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番外編2
クオン・パトラー4
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サリー様がいないことを受け入れられない気持ちと、早く形にしなくてはいけない気持ちがせめぎ合いながら、『ミミとビビ』はサリー様が亡くなって、約三ヶ月後にようやく発売することになった。
遺作としてでも注目を集めて、売れたら嬉しいとサリー様なら言うだろうが、クオンは話題だけではなく、サリー様らしく、きちんと送り出したい。
理想は二十四ヶ国同時発売したかったが、時間が掛かりすぎてしまうため、仕方なく断念し、トワイ語、そしてルアース・ベルア氏の母国語であるビアロ語、そして三ヶ国のノワンナ語、アペラ語、カベリ語を同時に発売するために、働きかけた。
担当者に翻訳版を読ませると、一人の反対もなく、全員が是非やりましょうと言ってくれて、発売日はサリー様の息子であるミーラ王子殿下の誕生日に決めた。
公に発表するわけではないが、サリー様からの息子への最期の贈り物だとしたかった。なぜかというとミーラ王子殿下には発売されてから読んで欲しいと、読ませていなかったからだ。
そして、五冊全てにサリー様が願ったように、作サリー・オールソン、絵フィラビ・ロエンと記された。
さすがにフィラビ・ロエンに興味を持ったが、誰も名を聞いたことがなく、表に出たくはないと言っている以上、詮索もしなかった。
五ヶ国語全てに、翻訳家の名前のない、作者自身の翻訳。サリー様にしか出来ない、誰にも真似出来ないだろうと、そう思わせたかった。これでも、まだ後十九ヶ国語も残っている。
一切事前に告知もせずに、発売日に一気に売り出すことになり、時差もあまりないことから、五ヶ国語同時に発売する。
そして、発売前にミーラ殿下にはクオンが直接、届けに行った。クオンは幼い頃からミーラ殿下とは顔を合わせており、サリー様はミーラ殿下を片手に抱えながら、直しをしていただいたこともある。
「出来たのですね、ありがとうございます。素敵ですね」
ミーラは赤と白をメインにした、鮮やかな装丁を大事そうに、優しく指で撫でており、目頭が熱くなった。
「サリー様にも見ていただきたかったです」
「ええ、母も見たかったことでしょう」
「こちらをどうぞお納めください」
クオンはミーラ殿下に封筒を差し出した、ミーラへと書かれていた字は、紛れもなくサリーの字だった。
「…いつの間に」
「お預かりしておりました」
妃殿下はミーラ殿下の前でルアース・ベルア氏だけだと思わせていたが、きちんと用意していた。
「そしてこれは私の勝手ですが、殿下の誕生日に五ヶ国語、同時に発売します」
「っ、そうですか」
ミーラ殿下は上を向き、涙が零れないようにしているようだった。
「あと残り十九ヶ国語も絶対に発売します」
「よろしくお願いします。無理はしないでくださいね」
「はい、元気に発売します」
「ははっ、そうしてください。もう一冊、いただけませんか。いや、父にも文が?」
「はい、お預かりしています」
「もしかして、母様なら、一応渡しますかってところでしょうか」
「っふ、失礼しました。さすがですね、一応と言われました」
「母なら、もっと笑っていいのよ、と言いそうです」
「はい、間違いなくおっしゃるでしょうね」
妃殿下に似ているミーラ殿下に、妃殿下の言葉遣いをされると、一瞬サリー様が過って、また目頭が熱くなった。
「文は他にも?」
「はい、お気付きになられますよね」
「筆まめな人でしたから」
お礼状、挨拶状、サリーは翻訳を通さなくても、様々な国の人と交流が出来る。強みを存分に生かした、王太子妃としての在り方だった。
「はい、何名か預かっておりますので、渡して回ろうと思っております。ですが、ミーラ殿下の文だけ異様に分厚いです。きっと書きたいこと、伝えたいことが沢山あったのでしょうね」
