【完結】愛とは呼ばせない

番外編１

ミサモエス・ラーダ２５

　ソースルとマリスアルは参加者と話をする振りをしながら、ミサモエスの評価について聞いて回った。自分たちはどうしても色眼鏡で見てしまうと思っていたが、皆同じ意見だった。

「マナーはどうした？皆、本当に更生施設に入ったのかと言っていたぞ」
「それは…でも、あの方、男爵家に嫁いだって方、同じ更生施設にいたの！」
「だから？」
「私も嫁げると思うの」

　母から今でも結婚が出来ると思っていると聞いていたが、本当に出来ると思っていることに呆れるしかなかった。

「貴族と平民は結婚出来ないわ」
「え？」
「あなたまさか除籍されたことも憶えていないの？」
「でも更生施設に入ったじゃない！」
「除籍して入ったの。説明したじゃない」
「だから戻って来たのだから、戻すべきでしょう！」
「戻すことはない」

　ソースルが強く言い切り、いくらいい縁談が来ようが、クオス伯爵家にミサモエスを戻すことはない。決定権はソースルにあることをミサモエスは分かっていない。

「どうして！」
「お前は反省したのではないのか？反省したと言っているだけなのか？」
「そうじゃないけど、一生反省していろって言うの！」
「「そうだ（よ）」」
「騙したのね！」

　結局、思った通りの台詞を聞くことになるとはと、ソースルとマリスアルは落胆した。あの時、言っていれば、父も納得した上で、修道院に行かせられたのだ。自分たちの甘さを呪うしかなかった。

「騙したのはお前だろう、結局何も変わっていなかったんだな」
「もう二度とここへ呼ぶことはないわ、今日も侯爵夫人に粗相をしたそうね？もう帰って、大人しくしていなさい」
「別にいいわ！お父様に頼むから」

　ミサモエスは領地に帰したが、現実を見せることが出来たとは思えなかった。

「もう追い出してもいいんじゃない？」
「だが、迷惑を掛けるようなことになれば…」
「お父様が助けを求められたら、助けるでしょうしね。でも本当に追い出してしまいたい…」
「ああ、ずっと思っている」

　ユアラノンと母ともやり取りをしながら、とてもじゃないが結婚させるわけにはいかないことは確かだった。ユアラノンは考えがあると言い、ミサモエスに会いに行くことにした。

「結婚したいと言い出したそうね」
「当たり前じゃない、女性は結婚すべきでしょう。それなのに皆、おかしいの。お父様も平民で申し込んで来る人がいるかどうかって」

　ミサモエスは帰ってから父に泣きついたようだが、さすがに平民になっていることを分かっておらず、結婚相手が貴族でないことも理解していないことに驚いたそうで、どうにもならないと、助けになってはくれなかったそうだ。

「あなた忘れたの？王家の招待から外されているのよ？貴族にはもう戻れないわ。養女にする家も、娶る家もないわ」
「…え、でも、昔のことじゃない」
「現在もよ、そんな相手誰が娶りたいなんて言うのよ」
「でも、言わなければ分からないわ」
「また同じことを言うのね、それは犯罪よ、詐欺に当たるわ。修道院に行く？」
「修道院なんて嫌よ、私は結婚が出来ればいいの…ユア姉様も幸せになって欲しいでしょう？」
「あなたいくつよ？訳ありの元貴族の平民と、若い貴族の令嬢、どちらを選ぶかなんて明白でしょう？」
「可愛ければ、年なんて関係ないわ」

　まだ自身をを可愛いと思えるのか、もはや誰が何を言っても理解できない、呪いに掛かっているのではないかとすら思う。

「あなたガーデンパーティーの際にいらした男爵家に嫁いだ方が自分と同じだと思っているでしょう？だから自分も結婚出来ると期待を膨らませたのでしょう？」
「期待じゃないわ、出来るの！あの方も同じ場所にいたのよ？私と同じでしょう？」
「どこがよ…あの方は可愛らしいし、あなたよりも十歳は若いのよ？同じであるはずないじゃない。もういい年をして、何を言っているの…」