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番外編1
カリー・カイサック2
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「何だこれは!」
子爵が叩き付けたのは王家からの通達であった。しかもカリー・ロイルのみの指名である。
「カリー、何かしたのか」
「っえ、何、これ…」
王族…となれば、王太子殿下だろうが、不敬な発言とは何だろうか。誘い方?ベットで何か言ってしまったのだろうか、正直、何を言ったかまでは憶えていない。そもそも関係を持ったことを話しても良いものなのか、それがどういうことなのか、男爵令嬢には分からなかった。
今まで言い寄っていたのは見られていたと思うが、誰と関係を持ったかは、周りに言ったことはなかった。キイスにも何人かと関係を持ったことは話していたが、相手までは知ってもいいことにはならないだろうからと聞くことはなかった。
「どうして外されたのだ!心当たりがあるんだろう」
「心当たり…」
「あるのか?」
「でも昔のことで」
「昔のこと?何か仕出かしていたのか!」
ロイル子爵は頭に血が上っており、立ち上がったまま、怒鳴りっぱなしだ。
「父上、落ち着いてください」
「これが落ち着いていられるか!」
「話が進まないですから」
ようやく子爵は座るも、苛立ちから、お茶を持つ手が震えている。夫人は今日は実家に行っており、不在だが、帰ってきたら卒倒することだろう。
「カリー、何なんだ?教えてくれ、これではいずれどこにも呼ばれなくなる」
「どうして」
「王家の催しに一切参加出来ないんだよ?」
「でも王家だけでしょう?」
「いや、高位貴族は知っている者もいるはずだ。そうなれば、外されたことはいずれ露見する。そんな人を誘う家なんていなくなるんだ」
元々、カリーはお茶会やパーティーに誘われることはなかった。関係を持っていた男性の伝手で、参加していただけであった。
結婚してからも、評判からあまり誘われることはなかったが、キイスの友人は結婚祝いだとお誘いがあり、夫婦揃って行けば、カリーが意外と普通だったという話から、また呼んで貰ったり、別の友人が誘ってくれることも増えていた。
だが、こんな通達が来れば、もう二度と呼ばれないだろう。
「じゃあ、どうすれば…」
「心当たりがあるなら、償いをするしかないだろうな。一体何をしたんだ?カリーは男爵令嬢だろう?王族との接点なんてないだろう?私も直接話したことはないさ」
「が、学園で…」
「ああ、学園が王太子殿下と一緒だったのか」
「ええ」
「そこで何か不敬な発言をしたのかい?」
「分からないのです、もう昔のことで、何を話したか、憶えていないんです」
「そんなに話をするような間柄だったのかい?」
「っあ、いえ」
学園で一緒だったと言っても、クラスも違えば、学年すら違う王太子殿下と男爵令嬢が話すことなどない。キイスの言っていることが正しいのだ。
「もういい!離縁しろ!」
「待ってください、何か誤解があったのかもしれないじゃないですか」
「誤解で王家がこんなものを送って来るはずないだろう!」
「ですが、憶えていないようなことを。学園だけなんだろう?話したのは」
「多分、そうです」
王太子殿下は、話したことがない相手でなくてはならないのだ。だが、このままでは立場が危うい。こんな通達が来て、友人などと言っても信じては貰えないだろう。
一度関係を持っただけで、相性は良いと思ったのに、その後は側近に阻まれて、近づくことも出来なかった。話を合わせてくれる可能性はない。一体どう言えば正解なのか。誰がこんな通達を出したのか。
「多分だと!」
「父上!」
「だから言ったんだ!やはり結婚を許すべきではなかった!」
「待ってください、カリーはよくやってくれています」
「王族に不敬を働いておいてか?あ?まさか、王太子殿下とも関係を持っていたのではあるまいな?」
「まさか」
