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番外編1
ミサモエス・ラーダ6
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「本当に嘘ばっかり!お父様は沢山あったっておっしゃってたわ」
「父上、嘘を付いたのですか」
「…可哀想じゃないか」
「えっ、お父様?嘘でしょう?沢山あって困っている、一番いい人を探してくれると言ったわよね!」
「一人もいなかったのよ、だから学園を卒業しても、結婚出来なかったでしょう?」
上の三人は卒業と同時に結婚している。ソアールは妹と同じ邸ではなく別邸で暮らしていたが、妻は今、二人目の出産を控えているので、子どもと一緒に実家に避難させている。マリスアルも子どもがいるが、婚家に残して来ている。
「でも、私は侯爵家に嫁いだのよ」
「誰でも良かったんだよ、仕事の邪魔をしないものならね」
「妹が欲しかったからって」
「それも事実かもしれないけど、煩わされない扱いやすい女が良かったんだろうな。お前は愛していると、プレゼントでも渡しておけば、大人しくしているだろう?」
「そんなはずないわ、あの人は私を愛しているって。ねえ、お父様!」
「事実を教えてあげてください」
「…邪魔にならない妻なら引き受けてもいいと、妹が欲しいと思ったことがあったから、丁度いいと」
「…そんな」
ミサモエスにとって、さすがに夫が愛していなかったことはショックだった。縁談の申し込みはラーダ侯爵家からではあったが、ミサモエスの夢見がちな性格をよく分かった上で申し込んで来たのだ。
仕事をするのに妻がいる方がいい、だが邪魔はされたくない、だからと言って邪険にする気はない。だが仕事の邪魔をするならば離縁すると、両親はこのままでは嫁げるところはないだろうと、あの子ならきっと愛されるようになるはずだと、愛されることが務めだと送り出したのだ。
「現実を見なさい、大人しくするなら、もしかしたら縁談があるかもしれないわ」
「…縁談」
「このまま夢を見るなら、いつか殺されるかもしれない覚悟はして置けよ」
「何よ、殺されるって」
「王太子殿下にとって、お前は不貞の証拠だ。邪魔だろう?殺してしまえばお終いじゃないか」
「…そんな」
殺されるかもしれないと思いながら生きていかなきゃいけないの?可愛いから仕方ないことなの?
「妃殿下に並ぼうと、ましてや押し退けようとすることなど、私たちも許せない」
「はあ?何であんな女が」
「黙れ!お前が代わりになるわけないだろう?国際会議で、彼女は議長の横に席を与えられている。どうせお前には意味が分からないだろう?」
「偉いって言いたいの?」
何よ、馬鹿にして、凄いことなんでしょうけど、分かるわけないじゃない。
「国際会議はあらゆる言語が飛び交うんだ。カベリ語が一番多いから、カベリ語で進行するが、必須となっているわけではない国もある。そこで、妃殿下だ。妃殿下は国際会議に出られる方の話せる言語を全て理解している」
「七ヶ国、いえ八ヶ国は間違いないでしょうね」
コルボリットの翻訳が現在八ヶ国語だったはずだ。
「ああ、そこで妃殿下はどうしても分からない部分は、その国の方に分かる言語で説明をする。これがどれだけ会議が円滑に進むか分からないだろう?」
「通訳がいればいいじゃない」
「はあ、議案ともなれば言い回しが難しい。前に通訳が議案が難しくうまく訳せず、誤った言葉を伝えたこと、わざと虚偽を含ませるようなことがあったんだ。だから通訳は余程でないと入れないことになっている」
サリーが分からない言葉の国であった場合は、通訳を付けるが、通訳はサリーの分かる言葉も出来る通訳だけと指定がある。
「あんたがそこに座ることはないけど、三ヶ国語が話せるようになったとしても、妃殿下から成り代わった女なら、妃殿下より優秀でならなければならない。せめて八ヶ国は話せないとね?どうする?」
「そもそも不貞がバレたら、他国からも苦情が来るだろうな」
「どうせ殿下だけじゃないんだろう?国外でもアバズレ未亡人って呼ばれるだろうな。自称可愛い末っ子ではなく、他称アバズレ未亡人として有名になりたいか?」
「よく考えなさい」
「父上、嘘を付いたのですか」
「…可哀想じゃないか」
「えっ、お父様?嘘でしょう?沢山あって困っている、一番いい人を探してくれると言ったわよね!」
「一人もいなかったのよ、だから学園を卒業しても、結婚出来なかったでしょう?」
上の三人は卒業と同時に結婚している。ソアールは妹と同じ邸ではなく別邸で暮らしていたが、妻は今、二人目の出産を控えているので、子どもと一緒に実家に避難させている。マリスアルも子どもがいるが、婚家に残して来ている。
「でも、私は侯爵家に嫁いだのよ」
「誰でも良かったんだよ、仕事の邪魔をしないものならね」
「妹が欲しかったからって」
「それも事実かもしれないけど、煩わされない扱いやすい女が良かったんだろうな。お前は愛していると、プレゼントでも渡しておけば、大人しくしているだろう?」
「そんなはずないわ、あの人は私を愛しているって。ねえ、お父様!」
「事実を教えてあげてください」
「…邪魔にならない妻なら引き受けてもいいと、妹が欲しいと思ったことがあったから、丁度いいと」
「…そんな」
ミサモエスにとって、さすがに夫が愛していなかったことはショックだった。縁談の申し込みはラーダ侯爵家からではあったが、ミサモエスの夢見がちな性格をよく分かった上で申し込んで来たのだ。
仕事をするのに妻がいる方がいい、だが邪魔はされたくない、だからと言って邪険にする気はない。だが仕事の邪魔をするならば離縁すると、両親はこのままでは嫁げるところはないだろうと、あの子ならきっと愛されるようになるはずだと、愛されることが務めだと送り出したのだ。
「現実を見なさい、大人しくするなら、もしかしたら縁談があるかもしれないわ」
「…縁談」
「このまま夢を見るなら、いつか殺されるかもしれない覚悟はして置けよ」
「何よ、殺されるって」
「王太子殿下にとって、お前は不貞の証拠だ。邪魔だろう?殺してしまえばお終いじゃないか」
「…そんな」
殺されるかもしれないと思いながら生きていかなきゃいけないの?可愛いから仕方ないことなの?
「妃殿下に並ぼうと、ましてや押し退けようとすることなど、私たちも許せない」
「はあ?何であんな女が」
「黙れ!お前が代わりになるわけないだろう?国際会議で、彼女は議長の横に席を与えられている。どうせお前には意味が分からないだろう?」
「偉いって言いたいの?」
何よ、馬鹿にして、凄いことなんでしょうけど、分かるわけないじゃない。
「国際会議はあらゆる言語が飛び交うんだ。カベリ語が一番多いから、カベリ語で進行するが、必須となっているわけではない国もある。そこで、妃殿下だ。妃殿下は国際会議に出られる方の話せる言語を全て理解している」
「七ヶ国、いえ八ヶ国は間違いないでしょうね」
コルボリットの翻訳が現在八ヶ国語だったはずだ。
「ああ、そこで妃殿下はどうしても分からない部分は、その国の方に分かる言語で説明をする。これがどれだけ会議が円滑に進むか分からないだろう?」
「通訳がいればいいじゃない」
「はあ、議案ともなれば言い回しが難しい。前に通訳が議案が難しくうまく訳せず、誤った言葉を伝えたこと、わざと虚偽を含ませるようなことがあったんだ。だから通訳は余程でないと入れないことになっている」
サリーが分からない言葉の国であった場合は、通訳を付けるが、通訳はサリーの分かる言葉も出来る通訳だけと指定がある。
「あんたがそこに座ることはないけど、三ヶ国語が話せるようになったとしても、妃殿下から成り代わった女なら、妃殿下より優秀でならなければならない。せめて八ヶ国は話せないとね?どうする?」
「そもそも不貞がバレたら、他国からも苦情が来るだろうな」
「どうせ殿下だけじゃないんだろう?国外でもアバズレ未亡人って呼ばれるだろうな。自称可愛い末っ子ではなく、他称アバズレ未亡人として有名になりたいか?」
「よく考えなさい」
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