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番外編1

マリーズ・ヒルダ3

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 有罪となって、援助されたお金を返すように言われたが、装飾品は売っても大したお金にはならず、家族にも縁を切られてしまった。

「お前とは縁を切る。お金は自分で使ったのだから、自分で返しなさい」
「でも、もう使ってしまったの」
「使ったのは自分だろう、自分で返しなさい。うちに払える金はない」

 裕福な家なら、縁は切っても、立て替えてくれたかもしれないが、払えるお金がないことも知っていた。

 まともな仕事に就くこともできず、公になって、友人も去って行った。住むところもなく、座り込んでいたら声を掛けたのは元婚約者だった。元婚約者は裕福な子爵家の令嬢と結婚して、男爵家は持ち直したようであった。

「詐欺師になったんだってな」
「そんなつもりはなかったの」
「はあ、反省していないのか?反省しているのなら、元婚約者として少しは援助してやろうかと思ったのに」
「えっ、反省しているわ。お願いよ、助けて。お金を返さないといけないの」
「もう関わって来るなよ」

 お金を投げつけられて、惨めだったが、僅かでも有難かった。援助される側だったとはいえ、慰謝料も貰えなかった、せめてもの詫びと手切れ金だったのだろう。

 被害者から依頼された借金取りはやって来るため、結局、娼館で働くことになり、日給ではないため、客を取らなくては稼ぎにならない。偶然、同じ男爵家だった同級生がやって来て、居たたまれない気持ちにもなったが、助けて欲しいというと、同級生のよしみだと上客になってくれた。

「実はね、学園の頃に殿下と恋人だったの」
「本当なのか?」
「ええ、プレゼントだって貰ったし、変装して一緒に出掛けたりしたのよ」

 興味津々で、何か使えるかもしれないと言っていた。少し怖くなってしまったが、恋人になってあげたのに、最後は捨てられたみたいで腹が立った。

 でも、その同級生はしばらくすると来なくなってしまった。何かしたのかもしれない、もしかしたら問題になったのではないかと不安に思っていると、性病で入院することになったと聞かされ、検査を受けるように言われた。

 私も性病になっており、同級生に感染させれたのだと訴えたが、発症を考えると感染させたのは私だと言われた。

 その後、私も入院することになり、同級生は治って退院したそうだが、私のせいだと喚きながら、鼻つまみ者となっているそうだ。

 私はもう末期だと言われた。いつ誰から感染したのかは分からないが、症状に気付かないまま、蝕まれていたそうだ。確かに時折、痛みはあったが、娼婦なので仕方ないと思っていた。

 お金も返せていないため、性病の被験者になることになった。薬を試す実験にされ、後遺症が酷いこともあり、殺してくれとすら思ったが、売れるのは身体しかなく、逃げる術もない。

 ソアート帝国にも結局、一度も行くことはなかった。

 殿下とはいい思い出にして、援助してもらったお金で留学すればよかった。

 偶然、見掛けた新聞には殿下の側妃に子どもが出来たことが載っていた。私は死にかけているのに、向こうは新しい命かと笑いたくなった。私が産む未来もあったのだろうか、いや、きっとなかっただろう。

 サリーには子どもが出来なかったのかと可哀そうにと思ったが、ふと敢えて産まなかったのではないかと過った。愛しているのならば、子どもを産めないのは辛かっただろう。でもそうではないとしたら?私が知る由もないが、そんな気がした。

 マリーズが詐欺などせず、生きていたら、サリーから誕生祭の指名があったはずだ。だが殿下の隣に立てるようなドレスを用意することも、通訳を雇う余裕もなかっただろう。恥を晒しながら出席したのか、逃げることになったかは、分からない。ただ、殿下はサリーが知っていたことを、少し早く知ることにはなっただろう。

 マリーズは多数の薬の後遺症もあり、全身を蝕まれて、痛い痒いと喚きながら亡くなった。享年二十二歳だった。


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お読みいただきありがとうございます。

また書き上げ次第、投稿させていただきます。
次は色狂いのミアローズ・エモンドです。

よろしくお願いいたします。
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