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番外編1

ミサモエス・ラーダ27

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「あの時は嫌だと思っていたけど、どうせここにいても自由には外には出られないし、殿下の訪れを待つのもいいわ。すごくいい考えじゃない」
「愛妾になりたいのね?」

 愛妾などなれるはずはないが、こちらから打診することは出来ない。待ち続けるしかない、ミサモエスは来るはずもない打診を待ち続ければいい。

「ええ、どうすればいいの?立候補すればいいの?」
「いいえ、それは不敬になってしまうわ。愛妾は殿下の指名でしょうね。待ち続けるしかないの。でも、あなた求められる自信があるんでしょう?」
「勿論よ」

 自信だけは人一倍あるミサモエスは、こう言えば肯定することは分かっている。

「じゃあ、ここで待ちなさい。クオス伯爵家に打診があれば、すぐに知らせるわ」
「本当?」
「だって殿下からの指名であれば、誰も何も言えないわ。逆らうことなんて出来ないもの、そうでしょう?」
「ええ、そうよね。準備しておくことはあるかしら?」
「私には殿下の好みは分からないから、ミサモエスは知っているんじゃない?」
「そうね、私は知っているわ」
「じゃあ、大人しくここで待つことね。愛妾も品格を求められるだろうから、指名されても犯罪、不敬、不貞、不貞を疑われる行動、散財、借金、我儘、嫌がらせ、そんなことをしていたら、取り消されてしまうかもしれないわ」

 それこそ他の者に言えば不敬になる、絶対に話させないようにし、散財もさせないようにしなくてはならない。

「そんなことしないわ」
「邸以外では言っては駄目よ」
「どうして?」
「そんな重大なことを言ったら、何も知らない周りの人が不敬だと思って、あなたを罰するかもしれないわ。だから黙って待たなくちゃ、あなたなら出来るわよね?」
「ええ、当たり前じゃない」

 両親に話すと、そんなことはあり得ないと言ったが、ミサモエスが決めたことだから、上手く使えばいい、他の人に話しては駄目だと忠告し、外にも今まで通り一人で出さなければ他の人の耳には入らないと説明すると、母は分かったと納得した。

 父は納得していないようだったが、ミサモエスが我儘を言えば、殿下の名前は出さずに『愛妾になれないぞ』と言えば大人しく引き下がるようになった。

 打診はまだかと聞かれても、まだ届いていない、もうそろそろかもしれないなと言えば、嬉しそうに去って行く。いつかもう待てないと言い出すだろうが、言い出すまでは邸の皆にも周知させた。

 用心深く見守っていたが、ミサモエスは待てないと言い出すこともなく、四十歳を迎えていた。

 そしてサリー王太子妃が亡くなった。皆、姿を見ることはあっても、話すことは勿論、一度も謝罪も出来ないまま、永遠の別れとなった。

 ミサモエスはついに我に返るか、王太子妃になれると言い出すかと思ったが、王太子妃にはなれないことは理解しているようで、いよいよ愛妾として呼ばれるだろうと言い出すようになった。

 だが、父が亡くなり、母も具合を悪くし始めても、五十歳になっても、ミサモエスは待ち続けていた。

 母が亡くなればどうするかということになったが、使用人がこのまま私たちの方が扱いに慣れているから、面倒を看ると言い、月に一度は打診はなかったと訪れてくださればいいと言い、任せることになった。

 母が亡くなり、しばらくは使用人に任せていたが、ソースルは月の半分を領地で過ごすようになり、当主としてミサモエスを監視した。

 そしてソースルが王都にいる間に、風邪を引いていたミサモエスは肺炎を起こし、ソースルが着く頃には息を引き取っていた。あまりにあっさりとした死に様であった。使用人によると、最期の時まで手紙が来ていないかと聞いていたそうだ。

「ここまで効果が続くと思わなかった…」

 葬儀にやって来たユアラノンはそう言った。

「私たちはあの子の間違いを正そうとし、理解しようとしたけど、諦めて理解なんかせずに、転がし続ければ良かったのね」
「本当だな…」
「ある意味、真っ直ぐだったというべきかしら」

 ミサモエスは最後まで変わらないまま亡くなり、きょうだいもホッとしたというよりは、やり切った感覚がないまま、終わったような気持ちになった。


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お読みいただきありがとうございます。

これにてミサモエス編、終了です。
異常に長くなって申し訳ありません。私もビックリです。
次は男装もどきことエマ・ネイリーを書いていきます。

よろしくお願いいたします。
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