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番外編1
ミサモエス・ラーダ20
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「慰謝料も、領地も、王家への贖罪も、すべて責任を取ってくれる人がこの世にいるというのか?」
「いると思うわ」
運よく2回も結婚出来たことで、変な自信がついてしまったのだろう。既に貴族ではないため、貴族とは結婚できないことも分かっていないのだろうが、今さら説明する気力もない。
「どうやって探すのだ?お前は社交界に出入り出来ない。誘った相手も、同類とみなされて、影響を受ける可能性があるんだぞ?」
「そ、それは…お友達に頼んでみるわ」
不貞などで離婚しただけであれば、放り出して、勝手に結婚でも何でもすればいいが、それでは私たちは責任を持ったことにならない。きょうだいのためにも、その家族のためにも、放り出す選択は出来ないことが妬ましい。
「今まで友人に紹介されたことがあるのか?」
「…ないけど、頼んでみることは出来るわ」
ちゃんとした友人がいたなら違ったのかもしれない、ミサモエスを誘うのは、数合わせか、引き立て役か、嘲笑う目的くらいだったのではないか。紹介くれるような人がいれば、既に紹介をしているだろう。
「不敬で王家の催しには出られないのだけど、誰か紹介して欲しいと言うのか?」
「だから言わなければ分からないわ」
「騙したと恨まれることになる」
「騙してなんていないわ!黙っているだけよ」
「ミサモエス、もういい加減にしなさい!まずは更生施設に入って、やり直しなさい。それがあなたのすべきことです」
「お母様、どうしてしまったの?可愛い私が困っているのよ」
母がきょうだいと同じようになったことにまだ慣れないミサモエスは、いつものように上目遣いで訴えているが、母の表情は変わらない。
「困っているのはこちらの方です。私は現実を見たの、あなたも現実を見なさい。結婚相手なんているはずなじゃない、娼婦にでもなる気なの?」
「どうして私が娼婦なんかに」
「だったら、大人しく更生施設に行きなさい。追い出されても、あなたに出来ることなんて娼婦くらいでしょう?あんなことを妃殿下に言っていたのだから」
「…そんなことないわ」
「私に似て可哀想だと思ったのが間違いだったわ…ソースル、もうあなたが話す必要はないわ。必要なことがあれば、連れて行きながら話します」
ユアラノンと両親に連れて行かれ、ミサモエスは更生施設に入った。暴れたようだが、そこはユアラノンが押さえ付けて、放り込んだそうだ。きょうだいは会えるように申請してあるが、会うつもりはなく、これで外部との接触は出来ない。
その後はユアラノンが施設に様子を聞きに行くことになった。
「私には出来ないわ、どなたかに代わっていただくことは出来ない?」
「今日は具合が悪いの」
「やれる人がやればいいじゃない」
そう言っていたが、具合が悪ければ食事は出るが具のないスープだけとなり、元気を出すためにはこれでは足りないと言えば、スケジュールをこなさなければ食事が出ないこと、お風呂は浴場があるが、洗濯をしていないので、着替える物がなくなったことで、渋々行うようになったそうだ。
真面目に取り組まなくてもペナルティとして、トイレだけがある部屋で過ごすことになる。食事も浴場にも行けなくなり、真面目に取り組むしかなくなる。
両親は領地に移り、静かに暮らしている。
ジースト伯爵は慰謝料は要らないと言ったが、養育費としてでもあると受け取って貰い、王太子妃殿下の言葉とミサモエスは除籍した上で更生施設に入り、卒業の許可が出れば両親と領地で暮らすか、修道院に行くことも話した。
「ご子息はいかがでしょうか」
「ああ、問題なく過ごしています」
「やはり、ミサモエスはあまり面倒を看ていなかったのでしょうか」
「そうですね、乳母がいますから、貴族としては珍しいことではないのでしょうけど、気まぐれに顔を見に行く程度だったと聞いています」
エールトのことを聞いて来ない様子に、両親は頻繁に会いに行っていたが、きょうだいは会いに行くことはしていなかったため、産んだだけで面倒を看ることもなかったのではないかと思い至った。
「いると思うわ」
運よく2回も結婚出来たことで、変な自信がついてしまったのだろう。既に貴族ではないため、貴族とは結婚できないことも分かっていないのだろうが、今さら説明する気力もない。
「どうやって探すのだ?お前は社交界に出入り出来ない。誘った相手も、同類とみなされて、影響を受ける可能性があるんだぞ?」
「そ、それは…お友達に頼んでみるわ」
不貞などで離婚しただけであれば、放り出して、勝手に結婚でも何でもすればいいが、それでは私たちは責任を持ったことにならない。きょうだいのためにも、その家族のためにも、放り出す選択は出来ないことが妬ましい。
「今まで友人に紹介されたことがあるのか?」
「…ないけど、頼んでみることは出来るわ」
ちゃんとした友人がいたなら違ったのかもしれない、ミサモエスを誘うのは、数合わせか、引き立て役か、嘲笑う目的くらいだったのではないか。紹介くれるような人がいれば、既に紹介をしているだろう。
「不敬で王家の催しには出られないのだけど、誰か紹介して欲しいと言うのか?」
「だから言わなければ分からないわ」
「騙したと恨まれることになる」
「騙してなんていないわ!黙っているだけよ」
「ミサモエス、もういい加減にしなさい!まずは更生施設に入って、やり直しなさい。それがあなたのすべきことです」
「お母様、どうしてしまったの?可愛い私が困っているのよ」
母がきょうだいと同じようになったことにまだ慣れないミサモエスは、いつものように上目遣いで訴えているが、母の表情は変わらない。
「困っているのはこちらの方です。私は現実を見たの、あなたも現実を見なさい。結婚相手なんているはずなじゃない、娼婦にでもなる気なの?」
「どうして私が娼婦なんかに」
「だったら、大人しく更生施設に行きなさい。追い出されても、あなたに出来ることなんて娼婦くらいでしょう?あんなことを妃殿下に言っていたのだから」
「…そんなことないわ」
「私に似て可哀想だと思ったのが間違いだったわ…ソースル、もうあなたが話す必要はないわ。必要なことがあれば、連れて行きながら話します」
ユアラノンと両親に連れて行かれ、ミサモエスは更生施設に入った。暴れたようだが、そこはユアラノンが押さえ付けて、放り込んだそうだ。きょうだいは会えるように申請してあるが、会うつもりはなく、これで外部との接触は出来ない。
その後はユアラノンが施設に様子を聞きに行くことになった。
「私には出来ないわ、どなたかに代わっていただくことは出来ない?」
「今日は具合が悪いの」
「やれる人がやればいいじゃない」
そう言っていたが、具合が悪ければ食事は出るが具のないスープだけとなり、元気を出すためにはこれでは足りないと言えば、スケジュールをこなさなければ食事が出ないこと、お風呂は浴場があるが、洗濯をしていないので、着替える物がなくなったことで、渋々行うようになったそうだ。
真面目に取り組まなくてもペナルティとして、トイレだけがある部屋で過ごすことになる。食事も浴場にも行けなくなり、真面目に取り組むしかなくなる。
両親は領地に移り、静かに暮らしている。
ジースト伯爵は慰謝料は要らないと言ったが、養育費としてでもあると受け取って貰い、王太子妃殿下の言葉とミサモエスは除籍した上で更生施設に入り、卒業の許可が出れば両親と領地で暮らすか、修道院に行くことも話した。
「ご子息はいかがでしょうか」
「ああ、問題なく過ごしています」
「やはり、ミサモエスはあまり面倒を看ていなかったのでしょうか」
「そうですね、乳母がいますから、貴族としては珍しいことではないのでしょうけど、気まぐれに顔を見に行く程度だったと聞いています」
エールトのことを聞いて来ない様子に、両親は頻繁に会いに行っていたが、きょうだいは会いに行くことはしていなかったため、産んだだけで面倒を看ることもなかったのではないかと思い至った。
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