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番外編1

ミサモエス・ラーダ13

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 クオス伯爵家に戻ると、応接室にはディールズ・ジースト伯爵と、ミサモエスと使用人が待っていた。使用人を下がらせて、大きく息を吐いた。

「ジースト伯爵、これから理由を話しますが、先に謝っておきます。申し訳ございませんでした」
「…そうですか」

 ミサモエスは不味いと思い、目線を泳がせるが、その視線は兄に遮られることになった。

「ミサモエス!なぜ、王太子妃殿下への暴言を黙っていた!!」
「―――っ」

 王太子殿下ではなく、サリー王太子妃へのものだったのか。それならば、心当たりしかない。でも皆しているじゃない、自分の男性に近しい女性には牽制をするものじゃない、他の人もしていたじゃない。

「王族への不敬、サリー王太子妃殿下へのものだとなぜ言わなかった!!この愚か者がっ!!」
「そっ、そんな酷いことは言っていないわ」
「嘘を付け!!ジースト伯爵、これがミサモエスの言った暴言です。あなたには読む権利があるでしょう」

 ディールズが受け取ると、そこには卑猥な言葉と、人に向けて使う言葉ではない発言が書き綴られていた。ミサモエスを好んでいるわけではないが、こんな化け物を妻にしていたのかと、恐ろしさすら感じた。

「意見はしたけど、暴言なんて言っていないわ」
「私が正妃になれるようにしなさい!居座り続けるなんて、なんて図々しいの!私こそが殿下の運命の相手なのよ!私の席を奪った泥棒め!これが暴言ではないと?」
「そ、それは…」

 ミサモエスは自身の発言をディールズに読まれて、顔がカッと熱くなった。

「お前は薬物でもやっているのか?こんなこと普通、人に、ましてや目上の人に向けて使う言葉ではない。卑猥な言葉も、娼婦だったのか?」
「そんなわけないじゃない!」

 ミサモエスは叫んでいたが、ソースルもディールズももう聞く価値もないと相手をしなかった。

「彼女は殿下と関係を持っていたという解釈でいいのでしょうか」
「はい、妃殿下へのことは今日知りましたが、殿下とのことは王家にも関わることですから、黙っておりました。申し訳ございません」
「…言って欲しかったとは思いますが、言えませんよね、これは」
「はい…申し訳ございません」

 ソースルはディールズの顔が見れなかった、重大な秘密は言っていなかったのだ。だが勝手に言えるものではない。いいや、口にもしたくなかった、その方が正しい。

「でも、マリ姉様が私は捨てられたと、そう、捨てられたのよ。私は可哀想なの」
「捨てるも何もない、お前がしたのは婚約者のいる相手とのただの不貞行為だ。それを愛されているだの大騒ぎして、殿下も罪を認めている」
「罪って」
「罪だろうが!だからこそお前は調子に乗って妃殿下に言ったんだろう?しかも、半年前にも言っている、頭が狂っているのか?」
「半年前?」
「ええ、日付から見て、夜会でしょう。その際に言っています」
「…最悪だな」

 偶然居合わせたのだが、ミサモエスはサリーを見ると、何か言いたくなってしまうようになっていた。

 だが、サリーは相手にすることも面倒になっており、口をあまり開けないゴッサムブラン語で『ならばお前が王太子妃になればいい』とだけ言い、去って行った。ミサモエスには勿論、分かるはずもなかった。

「謝るわ、謝って許してもらうわ。それでいいでしょう?」
「妃殿下は許す気はないから、謝罪は要らないとおっしゃっている」
「そんな…じゃあどうしろって言うの!」

 謝ればいいと思ったが、許す気はないなんて、何て心の狭い女なのかしら。だから殿下も私に靡いたんじゃない。人のせいにしないで欲しい。

「妃殿下は記憶力がいい、お前の暴言を一言一句憶えてらっしゃるということは、お前の謝罪で消えるものではないわ!」
「でっでも、私だって酷いこと言われたの」
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