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番外編1
ルアンナ・アズラー10
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「会いません。あなたが反省しているか、この目で見に来ただけよ」
「伝わっていないかもしれないけど、反省はしているの」
「していないわ、これからは一緒に暮らしましょうと言ったら、あなた喜んで頷くでしょう?」
「当たり前じゃない、是非そうしましょう。勉強だって教えるわ」
ルアンナは分かり易くパッと明るい表を見せ、それを待っていたと言わんばかりだ。1歳で離れた娘は継母と上手くいっておらず、会いたかった、辛かった気持ちを吐露してくれるのではないかとすら想像していた。
「ほら、それが反省していない証拠じゃない。反省しているなら、私を思って、それは出来ないと言うべきじゃない」
「でも、あなたと一緒に暮らすことをずっと夢見ていたのよ」
「私はそんなこと一度も考えたことはないわ」
「そんな、待って」
シュリアはもう限界だと席を立ってしまい、スーミラがルアンナを遮るように、そっとシュリアの側に寄った。
「クリジアン公爵令嬢、お送りいたします」
「はい、スーミラ様」
「待って頂戴」
スーミラは絶対零度の視線でルアンナを睨み付け、シュリアを連れて行った。ルアンナは引き留めようとしたが、バタンと扉は閉じられ、控えていた使用人によって開くことはない。
「よく耐えました、相手にする方が疲れるでしょう」
「スーミラ様は疲れないのですか」
「私はあれを通常は五歳児ぐらいだと思って接しておりますから」
「なるほど」
シュリアは酷く疲れたが、ルイソードに言われた通り、自身の目で事実を確認し、改めてもう会うことはないと決めた。後ろ髪を引かれる思いが一切ない。
どうだったか、スーミラに話を聞こうと領地を訪れた両親は、溜息を付く姿を見て、すぐにやはりと思った。
「娘でも無理でした、あのまま生きていくしかないのでしょう。帰った後もどうして帰ったの?もっと話せば理解し合えたはずだと騒ぎました」
「もう駄目だな」「本当に情けない…」
「クリジアン公爵令嬢が立派に育っているだけでも良かったと思いなさい」
「…はい」「そうですね」
皆が完全に諦めた瞬間であった。
アズラー侯爵はルアンナを領地に送ってから、サリーに謝罪に訪れた。ティファナは謝罪をしたが、アズラー侯爵は当主として、しなければならない。
「申し訳ございませんでした」
「謝罪を受け取る気はないのですけど、聞きましたとだけ。もう二度と不要です」
「どう償えばいいか分からず」
「償わなくていいです。私は離縁ではなく、代理をして欲しかったのです。私の立場になって欲しかった、そう言えば分かりますか?」
「それは…」
「あんな暴言や暴力まで」
「ええ、正直当時は辛かったです。余程、ご自分に自信があるのだなと思っていたのです。なのに、どうして正妃になれないのか。不思議なくらいでしたが、三ヶ国語が話せないと知って、自意識過剰な者、そう思っておりました」
「はい、その通りです」
「私はルアンナが別にいいじゃないと、開き直ると思っていたのです。でも保身の方が大事だったのね」
そんな風に思っていたのか、だが行ったことを考えれば、ルアンナが謝ることなど、想像すらしていなかったのかもしれない。
「二度と顔を見せることはありません」
「私を恨んでいるでしょうね」
「あれにそのような資格はありません」
「私はティファナ先生には感謝を、侯爵にも思うところはありません。もちろん、嫡男ルトアス殿にも。ですから、アズラー侯爵家はきちんと働いてくださいね」
「ですが」
「ルトアス殿の結婚はそのままなさってください。私が言えば、力があるでしょう?意図はありませんから、心配なさらないで」
「ありがとうございます…申し訳ございませんでした…」
ルトアスの婚約者ノーリスへは既に説明をして、伯爵家に判断を仰いでいる段階であったが、ノーリスはルトアスから以前からルアンナのことを聞かされており、結婚を望んでくれていた。
