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番外編1
エマ・ネイリー25
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「そんな状態の中、婚約者は側に別の令嬢を置いて、あなたを冷遇し始めます。周りからも飽きられたのか、不釣り合いだったなど、心無い言葉ばかり掛けられます。想像、出来ていますか?」
「…はい」
「では、どんな気持ちだと思いますか」
「辛いと思います…頑張って来たのに」
自身が行ったこととは思っていないのか?まあ理解しているならいい。
「あなたは誰かに突き飛ばされて怪我をさせられます。療養先で、婚約者といた令嬢に、"あなたの代わりをしていた"と言われます」
エマはピンク色の口元を押さえ、ようやく自身が言ったことだと気付いたようだ、本当に腹立たしい。
「冷遇され辛い状態で、怪我もしているところに、十年以上も努力した結果を、毎日十二時間も勉強していない者に言われたんです。代わりが出来ると、これでも、理解が出来ませんか!」
クリコットはどんどん語尾が強くなり、エマの喉がヒュっと鳴り、そのまま固まってしまった。
「あなたの言葉は妃殿下を切り裂いたのです。あなたにとっては何も考えずに使った言葉でしょう」
「でもそんなつもりで言ったのではなく」
「まだ認めませんか?あなたの言葉は無自覚だろうが、そんなつもりはなかろうが、妃殿下の努力を、簡単に成り代われるものにしたのですよ!蔑んだのです!」
「そんなことは」
「長きに渡る王家の歴史、外交、法律、語学、各国のマナー、所作、ダンス、それに加えて学園での授業に、翻訳作業、通訳。記憶の力のいい妃殿下でも、習わなくては出来ません。十年以上、積み上げたものを出来ると言ったのです!」
「っあ…申し訳ございません」
馬鹿にする気も、出来ると言ったわけでもなかったが、否定はしなかった。代わりが出来るのだと言われて、嬉しくなってしまった。でもそういった人たちは、しばらくすると一切話し掛けて来なくなった。
「妃殿下を怪我をさせたのは、あなたが不正を見付けたジュロス伯爵家のサマン・ジュロスです」
「本当ですか!」「そんな…」
両親も驚き、何てことをと苦しい表情を浮かべ、クリコットも殿下から聞いた際に、驚いた。ジュロス伯爵家はエマが王太子妃になるかもしれないと匂わせていたために、そのような暴挙に出たのだ。
そう、リール殿下とエマ・ネイリーのせいで、怪我をすることになったのだ。
殿下は拗ねて領地に籠ったのだと言っていた、怪我をさせられたなど露程も考えず、妃殿下のためでもあったなどとの賜ったのだ。
「事実です。意図したわけではなくとも、間接的に怪我もさせています」
「そんなこと…知らなかった…」
「今日も妃殿下が相手をするとおっしゃられました、でも私が代わっていただいたのです」
エマ・ネイリーが逃げ出して、情報が集められた後、妃殿下にも念のためエマ・ネイリーが、また現れるかもしれないと報告を行った。
「彼女だけは公にしてしまいましたから、私が対応します」
「妃殿下のお手を煩わせるなら、私に任せていただけませんでしょうか」
「そう…では何かあれば呼んでください」
「承知しました。恐れながら、一つだけ伺ってもいいですか」
「ええ、何かしら?」
「エマ・ネイリーが一番、憎かったのでしょうか」
報復がなければ、他の者はもしかしたら、このまま何もなかったかのように生きていたかもしれない。
「少し違うわね。ご存知の通り、色々と言われて来たけど、一番傷付いたの。"あなたの代わりをしていたのです"という言葉に。これだけ努力しても、代わりが簡単にいるんだと思ったら、もういいかと思ったの」
「さようでしたか…お答えいただき、ありがとうございました」
妃殿下は自身に成り代われる者がいないこと認めることはなく、だからこそ努力を続けており、幼い頃から、それ以外に価値がないと思っているのだろう。
「…はい」
「では、どんな気持ちだと思いますか」
「辛いと思います…頑張って来たのに」
自身が行ったこととは思っていないのか?まあ理解しているならいい。
「あなたは誰かに突き飛ばされて怪我をさせられます。療養先で、婚約者といた令嬢に、"あなたの代わりをしていた"と言われます」
エマはピンク色の口元を押さえ、ようやく自身が言ったことだと気付いたようだ、本当に腹立たしい。
「冷遇され辛い状態で、怪我もしているところに、十年以上も努力した結果を、毎日十二時間も勉強していない者に言われたんです。代わりが出来ると、これでも、理解が出来ませんか!」
クリコットはどんどん語尾が強くなり、エマの喉がヒュっと鳴り、そのまま固まってしまった。
「あなたの言葉は妃殿下を切り裂いたのです。あなたにとっては何も考えずに使った言葉でしょう」
「でもそんなつもりで言ったのではなく」
「まだ認めませんか?あなたの言葉は無自覚だろうが、そんなつもりはなかろうが、妃殿下の努力を、簡単に成り代われるものにしたのですよ!蔑んだのです!」
「そんなことは」
「長きに渡る王家の歴史、外交、法律、語学、各国のマナー、所作、ダンス、それに加えて学園での授業に、翻訳作業、通訳。記憶の力のいい妃殿下でも、習わなくては出来ません。十年以上、積み上げたものを出来ると言ったのです!」
「っあ…申し訳ございません」
馬鹿にする気も、出来ると言ったわけでもなかったが、否定はしなかった。代わりが出来るのだと言われて、嬉しくなってしまった。でもそういった人たちは、しばらくすると一切話し掛けて来なくなった。
「妃殿下を怪我をさせたのは、あなたが不正を見付けたジュロス伯爵家のサマン・ジュロスです」
「本当ですか!」「そんな…」
両親も驚き、何てことをと苦しい表情を浮かべ、クリコットも殿下から聞いた際に、驚いた。ジュロス伯爵家はエマが王太子妃になるかもしれないと匂わせていたために、そのような暴挙に出たのだ。
そう、リール殿下とエマ・ネイリーのせいで、怪我をすることになったのだ。
殿下は拗ねて領地に籠ったのだと言っていた、怪我をさせられたなど露程も考えず、妃殿下のためでもあったなどとの賜ったのだ。
「事実です。意図したわけではなくとも、間接的に怪我もさせています」
「そんなこと…知らなかった…」
「今日も妃殿下が相手をするとおっしゃられました、でも私が代わっていただいたのです」
エマ・ネイリーが逃げ出して、情報が集められた後、妃殿下にも念のためエマ・ネイリーが、また現れるかもしれないと報告を行った。
「彼女だけは公にしてしまいましたから、私が対応します」
「妃殿下のお手を煩わせるなら、私に任せていただけませんでしょうか」
「そう…では何かあれば呼んでください」
「承知しました。恐れながら、一つだけ伺ってもいいですか」
「ええ、何かしら?」
「エマ・ネイリーが一番、憎かったのでしょうか」
報復がなければ、他の者はもしかしたら、このまま何もなかったかのように生きていたかもしれない。
「少し違うわね。ご存知の通り、色々と言われて来たけど、一番傷付いたの。"あなたの代わりをしていたのです"という言葉に。これだけ努力しても、代わりが簡単にいるんだと思ったら、もういいかと思ったの」
「さようでしたか…お答えいただき、ありがとうございました」
妃殿下は自身に成り代われる者がいないこと認めることはなく、だからこそ努力を続けており、幼い頃から、それ以外に価値がないと思っているのだろう。
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