「何が書いてあるのか…全て説教でも嬉しいです」
そう言うと、またミーラ殿下の瞳には涙が溜まっていた。
遺作としてでも注目を集めて、売れたら嬉しいとサリー様なら言うだろうが、クオンは話題だけではなく、サリー様らしく、きちんと送り出したい。
理想は二十四ヶ国同時発売したかったが、時間が掛かりすぎてしまうため、仕方なく断念し、トワイ語、そしてルアース・ベルア氏の母国語であるビアロ語、そして三ヶ国のノワンナ語、アペラ語、カベリ語を同時に発売するために、働きかけた。
担当者に翻訳版を読ませると、一人の反対もなく、全員が是非やりましょうと言ってくれて、発売日はサリー様の息子であるミーラ王子殿下の誕生日に決めた。
公に発表するわけではないが、サリー様からの息子への最期の贈り物だとしたかった。なぜかというとミーラ王子殿下には発売されてから読んで欲しいと、読ませていなかったからだ。
そして、五冊全てにサリー様が願ったように、作サリー・オールソン、絵フィラビ・ロエンと記された。
さすがにフィラビ・ロエンに興味を持ったが、誰も名を聞いたことがなく、表に出たくはないと言っている以上、詮索もしなかった。
五ヶ国語全てに、翻訳家の名前のない、作者自身の翻訳。サリー様にしか出来ない、誰にも真似出来ないだろうと、そう思わせたかった。これでも、まだ後十九ヶ国語も残っている。
一切事前に告知もせずに、発売日に一気に売り出すことになり、時差もあまりないことから、五ヶ国語同時に発売する。
そして、発売前にミーラ殿下にはクオンが直接、届けに行った。クオンは幼い頃からミーラ殿下とは顔を合わせており、サリー様はミーラ殿下を片手に抱えながら、直しをしていただいたこともある。
「出来たのですね、ありがとうございます。素敵ですね」
ミーラは赤と白をメインにした、鮮やかな装丁を大事そうに、優しく指で撫でており、目頭が熱くなった。
「サリー様にも見ていただきたかったです」
「ええ、母も見たかったことでしょう」
「こちらをどうぞお納めください」
クオンはミーラ殿下に封筒を差し出した、ミーラへと書かれていた字は、紛れもなくサリーの字だった。
「…いつの間に」
「お預かりしておりました」
妃殿下はミーラ殿下の前でルアース・ベルア氏だけだと思わせていたが、きちんと用意していた。
「そしてこれは私の勝手ですが、殿下の誕生日に五ヶ国語、同時に発売します」
「っ、そうですか」
ミーラ殿下は上を向き、涙が零れないようにしているようだった。
「あと残り十九ヶ国語も絶対に発売します」
「よろしくお願いします。無理はしないでくださいね」
「はい、元気に発売します」
「ははっ、そうしてください。もう一冊、いただけませんか。いや、父にも文が?」
「はい、お預かりしています」
「もしかして、母様なら、一応渡しますかってところでしょうか」
「っふ、失礼しました。さすがですね、一応と言われました」
「母なら、もっと笑っていいのよ、と言いそうです」
「はい、間違いなくおっしゃるでしょうね」
妃殿下に似ているミーラ殿下に、妃殿下の言葉遣いをされると、一瞬サリー様が過って、また目頭が熱くなった。
「文は他にも?」
「はい、お気付きになられますよね」
「筆まめな人でしたから」
お礼状、挨拶状、サリーは翻訳を通さなくても、様々な国の人と交流が出来る。強みを存分に生かした、王太子妃としての在り方だった。
「はい、何名か預かっておりますので、渡して回ろうと思っております。ですが、ミーラ殿下の文だけ異様に分厚いです。きっと書きたいこと、伝えたいことが沢山あったのでしょうね」
「何が書いてあるのか…全て説教でも嬉しいです」
そう言うと、またミーラ殿下の瞳には涙が溜まっていた。
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