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番外編1

ルアンナ・アズラー7

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「自身が死ねば、理由を探す者がいるかもしれない。その際に娘の言葉や暴力が理由の一つになるだろうと…」
「そんな…」
「他の者からも暴言はあったそうですが、あの子をやったことが薄れるわけではありません。私は王太子妃教育の担当でありながら、娘が死に追いやろうとしているなどと、思ってもいませんでした。罪深い、心からそう思っています」
「…」
「私も娘のしたことで、身体が不自由になっていたり、自害されていたらと考えました。ですが、現在生きてらっしゃるから、言えた言葉でした。妃殿下はこうおっしゃっていたそうです。『きっと誰も気付かない、私に蓄積された毒のようなものだったように思います』と」

 ティファナはルイソードに話を聞きながら、何も言うことが出来なかった。でもルイソードもあなた方も知っておくべきだと全てを話した。

「妃殿下は…私と…どんな気持ちで話していたのでしょうか…」
「妃殿下はあなたの産みの母親のことで、何か思う方ではありません。これは断言できます」
「ですが」
「私たち夫婦にもそう言ったのですよ、私たちは育てた親だというのに。妃殿下は何か気になることでも言いましたか?」
「いいえ、ついコルボリットの話をしたら、お忙しいのに、とても嬉しそうに話を続けてくださいました」
「ええ、それが妃殿下の気持ちです」

 ルアンナも、アズラー侯爵家に何の咎もなかったサリーが、ルイソードとも親しく付き合っているのに、ルアンナの娘だからと嫌がらせをすることはない。嫌がらせなど、自身がされて嫌だった最低の記憶のはずだ。

「でも血が繋がっていることが、辛い、不愉快だと思っても仕方ありません」
「…それは、はい。信じられない、そんなことをする人がいるなんて信じらないという意味の方です」
「はい」
「最低です、なぜそんなことをして、のうのうと父と結婚出来たのか」

 シュリアは産みの母親との結婚は、親同士の決めたもので、愛し合っていたとは言えないと聞いていたが、父がそんな女性と結婚したのか、分からないと思っていた。

「ええ、まだこの話は娘にはしていません。きっと話しても、死んでもいないのに大袈裟だと言い兼ねない、私も夫もそう思っています」
「なんで…」
「今、私の姉であるスーミラという者が娘のいる邸におります。その者に言わせると、心が腐っているそうです」
「えっ、あ」
「とても厳しい人でして、それなのに夫の不貞に悩まされて、さらに厳しい人になりまして、ぴしゃりと言ってやったそうです」
「強そうな、方ですね」
「はい、信頼できる、情に厚い姉です。彼女がしっかり見張っています。これ以上、愚かな者にさせることも、迷惑を掛けることもありません」

 スーミラは出て行けばいいなどとは言うが、ルアンナが出て行かないことを分かっている。全てスーミラの掌の上で転がされているのだ。

「ここまで聞いて、娘に会う気はありますか?お父上からはあなたに決めて貰うように伝えたと聞いています。私たちは無理に会う必要はないと思っています」
「事実、を見たいとは思いました」
「事実?」
「過ちはようやく聞けました、その後です」
「そうですか、今日決めることはないですから、もし会う気持ちが変わらなければ、連絡をくださいとお父様に伝えてください」
「分かりました、ありがとうございました」
「いえ、こちらこそ、長々と聞いてもらってありがとうございました」

 邸から出て、馬車に向かうシュリアは思い出したかのように、夫妻に振り返った。

「誕生日の贈り物。父から聞きました、ありがとうございます。人形は今でも部屋に飾っています」
「そうですか…こちらも、嬉しいです」

 ティファナは声にならない状態で、夫妻はシュリアを見送りながら、立派になって、本当に良かったと大粒の涙を流した。
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