カリーはその言葉に動揺してしまい、顔が強張ってしまっていた、口元が無意識にピクピクと動いている。
子爵が叩き付けたのは王家からの通達であった。しかもカリー・ロイルのみの指名である。
「カリー、何かしたのか」
「っえ、何、これ…」
王族…となれば、王太子殿下だろうが、不敬な発言とは何だろうか。誘い方?ベットで何か言ってしまったのだろうか、正直、何を言ったかまでは憶えていない。そもそも関係を持ったことを話しても良いものなのか、それがどういうことなのか、男爵令嬢には分からなかった。
今まで言い寄っていたのは見られていたと思うが、誰と関係を持ったかは、周りに言ったことはなかった。キイスにも何人かと関係を持ったことは話していたが、相手までは知ってもいいことにはならないだろうからと聞くことはなかった。
「どうして外されたのだ!心当たりがあるんだろう」
「心当たり…」
「あるのか?」
「でも昔のことで」
「昔のこと?何か仕出かしていたのか!」
ロイル子爵は頭に血が上っており、立ち上がったまま、怒鳴りっぱなしだ。
「父上、落ち着いてください」
「これが落ち着いていられるか!」
「話が進まないですから」
ようやく子爵は座るも、苛立ちから、お茶を持つ手が震えている。夫人は今日は実家に行っており、不在だが、帰ってきたら卒倒することだろう。
「カリー、何なんだ?教えてくれ、これではいずれどこにも呼ばれなくなる」
「どうして」
「王家の催しに一切参加出来ないんだよ?」
「でも王家だけでしょう?」
「いや、高位貴族は知っている者もいるはずだ。そうなれば、外されたことはいずれ露見する。そんな人を誘う家なんていなくなるんだ」
元々、カリーはお茶会やパーティーに誘われることはなかった。関係を持っていた男性の伝手で、参加していただけであった。
結婚してからも、評判からあまり誘われることはなかったが、キイスの友人は結婚祝いだとお誘いがあり、夫婦揃って行けば、カリーが意外と普通だったという話から、また呼んで貰ったり、別の友人が誘ってくれることも増えていた。
だが、こんな通達が来れば、もう二度と呼ばれないだろう。
「じゃあ、どうすれば…」
「心当たりがあるなら、償いをするしかないだろうな。一体何をしたんだ?カリーは男爵令嬢だろう?王族との接点なんてないだろう?私も直接話したことはないさ」
「が、学園で…」
「ああ、学園が王太子殿下と一緒だったのか」
「ええ」
「そこで何か不敬な発言をしたのかい?」
「分からないのです、もう昔のことで、何を話したか、憶えていないんです」
「そんなに話をするような間柄だったのかい?」
「っあ、いえ」
学園で一緒だったと言っても、クラスも違えば、学年すら違う王太子殿下と男爵令嬢が話すことなどない。キイスの言っていることが正しいのだ。
「もういい!離縁しろ!」
「待ってください、何か誤解があったのかもしれないじゃないですか」
「誤解で王家がこんなものを送って来るはずないだろう!」
「ですが、憶えていないようなことを。学園だけなんだろう?話したのは」
「多分、そうです」
王太子殿下は、話したことがない相手でなくてはならないのだ。だが、このままでは立場が危うい。こんな通達が来て、友人などと言っても信じては貰えないだろう。
一度関係を持っただけで、相性は良いと思ったのに、その後は側近に阻まれて、近づくことも出来なかった。話を合わせてくれる可能性はない。一体どう言えば正解なのか。誰がこんな通達を出したのか。
「多分だと!」
「父上!」
「だから言ったんだ!やはり結婚を許すべきではなかった!」
「待ってください、カリーはよくやってくれています」
「王族に不敬を働いておいてか?あ?まさか、王太子殿下とも関係を持っていたのではあるまいな?」
「まさか」
カリーはその言葉に動揺してしまい、顔が強張ってしまっていた、口元が無意識にピクピクと動いている。
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