「伝わっていないかもしれないけど、反省はしているの」
「していないわ、これからは一緒に暮らしましょうと言ったら、あなた喜んで頷くでしょう?」
「当たり前じゃない、是非そうしましょう。勉強だって教えるわ」
ルアンナは分かり易くパッと明るい表を見せ、それを待っていたと言わんばかりだ。1歳で離れた娘は継母と上手くいっておらず、会いたかった、辛かった気持ちを吐露してくれるのではないかとすら想像していた。
「ほら、それが反省していない証拠じゃない。反省しているなら、私を思って、それは出来ないと言うべきじゃない」
「でも、あなたと一緒に暮らすことをずっと夢見ていたのよ」
「私はそんなこと一度も考えたことはないわ」
「そんな、待って」
シュリアはもう限界だと席を立ってしまい、スーミラがルアンナを遮るように、そっとシュリアの側に寄った。
「クリジアン公爵令嬢、お送りいたします」
「はい、スーミラ様」
「待って頂戴」
スーミラは絶対零度の視線でルアンナを睨み付け、シュリアを連れて行った。ルアンナは引き留めようとしたが、バタンと扉は閉じられ、控えていた使用人によって開くことはない。
「よく耐えました、相手にする方が疲れるでしょう」
「スーミラ様は疲れないのですか」
「私はあれを通常は五歳児ぐらいだと思って接しておりますから」
「なるほど」
シュリアは酷く疲れたが、ルイソードに言われた通り、自身の目で事実を確認し、改めてもう会うことはないと決めた。後ろ髪を引かれる思いが一切ない。
どうだったか、スーミラに話を聞こうと領地を訪れた両親は、溜息を付く姿を見て、すぐにやはりと思った。
「娘でも無理でした、あのまま生きていくしかないのでしょう。帰った後もどうして帰ったの?もっと話せば理解し合えたはずだと騒ぎました」
「もう駄目だな」「本当に情けない…」
「クリジアン公爵令嬢が立派に育っているだけでも良かったと思いなさい」
「…はい」「そうですね」
皆が完全に諦めた瞬間であった。
アズラー侯爵はルアンナを領地に送ってから、サリーに謝罪に訪れた。ティファナは謝罪をしたが、アズラー侯爵は当主として、しなければならない。
「申し訳ございませんでした」
「謝罪を受け取る気はないのですけど、聞きましたとだけ。もう二度と不要です」
「どう償えばいいか分からず」
「償わなくていいです。私は離縁ではなく、代理をして欲しかったのです。私の立場になって欲しかった、そう言えば分かりますか?」
「それは…」
「あんな暴言や暴力まで」
「ええ、正直当時は辛かったです。余程、ご自分に自信があるのだなと思っていたのです。なのに、どうして正妃になれないのか。不思議なくらいでしたが、三ヶ国語が話せないと知って、自意識過剰な者、そう思っておりました」
「はい、その通りです」
「私はルアンナが別にいいじゃないと、開き直ると思っていたのです。でも保身の方が大事だったのね」
そんな風に思っていたのか、だが行ったことを考えれば、ルアンナが謝ることなど、想像すらしていなかったのかもしれない。
「二度と顔を見せることはありません」
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「あれにそのような資格はありません」
「私はティファナ先生には感謝を、侯爵にも思うところはありません。もちろん、嫡男ルトアス殿にも。ですから、アズラー侯爵家はきちんと働いてくださいね」
「ですが」
「ルトアス殿の結婚はそのままなさってください。私が言えば、力があるでしょう?意図はありませんから、心配なさらないで」
「ありがとうございます…申し訳ございませんでした…」
ルトアスの婚約者ノーリスへは既に説明をして、伯爵家に判断を仰いでいる段階であったが、ノーリスはルトアスから以前からルアンナのことを聞かされており、結婚を望んでくれていた。
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