92 / 203
番外編1
ルアンナ・アズラー8
しおりを挟む
ルアンナはここへ両親が来る度にシュリアに会いたいと伝えていた、そしてついに了承してくれたことが知らされた。王都ではなく、シュリアがやって来ることになった。馬車から降りて来る娘を、今か今かと待っていたルアンナが見つめる。
「シュリア…大きくなって」
一歳から会っていない娘だ、一気に十五歳になってしまったのだ。スーミラは後ろに控えており、前侯爵夫妻は邸から、姿だけでもと見ている。
ついにルアンナの目の前に立つ、シュリア。
「お母様よ」
「…」
ルアンナはシュリアから来てくれるなら、抱きしめたかったが、シュリアは近づくこともなく、軽い会釈をしただけで、邸でもルアンナと距離を開けて歩き、応接室で向かい合って座った。
「私のことなんて、憶えていないでしょうね」
「ええ、憶えておりません。産んでくれたことに感謝はしますが、それで良かったと思っております」
「えっ、何か誰かに言われたの?」
「事実を、全て聞いています」
「あっ、でも全てが事実だと思ってはいけないわ」
「事実でしょう?王太子妃殿下に暴言、暴力。身の程知らず、それがルアンナ・アズラーではありませんか?」
シュリアはこの数分で、ルアンナは反省していないことを察していた。
「あの頃は若かったの、だから分別が付いていなくて」
「私も同じくらいの年ですが、王子殿下の婚約者にあのようなことを言ったり、ましてや暴力など、あり得ませんけど」
「それは気持ちがないからでしょう?私は殿下を慕っていたから」
「それがそもそも過ちでしょう。あなたには婚約者がいた、もしくは出来たはずです。にも拘らず、不貞を犯した。嫌ならば、婚約を解消すればよかったではありませんか、お父様を煩わせることもなかったのですよ?」
落ち着いているようで、まだ十五歳。目が吊り上がり、怒りに震えていた。
「そんな、落ち着いて頂戴。私はあなたを愛して育てていたのですよ」
「そうですか、だからといって罪が消えるのですか」
「そうではないけど…相手が王太子妃殿下でしょう?デタラメがあっても、あちらが信用されてしまうのよ?だから全てが本当ではないの」
「どこがデタラメなのですか?教えてください」
「ええ、そうね!ええっと、そうよ、私が殿下を誘ったと聞いていない?」
「はい、そう聞いています」
「殿下から誘われたのよ」
「それは嘘だったと聞いています。父に言ったんですよね、苦し紛れに」
「本当に誘われたの…」
「思い出が欲しいと誘ったんでしょう?気持ち悪い」
これもアズラー侯爵夫妻がルイソードから、やはり誘われたというのは、嘘だったと聞かされていた。ルアンナは話をされているとは思っていない。
応接室には会話には入ることはしないが、スーミラが見張りとして控えており、シュリアの視界に頷く姿が見える。
「もし、婚約中に父が誰かに思い出が欲しいと、女性を誘っていたらと考えたことはありますか?」
「彼は真面目だから」
「では想像してみてください。あなたと婚約中に、好いた令嬢に、最後の思い出だと誘う姿を」
「えっ、でも…」
「気持ち悪いと思いませんか?思えないのですか?想像力もないのですか?」
「彼はそんなことをしないから」
ルイソードは私を愛していたから、絶対にそのようなことはなしない自信があった。だから、想像も出来ない。
「想像力もないから、暴言、暴力、不貞までが出来たのですね」
「それは、違うわ」
「違わないです。あなたの行動で、多くの人を傷付け、辛い目に遭わせていることが分からないのですか」
「あの頃は若くて、考えも乏しかったの」
「だったら、若くない今、どうして嘘を付くのですか」
「あなたに嫌われたくなくて…」
ルアンナはぽろりと涙を零したが、シュリアには不快にしか感じなかった。
「シュリア…大きくなって」
一歳から会っていない娘だ、一気に十五歳になってしまったのだ。スーミラは後ろに控えており、前侯爵夫妻は邸から、姿だけでもと見ている。
ついにルアンナの目の前に立つ、シュリア。
