82 / 203
番外編1
ミアローズ・エモンド6
しおりを挟む
「皇帝陛下の姉君に喧嘩を売って、愚か者が!」
「あれは知らなかったの!後から聞いたんだもの」
「知らなかった?それこそ、下級貴族なら知らない者もいるかもしれないが、公爵令嬢が知らないというのはあり得ない、それがお前の言っている公爵令嬢というものだ、分からないのか?」
「本人が言ってくれればいいじゃない」
「本気で言っているのか?私は皇帝陛下の姉なんですけどって?わざわざ?みんな知っているのに?逆におかしいと思われるだろう」
「それは…」
「お前は頭が悪い、憶えられないもんな」
エディンは両親は認めたくないようであったが、妹を頭が悪いと分かっていた。メイドに自身が命令したのに、翌日にはそんなことは言っていないと言い出すことも多かった。だが、これまで面倒な妹にわざわざ頭が悪いとは言ったことはなかった。
「そんなことないわ!」
「さすがに誰が言わなかったのか?お前は明らかに頭が悪い。学園も何とか卒業させてもらったじゃないか」
「苦手な科目があっただけよ」
「本当に分かっていないのか?みんな、言わなかったのか?それとも、気付いていると思って、言わなかったのか…点数を見れば分かるだろう」
「だからそれはたまたま」
「毎回、三分の一も正解出来ないのに、たまたま?」
ミアローズは自身が一度も頭が悪いと思ったことはなかった。試験は難易度が高すぎて、たまたま出来なかったと思っていた。そして周りも自身が平均点で、同じ程度だと思い込んでいる。
「今さら出来が悪いことを言っても仕方がない。行き遅れの癖に、不貞で離縁された色狂いで、名ばかりの公爵令嬢。それがお前だよ、受け止めなさい」
「何よそれ、ふざけないで」
「ふざけていない、お前の相手をしたという者もいる」
あれだけ色事をしていたら、相手だって全員が言わないということはない。これだけ噂が広がり、エモンド公爵の力がなくなったとされれば、話し出す男だっている。
「不貞は認めていないわ」
「認めなくても、色狂いなんだから、不貞だったのだと思われて当然だろう。折角、結婚してくれるという人がいたというのに、愚かだな。とりあえず、領地の両親のところに送り届ける。そこで考えなさい」
「縁談は?」
「お前に縁談なんてあるわけないだろう?誰が縁談などと言った?」
何を言っているんだ?最後だと思って話に付き合っているが、縁談などあるはずないだろう。確かに両親は探してはいたようだが、まともな縁談があるはずがない。
「私は公爵令嬢なのよ、縁談がないはずないわ」
「もう正確には公爵令嬢ではない、公爵の妹だ」
「何なのよ、もう!」
「そんなに結婚したかったのなら、なぜ縁談がある頃にしなかったのだ?公爵家は難しくとも、侯爵家もあっただろう?」
「私は魅力的なんだから、上に行かないといけないのよ!」
「はあ…皆がお姫様などと甘やかしたのが、大人になってまでも影響を受けているのはお前だけだろう、その年で、まだ自分がお姫様だと思っているのか?恥ずかしくないのか?お前にはそれしかないのか?」
「そんな酷い言い方しなくてもいいじゃない!」
捨ててしまいところだが、そんなことをすれば、面倒ごとを起こすに決まっている。ミアローズを可愛いと思えたのは生まれたての頃だけだっただろう。
「頭が悪い癖に高望みして、行き遅れて、色狂いになって、離縁されて、お前は何がしたかったんだ?」
「何を…」
「私には分からない、貴族として何もしない、公爵家のためにも何もしない、自分のためにも何もしない。その日が楽しければいいというのなら、貴族を辞めて、好きなように生きればよかっただろう」
「それは…」
ミアローズは深く考えて生きて来ていない。思い付きで行動し、その場限りが楽しければいい、それがまかり通っていたのは地位だけであった。
「あれは知らなかったの!後から聞いたんだもの」
「知らなかった?それこそ、下級貴族なら知らない者もいるかもしれないが、公爵令嬢が知らないというのはあり得ない、それがお前の言っている公爵令嬢というものだ、分からないのか?」
「本人が言ってくれればいいじゃない」
「本気で言っているのか?私は皇帝陛下の姉なんですけどって?わざわざ?みんな知っているのに?逆におかしいと思われるだろう」
「それは…」
「お前は頭が悪い、憶えられないもんな」
エディンは両親は認めたくないようであったが、妹を頭が悪いと分かっていた。メイドに自身が命令したのに、翌日にはそんなことは言っていないと言い出すことも多かった。だが、これまで面倒な妹にわざわざ頭が悪いとは言ったことはなかった。
「そんなことないわ!」
「さすがに誰が言わなかったのか?お前は明らかに頭が悪い。学園も何とか卒業させてもらったじゃないか」
「苦手な科目があっただけよ」
「本当に分かっていないのか?みんな、言わなかったのか?それとも、気付いていると思って、言わなかったのか…点数を見れば分かるだろう」
「だからそれはたまたま」
「毎回、三分の一も正解出来ないのに、たまたま?」
ミアローズは自身が一度も頭が悪いと思ったことはなかった。試験は難易度が高すぎて、たまたま出来なかったと思っていた。そして周りも自身が平均点で、同じ程度だと思い込んでいる。
「今さら出来が悪いことを言っても仕方がない。行き遅れの癖に、不貞で離縁された色狂いで、名ばかりの公爵令嬢。それがお前だよ、受け止めなさい」
「何よそれ、ふざけないで」
「ふざけていない、お前の相手をしたという者もいる」
あれだけ色事をしていたら、相手だって全員が言わないということはない。これだけ噂が広がり、エモンド公爵の力がなくなったとされれば、話し出す男だっている。
「不貞は認めていないわ」
「認めなくても、色狂いなんだから、不貞だったのだと思われて当然だろう。折角、結婚してくれるという人がいたというのに、愚かだな。とりあえず、領地の両親のところに送り届ける。そこで考えなさい」
「縁談は?」
「お前に縁談なんてあるわけないだろう?誰が縁談などと言った?」
何を言っているんだ?最後だと思って話に付き合っているが、縁談などあるはずないだろう。確かに両親は探してはいたようだが、まともな縁談があるはずがない。
「私は公爵令嬢なのよ、縁談がないはずないわ」
「もう正確には公爵令嬢ではない、公爵の妹だ」
「何なのよ、もう!」
「そんなに結婚したかったのなら、なぜ縁談がある頃にしなかったのだ?公爵家は難しくとも、侯爵家もあっただろう?」
「私は魅力的なんだから、上に行かないといけないのよ!」
「はあ…皆がお姫様などと甘やかしたのが、大人になってまでも影響を受けているのはお前だけだろう、その年で、まだ自分がお姫様だと思っているのか?恥ずかしくないのか?お前にはそれしかないのか?」
「そんな酷い言い方しなくてもいいじゃない!」
捨ててしまいところだが、そんなことをすれば、面倒ごとを起こすに決まっている。ミアローズを可愛いと思えたのは生まれたての頃だけだっただろう。
「頭が悪い癖に高望みして、行き遅れて、色狂いになって、離縁されて、お前は何がしたかったんだ?」
「何を…」
「私には分からない、貴族として何もしない、公爵家のためにも何もしない、自分のためにも何もしない。その日が楽しければいいというのなら、貴族を辞めて、好きなように生きればよかっただろう」
「それは…」
ミアローズは深く考えて生きて来ていない。思い付きで行動し、その場限りが楽しければいい、それがまかり通っていたのは地位だけであった。
331
お気に入りに追加
6,893
あなたにおすすめの小説
【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり
私の愛した婚約者は死にました〜過去は捨てましたので自由に生きます〜
みおな
恋愛
大好きだった人。
一目惚れだった。だから、あの人が婚約者になって、本当に嬉しかった。
なのに、私の友人と愛を交わしていたなんて。
もう誰も信じられない。
【完結】今世も裏切られるのはごめんなので、最愛のあなたはもう要らない
曽根原ツタ
恋愛
隣国との戦時中に国王が病死し、王位継承権を持つ男子がひとりもいなかったため、若い王女エトワールは女王となった。だが──
「俺は彼女を愛している。彼女は俺の子を身篭った」
戦場から帰還した愛する夫の隣には、別の女性が立っていた。さらに彼は、王座を奪うために女王暗殺を企てる。
そして。夫に剣で胸を貫かれて死んだエトワールが次に目が覚めたとき、彼と出会った日に戻っていて……?
──二度目の人生、私を裏切ったあなたを絶対に愛しません。
★小説家になろうさまでも公開中
貴方が選んだのは全てを捧げて貴方を愛した私ではありませんでした
ましゅぺちーの
恋愛
王国の名門公爵家の出身であるエレンは幼い頃から婚約者候補である第一王子殿下に全てを捧げて生きてきた。
彼を数々の悪意から守り、彼の敵を排除した。それも全ては愛する彼のため。
しかし、王太子となった彼が最終的には選んだのはエレンではない平民の女だった。
悲しみに暮れたエレンだったが、家族や幼馴染の公爵令息に支えられて元気を取り戻していく。
その一方エレンを捨てた王太子は着々と破滅への道を進んでいた・・・
【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜
高瀬船
恋愛
リスティアナ・メイブルムには二歳年上の婚約者が居る。
婚約者は、国の王太子で穏やかで優しく、婚約は王命ではあったが仲睦まじく関係を築けていた。
それなのに、突然ある日婚約者である王太子からは土下座をされ、婚約を解消して欲しいと願われる。
何故、そんな事に。
優しく微笑むその笑顔を向ける先は確かに自分に向けられていたのに。
婚約者として確かに大切にされていたのに何故こうなってしまったのか。
リスティアナの思いとは裏腹に、ある時期からリスティアナに悪い噂が立ち始める。
悪い噂が立つ事など何もしていないのにも関わらず、リスティアナは次第に学園で、夜会で、孤立していく。
誰にも信じてもらえなかった公爵令嬢は、もう誰も信じません。
salt
恋愛
王都で罪を犯した悪役令嬢との婚姻を結んだ、東の辺境伯地ディオグーン領を治める、フェイドリンド辺境伯子息、アルバスの懺悔と後悔の記録。
6000文字くらいで摂取するお手軽絶望バッドエンドです。
*なろう・pixivにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる