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番外編1
ミサモエス・ラーダ9
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ミサモエスはディールズ・ジースト伯爵と会うことになった。ミサモエスは妻子を亡くしていることから、陰気な男性を想像していたが、表情は厳しいが、精悍な顔立ちに驚いて、すっかりその気になった。
「私はまた家族が出来るとは思えないのです」
「こんなことを言うのも心苦しいですが、後継者は必要なのではありませんか」
「…はい、でも私が結婚しても不幸にするだけのように思うことも多いと思います。何か起きる度に、私のせいだと思うのです」
「そんな…私も夫が亡くなって、急なことだったので、何だがぽっかり心に穴が開いたようになって、愚かなことをしました。邸にいるだけが妻の仕事ではなかったことも初めて知りました。今では恥ずかしいと思っています」
一緒に来たマリスアルはディールズが二人で話してみたいと申し出て、同じ部屋にはいないが、兄がこれまでのことを話してあると言っていたから、嘘を付いても確認されれば同じである。
「…お兄様から聞いています」
「それでも会っていただけて嬉しいです。私は多くを望みません」
ドレスや宝石も好きだけど、誰かに褒められるために付けていただけで、そこまで興味はない。ピンクも似合わないと言われて、着るのが怖くなってしまった。今日も落ち着いたオレンジ色のドレスにした。
「私は質素に生きることにしています。家族は幸せに出来ませんでしたので、領民だけは幸せにと思っております」
「はい」
「お兄様は正直、心が見えるわけではないから、矯正できているか分からないとおっしゃっていました」
「…口では反省していると言えますから、仕方ないと思っています」
「ですが、心に穴が開く感覚は分かります。私の場合は覚悟していたはずだったのですが、それでも心というのは軟弱ですから」
妻は産後に病気で亡くなり、娘も感染病が悪化して亡くなってしまったそうだ。
「はい、私は気付いたら、葬儀が終わっていて、実家に戻って、ふとどうしてここにいるのだろうと思うことがありました」
「そうでしたか…」
ジースト伯爵から、私とミサモエスの最後のチャンスに賭けてみましょうと、承諾の返事が来て、ミサモエスは嫁ぐことになった。
ただし、結婚前にお互いのためにも様々な条件を付けることになった。
不適格(犯罪、不敬、不貞、不貞を疑われる行動、散財、借金、我儘、嫌がらせ)とみなされた場合は離縁が可能なこと、その際に子どもがいた場合はジースト伯爵家で育てること。不適格として離縁となった場合は、クオス伯爵家には戻らず、そのまま修道院に入り、一生過ごすこと。
念のため、ジースト伯爵の方に非があった場合も離縁出来ること、非がある方が慰謝料を払うことと定められた。
再婚であるため、結婚式は親族だけで行い、クオス伯爵家はどうかよろしくお願いしますと一同で頭を下げた。
夫婦関係は密であるとは言い難いが、ディールズはなるべくミサモエスを気に掛け、ミサモエスも姉から教わった女主人の仕事を彼女なりに頑張った。
そして、結婚後数ヶ月で妊娠が分かり、ミサモエスは喜びに満ちた。その際にラーダ侯爵令息は忙しくて、あまり関係を持つことが出来なかったため、妊娠しなかったのだろうと思い返した。数ヶ月後、ミサモエスはディールズによく似た男の子を出産した、名前はエールト。
クオス伯爵家も両親は孫に大喜びで、頻繁に会いに行き、姉と兄もこのまま大人しくしていて欲しいと願いながら、ようやく胸を撫で下ろした。
エールトはすくすくと成長し、ミサモエスも久しぶりに社交界にも顔を出すようになったが、なるべく女性だけの茶会や、夜会でも夫の側を離れず、男性にも極力近付かないように心掛けた。
エールトが二歳の誕生日を迎えたが、運命の日は刻一刻と迫っていた。
「私はまた家族が出来るとは思えないのです」
「こんなことを言うのも心苦しいですが、後継者は必要なのではありませんか」
「…はい、でも私が結婚しても不幸にするだけのように思うことも多いと思います。何か起きる度に、私のせいだと思うのです」
「そんな…私も夫が亡くなって、急なことだったので、何だがぽっかり心に穴が開いたようになって、愚かなことをしました。邸にいるだけが妻の仕事ではなかったことも初めて知りました。今では恥ずかしいと思っています」
一緒に来たマリスアルはディールズが二人で話してみたいと申し出て、同じ部屋にはいないが、兄がこれまでのことを話してあると言っていたから、嘘を付いても確認されれば同じである。
「…お兄様から聞いています」
「それでも会っていただけて嬉しいです。私は多くを望みません」
ドレスや宝石も好きだけど、誰かに褒められるために付けていただけで、そこまで興味はない。ピンクも似合わないと言われて、着るのが怖くなってしまった。今日も落ち着いたオレンジ色のドレスにした。
「私は質素に生きることにしています。家族は幸せに出来ませんでしたので、領民だけは幸せにと思っております」
「はい」
「お兄様は正直、心が見えるわけではないから、矯正できているか分からないとおっしゃっていました」
「…口では反省していると言えますから、仕方ないと思っています」
「ですが、心に穴が開く感覚は分かります。私の場合は覚悟していたはずだったのですが、それでも心というのは軟弱ですから」
妻は産後に病気で亡くなり、娘も感染病が悪化して亡くなってしまったそうだ。
「はい、私は気付いたら、葬儀が終わっていて、実家に戻って、ふとどうしてここにいるのだろうと思うことがありました」
「そうでしたか…」
ジースト伯爵から、私とミサモエスの最後のチャンスに賭けてみましょうと、承諾の返事が来て、ミサモエスは嫁ぐことになった。
ただし、結婚前にお互いのためにも様々な条件を付けることになった。
不適格(犯罪、不敬、不貞、不貞を疑われる行動、散財、借金、我儘、嫌がらせ)とみなされた場合は離縁が可能なこと、その際に子どもがいた場合はジースト伯爵家で育てること。不適格として離縁となった場合は、クオス伯爵家には戻らず、そのまま修道院に入り、一生過ごすこと。
念のため、ジースト伯爵の方に非があった場合も離縁出来ること、非がある方が慰謝料を払うことと定められた。
再婚であるため、結婚式は親族だけで行い、クオス伯爵家はどうかよろしくお願いしますと一同で頭を下げた。
夫婦関係は密であるとは言い難いが、ディールズはなるべくミサモエスを気に掛け、ミサモエスも姉から教わった女主人の仕事を彼女なりに頑張った。
そして、結婚後数ヶ月で妊娠が分かり、ミサモエスは喜びに満ちた。その際にラーダ侯爵令息は忙しくて、あまり関係を持つことが出来なかったため、妊娠しなかったのだろうと思い返した。数ヶ月後、ミサモエスはディールズによく似た男の子を出産した、名前はエールト。
クオス伯爵家も両親は孫に大喜びで、頻繁に会いに行き、姉と兄もこのまま大人しくしていて欲しいと願いながら、ようやく胸を撫で下ろした。
エールトはすくすくと成長し、ミサモエスも久しぶりに社交界にも顔を出すようになったが、なるべく女性だけの茶会や、夜会でも夫の側を離れず、男性にも極力近付かないように心掛けた。
エールトが二歳の誕生日を迎えたが、運命の日は刻一刻と迫っていた。
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