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番外編1
エマ・ネイリー17
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「傷付けたとは思っていないということか?」
だから反省はおろか、自覚がないから、悪意を感じられなかったのか。
「そう、もしセイルが騎士団長になったとして、まだ経験の浅い騎士に、急に騎士団長の代わりをしていました!なんて言われたら、ふざけるなって思うだろう?」
「ああ、殴り飛ばしそうだ」
確かに些細な言葉ではあるが、置かれた状況や気持ち次第では、いい気分のする言葉ではない。
「妃殿下が何年も掛けて努力して来たことを、代わりが出来ると言ったのと同義。含みのない言葉だったとしても、冷遇されて、その後にそんな言葉を言われたら、俺がその場にいてもそう思うさ」
セイルは頷きながら、その通りだと思った。冷遇された後にそのように言われて、ありがとうとはならないだろう。私はあなたが何年も掛けて努力したことの代わりが、簡単に出来ると受け取ることすら出来る。
「妃殿下はそこで何かが切れたのだろうな、エマ・ネイリーは私より優秀で、素晴らしい女性だそうだと、婚約解消を狙って、周りにも吹聴したそうだ」
「そ、そんなことがあったのか?」
王都を離れていたので、そんなことまでは一切知らなかった。難なく、結婚されたのだと思っていた。
「だから、エマ・ネイリーはまともな貴族には敬遠される。当たり前だろう。妃殿下の能力が分からないのならいいが、優秀だと知っている者の方が多いのに、その妃殿下より優秀だと言ったようなものだ。いい仕返しをされてらっしゃる」
「そんなに話して大丈夫なのか」
「ああ、この辺りは知っている者も多い。あの女が男装の麗人と呼ばれていたのは知っているか?劇かなんかで騎士の恰好をして、一時そう呼ばれていたそうだ」
「確かに背は高く、肩幅も広く、口にはしなかったが、騎士になればいいと思ったくらいだ」
初めての時は背の高い女性だと思ったが、二度目に会った際に、騎士になれば生かせそうな体格だなと思った。
「それもだよ、ある人によるとエマ・ネイリーはちぐはぐだそうだ。男装の麗人の恰好をして、振る舞いも中途半端ではあるが、そのように振舞う。だが女性は男性に守って貰うものだという信念を持っている」
「それがトアストが変なのと言った理由か?」
「変なのでも、十分いいように言ったつもりだ。女性騎士を馬鹿にしているだろう、絶対」
「確かにそうだな、女性騎士は貴重だというのに失礼だ」
女性騎士はなり手が少ないが、需要は非常に多い。だが体格などもどうしても考慮されるため、なりたくても悔しい思いをする者も多い。
トアストはワインをグイっと飲み干し、グイっとセイルに近付いた。
「いいか?最後に詳細は話せないが、事実だけを言う。エマ・ネイリーは殿下に好意を持たれていると思い込んでいる」
これは妃殿下から聞いた話ではあるが、重要なことであるため、伝えることにした。側妃になると押し掛けて来た際に、なぜあのように自信があるのかと、皆で憤慨していると妃殿下が言ったのだ。
「あの娘は殿下に今でも好意を持たれていると信じているからよ」
「好意を持っているの間違いではありませんか」
「いいえ、好意を持たれているから、応えてあげようという考えだと思うわ」
さすがに信じられなかったが、確かに次に来た際に、その考えだと思て見ていると、腑に落ちる部分が多かった。
「ゆえに妃殿下に無意識に見下し、何度か不敬を犯した、修道院に入る前に、王家の招待からも外されている」
側妃だの愛妾だの、側近だの、そんな話をするわけにはいかない。セイルがヒュっと息を吸いこむ音がした、無理もないことだ。
「……分かった。もう二度と関わらないと誓う」
「そうしてくれ」
二人はそのまま休み、次の日一緒に出勤し、セイルは帰る前にトアストに礼を言って、帰って行った。
だから反省はおろか、自覚がないから、悪意を感じられなかったのか。
「そう、もしセイルが騎士団長になったとして、まだ経験の浅い騎士に、急に騎士団長の代わりをしていました!なんて言われたら、ふざけるなって思うだろう?」
「ああ、殴り飛ばしそうだ」
確かに些細な言葉ではあるが、置かれた状況や気持ち次第では、いい気分のする言葉ではない。
「妃殿下が何年も掛けて努力して来たことを、代わりが出来ると言ったのと同義。含みのない言葉だったとしても、冷遇されて、その後にそんな言葉を言われたら、俺がその場にいてもそう思うさ」
セイルは頷きながら、その通りだと思った。冷遇された後にそのように言われて、ありがとうとはならないだろう。私はあなたが何年も掛けて努力したことの代わりが、簡単に出来ると受け取ることすら出来る。
「妃殿下はそこで何かが切れたのだろうな、エマ・ネイリーは私より優秀で、素晴らしい女性だそうだと、婚約解消を狙って、周りにも吹聴したそうだ」
「そ、そんなことがあったのか?」
王都を離れていたので、そんなことまでは一切知らなかった。難なく、結婚されたのだと思っていた。
「だから、エマ・ネイリーはまともな貴族には敬遠される。当たり前だろう。妃殿下の能力が分からないのならいいが、優秀だと知っている者の方が多いのに、その妃殿下より優秀だと言ったようなものだ。いい仕返しをされてらっしゃる」
「そんなに話して大丈夫なのか」
「ああ、この辺りは知っている者も多い。あの女が男装の麗人と呼ばれていたのは知っているか?劇かなんかで騎士の恰好をして、一時そう呼ばれていたそうだ」
「確かに背は高く、肩幅も広く、口にはしなかったが、騎士になればいいと思ったくらいだ」
初めての時は背の高い女性だと思ったが、二度目に会った際に、騎士になれば生かせそうな体格だなと思った。
「それもだよ、ある人によるとエマ・ネイリーはちぐはぐだそうだ。男装の麗人の恰好をして、振る舞いも中途半端ではあるが、そのように振舞う。だが女性は男性に守って貰うものだという信念を持っている」
「それがトアストが変なのと言った理由か?」
「変なのでも、十分いいように言ったつもりだ。女性騎士を馬鹿にしているだろう、絶対」
「確かにそうだな、女性騎士は貴重だというのに失礼だ」
女性騎士はなり手が少ないが、需要は非常に多い。だが体格などもどうしても考慮されるため、なりたくても悔しい思いをする者も多い。
トアストはワインをグイっと飲み干し、グイっとセイルに近付いた。
「いいか?最後に詳細は話せないが、事実だけを言う。エマ・ネイリーは殿下に好意を持たれていると思い込んでいる」
これは妃殿下から聞いた話ではあるが、重要なことであるため、伝えることにした。側妃になると押し掛けて来た際に、なぜあのように自信があるのかと、皆で憤慨していると妃殿下が言ったのだ。
「あの娘は殿下に今でも好意を持たれていると信じているからよ」
「好意を持っているの間違いではありませんか」
「いいえ、好意を持たれているから、応えてあげようという考えだと思うわ」
さすがに信じられなかったが、確かに次に来た際に、その考えだと思て見ていると、腑に落ちる部分が多かった。
「ゆえに妃殿下に無意識に見下し、何度か不敬を犯した、修道院に入る前に、王家の招待からも外されている」
側妃だの愛妾だの、側近だの、そんな話をするわけにはいかない。セイルがヒュっと息を吸いこむ音がした、無理もないことだ。
「……分かった。もう二度と関わらないと誓う」
「そうしてくれ」
二人はそのまま休み、次の日一緒に出勤し、セイルは帰る前にトアストに礼を言って、帰って行った。
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