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番外編1

ミサモエス・ラーダ17

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「バリミューア島の交流会、国際会議に出られるのか?」
「バリミューア島?そこに殿下と行けるのね、楽しみだわ。いつ?」

 聞いたこともない島だけど、リゾート地だろうか、殿下と一緒に行けるなんて、楽しみで仕方ない。

「行けない、行かせるはずがないだろう。行ったところで問題を起こせば、我が家では責任を取れない」
「やってみないと分からないじゃない」
「トワイ語しか話せないのに、どうやって会話するのだ?交流会は各国から人が集まる場だ」
「だから通訳を雇えばいいじゃない」

 通訳が何のためにいると思っているのだろうか、王家にお金も出してもらえばいい、ドレスもとびきり可愛くて素敵なものを頼まなくちゃ。

「妃殿下は何ヶ国もの通訳を務めてらっしゃるのだぞ?お前にも同様の能力が求められる。出来るはずがないだろう?通訳なんて連れて行ったら行列だ、そもそも入れるのかも分からない」
「通訳は出来ないと言えばいいじゃない」
「殿下は『サリーよりも王太子妃に相応しいと発言をしているクオス伯爵家出身の、ジースト伯爵夫人だと紹介しよう』とおっしゃっていた、離縁したからクオス伯爵令嬢だな。出来ないとは言えない」
「そ、それは…」

 そんな言い方をしたら、まるで私が出来ないことを比べられるじゃない。殿下はどうしてしまったの、そんな意地悪を言うなんて、もしかして妃殿下に言わされているのかしら、きっとそうだわ。

「お前が発言した結果だ、お前はずっと八ヶ国語以上話せる妃殿下の代わりが出来ると言っているのだ。同等以上でなければならないのだ。代理のことは忘れなさい、殿下もさせようなどと思ってはいない、やるならお前を貶め、徹底的に潰すためにされるだろうがな」
「でっ、でも」
「相応しいと何度も言ったのに、話せないと言ってみろ、どんな目で見られるか想像出来ないのか?」

 相応しいと何度も言ったけど、相応しくないと分かったらどういう目で見られるか。そんなこと分からない。

「話せもしないのに、よくもそんなことが言えたものだ」
「妃殿下と比べることすら烏滸がましい」
「何も出来ぬのに、よくも殿下の横に並べたものだ。恥ずかしくないのか?」
「恥ずかしいと思えないから、母国語しか話せないのに、殿下の横に立っていられるのだろう。馬鹿だから分からないのだろう」

 ユアラノンとマリスアルが、ミサモエスを指しながら口々に言い出した。

「そんなところだな、そんな場所に行きたいか?」
「代理でも味わってみたいじゃない…」
「問題を起こせば、それこそ離縁の騒ぎではない、皆が処刑されるだろう」
「処刑?どうして…」

 起きてもいないことだけど、処刑だなんて、なんでそんなたかが交流会でしょう?お喋りをして、笑っていればいいだけでしょう?

「各国の重鎮に粗相をしたら、戦争を起こすとでも言われたどうする?莫大な慰謝料を請求されたらどうする?国が責任を取り、その責任は私たちでは取れない。処刑となって当然だろう?お前は私たちに離縁して、貴族でなくなるだけでは飽き足らず、死ねというのか」
「そんなこと思ってない!」

 死んで欲しいなんて思っていない、そんな大層な場だとは思わなかった。王太子妃の代理なのだから、大層な場でしかないが、ミサモエスには分からない。

「ならば、反省して修道院に行きなさい。こうやって家族が集まるのも今日で最後だ。二度と会うことは難しいだろう」
「皆も貴族じゃなくなるの?」
「そうだ、伯爵家は返上するか、親戚に継いでもらうしかない」
「そんな…私のせいなの?」
「そうだ、お前が妃殿下に何度も何度も暴言を吐いたせいだ」
「でも、」
「もうでもはない、お前のせいで皆、家族を失うんだ。最後は父上と母上に修道院まで連れて行ってもらいなさい。それでお別れだ!」

 ミサモエス以外の皆はこれからのことを考えて俯き、静まり返った。
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