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番外編1
ミサモエス・ラーダ8
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それからミサモエスは監視されながら過ごすことになった。長姉・マリスアルや家庭教師から女主人のあり方などを学ぶことになった。泣き言を言おうにも、両親とは三人きりでは会えないようになったので、言うことも出来ない。
ある日、ミサモエスは兄・ソースルから久しぶりに呼び出されることになった。
「縁談がある」
「本当?」
「だが相手はミサモエスを気に入っているわけでもなければ、可愛いとも、愛しているとも思っていないのは分かるな?」
「…あっ、はい」
そんな言い方をしなくてもいいのにと思ったが、兄にも姉にも散々言われ続けている。はいと言わなければこの縁談は無くなるだろう。
「もし気に入っていただければ、普通の暮らしが出来るかもしれない。これが最後のチャンスだ」
ミサモエスは自由に出掛けることも制限され、女性だけの茶会は監視は付けるが参加は出来る。パーティーも両親の間で過ごし、男性には話し掛けないように徹底されていた。特に王太子殿下には絶対に近付かないように、もし近付けば、即修道院に行かせると言われていた。
「お相手は奥様を五年前に亡くし、」
「私と一緒じゃない」
「最後まで聞きなさい。ひとり娘」
「娘?娘がいるの?」
「最後まで聞きなさい。娘さんも二年前に亡くしている」
「…そうだったのですか」
娘を育てるのかと思ったら、そうではないのか。でも亡くなっているのならば、後継者が必要で、再婚をと言われているのだろう。
「もう結婚はしたくないと言っているのだが、周囲はそうはいかない。それで何人かに会わせたのだが、皆、結婚にこうありたいという希望がある。だから断ってしまったんだ。でもお前なら、多くはもう望んではならないと分かっているだろう?望めば破滅だ、結婚しても破滅は有効だからな」
「……はい」
「だがどちらにしろ、相手が受け入れればの話だ」
「どちらの家なのですか」
「ジースト伯爵家だ」
悪い噂などは聞いたことがない。妻子を亡くしているのなら、あまり噂を立てるのも可哀想だったのかもしれない。
ミサモエスが知らないだけで、妻を亡くし、娘も亡くしてしまったジースト伯爵家は有名だった。ただ当時は噂になったが、今はそっとされているだけだ。
「お相手としてはお前には勿体ない相手だ」
ソースルは心からそう思っているが、素晴らしい相手だと自身の至らなさが浮き彫りになって嫌だという。だから至らない妹ならばということだが、捨てられても文句は言えないという点では納得出来る。
「多くを望まない、そしてもし不適格となった場合は離縁する、それが条件となる」
「不適格とはどのようなことですか」
「皆が当たり前に出来る範囲だ。犯罪、不敬、不貞、不貞を疑われる行動、散財、我儘、嫌がらせ、何もしないというのも妻にした意味がないから不適格となるだろう」
「…はい、愛しては貰えないということですか?前の奥様を愛してらっしゃるの?」
そんなにあるのかと思ったが、今までしたことはないことばかりで、大丈夫だと思った。でも夫なのに愛してはくれないの?前の夫も結婚前は愛してはいなかったみたいだけど、私に愛していると言ってくれたことが嘘だとは思えない。愛が芽生えるということもあるのではないかしら。
「心の中までは分からないが、妻も大事な娘も失っているんだ。自分を律し、贖罪のように生きているのかもしれない」
「そんな!」
「お前とは正反対だよな、悲しむよりも男と遊んで」
「そんなことないわ、私だって悲しかったわ」
私が悲しんでいないような言い方しないで。急に亡くなったと言われて、葬儀でお別れをして、実家に戻ることになって、何だか実感がないまま、失った感覚だけが残ったの。私だって辛かった。
「私としては紹介したくないが、同じ伴侶を亡くした同士にしか分からないこともあるんじゃないかと言うんだよ。どうする?会ってみるか?」
「会ってみます」
「既に相手には王太子殿下のこと以外は、お前の過去を話してある。粗相のないように、嘘は付かないように、分かったか?マリスアルが同席するから嘘を言った時点で、なかったことにさせてもらう」
「…はい」
ある日、ミサモエスは兄・ソースルから久しぶりに呼び出されることになった。
「縁談がある」
「本当?」
「だが相手はミサモエスを気に入っているわけでもなければ、可愛いとも、愛しているとも思っていないのは分かるな?」
「…あっ、はい」
そんな言い方をしなくてもいいのにと思ったが、兄にも姉にも散々言われ続けている。はいと言わなければこの縁談は無くなるだろう。
「もし気に入っていただければ、普通の暮らしが出来るかもしれない。これが最後のチャンスだ」
ミサモエスは自由に出掛けることも制限され、女性だけの茶会は監視は付けるが参加は出来る。パーティーも両親の間で過ごし、男性には話し掛けないように徹底されていた。特に王太子殿下には絶対に近付かないように、もし近付けば、即修道院に行かせると言われていた。
「お相手は奥様を五年前に亡くし、」
「私と一緒じゃない」
「最後まで聞きなさい。ひとり娘」
「娘?娘がいるの?」
「最後まで聞きなさい。娘さんも二年前に亡くしている」
「…そうだったのですか」
娘を育てるのかと思ったら、そうではないのか。でも亡くなっているのならば、後継者が必要で、再婚をと言われているのだろう。
「もう結婚はしたくないと言っているのだが、周囲はそうはいかない。それで何人かに会わせたのだが、皆、結婚にこうありたいという希望がある。だから断ってしまったんだ。でもお前なら、多くはもう望んではならないと分かっているだろう?望めば破滅だ、結婚しても破滅は有効だからな」
「……はい」
「だがどちらにしろ、相手が受け入れればの話だ」
「どちらの家なのですか」
「ジースト伯爵家だ」
悪い噂などは聞いたことがない。妻子を亡くしているのなら、あまり噂を立てるのも可哀想だったのかもしれない。
ミサモエスが知らないだけで、妻を亡くし、娘も亡くしてしまったジースト伯爵家は有名だった。ただ当時は噂になったが、今はそっとされているだけだ。
「お相手としてはお前には勿体ない相手だ」
ソースルは心からそう思っているが、素晴らしい相手だと自身の至らなさが浮き彫りになって嫌だという。だから至らない妹ならばということだが、捨てられても文句は言えないという点では納得出来る。
「多くを望まない、そしてもし不適格となった場合は離縁する、それが条件となる」
「不適格とはどのようなことですか」
「皆が当たり前に出来る範囲だ。犯罪、不敬、不貞、不貞を疑われる行動、散財、我儘、嫌がらせ、何もしないというのも妻にした意味がないから不適格となるだろう」
「…はい、愛しては貰えないということですか?前の奥様を愛してらっしゃるの?」
そんなにあるのかと思ったが、今までしたことはないことばかりで、大丈夫だと思った。でも夫なのに愛してはくれないの?前の夫も結婚前は愛してはいなかったみたいだけど、私に愛していると言ってくれたことが嘘だとは思えない。愛が芽生えるということもあるのではないかしら。
「心の中までは分からないが、妻も大事な娘も失っているんだ。自分を律し、贖罪のように生きているのかもしれない」
「そんな!」
「お前とは正反対だよな、悲しむよりも男と遊んで」
「そんなことないわ、私だって悲しかったわ」
私が悲しんでいないような言い方しないで。急に亡くなったと言われて、葬儀でお別れをして、実家に戻ることになって、何だか実感がないまま、失った感覚だけが残ったの。私だって辛かった。
「私としては紹介したくないが、同じ伴侶を亡くした同士にしか分からないこともあるんじゃないかと言うんだよ。どうする?会ってみるか?」
「会ってみます」
「既に相手には王太子殿下のこと以外は、お前の過去を話してある。粗相のないように、嘘は付かないように、分かったか?マリスアルが同席するから嘘を言った時点で、なかったことにさせてもらう」
「…はい」
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