵が届いたと…」
「ああ、サリーの小説の絵を描いた者か…お祝いに贈ってくれたのかもしれぬな」
「違います!いえ、違いませんが、妃殿下の肖像画だそうです」
クリコットは焦るあまり、自身でも何を言いたいのか分からなくなっていた。
「っな、何だと…」
「妃殿下の…」
気付くと三人は昔、三人で幾度と走り込んだ場所を、同じ場所に向かって、再び走ることになった。またサリーが待っているような、そんな気持ちを持ちながら、あの頃と同じように走った。
宮に付き、ミーラ殿下の部屋だと聞かされて、向かうと幾人の泣き声が聞こえた。ひと際大きかったのはミーラであった。
リールに気付いて、道は開けられたが、ミーラの前にある肖像画を見て、その肖像画しか見えず、何も聞こえなくなった。
「サリー…」
まるでそこにいるような、愛しいものを見て微笑むサリーの姿だった。おそらくサリーの視線の先にいるのはミーラだ。
だが、サリーにしたら死ぬことも許さない。ミーラを支え続けることが贖罪だと言いたいのだろう。
ミーラを望んだのは私だという思いもあるのかもしれない、複雑な生まれとなってしまったマリーヌは辺境伯に嫁いで、幸せにやっている。レベッカもあれだけ私に媚びていたのが嘘のように、母となった。
ミーラには一番辛い思いをさせた。賢いのは良かったが、賢いゆえに両親の様子に気付いていた。しかも悪いのは私だと感じていたのだろう。さすがにミーラの前だけは仲良くなんて、都合のいいことは言えなかった。
私は女性関係のこと、報復のことを何も隠すことなく全てをミーラに話した。軽蔑する眼差しをされたことをよく覚えている。それでいいと思ったことも、事実だ。
「最低ですね」
「ああ、最低だ。サリーは何も悪くない」
「母は自分の我儘な都合で、私を道具に、捨てて行こうとしたと言いましたが、理由があると思っていました」
「その通りだ、きっかけも苦しめたのは私だ。反面教師にしてくれたらとは思うが、嫌ってくれていい」
「私は少なくとも、そのような生き方はしないでしょうね」
「ああ、しないでくれ」
ミーラはサリーに相手にされていないことを、自業自得だと思われていることも感じているが、それでいいと思っている。
サリーとは公務と、時折話をするくらいの関係だった。私の思いは不要なものとされる、いかにサリーを軽減できるかが私の使命だった。
小説はまるであの時、出て行くのを止めなかったら、サリーが行いたかった旅のようであった。ビビは一体誰だったのだろうか。私でないことは確かだろう。
そして、ミーラの誕生日にサリーの小説は発売された。ミーラ達は見に行ったそうだが、さすがに私までも見に行くことは出来なかったが、同行したリビアナにどうだったか聞かせて欲しいと頼んでいたため、話を聞くことになった。
「盛況でした」
「そうか、それは良かった」
「皆が立ち止まって、購入していて、妃殿下も見ることが出来たら、お喜びになられただろうと…」
リビアナは言葉が続かず、涙を流した。リビアナは結婚し、産休などはあったものの、ずっとサリーに仕えていた。
「そうだな、見たかっただろうな」
「はい、ミーラ殿下が母が私を叩きながら、自慢げに喜ぶ姿が見えるとおっしゃってました」
私には想像出来ないが、ミーラにはそんなサリーが見えるのだろう。
「殿下!」
書類を届けに出ていたクリコットが慌てて戻って来た。
「リビアナ、来てたのか。いや、そうではありません、ミーラ殿下宛てにフィラビ・ロエン様から絵が届いたと…」
「ああ、サリーの小説の絵を描いた者か…お祝いに贈ってくれたのかもしれぬな」
「違います!いえ、違いませんが、妃殿下の肖像画だそうです」
クリコットは焦るあまり、自身でも何を言いたいのか分からなくなっていた。
「っな、何だと…」
「妃殿下の…」
気付くと三人は昔、三人で幾度と走り込んだ場所を、同じ場所に向かって、再び走ることになった。またサリーが待っているような、そんな気持ちを持ちながら、あの頃と同じように走った。
宮に付き、ミーラ殿下の部屋だと聞かされて、向かうと幾人の泣き声が聞こえた。ひと際大きかったのはミーラであった。
リールに気付いて、道は開けられたが、ミーラの前にある肖像画を見て、その肖像画しか見えず、何も聞こえなくなった。
「サリー…」
まるでそこにいるような、愛しいものを見て微笑むサリーの姿だった。おそらくサリーの視線の先にいるのはミーラだ。
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