94 / 203
番外編1
ルアンナ・アズラー10
しおりを挟む
「会いません。あなたが反省しているか、この目で見に来ただけよ」
「伝わっていないかもしれないけど、反省はしているの」
「していないわ、これからは一緒に暮らしましょうと言ったら、あなた喜んで頷くでしょう?」
「当たり前じゃない、是非そうしましょう。勉強だって教えるわ」
ルアンナは分かり易くパッと明るい表を見せ、それを待っていたと言わんばかりだ。1歳で離れた娘は継母と上手くいっておらず、会いたかった、辛かった気持ちを吐露してくれるのではないかとすら想像していた。
「ほら、それが反省していない証拠じゃない。反省しているなら、私を思って、それは出来ないと言うべきじゃない」
「でも、あなたと一緒に暮らすことをずっと夢見ていたのよ」
「私はそんなこと一度も考えたことはないわ」
「そんな、待って」
シュリアはもう限界だと席を立ってしまい、スーミラがルアンナを遮るように、そっとシュリアの側に寄った。
「クリジアン公爵令嬢、お送りいたします」
「はい、スーミラ様」
「待って頂戴」
スーミラは絶対零度の視線でルアンナを睨み付け、シュリアを連れて行った。ルアンナは引き留めようとしたが、バタンと扉は閉じられ、控えていた使用人によって開くことはない。
「よく耐えました、相手にする方が疲れるでしょう」
「スーミラ様は疲れないのですか」
「私はあれを通常は五歳児ぐらいだと思って接しておりますから」
「なるほど」
シュリアは酷く疲れたが、ルイソードに言われた通り、自身の目で事実を確認し、改めてもう会うことはないと決めた。後ろ髪を引かれる思いが一切ない。
どうだったか、スーミラに話を聞こうと領地を訪れた両親は、溜息を付く姿を見て、すぐにやはりと思った。
「娘でも無理でした、あのまま生きていくしかないのでしょう。帰った後もどうして帰ったの?もっと話せば理解し合えたはずだと騒ぎました」
「もう駄目だな」「本当に情けない…」
「クリジアン公爵令嬢が立派に育っているだけでも良かったと思いなさい」
「…はい」「そうですね」
皆が完全に諦めた瞬間であった。
アズラー侯爵はルアンナを領地に送ってから、サリーに謝罪に訪れた。ティファナは謝罪をしたが、アズラー侯爵は当主として、しなければならない。
「申し訳ございませんでした」
「謝罪を受け取る気はないのですけど、聞きましたとだけ。もう二度と不要です」
「どう償えばいいか分からず」
「償わなくていいです。私は離縁ではなく、代理をして欲しかったのです。私の立場になって欲しかった、そう言えば分かりますか?」
「それは…」
「あんな暴言や暴力まで」
「ええ、正直当時は辛かったです。余程、ご自分に自信があるのだなと思っていたのです。なのに、どうして正妃になれないのか。不思議なくらいでしたが、三ヶ国語が話せないと知って、自意識過剰な者、そう思っておりました」
「はい、その通りです」
「私はルアンナが別にいいじゃないと、開き直ると思っていたのです。でも保身の方が大事だったのね」
そんな風に思っていたのか、だが行ったことを考えれば、ルアンナが謝ることなど、想像すらしていなかったのかもしれない。
「二度と顔を見せることはありません」
「私を恨んでいるでしょうね」
「あれにそのような資格はありません」
「私はティファナ先生には感謝を、侯爵にも思うところはありません。もちろん、嫡男ルトアス殿にも。ですから、アズラー侯爵家はきちんと働いてくださいね」
「ですが」
「ルトアス殿の結婚はそのままなさってください。私が言えば、力があるでしょう?意図はありませんから、心配なさらないで」
「ありがとうございます…申し訳ございませんでした…」
ルトアスの婚約者ノーリスへは既に説明をして、伯爵家に判断を仰いでいる段階であったが、ノーリスはルトアスから以前からルアンナのことを聞かされており、結婚を望んでくれていた。
「伝わっていないかもしれないけど、反省はしているの」
「していないわ、これからは一緒に暮らしましょうと言ったら、あなた喜んで頷くでしょう?」
「当たり前じゃない、是非そうしましょう。勉強だって教えるわ」
ルアンナは分かり易くパッと明るい表を見せ、それを待っていたと言わんばかりだ。1歳で離れた娘は継母と上手くいっておらず、会いたかった、辛かった気持ちを吐露してくれるのではないかとすら想像していた。
「ほら、それが反省していない証拠じゃない。反省しているなら、私を思って、それは出来ないと言うべきじゃない」
「でも、あなたと一緒に暮らすことをずっと夢見ていたのよ」
「私はそんなこと一度も考えたことはないわ」
「そんな、待って」
シュリアはもう限界だと席を立ってしまい、スーミラがルアンナを遮るように、そっとシュリアの側に寄った。
「クリジアン公爵令嬢、お送りいたします」
「はい、スーミラ様」
「待って頂戴」
