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番外編1
エマ・ネイリー8
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エマはこれまで年の近い仲のいい男性もいなければ、親しいクラスメイトもおらず、親戚も年の離れた者ばかりで、年の近い男性と話す機会もなかった。
勿論、男性に誘われた経験も一度もない。殿下と過ごして一度だけキスされたことと、縁談で二人の男性に会ったことくらいである。初心と言えば聞こえはいいが、好意を持たれたことがないだけである。
気を付けようにもどうしたらいいか分からない、エマの知識は本で読んだことくらい。それも本を読む習慣があったわけではないので、子どもの頃に読んだ本と、たまたま見掛けた恋愛の記事程度だった。
東の修道院は比較的、寛容な修道院である。時間は決まっているが二週間に一度外出することも出来る。他の修道院とは違って自由が多い分、自己責任が基本である。修道院内の揉め事には対応するが、外に出ての揉め事は対応しないとしている。
逃げ出すような者はこの修道院に入れない。万が一、入ったとしても、事件や事故ではなく、逃げ出した場合は探すことはなく、保護者へ帰って来ないと連絡がされて、終わりである。保護者も理解した上で入れているので、逃げたければ逃げればいいという思いで、入れる人もいる。
ゆえに、修道院内にいれば身の安全が保障されるため、身体や心に傷がある者、自身の境遇から逃げ出した者などに、東の修道院は活用されている。
お金も多くではないが、保護者より修道院に預けられており、エマは町に買い物に行くと、一人の騎士とぶつかった。
「ごめんなさい」
「いえ、こちらこそ」
その日はそれだけで終わったが、次の次の外出、つまり一ヶ月後に、また騎士にぶつかることになった。
「ごめんなさい」
「っあ、大丈夫です」
「多分、前もぶつかりましたよね、申し訳ありません」
「あの時の?偶然ですね」
「こんな偶然で申し訳ないです。せっかちなので、よく人にぶつかるんです。お買い物ですか?」
「はい、タオルが欲しくて」
「じゃあ、お詫びに案内します」
人懐っこい笑顔の青年で、背は少し高いが、エマとあまり変わらないくらいであった。ありがとうございますと付いて行っていると、後ろから名を呼ぶ声がして、青年は振り返って渋い顔をした。
「ヒース!ナンパは止めろって言っただろう、お嬢さん大丈夫だったかい?」
「ナンパじゃないよ、お詫びだって」
「店を案内して貰っただけですから」
「それなら良かった。ほら、帰るぞ!お嬢さんもお気を付けて」
ヒースは男性に連れて行かれて、エマはあれはナンパというものだったのかと、恥ずかしい気持ちになったが、悪い気はしなかった。治安の悪い場所ではないが、危機感のないエマは、それから少し買い物に出るのが楽しみになった。
それからまたヒースに会うこともあった。そしてヒースを注意した方にも再び出会った。気付くとエマは話し掛けに駆けており、なぜ覚えていたかというと、殿下と同じくらいの背丈で、殿下と同じ黒髪だったからである。
「以前は気を使っていただきありがとうございました」
「?」
「ヒースさんという方に店を案内してもらっていた」
「ああ、あの時の」
「はい」
「ヒースは悪い奴ではないのですが、女性関係だけは褒められたものではなくて、釘を刺さなくてはならないのですよ」
「いえ、ナンパだと気付きもしませんでした」
彼ははっはっはと笑い、エマは嬉しい気持ちになった。
「それは、ヒースは悲しむでしょうけど、いい薬になるでしょう。ヒースはいい方ですが、悪い男もいないとは限りませんから、変なところにはついて行かないようにしてくださいね」
「まあ、そうなんですか。気を付けます」
そんな形で、会えば話をする間柄になっていった。彼はセイル・サノーと言い、男爵家の次男で、騎士団におり、現在はこの辺りに派遣されており、巡回中に会ったりすることもあった。
勿論、男性に誘われた経験も一度もない。殿下と過ごして一度だけキスされたことと、縁談で二人の男性に会ったことくらいである。初心と言えば聞こえはいいが、好意を持たれたことがないだけである。
気を付けようにもどうしたらいいか分からない、エマの知識は本で読んだことくらい。それも本を読む習慣があったわけではないので、子どもの頃に読んだ本と、たまたま見掛けた恋愛の記事程度だった。
東の修道院は比較的、寛容な修道院である。時間は決まっているが二週間に一度外出することも出来る。他の修道院とは違って自由が多い分、自己責任が基本である。修道院内の揉め事には対応するが、外に出ての揉め事は対応しないとしている。
逃げ出すような者はこの修道院に入れない。万が一、入ったとしても、事件や事故ではなく、逃げ出した場合は探すことはなく、保護者へ帰って来ないと連絡がされて、終わりである。保護者も理解した上で入れているので、逃げたければ逃げればいいという思いで、入れる人もいる。
ゆえに、修道院内にいれば身の安全が保障されるため、身体や心に傷がある者、自身の境遇から逃げ出した者などに、東の修道院は活用されている。
お金も多くではないが、保護者より修道院に預けられており、エマは町に買い物に行くと、一人の騎士とぶつかった。
「ごめんなさい」
「いえ、こちらこそ」
その日はそれだけで終わったが、次の次の外出、つまり一ヶ月後に、また騎士にぶつかることになった。
「ごめんなさい」
「っあ、大丈夫です」
「多分、前もぶつかりましたよね、申し訳ありません」
「あの時の?偶然ですね」
「こんな偶然で申し訳ないです。せっかちなので、よく人にぶつかるんです。お買い物ですか?」
「はい、タオルが欲しくて」
「じゃあ、お詫びに案内します」
人懐っこい笑顔の青年で、背は少し高いが、エマとあまり変わらないくらいであった。ありがとうございますと付いて行っていると、後ろから名を呼ぶ声がして、青年は振り返って渋い顔をした。
「ヒース!ナンパは止めろって言っただろう、お嬢さん大丈夫だったかい?」
「ナンパじゃないよ、お詫びだって」
「店を案内して貰っただけですから」
「それなら良かった。ほら、帰るぞ!お嬢さんもお気を付けて」
ヒースは男性に連れて行かれて、エマはあれはナンパというものだったのかと、恥ずかしい気持ちになったが、悪い気はしなかった。治安の悪い場所ではないが、危機感のないエマは、それから少し買い物に出るのが楽しみになった。
それからまたヒースに会うこともあった。そしてヒースを注意した方にも再び出会った。気付くとエマは話し掛けに駆けており、なぜ覚えていたかというと、殿下と同じくらいの背丈で、殿下と同じ黒髪だったからである。
「以前は気を使っていただきありがとうございました」
「?」
「ヒースさんという方に店を案内してもらっていた」
「ああ、あの時の」
「はい」
「ヒースは悪い奴ではないのですが、女性関係だけは褒められたものではなくて、釘を刺さなくてはならないのですよ」
「いえ、ナンパだと気付きもしませんでした」
彼ははっはっはと笑い、エマは嬉しい気持ちになった。
「それは、ヒースは悲しむでしょうけど、いい薬になるでしょう。ヒースはいい方ですが、悪い男もいないとは限りませんから、変なところにはついて行かないようにしてくださいね」
「まあ、そうなんですか。気を付けます」
そんな形で、会えば話をする間柄になっていった。彼はセイル・サノーと言い、男爵家の次男で、騎士団におり、現在はこの辺りに派遣されており、巡回中に会ったりすることもあった。
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