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番外編1
ルアンナ・アズラー8
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ルアンナはここへ両親が来る度にシュリアに会いたいと伝えていた、そしてついに了承してくれたことが知らされた。王都ではなく、シュリアがやって来ることになった。馬車から降りて来る娘を、今か今かと待っていたルアンナが見つめる。
「シュリア…大きくなって」
一歳から会っていない娘だ、一気に十五歳になってしまったのだ。スーミラは後ろに控えており、前侯爵夫妻は邸から、姿だけでもと見ている。
ついにルアンナの目の前に立つ、シュリア。
「お母様よ」
「…」
ルアンナはシュリアから来てくれるなら、抱きしめたかったが、シュリアは近づくこともなく、軽い会釈をしただけで、邸でもルアンナと距離を開けて歩き、応接室で向かい合って座った。
「私のことなんて、憶えていないでしょうね」
「ええ、憶えておりません。産んでくれたことに感謝はしますが、それで良かったと思っております」
「えっ、何か誰かに言われたの?」
「事実を、全て聞いています」
「あっ、でも全てが事実だと思ってはいけないわ」
「事実でしょう?王太子妃殿下に暴言、暴力。身の程知らず、それがルアンナ・アズラーではありませんか?」
シュリアはこの数分で、ルアンナは反省していないことを察していた。
「あの頃は若かったの、だから分別が付いていなくて」
「私も同じくらいの年ですが、王子殿下の婚約者にあのようなことを言ったり、ましてや暴力など、あり得ませんけど」
「それは気持ちがないからでしょう?私は殿下を慕っていたから」
「それがそもそも過ちでしょう。あなたには婚約者がいた、もしくは出来たはずです。にも拘らず、不貞を犯した。嫌ならば、婚約を解消すればよかったではありませんか、お父様を煩わせることもなかったのですよ?」
落ち着いているようで、まだ十五歳。目が吊り上がり、怒りに震えていた。
「そんな、落ち着いて頂戴。私はあなたを愛して育てていたのですよ」
「そうですか、だからといって罪が消えるのですか」
「そうではないけど…相手が王太子妃殿下でしょう?デタラメがあっても、あちらが信用されてしまうのよ?だから全てが本当ではないの」
「どこがデタラメなのですか?教えてください」
「ええ、そうね!ええっと、そうよ、私が殿下を誘ったと聞いていない?」
「はい、そう聞いています」
「殿下から誘われたのよ」
「それは嘘だったと聞いています。父に言ったんですよね、苦し紛れに」
「本当に誘われたの…」
「思い出が欲しいと誘ったんでしょう?気持ち悪い」
これもアズラー侯爵夫妻がルイソードから、やはり誘われたというのは、嘘だったと聞かされていた。ルアンナは話をされているとは思っていない。
応接室には会話には入ることはしないが、スーミラが見張りとして控えており、シュリアの視界に頷く姿が見える。
「もし、婚約中に父が誰かに思い出が欲しいと、女性を誘っていたらと考えたことはありますか?」
「彼は真面目だから」
「では想像してみてください。あなたと婚約中に、好いた令嬢に、最後の思い出だと誘う姿を」
「えっ、でも…」
「気持ち悪いと思いませんか?思えないのですか?想像力もないのですか?」
「彼はそんなことをしないから」
ルイソードは私を愛していたから、絶対にそのようなことはなしない自信があった。だから、想像も出来ない。
「想像力もないから、暴言、暴力、不貞までが出来たのですね」
「それは、違うわ」
「違わないです。あなたの行動で、多くの人を傷付け、辛い目に遭わせていることが分からないのですか」
「あの頃は若くて、考えも乏しかったの」
「だったら、若くない今、どうして嘘を付くのですか」
「あなたに嫌われたくなくて…」
ルアンナはぽろりと涙を零したが、シュリアには不快にしか感じなかった。
「シュリア…大きくなって」
一歳から会っていない娘だ、一気に十五歳になってしまったのだ。スーミラは後ろに控えており、前侯爵夫妻は邸から、姿だけでもと見ている。
ついにルアンナの目の前に立つ、シュリア。
「お母様よ」
「…」
ルアンナはシュリアから来てくれるなら、抱きしめたかったが、シュリアは近づくこともなく、軽い会釈をしただけで、邸でもルアンナと距離を開けて歩き、応接室で向かい合って座った。
「私のことなんて、憶えていないでしょうね」
「ええ、憶えておりません。産んでくれたことに感謝はしますが、それで良かったと思っております」
「えっ、何か誰かに言われたの?」
「事実を、全て聞いています」
「あっ、でも全てが事実だと思ってはいけないわ」
「事実でしょう?王太子妃殿下に暴言、暴力。身の程知らず、それがルアンナ・アズラーではありませんか?」
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「あの頃は若かったの、だから分別が付いていなくて」
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「それは気持ちがないからでしょう?私は殿下を慕っていたから」
「それがそもそも過ちでしょう。あなたには婚約者がいた、もしくは出来たはずです。にも拘らず、不貞を犯した。嫌ならば、婚約を解消すればよかったではありませんか、お父様を煩わせることもなかったのですよ?」
落ち着いているようで、まだ十五歳。目が吊り上がり、怒りに震えていた。
「そんな、落ち着いて頂戴。私はあなたを愛して育てていたのですよ」
「そうですか、だからといって罪が消えるのですか」
「そうではないけど…相手が王太子妃殿下でしょう?デタラメがあっても、あちらが信用されてしまうのよ?だから全てが本当ではないの」
「どこがデタラメなのですか?教えてください」
「ええ、そうね!ええっと、そうよ、私が殿下を誘ったと聞いていない?」
「はい、そう聞いています」
「殿下から誘われたのよ」
「それは嘘だったと聞いています。父に言ったんですよね、苦し紛れに」
「本当に誘われたの…」
「思い出が欲しいと誘ったんでしょう?気持ち悪い」
これもアズラー侯爵夫妻がルイソードから、やはり誘われたというのは、嘘だったと聞かされていた。ルアンナは話をされているとは思っていない。
応接室には会話には入ることはしないが、スーミラが見張りとして控えており、シュリアの視界に頷く姿が見える。
「もし、婚約中に父が誰かに思い出が欲しいと、女性を誘っていたらと考えたことはありますか?」
「彼は真面目だから」
「では想像してみてください。あなたと婚約中に、好いた令嬢に、最後の思い出だと誘う姿を」
「えっ、でも…」
「気持ち悪いと思いませんか?思えないのですか?想像力もないのですか?」
「彼はそんなことをしないから」
ルイソードは私を愛していたから、絶対にそのようなことはなしない自信があった。だから、想像も出来ない。
「想像力もないから、暴言、暴力、不貞までが出来たのですね」
「それは、違うわ」
「違わないです。あなたの行動で、多くの人を傷付け、辛い目に遭わせていることが分からないのですか」
「あの頃は若くて、考えも乏しかったの」
「だったら、若くない今、どうして嘘を付くのですか」
「あなたに嫌われたくなくて…」
ルアンナはぽろりと涙を零したが、シュリアには不快にしか感じなかった。
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