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番外編1
エマ・ネイリー22
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「あなたとの結婚を受け入れようと思って、ここまで来たんです」
セイルはおそらくエマ・ネイリーが私と結婚すると思っていることを伝えられて、意味が分からなかった。別の修道女に勘違いされたことはあったが、まさか私が相手だとは思わなかった。
立ち話を数分したことがあるだけの関係である。
しかも私が王都に異動になって、何度か東の騎士団にやって来たが、異動になったからここにはいないとだけ伝えられたはずだ。
だが、その後、修道院からいなくなり、こちらに向かっているのかもしれないと聞き、半信半疑ではあったが、本当にやって来た。初めて女性を気持ち悪いと感じた。
トアストからは何を言っても理解出来ない、だから淡々と間違っていることは否定したらいいと言われていたが、自惚れではなく、本当に自分を想っている、というよりはエマが想われていると思い込んでいるのだと感じた。
もはや心の底から気持ちが悪い。
トアストが良い様に言って、変な女と形容したことを実感した。
「なぜそのような話になるのか聞きたいところですが、私は既に結婚しています」
出まかせの嘘ではない、長年付き合ってきた恋人と王都に異動になったタイミングで結婚をした。
「っえ、どうして…」
「どうして?それは私が聞きたいです。なぜ、私があなたと結婚することになるんですか?」
「だって、えっ、私を想ってくれていたでしょう?私がなかなか応えなかったから?だから結婚してしまったの?」
どうしてそんな話になるのか理解出来ない。
自己紹介をエマの方からされたので、私も自己紹介はしたが、その他は今日は晴天ですね、暑くなってきましたねくらいの会話しかしていない。
「あなたと出会う前から私には愛する恋人がおりました」
「そんなことは一言も…」
「なぜそのような私的なことを話すのですか?私があなたを好きだと言いましたか?結婚したいと言いましたか?」
「男性は照れてなかなか言わないじゃないですか、だから私はここまで来て、応えてあげようと思ったのです」
まるで経験豊富な物言いだが、エマは好きだと言われたこともなければ、デートもダンスにも誘われたことすらない。
「男性を一括りにしないでいただきたい。あなたの周りの男性はそうだったのかもしれませんが、私は妻にはきちんと言葉で伝えています」
「妻…」
「愛しているならば伝えるでしょう?違いますか?そうではないのに、あなたの勝手な解釈で、押し付けられては困ります」
セイルは豪快で穏やかな性格で、妻にはきちんと感謝や愛情を伝える質である。
「しかも、あなたは傷付けられたと言ったのも嘘だったそうですね」
「それは嘘ではありません」
「あなたは傷付けた側だ、しかも自覚がないから質が悪い」
「私は誰も傷付けてなどいません!本当です」
トアストとグレーナはどの口が言っているんだという怒りを、拳を握ることで何とか堪えた。
「君は不正を見付けた件に関わっていたと聞きました」
「ええ、そうです」
エマは誇らしげに強く答えたが、セイルにとっては不快でしかなかった。
「その際にこの国の女性の中で二番目の地位におられる、優秀な王太子殿下の代わりをしていたと、口にしたそうですね?」
「成り代われると思って言ったわけではありません」
「でも周りには妃殿下の代わりが出来る存在だと、触れ回ったそうですね。それでも傷付けたとは思っていないんですよね?妃殿下の誇りを、これまでの努力を」
「傷付けてなどいません、凄いと思っています」
セイルはもしかしたら今なら理解出来るのではないかと思って口にしたが、やはり無理だったと悟った。
「本当に理解出来ないのですね」
「え?」
酷く疲れたセイルが溜息を付くと、ある人物が入って来た。
「そこまです!」
セイルはおそらくエマ・ネイリーが私と結婚すると思っていることを伝えられて、意味が分からなかった。別の修道女に勘違いされたことはあったが、まさか私が相手だとは思わなかった。
立ち話を数分したことがあるだけの関係である。
しかも私が王都に異動になって、何度か東の騎士団にやって来たが、異動になったからここにはいないとだけ伝えられたはずだ。
だが、その後、修道院からいなくなり、こちらに向かっているのかもしれないと聞き、半信半疑ではあったが、本当にやって来た。初めて女性を気持ち悪いと感じた。
トアストからは何を言っても理解出来ない、だから淡々と間違っていることは否定したらいいと言われていたが、自惚れではなく、本当に自分を想っている、というよりはエマが想われていると思い込んでいるのだと感じた。
もはや心の底から気持ちが悪い。
トアストが良い様に言って、変な女と形容したことを実感した。
「なぜそのような話になるのか聞きたいところですが、私は既に結婚しています」
出まかせの嘘ではない、長年付き合ってきた恋人と王都に異動になったタイミングで結婚をした。
「っえ、どうして…」
「どうして?それは私が聞きたいです。なぜ、私があなたと結婚することになるんですか?」
「だって、えっ、私を想ってくれていたでしょう?私がなかなか応えなかったから?だから結婚してしまったの?」
どうしてそんな話になるのか理解出来ない。
自己紹介をエマの方からされたので、私も自己紹介はしたが、その他は今日は晴天ですね、暑くなってきましたねくらいの会話しかしていない。
「あなたと出会う前から私には愛する恋人がおりました」
「そんなことは一言も…」
「なぜそのような私的なことを話すのですか?私があなたを好きだと言いましたか?結婚したいと言いましたか?」
「男性は照れてなかなか言わないじゃないですか、だから私はここまで来て、応えてあげようと思ったのです」
まるで経験豊富な物言いだが、エマは好きだと言われたこともなければ、デートもダンスにも誘われたことすらない。
「男性を一括りにしないでいただきたい。あなたの周りの男性はそうだったのかもしれませんが、私は妻にはきちんと言葉で伝えています」
「妻…」
「愛しているならば伝えるでしょう?違いますか?そうではないのに、あなたの勝手な解釈で、押し付けられては困ります」
セイルは豪快で穏やかな性格で、妻にはきちんと感謝や愛情を伝える質である。
「しかも、あなたは傷付けられたと言ったのも嘘だったそうですね」
「それは嘘ではありません」
「あなたは傷付けた側だ、しかも自覚がないから質が悪い」
「私は誰も傷付けてなどいません!本当です」
トアストとグレーナはどの口が言っているんだという怒りを、拳を握ることで何とか堪えた。
「君は不正を見付けた件に関わっていたと聞きました」
「ええ、そうです」
エマは誇らしげに強く答えたが、セイルにとっては不快でしかなかった。
「その際にこの国の女性の中で二番目の地位におられる、優秀な王太子殿下の代わりをしていたと、口にしたそうですね?」
「成り代われると思って言ったわけではありません」
「でも周りには妃殿下の代わりが出来る存在だと、触れ回ったそうですね。それでも傷付けたとは思っていないんですよね?妃殿下の誇りを、これまでの努力を」
「傷付けてなどいません、凄いと思っています」
セイルはもしかしたら今なら理解出来るのではないかと思って口にしたが、やはり無理だったと悟った。
「本当に理解出来ないのですね」
「え?」
酷く疲れたセイルが溜息を付くと、ある人物が入って来た。
「そこまです!」
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