91 / 203
番外編1
ルアンナ・アズラー7
しおりを挟む
「自身が死ねば、理由を探す者がいるかもしれない。その際に娘の言葉や暴力が理由の一つになるだろうと…」
「そんな…」
「他の者からも暴言はあったそうですが、あの子をやったことが薄れるわけではありません。私は王太子妃教育の担当でありながら、娘が死に追いやろうとしているなどと、思ってもいませんでした。罪深い、心からそう思っています」
「…」
「私も娘のしたことで、身体が不自由になっていたり、自害されていたらと考えました。ですが、現在生きてらっしゃるから、言えた言葉でした。妃殿下はこうおっしゃっていたそうです。『きっと誰も気付かない、私に蓄積された毒のようなものだったように思います』と」
ティファナはルイソードに話を聞きながら、何も言うことが出来なかった。でもルイソードもあなた方も知っておくべきだと全てを話した。
「妃殿下は…私と…どんな気持ちで話していたのでしょうか…」
「妃殿下はあなたの産みの母親のことで、何か思う方ではありません。これは断言できます」
「ですが」
「私たち夫婦にもそう言ったのですよ、私たちは育てた親だというのに。妃殿下は何か気になることでも言いましたか?」
「いいえ、ついコルボリットの話をしたら、お忙しいのに、とても嬉しそうに話を続けてくださいました」
「ええ、それが妃殿下の気持ちです」
ルアンナも、アズラー侯爵家に何の咎もなかったサリーが、ルイソードとも親しく付き合っているのに、ルアンナの娘だからと嫌がらせをすることはない。嫌がらせなど、自身がされて嫌だった最低の記憶のはずだ。
「でも血が繋がっていることが、辛い、不愉快だと思っても仕方ありません」
「…それは、はい。信じられない、そんなことをする人がいるなんて信じらないという意味の方です」
「はい」
「最低です、なぜそんなことをして、のうのうと父と結婚出来たのか」
シュリアは産みの母親との結婚は、親同士の決めたもので、愛し合っていたとは言えないと聞いていたが、父がそんな女性と結婚したのか、分からないと思っていた。
「ええ、まだこの話は娘にはしていません。きっと話しても、死んでもいないのに大袈裟だと言い兼ねない、私も夫もそう思っています」
「なんで…」
「今、私の姉であるスーミラという者が娘のいる邸におります。その者に言わせると、心が腐っているそうです」
「えっ、あ」
「とても厳しい人でして、それなのに夫の不貞に悩まされて、さらに厳しい人になりまして、ぴしゃりと言ってやったそうです」
「強そうな、方ですね」
「はい、信頼できる、情に厚い姉です。彼女がしっかり見張っています。これ以上、愚かな者にさせることも、迷惑を掛けることもありません」
スーミラは出て行けばいいなどとは言うが、ルアンナが出て行かないことを分かっている。全てスーミラの掌の上で転がされているのだ。
「ここまで聞いて、娘に会う気はありますか?お父上からはあなたに決めて貰うように伝えたと聞いています。私たちは無理に会う必要はないと思っています」
「事実、を見たいとは思いました」
「事実?」
「過ちはようやく聞けました、その後です」
「そうですか、今日決めることはないですから、もし会う気持ちが変わらなければ、連絡をくださいとお父様に伝えてください」
「分かりました、ありがとうございました」
「いえ、こちらこそ、長々と聞いてもらってありがとうございました」
邸から出て、馬車に向かうシュリアは思い出したかのように、夫妻に振り返った。
「誕生日の贈り物。父から聞きました、ありがとうございます。人形は今でも部屋に飾っています」
「そうですか…こちらも、嬉しいです」
ティファナは声にならない状態で、夫妻はシュリアを見送りながら、立派になって、本当に良かったと大粒の涙を流した。
「そんな…」
「他の者からも暴言はあったそうですが、あの子をやったことが薄れるわけではありません。私は王太子妃教育の担当でありながら、娘が死に追いやろうとしているなどと、思ってもいませんでした。罪深い、心からそう思っています」
「…」
「私も娘のしたことで、身体が不自由になっていたり、自害されていたらと考えました。ですが、現在生きてらっしゃるから、言えた言葉でした。妃殿下はこうおっしゃっていたそうです。『きっと誰も気付かない、私に蓄積された毒のようなものだったように思います』と」
ティファナはルイソードに話を聞きながら、何も言うことが出来なかった。でもルイソードもあなた方も知っておくべきだと全てを話した。
「妃殿下は…私と…どんな気持ちで話していたのでしょうか…」
「妃殿下はあなたの産みの母親のことで、何か思う方ではありません。これは断言できます」
「ですが」
「私たち夫婦にもそう言ったのですよ、私たちは育てた親だというのに。妃殿下は何か気になることでも言いましたか?」
「いいえ、ついコルボリットの話をしたら、お忙しいのに、とても嬉しそうに話を続けてくださいました」
「ええ、それが妃殿下の気持ちです」
ルアンナも、アズラー侯爵家に何の咎もなかったサリーが、ルイソードとも親しく付き合っているのに、ルアンナの娘だからと嫌がらせをすることはない。嫌がらせなど、自身がされて嫌だった最低の記憶のはずだ。
「でも血が繋がっていることが、辛い、不愉快だと思っても仕方ありません」
「…それは、はい。信じられない、そんなことをする人がいるなんて信じらないという意味の方です」
「はい」
「最低です、なぜそんなことをして、のうのうと父と結婚出来たのか」
シュリアは産みの母親との結婚は、親同士の決めたもので、愛し合っていたとは言えないと聞いていたが、父がそんな女性と結婚したのか、分からないと思っていた。
「ええ、まだこの話は娘にはしていません。きっと話しても、死んでもいないのに大袈裟だと言い兼ねない、私も夫もそう思っています」
「なんで…」
「今、私の姉であるスーミラという者が娘のいる邸におります。その者に言わせると、心が腐っているそうです」
「えっ、あ」
「とても厳しい人でして、それなのに夫の不貞に悩まされて、さらに厳しい人になりまして、ぴしゃりと言ってやったそうです」
「強そうな、方ですね」
「はい、信頼できる、情に厚い姉です。彼女がしっかり見張っています。これ以上、愚かな者にさせることも、迷惑を掛けることもありません」
スーミラは出て行けばいいなどとは言うが、ルアンナが出て行かないことを分かっている。全てスーミラの掌の上で転がされているのだ。
「ここまで聞いて、娘に会う気はありますか?お父上からはあなたに決めて貰うように伝えたと聞いています。私たちは無理に会う必要はないと思っています」
「事実、を見たいとは思いました」
「事実?」
「過ちはようやく聞けました、その後です」
「そうですか、今日決めることはないですから、もし会う気持ちが変わらなければ、連絡をくださいとお父様に伝えてください」
「分かりました、ありがとうございました」
「いえ、こちらこそ、長々と聞いてもらってありがとうございました」
邸から出て、馬車に向かうシュリアは思い出したかのように、夫妻に振り返った。
「誕生日の贈り物。父から聞きました、ありがとうございます。人形は今でも部屋に飾っています」
「そうですか…こちらも、嬉しいです」
ティファナは声にならない状態で、夫妻はシュリアを見送りながら、立派になって、本当に良かったと大粒の涙を流した。
525
お気に入りに追加
7,120
あなたにおすすめの小説
君のためだと言われても、少しも嬉しくありません
みみぢあん
恋愛
子爵家の令嬢マリオンの婚約者、アルフレッド卿が王族の護衛で隣国へ行くが、任期がながびき帰国できなくなり婚約を解消することになった。 すぐにノエル卿と2度目の婚約が決まったが、結婚を目前にして家庭の事情で2人は…… 暗い流れがつづきます。 ざまぁでスカッ… とされたい方には不向きのお話です。ご注意を😓

思い出してしまったのです
月樹《つき》
恋愛
同じ姉妹なのに、私だけ愛されない。
妹のルルだけが特別なのはどうして?
婚約者のレオナルド王子も、どうして妹ばかり可愛がるの?
でもある時、鏡を見て思い出してしまったのです。
愛されないのは当然です。
だって私は…。
さよなら、皆さん。今宵、私はここを出ていきます
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【復讐の為、今夜私は偽の家族と婚約者に別れを告げる―】
私は伯爵令嬢フィーネ・アドラー。優しい両親と18歳になったら結婚する予定の婚約者がいた。しかし、幸せな生活は両親の突然の死により、もろくも崩れ去る。私の後見人になると言って城に上がり込んできた叔父夫婦とその娘。私は彼らによって全てを奪われてしまった。愛する婚約者までも。
もうこれ以上は限界だった。復讐する為、私は今夜皆に別れを告げる決意をした―。
※マークは残酷シーン有り
※(他サイトでも投稿中)
婚約破棄を望むなら〜私の愛した人はあなたじゃありません〜
みおな
恋愛
王家主催のパーティーにて、私の婚約者がやらかした。
「お前との婚約を破棄する!!」
私はこの馬鹿何言っているんだと思いながらも、婚約破棄を受け入れてやった。
だって、私は何ひとつ困らない。
困るのは目の前でふんぞり返っている元婚約者なのだから。

【完結】断罪された悪役令嬢は、全てを捨てる事にした
miniko
恋愛
悪役令嬢に生まれ変わったのだと気付いた時、私は既に王太子の婚約者になった後だった。
婚約回避は手遅れだったが、思いの外、彼と円満な関係を築く。
(ゲーム通りになるとは限らないのかも)
・・・とか思ってたら、学園入学後に状況は激変。
周囲に疎まれる様になり、まんまと卒業パーティーで断罪&婚約破棄のテンプレ展開。
馬鹿馬鹿しい。こんな国、こっちから捨ててやろう。
冤罪を晴らして、意気揚々と単身で出国しようとするのだが、ある人物に捕まって・・・。
強制力と言う名の運命に翻弄される私は、幸せになれるのか!?
※感想欄はネタバレあり/なし の振り分けをしていません。本編より先にお読みになる場合はご注意ください。

絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

魔法のせいだから許して?
ましろ
恋愛
リーゼロッテの婚約者であるジークハルト王子の突然の心変わり。嫌悪を顕にした眼差し、口を開けば暴言、身に覚えの無い出来事までリーゼのせいにされる。リーゼは学園で孤立し、ジークハルトは美しい女性の手を取り愛おしそうに見つめながら愛を囁く。
どうしてこんなことに?それでもきっと今だけ……そう、自分に言い聞かせて耐えた。でも、そろそろ一年。もう終わらせたい、そう思っていたある日、リーゼは殿下に罵倒され頬を張られ怪我をした。
──もう無理。王妃様に頼み、なんとか婚約解消することができた。
しかしその後、彼の心変わりは魅了魔法のせいだと分かり……
魔法のせいなら許せる?
基本ご都合主義。ゆるゆる設定です。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる