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番外編1
エマ・ネイリー9
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「エマさん、外で男性と会ってる?」
洗濯をしていたエマに、聞いて来たのはソフィアだった。
「えっ、どうして」
エマは何だか悪いことをしているようで、ドキッとし、免疫のないエマは真っ赤になってしまった。ソフィアはその反応に、もう一度忠告して置こうと思った。
「狭い町だし、修道院も皆訳ありだから、詮索はしないけど、仲間意識もあるから、耳にするのよ。勿論、心配してよ」
「…見られていたの?」
疚しいことはないが、一人で買い物に出たはずなのに、誰かに見られているなんて思わなかった。
「何人か見たって聞いて。恋人なの?」
「恋人?そんな、違うわ。たまたま会ったら話をするくらいです」
「そうなの?じゃあ、お節介だったわね、ごめんなさい」
ソフィアは赤くなったのは、片思いか、聞かれて恥ずかしくなったのだろうと、詮索しないと言ったのに、詮索したようで、申し訳ない気持ちになった。
恋をすることは咎めることではない、他の修道女も素敵な騎士とお近づきになりたいではなく、見るだけで嬉しい気持ちになるという人だっている。
だが、エマがどうなのかは分からなかった。表情は元からなのか乏しく、男性に媚びるようにも見えない。
ソフィアがエマのことで、知っているのは現王太子夫妻に横恋慕したのかと思われたが、不正を暴くために殿下の側にいただけで、エマはただの協力者で、何の関係もなかったということ。結局、婚約は続行されて、結婚されている。
だが、妃殿下がこの件を知らされていなかったことで、一時王太子夫妻が不仲が深刻であったこと。その理由がエマのせいだとされていたので、とばっちりではないかと思っていたが、どこまで事実なのかは分からない。
「恋人を作る人もいるそうだから、てっきり」
「恋人を?」
「こっそりってことみたいだけど…でも違うなら、ごめんなさいね」
「いいえ」
「でも変な人だったらすぐ逃げてね」
「分かりました、ありがとうございます」
セイルさんは変な人でもおかしな人でも、勿論悪い人でもない。
一度、送ろうかと声を掛けられて、仕方なく修道院にいることを話したが、嫌な顔一つせずにそうかと言ってくれた。
問題があると思われたくなかったが、私は理由を誰にも話していない。何と話せばいいか分からない。
「もしかして、誰かに傷付けられたのかい?」
「…えっと」
セイルは東の修道院は傷付けられた人も多いと聞いている。男性に傷付けられて、男性恐怖症という人もいるため、ヒースのような者は要注意なのだが、女性に声を掛けるはマナーですからなどと言い出し、困ったものである。
「いや、すまない。踏み込み過ぎてしまったね。言い難いことは言わなくていい」
「いえ、実はそうなんです」
私は傷付けられたのだと悟った。殿下から好意を持たれて、嬉しくなって執着してしまったけど、婚約解消はおろか、何もしてくれはしなかった。
「そうだったのか…それは辛いことだったね。それでここへ?」
「ええ」
「そうか、ならば傷を癒せるといいね」
「はい…」
セイルさんが私を見る目はとても優しい。男性にあんな目で見られるのは初めての経験だった。殿下は褒めてはくれるが、常に緊張感があった。キスをされた時は驚いたが、好意を持たれているのだと心から実感できた。
またして欲しいと思ったが、あの一度きりだった。
サリー様がいるから、諦めるしかないと思っていた。それなのに、サリー様は自棄になって、私に結婚して欲しいなどと言い、私も結婚して欲しいと言われれば、受けてもいいと思っていたが、殿下はサリー様を手放す気はないようで、なぜなのかと思っていたが、殿下に必要だったのはサリー様の能力だったことは後から分かった。
当時の何も知らない私は、それでも王太子妃になれるのではないかと思っていた。
洗濯をしていたエマに、聞いて来たのはソフィアだった。
「えっ、どうして」
エマは何だか悪いことをしているようで、ドキッとし、免疫のないエマは真っ赤になってしまった。ソフィアはその反応に、もう一度忠告して置こうと思った。
「狭い町だし、修道院も皆訳ありだから、詮索はしないけど、仲間意識もあるから、耳にするのよ。勿論、心配してよ」
「…見られていたの?」
疚しいことはないが、一人で買い物に出たはずなのに、誰かに見られているなんて思わなかった。
「何人か見たって聞いて。恋人なの?」
「恋人?そんな、違うわ。たまたま会ったら話をするくらいです」
「そうなの?じゃあ、お節介だったわね、ごめんなさい」
ソフィアは赤くなったのは、片思いか、聞かれて恥ずかしくなったのだろうと、詮索しないと言ったのに、詮索したようで、申し訳ない気持ちになった。
恋をすることは咎めることではない、他の修道女も素敵な騎士とお近づきになりたいではなく、見るだけで嬉しい気持ちになるという人だっている。
だが、エマがどうなのかは分からなかった。表情は元からなのか乏しく、男性に媚びるようにも見えない。
ソフィアがエマのことで、知っているのは現王太子夫妻に横恋慕したのかと思われたが、不正を暴くために殿下の側にいただけで、エマはただの協力者で、何の関係もなかったということ。結局、婚約は続行されて、結婚されている。
だが、妃殿下がこの件を知らされていなかったことで、一時王太子夫妻が不仲が深刻であったこと。その理由がエマのせいだとされていたので、とばっちりではないかと思っていたが、どこまで事実なのかは分からない。
「恋人を作る人もいるそうだから、てっきり」
「恋人を?」
「こっそりってことみたいだけど…でも違うなら、ごめんなさいね」
「いいえ」
「でも変な人だったらすぐ逃げてね」
「分かりました、ありがとうございます」
セイルさんは変な人でもおかしな人でも、勿論悪い人でもない。
一度、送ろうかと声を掛けられて、仕方なく修道院にいることを話したが、嫌な顔一つせずにそうかと言ってくれた。
問題があると思われたくなかったが、私は理由を誰にも話していない。何と話せばいいか分からない。
「もしかして、誰かに傷付けられたのかい?」
「…えっと」
セイルは東の修道院は傷付けられた人も多いと聞いている。男性に傷付けられて、男性恐怖症という人もいるため、ヒースのような者は要注意なのだが、女性に声を掛けるはマナーですからなどと言い出し、困ったものである。
「いや、すまない。踏み込み過ぎてしまったね。言い難いことは言わなくていい」
「いえ、実はそうなんです」
私は傷付けられたのだと悟った。殿下から好意を持たれて、嬉しくなって執着してしまったけど、婚約解消はおろか、何もしてくれはしなかった。
「そうだったのか…それは辛いことだったね。それでここへ?」
「ええ」
「そうか、ならば傷を癒せるといいね」
「はい…」
セイルさんが私を見る目はとても優しい。男性にあんな目で見られるのは初めての経験だった。殿下は褒めてはくれるが、常に緊張感があった。キスをされた時は驚いたが、好意を持たれているのだと心から実感できた。
またして欲しいと思ったが、あの一度きりだった。
サリー様がいるから、諦めるしかないと思っていた。それなのに、サリー様は自棄になって、私に結婚して欲しいなどと言い、私も結婚して欲しいと言われれば、受けてもいいと思っていたが、殿下はサリー様を手放す気はないようで、なぜなのかと思っていたが、殿下に必要だったのはサリー様の能力だったことは後から分かった。
当時の何も知らない私は、それでも王太子妃になれるのではないかと思っていた。
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