「お母様よ」
「…」
ルアンナはシュリアから来てくれるなら、抱きしめたかったが、シュリアは近づくこともなく、軽い会釈をしただけで、邸でもルアンナと距離を開けて歩き、応接室で向かい合って座った。
「私のことなんて、憶えていないでしょうね」
「ええ、憶えておりません。産んでくれたことに感謝はしますが、それで良かったと思っております」
「えっ、何か誰かに言われたの?」
「事実を、全て聞いています」
「あっ、でも全てが事実だと思ってはいけないわ」
「事実でしょう?王太子妃殿下に暴言、暴力。身の程知らず、それがルアンナ・アズラーではありませんか?」
シュリアはこの数分で、ルアンナは反省していないことを察していた。
「あの頃は若かったの、だから分別が付いていなくて」
「私も同じくらいの年ですが、王子殿下の婚約者にあのようなことを言ったり、ましてや暴力など、あり得ませんけど」
「それは気持ちがないからでしょう?私は殿下を慕っていたから」
「それがそもそも過ちでしょう。あなたには婚約者がいた、もしくは出来たはずです。にも拘らず、不貞を犯した。嫌ならば、婚約を解消すればよかったではありませんか、お父様を煩わせることもなかったのですよ?」
落ち着いているようで、まだ十五歳。目が吊り上がり、怒りに震えていた。
「そんな、落ち着いて頂戴。私はあなたを愛して育てていたのですよ」
「そうですか、だからといって罪が消えるのですか」
「そうではないけど…相手が王太子妃殿下でしょう?デタラメがあっても、あちらが信用されてしまうのよ?だから全てが本当ではないの」
「どこがデタラメなのですか?教えてください」
「ええ、そうね!ええっと、そうよ、私が殿下を誘ったと聞いていない?」
「はい、そう聞いています」
「殿下から誘われたのよ」
「それは嘘だったと聞いています。父に言ったんですよね、苦し紛れに」
「本当に誘われたの…」
「思い出が欲しいと誘ったんでしょう?気持ち悪い」
これもアズラー侯爵夫妻がルイソードから、やはり誘われたというのは、嘘だったと聞かされていた。ルアンナは話をされているとは思っていない。
応接室には会話には入ることはしないが、スーミラが見張りとして控えており、シュリアの視界に頷く姿が見える。
「もし、婚約中に父が誰かに思い出が欲しいと、女性を誘っていたらと考えたことはありますか?」
「彼は真面目だから」
「では想像してみてください。あなたと婚約中に、好いた令嬢に、最後の思い出だと誘う姿を」
「えっ、でも…」
「気持ち悪いと思いませんか?思えないのですか?想像力もないのですか?」
「彼はそんなことをしないから」
ルイソードは私を愛していたから、絶対にそのようなことはなしない自信があった。だから、想像も出来ない。
「想像力もないから、暴言、暴力、不貞までが出来たのですね」
「それは、違うわ」
「違わないです。あなたの行動で、多くの人を傷付け、辛い目に遭わせていることが分からないのですか」
「あの頃は若くて、考えも乏しかったの」
「だったら、若くない今、どうして嘘を付くのですか」
「あなたに嫌われたくなくて…」
ルアンナはぽろりと涙を零したが、シュリアには不快にしか感じなかった。
516
お気に入りに追加
7,118
あなたにおすすめの小説
さよなら、皆さん。今宵、私はここを出ていきます
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【復讐の為、今夜私は偽の家族と婚約者に別れを告げる―】
私は伯爵令嬢フィーネ・アドラー。優しい両親と18歳になったら結婚する予定の婚約者がいた。しかし、幸せな生活は両親の突然の死により、もろくも崩れ去る。私の後見人になると言って城に上がり込んできた叔父夫婦とその娘。私は彼らによって全てを奪われてしまった。愛する婚約者までも。
もうこれ以上は限界だった。復讐する為、私は今夜皆に別れを告げる決意をした―。
※マークは残酷シーン有り
※(他サイトでも投稿中)

絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

魔法のせいだから許して?
ましろ
恋愛
リーゼロッテの婚約者であるジークハルト王子の突然の心変わり。嫌悪を顕にした眼差し、口を開けば暴言、身に覚えの無い出来事までリーゼのせいにされる。リーゼは学園で孤立し、ジークハルトは美しい女性の手を取り愛おしそうに見つめながら愛を囁く。
どうしてこんなことに?それでもきっと今だけ……そう、自分に言い聞かせて耐えた。でも、そろそろ一年。もう終わらせたい、そう思っていたある日、リーゼは殿下に罵倒され頬を張られ怪我をした。
──もう無理。王妃様に頼み、なんとか婚約解消することができた。
しかしその後、彼の心変わりは魅了魔法のせいだと分かり……
魔法のせいなら許せる?
基本ご都合主義。ゆるゆる設定です。

永遠の誓いを立てましょう、あなたへの想いを思い出すことは決してないと……
矢野りと
恋愛
ある日突然、私はすべてを失った。
『もう君はいりません、アリスミ・カロック』
恋人は表情を変えることなく、別れの言葉を告げてきた。彼の隣にいた私の親友は、申し訳なさそうな顔を作ることすらせず笑っていた。
恋人も親友も一度に失った私に待っていたのは、さらなる残酷な仕打ちだった。
『八等級魔術師アリスミ・カロック。異動を命じる』
『えっ……』
任期途中での異動辞令は前例がない。最上位の魔術師である元恋人が裏で動いた結果なのは容易に察せられた。
私にそれを拒絶する力は勿論なく、一生懸命に築いてきた居場所さえも呆気なく奪われた。
それから二年が経った頃、立ち直った私の前に再び彼が現れる。
――二度と交わらないはずだった運命の歯車が、また動き出した……。
※このお話の設定は架空のものです。
※お話があわない時はブラウザバックでお願いします(_ _)

【完結】婿入り予定の婚約者は恋人と結婚したいらしい 〜そのひと爵位継げなくなるけどそんなに欲しいなら譲ります〜
早奈恵
恋愛
【完結】ざまぁ展開あります⚫︎幼なじみで婚約者のデニスが恋人を作り、破談となってしまう。困ったステファニーは急遽婿探しをする事になる。⚫︎新しい相手と婚約発表直前『やっぱりステファニーと結婚する』とデニスが言い出した。⚫︎辺境伯になるにはステファニーと結婚が必要と気が付いたデニスと辺境伯夫人になりたかった恋人ブリトニーを前に、ステファニーは新しい婚約者ブラッドリーと共に対抗する。⚫︎デニスの恋人ブリトニーが不公平だと言い、デニスにもチャンスをくれと縋り出す。⚫︎そしてデニスとブラッドが言い合いになり、決闘することに……。
愛すべきマリア
志波 連
恋愛
幼い頃に婚約し、定期的な交流は続けていたものの、互いにこの結婚の意味をよく理解していたため、つかず離れずの穏やかな関係を築いていた。
学園を卒業し、第一王子妃教育も終えたマリアが留学から戻った兄と一緒に参加した夜会で、令嬢たちに囲まれた。
家柄も美貌も優秀さも全て揃っているマリアに嫉妬したレイラに指示された女たちは、彼女に嫌味の礫を投げつける。
早めに帰ろうという兄が呼んでいると知らせを受けたマリアが発見されたのは、王族の居住区に近い階段の下だった。
頭から血を流し、意識を失っている状態のマリアはすぐさま医務室に運ばれるが、意識が戻ることは無かった。
その日から十日、やっと目を覚ましたマリアは精神年齢が大幅に退行し、言葉遣いも仕草も全て三歳児と同レベルになっていたのだ。
体は16歳で心は3歳となってしまったマリアのためにと、兄が婚約の辞退を申し出た。
しかし、初めから結婚に重きを置いていなかった皇太子が「面倒だからこのまま結婚する」と言いだし、予定通りマリアは婚姻式に臨むことになった。
他サイトでも掲載しています。
表紙は写真ACより転載しました。

思い出してしまったのです
月樹《つき》
恋愛
同じ姉妹なのに、私だけ愛されない。
妹のルルだけが特別なのはどうして?
婚約者のレオナルド王子も、どうして妹ばかり可愛がるの?
でもある時、鏡を見て思い出してしまったのです。
愛されないのは当然です。
だって私は…。

婚約解消したら後悔しました
せいめ
恋愛
別に好きな人ができた私は、幼い頃からの婚約者と婚約解消した。
婚約解消したことで、ずっと後悔し続ける令息の話。
ご都合主義です。ゆるい設定です。
誤字脱字お許しください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる