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番外編1
ミサモエス・ラーダ16
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既にミサモエスの除籍は済ませたが、離縁も親戚に譲るにしても、先にミサモエスを修道院に入れてから、問題ないとしてからにしなくてはならない。
両親も同席しているが、話が進まないため、黙っているように言ってある。
おそらく、家族全員が集まるのはこれで最後になる。
「ミサモエスには伯爵家を抜け、修道院に行ってもらう」
「嫌よ、どうして私がそんなところに行かなくてはいけないの!」
部屋に閉じ込めていたが、憔悴した様子もなく、健康そのものだ。ミサモエス以外が、食事を摂るのもままならず、今後のことを考えて、眠れない日々を過ごしているというのに皮肉なものだ。
「あなたは妃殿下に暴言を吐いていたのでしょう、何度も何度も」
「でも、あれは皆していることじゃない」
「皆?どういう意味?」
「自分の恋人には牽制するものでしょう?」
三人にはミサモエスは信じられない存在となっていた。気持ちの悪い生き物、それが妹だということに吐き気がした。
「これで薬物をやっていないとは…狂っているんだな」
ユアラノンは遠いこともあって、あれからミサモエスに会っておらず、呆れたように口にした。
「もういい、王族への不敬。それだけでも責任を取らねばならないのだ」
「だから謝るって言ってるでしょう!」
「お忙しい妃殿下にお前のために取る時間が無駄だ」
「何よそれ、偉そうに」
「私たちもお前の全員責任を取って、離縁する。何もしていない私たちも、妻にも子どもにも会えなくなる。私など生まれていないのに、既に会えないんだ。それがどれだけ辛いかお前には分からないだろう」
「…どういうこと」
「ミサモエス、あなたのせいで離縁するの、ソースルもユアも」
「…嘘でしょう」
さすがに事の重大さを感じたようだが、もはや今さらミサモエスに言葉が届くとは、三人も期待していない。
「謝るわ、謝れば王太子妃なんだから、広い心で許さないと恥ずかしいことよ、そうよ、そうでしょう?」
「いいや、もう結論を話しているだけで、決まったことだ」
「それほどまでのことをお前はしたんだよ、謝れば済むと思っているからあんなことを言ったのか」
「だって悔しかったんだもの。皆に憧れられて、羨ましがられる王太子妃なんて…私にピッタリなのにって」
「代理のことは…」「父上!それはもう!」「お父様!」
「代理?」
「それはいい」
父上は黙っていろと言っただろう、代理なんて聞いたところで無意味だ。
「代理って何?」
「王太子妃殿下の罰は、自分の代理に指名することだったそうだ」
ミサモエスが面倒なことを言い出すに決まっているから、話す気はなかった。マリスアルとユアラノンにも一応は話したが、絶対にそんなことはさせられない、ユアラノンに至っては殺してでも行かせないと言っていた。ミサモエスには話す必要がないと判断していたのに、どうして父上は余計なことを言うのだ。
「勿論、受けるわ。殿下が指名してくださったのでしょう?やっぱり、私のことを想っていたのよ。だから言ったじゃない」
「はあ…指名できるのは王太子妃殿下だけだ、だから指名したのは妃殿下だ」
「えっ、どうして…」
なぜ妃殿下が私を指名するの?優しいことなんて言ったこともないのに。どういうつもりなんだろうか。
「お前が王太子妃に相応しいと何度も言ったからだ!」
「それで私に譲る気になったってこと?」
「そうじゃない、ただの代理だが、妃殿下の代わりをするということだ」
「何それ、でもいいわ。代理でも」
代理をして認められれば、王太子妃になれるかもしれないってことでしょう。ようやく分かったのね、何度も言った甲斐があったってことじゃない。どうして早く言わないのよ、離縁だなんて脅して、やっぱり皆、意地が悪い。
案の定の展開に、三人はさらに呆れるしかなかった。
両親も同席しているが、話が進まないため、黙っているように言ってある。
おそらく、家族全員が集まるのはこれで最後になる。
「ミサモエスには伯爵家を抜け、修道院に行ってもらう」
「嫌よ、どうして私がそんなところに行かなくてはいけないの!」
部屋に閉じ込めていたが、憔悴した様子もなく、健康そのものだ。ミサモエス以外が、食事を摂るのもままならず、今後のことを考えて、眠れない日々を過ごしているというのに皮肉なものだ。
「あなたは妃殿下に暴言を吐いていたのでしょう、何度も何度も」
「でも、あれは皆していることじゃない」
「皆?どういう意味?」
「自分の恋人には牽制するものでしょう?」
三人にはミサモエスは信じられない存在となっていた。気持ちの悪い生き物、それが妹だということに吐き気がした。
「これで薬物をやっていないとは…狂っているんだな」
ユアラノンは遠いこともあって、あれからミサモエスに会っておらず、呆れたように口にした。
「もういい、王族への不敬。それだけでも責任を取らねばならないのだ」
「だから謝るって言ってるでしょう!」
「お忙しい妃殿下にお前のために取る時間が無駄だ」
「何よそれ、偉そうに」
「私たちもお前の全員責任を取って、離縁する。何もしていない私たちも、妻にも子どもにも会えなくなる。私など生まれていないのに、既に会えないんだ。それがどれだけ辛いかお前には分からないだろう」
「…どういうこと」
「ミサモエス、あなたのせいで離縁するの、ソースルもユアも」
「…嘘でしょう」
さすがに事の重大さを感じたようだが、もはや今さらミサモエスに言葉が届くとは、三人も期待していない。
「謝るわ、謝れば王太子妃なんだから、広い心で許さないと恥ずかしいことよ、そうよ、そうでしょう?」
「いいや、もう結論を話しているだけで、決まったことだ」
「それほどまでのことをお前はしたんだよ、謝れば済むと思っているからあんなことを言ったのか」
「だって悔しかったんだもの。皆に憧れられて、羨ましがられる王太子妃なんて…私にピッタリなのにって」
「代理のことは…」「父上!それはもう!」「お父様!」
「代理?」
「それはいい」
父上は黙っていろと言っただろう、代理なんて聞いたところで無意味だ。
「代理って何?」
「王太子妃殿下の罰は、自分の代理に指名することだったそうだ」
ミサモエスが面倒なことを言い出すに決まっているから、話す気はなかった。マリスアルとユアラノンにも一応は話したが、絶対にそんなことはさせられない、ユアラノンに至っては殺してでも行かせないと言っていた。ミサモエスには話す必要がないと判断していたのに、どうして父上は余計なことを言うのだ。
「勿論、受けるわ。殿下が指名してくださったのでしょう?やっぱり、私のことを想っていたのよ。だから言ったじゃない」
「はあ…指名できるのは王太子妃殿下だけだ、だから指名したのは妃殿下だ」
「えっ、どうして…」
なぜ妃殿下が私を指名するの?優しいことなんて言ったこともないのに。どういうつもりなんだろうか。
「お前が王太子妃に相応しいと何度も言ったからだ!」
「それで私に譲る気になったってこと?」
「そうじゃない、ただの代理だが、妃殿下の代わりをするということだ」
「何それ、でもいいわ。代理でも」
代理をして認められれば、王太子妃になれるかもしれないってことでしょう。ようやく分かったのね、何度も言った甲斐があったってことじゃない。どうして早く言わないのよ、離縁だなんて脅して、やっぱり皆、意地が悪い。
案の定の展開に、三人はさらに呆れるしかなかった。
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