スーミラは絶対零度の視線でルアンナを睨み付け、シュリアを連れて行った。ルアンナは引き留めようとしたが、バタンと扉は閉じられ、控えていた使用人によって開くことはない。
「よく耐えました、相手にする方が疲れるでしょう」
「スーミラ様は疲れないのですか」
「私はあれを通常は五歳児ぐらいだと思って接しておりますから」
「なるほど」
シュリアは酷く疲れたが、ルイソードに言われた通り、自身の目で事実を確認し、改めてもう会うことはないと決めた。後ろ髪を引かれる思いが一切ない。
どうだったか、スーミラに話を聞こうと領地を訪れた両親は、溜息を付く姿を見て、すぐにやはりと思った。
「娘でも無理でした、あのまま生きていくしかないのでしょう。帰った後もどうして帰ったの?もっと話せば理解し合えたはずだと騒ぎました」
「もう駄目だな」「本当に情けない…」
「クリジアン公爵令嬢が立派に育っているだけでも良かったと思いなさい」
「…はい」「そうですね」
皆が完全に諦めた瞬間であった。
アズラー侯爵はルアンナを領地に送ってから、サリーに謝罪に訪れた。ティファナは謝罪をしたが、アズラー侯爵は当主として、しなければならない。
「申し訳ございませんでした」
「謝罪を受け取る気はないのですけど、聞きましたとだけ。もう二度と不要です」
「どう償えばいいか分からず」
「償わなくていいです。私は離縁ではなく、代理をして欲しかったのです。私の立場になって欲しかった、そう言えば分かりますか?」
「それは…」
「あんな暴言や暴力まで」
「ええ、正直当時は辛かったです。余程、ご自分に自信があるのだなと思っていたのです。なのに、どうして正妃になれないのか。不思議なくらいでしたが、三ヶ国語が話せないと知って、自意識過剰な者、そう思っておりました」
「はい、その通りです」
「私はルアンナが別にいいじゃないと、開き直ると思っていたのです。でも保身の方が大事だったのね」
そんな風に思っていたのか、だが行ったことを考えれば、ルアンナが謝ることなど、想像すらしていなかったのかもしれない。
「二度と顔を見せることはありません」
「私を恨んでいるでしょうね」
「あれにそのような資格はありません」
「私はティファナ先生には感謝を、侯爵にも思うところはありません。もちろん、嫡男ルトアス殿にも。ですから、アズラー侯爵家はきちんと働いてくださいね」
「ですが」
「ルトアス殿の結婚はそのままなさってください。私が言えば、力があるでしょう?意図はありませんから、心配なさらないで」
「ありがとうございます…申し訳ございませんでした…」
ルトアスの婚約者ノーリスへは既に説明をして、伯爵家に判断を仰いでいる段階であったが、ノーリスはルトアスから以前からルアンナのことを聞かされており、結婚を望んでくれていた。
308
お気に入りに追加
6,884
あなたにおすすめの小説
巻き戻り令嬢は長生きしたい。二度目の人生はあなた達を愛しません
せいめ
恋愛
「アナ、君と私の婚約を解消することに決まった」
王太子殿下は、今にも泣きそうな顔だった。
「王太子殿下、貴方の婚約者として過ごした時間はとても幸せでした。ありがとうございました。
どうか、隣国の王女殿下とお幸せになって下さいませ。」
「私も君といる時間は幸せだった…。
本当に申し訳ない…。
君の幸せを心から祈っているよ。」
婚約者だった王太子殿下が大好きだった。
しかし国際情勢が不安定になり、隣国との関係を強固にするため、急遽、隣国の王女殿下と王太子殿下との政略結婚をすることが決まり、私との婚約は解消されることになったのだ。
しかし殿下との婚約解消のすぐ後、私は王命で別の婚約者を決められることになる。
新しい婚約者は殿下の側近の公爵令息。その方とは個人的に話をしたことは少なかったが、見目麗しく優秀な方だという印象だった。
婚約期間は異例の短さで、すぐに結婚することになる。きっと殿下の婚姻の前に、元婚約者の私を片付けたかったのだろう。
しかし王命での結婚でありながらも、旦那様は妻の私をとても大切にしてくれた。
少しずつ彼への愛を自覚し始めた時…
貴方に好きな人がいたなんて知らなかった。
王命だから、好きな人を諦めて私と結婚したのね。
愛し合う二人を邪魔してごめんなさい…
そんな時、私は徐々に体調が悪くなり、ついには寝込むようになってしまった。後で知ることになるのだが、私は少しずつ毒を盛られていたのだ。
旦那様は仕事で隣国に行っていて、しばらくは戻らないので頼れないし、毒を盛った犯人が誰なのかも分からない。
そんな私を助けてくれたのは、実家の侯爵家を継ぐ義兄だった…。
毒で自分の死が近いことを悟った私は思った。
今世ではあの人達と関わったことが全ての元凶だった。もし来世があるならば、あの人達とは絶対に関わらない。
それよりも、こんな私を最後まで見捨てることなく面倒を見てくれた義兄には感謝したい。
そして私は死んだはずだった…。
あれ?死んだと思っていたのに、私は生きてる。しかもなぜか10歳の頃に戻っていた。
これはもしかしてやり直しのチャンス?
