176 / 203
番外編2
リール・オールソン2
しおりを挟む
私がいなくなって、妻子とも関係が良好なミーラを王太子にして、サリーが支えた方が良かった。セリー王女だって、今は分からないかもしれないが、祖父より祖母が生きていればと思うようになるだろう。
だが、サリーにしたら死ぬことも許さない。ミーラを支え続けることが贖罪だと言いたいのだろう。
ミーラを望んだのは私だという思いもあるのかもしれない、複雑な生まれとなってしまったマリーヌは辺境伯に嫁いで、幸せにやっている。レベッカもあれだけ私に媚びていたのが嘘のように、母となった。
ミーラには一番辛い思いをさせた。賢いのは良かったが、賢いゆえに両親の様子に気付いていた。しかも悪いのは私だと感じていたのだろう。さすがにミーラの前だけは仲良くなんて、都合のいいことは言えなかった。
私は女性関係のこと、報復のことを何も隠すことなく全てをミーラに話した。軽蔑する眼差しをされたことをよく覚えている。それでいいと思ったことも、事実だ。
「最低ですね」
「ああ、最低だ。サリーは何も悪くない」
「母は自分の我儘な都合で、私を道具に、捨てて行こうとしたと言いましたが、理由があると思っていました」
「その通りだ、きっかけも苦しめたのは私だ。反面教師にしてくれたらとは思うが、嫌ってくれていい」
「私は少なくとも、そのような生き方はしないでしょうね」
「ああ、しないでくれ」
ミーラはサリーに相手にされていないことを、自業自得だと思われていることも感じているが、それでいいと思っている。
サリーとは公務と、時折話をするくらいの関係だった。私の思いは不要なものとされる、いかにサリーを軽減できるかが私の使命だった。
小説はまるであの時、出て行くのを止めなかったら、サリーが行いたかった旅のようであった。ビビは一体誰だったのだろうか。私でないことは確かだろう。
そして、ミーラの誕生日にサリーの小説は発売された。ミーラ達は見に行ったそうだが、さすがに私までも見に行くことは出来なかったが、同行したリビアナにどうだったか聞かせて欲しいと頼んでいたため、話を聞くことになった。
「盛況でした」
「そうか、それは良かった」
「皆が立ち止まって、購入していて、妃殿下も見ることが出来たら、お喜びになられただろうと…」
リビアナは言葉が続かず、涙を流した。リビアナは結婚し、産休などはあったものの、ずっとサリーに仕えていた。
「そうだな、見たかっただろうな」
「はい、ミーラ殿下が母が私を叩きながら、自慢げに喜ぶ姿が見えるとおっしゃってました」
私には想像出来ないが、ミーラにはそんなサリーが見えるのだろう。
「殿下!」
書類を届けに出ていたクリコットが慌てて戻って来た。
「リビアナ、来てたのか。いや、そうではありません、ミーラ殿下宛てにフィラビ・ロエン様から絵が届いたと…」
「ああ、サリーの小説の絵を描いた者か…お祝いに贈ってくれたのかもしれぬな」
「違います!いえ、違いませんが、妃殿下の肖像画だそうです」
クリコットは焦るあまり、自身でも何を言いたいのか分からなくなっていた。
「っな、何だと…」
「妃殿下の…」
気付くと三人は昔、三人で幾度と走り込んだ場所を、同じ場所に向かって、再び走ることになった。またサリーが待っているような、そんな気持ちを持ちながら、あの頃と同じように走った。
宮に付き、ミーラ殿下の部屋だと聞かされて、向かうと幾人の泣き声が聞こえた。ひと際大きかったのはミーラであった。
リールに気付いて、道は開けられたが、ミーラの前にある肖像画を見て、その肖像画しか見えず、何も聞こえなくなった。
「サリー…」
まるでそこにいるような、愛しいものを見て微笑むサリーの姿だった。おそらくサリーの視線の先にいるのはミーラだ。
だが、サリーにしたら死ぬことも許さない。ミーラを支え続けることが贖罪だと言いたいのだろう。
ミーラを望んだのは私だという思いもあるのかもしれない、複雑な生まれとなってしまったマリーヌは辺境伯に嫁いで、幸せにやっている。レベッカもあれだけ私に媚びていたのが嘘のように、母となった。
ミーラには一番辛い思いをさせた。賢いのは良かったが、賢いゆえに両親の様子に気付いていた。しかも悪いのは私だと感じていたのだろう。さすがにミーラの前だけは仲良くなんて、都合のいいことは言えなかった。
私は女性関係のこと、報復のことを何も隠すことなく全てをミーラに話した。軽蔑する眼差しをされたことをよく覚えている。それでいいと思ったことも、事実だ。
「最低ですね」
「ああ、最低だ。サリーは何も悪くない」
「母は自分の我儘な都合で、私を道具に、捨てて行こうとしたと言いましたが、理由があると思っていました」
「その通りだ、きっかけも苦しめたのは私だ。反面教師にしてくれたらとは思うが、嫌ってくれていい」
「私は少なくとも、そのような生き方はしないでしょうね」
「ああ、しないでくれ」
ミーラはサリーに相手にされていないことを、自業自得だと思われていることも感じているが、それでいいと思っている。
サリーとは公務と、時折話をするくらいの関係だった。私の思いは不要なものとされる、いかにサリーを軽減できるかが私の使命だった。
小説はまるであの時、出て行くのを止めなかったら、サリーが行いたかった旅のようであった。ビビは一体誰だったのだろうか。私でないことは確かだろう。
そして、ミーラの誕生日にサリーの小説は発売された。ミーラ達は見に行ったそうだが、さすがに私までも見に行くことは出来なかったが、同行したリビアナにどうだったか聞かせて欲しいと頼んでいたため、話を聞くことになった。
「盛況でした」
「そうか、それは良かった」
「皆が立ち止まって、購入していて、妃殿下も見ることが出来たら、お喜びになられただろうと…」
リビアナは言葉が続かず、涙を流した。リビアナは結婚し、産休などはあったものの、ずっとサリーに仕えていた。
「そうだな、見たかっただろうな」
「はい、ミーラ殿下が母が私を叩きながら、自慢げに喜ぶ姿が見えるとおっしゃってました」
私には想像出来ないが、ミーラにはそんなサリーが見えるのだろう。
「殿下!」
書類を届けに出ていたクリコットが慌てて戻って来た。
「リビアナ、来てたのか。いや、そうではありません、ミーラ殿下宛てにフィラビ・ロエン様から絵が届いたと…」
「ああ、サリーの小説の絵を描いた者か…お祝いに贈ってくれたのかもしれぬな」
「違います!いえ、違いませんが、妃殿下の肖像画だそうです」
クリコットは焦るあまり、自身でも何を言いたいのか分からなくなっていた。
「っな、何だと…」
「妃殿下の…」
気付くと三人は昔、三人で幾度と走り込んだ場所を、同じ場所に向かって、再び走ることになった。またサリーが待っているような、そんな気持ちを持ちながら、あの頃と同じように走った。
宮に付き、ミーラ殿下の部屋だと聞かされて、向かうと幾人の泣き声が聞こえた。ひと際大きかったのはミーラであった。
リールに気付いて、道は開けられたが、ミーラの前にある肖像画を見て、その肖像画しか見えず、何も聞こえなくなった。
「サリー…」
まるでそこにいるような、愛しいものを見て微笑むサリーの姿だった。おそらくサリーの視線の先にいるのはミーラだ。
636
お気に入りに追加
7,118
あなたにおすすめの小説
さよなら、皆さん。今宵、私はここを出ていきます
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【復讐の為、今夜私は偽の家族と婚約者に別れを告げる―】
私は伯爵令嬢フィーネ・アドラー。優しい両親と18歳になったら結婚する予定の婚約者がいた。しかし、幸せな生活は両親の突然の死により、もろくも崩れ去る。私の後見人になると言って城に上がり込んできた叔父夫婦とその娘。私は彼らによって全てを奪われてしまった。愛する婚約者までも。
もうこれ以上は限界だった。復讐する為、私は今夜皆に別れを告げる決意をした―。
※マークは残酷シーン有り
※(他サイトでも投稿中)

絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

冷遇する婚約者に、冷たさをそのままお返しします。
ねむたん
恋愛
貴族の娘、ミーシャは婚約者ヴィクターの冷酷な仕打ちによって自信と感情を失い、無感情な仮面を被ることで自分を守るようになった。エステラ家の屋敷と庭園の中で静かに過ごす彼女の心には、怒りも悲しみも埋もれたまま、何も感じない日々が続いていた。
事なかれ主義の両親の影響で、エステラ家の警備はガバガバですw

貴方の運命になれなくて
豆狸
恋愛
運命の相手を見つめ続ける王太子ヨアニスの姿に、彼の婚約者であるスクリヴァ公爵令嬢リディアは身を引くことを決めた。
ところが婚約を解消した後で、ヨアニスの運命の相手プセマが毒に倒れ──
「……君がそんなに私を愛していたとは知らなかったよ」
「え?」
「プセマは毒で死んだよ。ああ、驚いたような顔をしなくてもいい。君は知っていたんだろう? プセマに毒を飲ませたのは君なんだから!」

もう、愛はいりませんから
さくたろう
恋愛
ローザリア王国公爵令嬢ルクレティア・フォルセティに、ある日突然、未来の記憶が蘇った。
王子リーヴァイの愛する人を殺害しようとした罪により投獄され、兄に差し出された毒を煽り死んだ記憶だ。それが未来の出来事だと確信したルクレティアは、そんな未来に怯えるが、その記憶のおかしさに気がつき、謎を探ることにする。そうしてやがて、ある人のひたむきな愛を知ることになる。


義妹が大事だと優先するので私も義兄を優先する事にしました
さこの
恋愛
婚約者のラウロ様は義妹を優先する。
私との約束なんかなかったかのように…
それをやんわり注意すると、君は家族を大事にしないのか?冷たい女だな。と言われました。
そうですか…あなたの目にはそのように映るのですね…
分かりました。それでは私も義兄を優先する事にしますね!大事な家族なので!

やり直し令嬢は本当にやり直す
お好み焼き
恋愛
やり直しにも色々あるものです。婚約者に若い令嬢に乗り換えられ婚約解消されてしまったので、本来なら婚約する前に時を巻き戻すことが出来ればそれが一番よかったのですけれど、そんな事は神ではないわたくしには不可能です。けれどわたくしの場合は、寿命は変えられないけど見た目年齢は変えられる不老のエルフの血を引いていたお陰で、本当にやり直すことができました。一方わたくしから若いご令嬢に乗り換えた元婚約者は……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる