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番外編1

エマ・ネイリー13

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 エマは今まで優しくしてくれた男性はおらず、だがセイルは目が合えば会釈し、話し掛ければ優しく答えてくれる。他の騎士も向こうから声を掛けてくれることもあるが、仕事という感じで、セイルとは明らかに違う。

 しかも、他の騎士たちの目線は、背が伸びてから覚えのある目線だ。「大女」「男女」と、背の低い男の子に限って言い、悔しいのだろうとは思うが、私だって大きくなりたかったわけじゃない。

 月に二回しか外出が出来ない上に、王都に行っているセイルに会うことはない。

「はあ」

 溜息が増えてしまい、外出しても騎士はいるが、セイルではない。もう三ヶ月以上会うことは出来ていなかった。同僚の騎士に聞いてみるのは、私の方が好意があるようで、何だか嫌だった。

「エマさん、そろそろここの暮らしにも慣れたかしら?」
「はい…」

 ソフィアは社交的で、エマがいれば、声を掛けてくれる存在となっていた。掃除、洗濯、食事など、担当があるため、エマも率先してはやらないが、傲慢な性格ではないため、従うことはしていたので、嫌われることはなかった。

「それは良かったわ」
「ソフィアさんはずっとここで暮らすつもりなのですか」
「うーん、どうかしら。それもいいわよね。ここは男性と会う機会も少ないし、嫌な女性もいないし、安心出来るのよね。家族は領地で一緒に暮らそうって言ってくれるのだけど、しばらくはここで暮らすつもりよ。エマさんは?」

 ソフィアの家族は遠くから、わざわざ面会にやって来ており、手紙のやり取りも頻繁に行っている。エマはというと、両親からちゃんとやっているかと手紙は届くが、返事は書いていない。

「私は結婚するのもいいかなって思っているんです」
「そうなの?」
「ええ、人並みの結婚に興味はなかったんですけど、それもいいかと思っています」
「そうなのね、いい相手を選ばないと駄目よ?でないと、私みたいになっちゃうわって、反応し辛いことを言ってごめんなさい。でも幸せな結婚も沢山ありますからね。色々あっても幸せに暮らせる人もいるし、それぞれの形があると思うわ。もう縁談があったりするのかしら?」

 もしかしたら、心が落ち着くまでここに入って、嫁ぐような話があるのかもしれないと思った。東の修道院ではよくある話である。

「ああ…まだ分からないですけど、好意を持ってくださっているようで…」
「まあ!それに応えようと思っているってこと?」
「そ、そうですね」
「どんな方なの?」
「優しい方です。気遣ってくださって、修道院に入っていることも理解してくれて」
「もしかしてだけど、私がお節介をしてしまった方かしら?」
「あっ、でも内緒にしてくださいね」
「ええ、勿論よ。誰にも言わないわ」

 昔のソフィアは友人たちの恋の話を聞くのがとても好きだった。修道院ではなかなかないが、久しぶりに心がウキウキした。

 ソフィアは見たことがないが、あの彼と気持ちが通じたのか、エマの事情は知らないが、この修道院にいるということは罪を犯しているわけではないだろうから、騎士との結婚は良きことなのではないかと思った。

「会ったりしているの?」
「それが最近、なかなか会えなくて」
「そうなの…修道院だと約束をするっていうのは難しいものね」

 修道院で手紙のやり取りをするのは、送り、送って来る相手も、決められた人としか出来ない。傷付けられた相手から、手紙が届いたりするのを防ぐためである。

「はい…」
「エマさんの事情は分からないから、安易なことは言えないけど、結婚が出来るならしてしまったら?そうしたらずっと一緒にいれるわよ?」
「でもそれはプロポーズされないとダメですよね?」
「そうか…家の縁談でなかったら、そうなるのよね」

 ソフィアは元夫とは家同士の縁組だったために、プロポーズをされたこともないが、当人同士の話ならプロポーズが必要だろう。子爵令嬢のエマと、騎士も貴族であれば、問題ないと思うが、もしかしたら平民なのかもしれない。

「平民なの?」
「いいえ、男爵家の方です」

 ならば、問題ないのではないだろうか、貴族社会でもありがちな縁組である。
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