元々はお転婆で割と自由に育ってきたんだし、あの自分を押し殺した王妃教育とかもうやりたくたい。
よし!殿下や公爵とは今世では関わらないで、平和に長生きするからね!
しかし、私は気付いていなかった。
自分以外にも、一度目の記憶を持つ者がいることに…。
一度目は暗めですが、二度目の人生は明るくしたいです。
誤字脱字、申し訳ありません。
相変わらず緩い設定です。
あなたが望んだ、ただそれだけ
cyaru
恋愛
いつものように王城に妃教育に行ったカーメリアは王太子が侯爵令嬢と茶会をしているのを目にする。日に日に大きくなる次の教育が始まらない事に対する焦り。
国王夫妻に呼ばれ両親と共に登城すると婚約の解消を言い渡される。
カーメリアの両親はそれまでの所業が腹に据えかねていた事もあり、領地も売り払い夫人の実家のある隣国へ移住を決めた。
王太子イデオットの悪意なき本音はカーメリアの心を粉々に打ち砕いてしまった。
失意から寝込みがちになったカーメリアに追い打ちをかけるように見舞いに来た王太子イデオットとエンヴィー侯爵令嬢は更に悪意のない本音をカーメリアに浴びせた。
公爵はイデオットの態度に激昂し、処刑を覚悟で2人を叩きだしてしまった。
逃げるように移り住んだリアーノ国で静かに静養をしていたが、そこに1人の男性が現れた。
♡注意事項~この話を読む前に~♡
※胸糞展開ありますが、クールダウンお願いします。
心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。
※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義です。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。イラっとしたら現実に戻ってください。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
裏切りの代償
志波 連
恋愛
伯爵令嬢であるキャンディは婚約者ニックの浮気を知り、婚約解消を願い出るが1年間の再教育を施すというニックの父親の言葉に願いを取り下げ、家出を決行した。
家庭教師という職を得て充実した日々を送るキャンディの前に父親が現れた。
連れ帰られ無理やりニックと結婚させられたキャンディだったが、子供もできてこれも人生だと思い直し、ニックの妻として人生を全うしようとする。
しかしある日ニックが浮気をしていることをしり、我慢の限界を迎えたキャンディは、友人の手を借りながら人生を切り開いていくのだった。
他サイトでも掲載しています。
R15を保険で追加しました。
表紙は写真AC様よりダウンロードしました。
どうやら婚約者が私と婚約したくなかったようなので婚約解消させて頂きます。後、うちを金蔓にしようとした事はゆるしません
しげむろ ゆうき
恋愛
ある日、婚約者アルバン様が私の事を悪く言ってる場面に遭遇してしまい、ショックで落ち込んでしまう。
しかもアルバン様が悪口を言っている時に側にいたのは、美しき銀狼、又は冷酷な牙とあだ名が付けられ恐れられている、この国の第三王子ランドール・ウルフイット様だったのだ。
だから、問い詰めようにもきっと関わってくるであろう第三王子が怖くて、私は誰にも相談できずにいたのだがなぜか第三王子が……。
○○sideあり
全20話
【完結】愛も信頼も壊れて消えた
miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」
王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。
無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。
だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。
婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。
私は彼の事が好きだった。
優しい人だと思っていた。
だけど───。
彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。
※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。
あなたへの想いを終わりにします
四折 柊
恋愛
シエナは王太子アドリアンの婚約者として体の弱い彼を支えてきた。だがある日彼は視察先で倒れそこで男爵令嬢に看病される。彼女の献身的な看病で医者に見放されていた病が治りアドリアンは健康を手に入れた。男爵令嬢は殿下を治癒した聖女と呼ばれ王城に招かれることになった。いつしかアドリアンは男爵令嬢に夢中になり彼女を正妃に迎えたいと言い出す。男爵令嬢では妃としての能力に問題がある。だからシエナには側室として彼女を支えてほしいと言われた。シエナは今までの献身と恋心を踏み躙られた絶望で彼らの目の前で自身の胸を短剣で刺した…………。(全13話)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる