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後悔1
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関係が良くなることはなかったが、穏やかな日々が続いていたはずだった。だが、エマ・ネイリーのことはサリーに報告しなければならない。
「エマ・ネイリーのことはすまなかった、本人の資質もあるが、私が愚かな計画で、驕らせてしまったのは私の責任だ。不快にさせて、申し訳なかった」
「そうですか」
「子爵夫妻が監視を行い、もうサリーの前にも私の前にも姿を現すことはない。私が全て間違っていた。今さらだが、不正も別の形で明かすべきだった」
「私に怒りすら向けましたものね」
「すまない、調子に乗っていたのは私もだ。私の過ちだ」
「エマ・ネイリーの親戚のサマン・ジュロス。あの方に、『邪魔者』と言われて、突き飛ばされて、足を怪我したの」
サマン・ジュロスはあの不正を犯した伯爵、ジュロス伯爵の息子である。妻子も関わっていたため、現在は親戚に代替わりしており、一家は監視された就労所で、お金を返しながら、細々と生活している。
「っな、聞いていない」
「だから、学園も休んで、領地に行っていたの。あなたとエマ・ネイリーに間接的に怪我をさせられているの。あなたは一体、何を守っていたの?」
民を守りたい気持ちは勿論だが、なぜあんな方法を取ってしまったのだろう。今となっては分からない。あの頃の私は守っていたなどと、どうして言えたのだろう。
「ペルガメント侯爵夫妻は、なかなか領地に行けなくなるから向かったと」
「そんな風に言っていたのね。あなたは心配すらしなかった」
「知らなかったんだ」
「あの頃、忙しかったものね。手紙も贈り物も返せないほどに」
「それは…接触を控えていて」
サリーが煩わしかったわけではない、それなのにエマ・ネイリーと作戦を始めてから、訊ねて来るサリーが煩わしくなったのだ。サリーが言っていた、前後がそもそも間違っている。その通りだ。
「あなたは辛かったなどと言って、同情を誘っていたけど、ならば、あるべきはずの出せなかった私への手紙や贈り物もお持ちではなかった。その後もなかった。そんなもの存在しなかったのでしょうね」
「…あ」
確かに何も用意などしていなかった、早く証拠をと思ってはいたが、サリーの手紙も贈り物も開封だけして、何を貰ったか、手紙の内容も憶えていない。
胸が苦しくなって来た、これがサリーの苦しみだったのだろうか。
「もう、お伝えしておきましょう。あの頃から、私はあなたを見限ったのです。一切、期待するのを止めました。怪我のことも知らないと言われればそうでしょう、言ってくれていたらと言いますか?何も答えない、聞く耳を持たない者に、何を言えと言うのです?」
「すまない…見限られたのだと思ってはいた。どう償えばいいか分からず、逃げていた。今もそうだ」
「真実の愛を見付け、私など捨ててくれれば良かったのです」
「サリー以外と結婚する気なんてなかった!それだけは信じてくれ」
愚かな欲で、女性を抱いたのは事実だ。サリーのことは結婚してから、ずっと一緒なのだからと…何の言いわけにもならない理由にした。それでもサリーと結婚し、本来なら側妃も愛妾も娶る気はなかったのだ。でももはや何を言っても、言いわけにも、思っていただけでは証明も出来ない。
「そうですか。では、もういいですか」
「いや、なぜ、レベッカと一緒だったのだ?」
「レベッカからはきちんと謝罪を受け取りましたから」
「受け取った?」
「ええ」
「なぜだ?他の者の謝罪は受け取らなかったのに…」
「レベッカだけですよ。自分で非を認めて、私が理由を話す前に謝罪した人は。後は全員、謝罪をしたのは私が話した後でした。バレなければ謝罪しない、謝罪しなくてはいけないからの謝罪。そんなもの、受け入れるはずないでしょう」
「ああ…そうだな…」
私を含め、皆が謝ったのはサリーが話した後であった。
「エマ・ネイリーのことはすまなかった、本人の資質もあるが、私が愚かな計画で、驕らせてしまったのは私の責任だ。不快にさせて、申し訳なかった」
「そうですか」
「子爵夫妻が監視を行い、もうサリーの前にも私の前にも姿を現すことはない。私が全て間違っていた。今さらだが、不正も別の形で明かすべきだった」
「私に怒りすら向けましたものね」
「すまない、調子に乗っていたのは私もだ。私の過ちだ」
「エマ・ネイリーの親戚のサマン・ジュロス。あの方に、『邪魔者』と言われて、突き飛ばされて、足を怪我したの」
サマン・ジュロスはあの不正を犯した伯爵、ジュロス伯爵の息子である。妻子も関わっていたため、現在は親戚に代替わりしており、一家は監視された就労所で、お金を返しながら、細々と生活している。
「っな、聞いていない」
「だから、学園も休んで、領地に行っていたの。あなたとエマ・ネイリーに間接的に怪我をさせられているの。あなたは一体、何を守っていたの?」
民を守りたい気持ちは勿論だが、なぜあんな方法を取ってしまったのだろう。今となっては分からない。あの頃の私は守っていたなどと、どうして言えたのだろう。
「ペルガメント侯爵夫妻は、なかなか領地に行けなくなるから向かったと」
「そんな風に言っていたのね。あなたは心配すらしなかった」
「知らなかったんだ」
「あの頃、忙しかったものね。手紙も贈り物も返せないほどに」
「それは…接触を控えていて」
サリーが煩わしかったわけではない、それなのにエマ・ネイリーと作戦を始めてから、訊ねて来るサリーが煩わしくなったのだ。サリーが言っていた、前後がそもそも間違っている。その通りだ。
「あなたは辛かったなどと言って、同情を誘っていたけど、ならば、あるべきはずの出せなかった私への手紙や贈り物もお持ちではなかった。その後もなかった。そんなもの存在しなかったのでしょうね」
「…あ」
確かに何も用意などしていなかった、早く証拠をと思ってはいたが、サリーの手紙も贈り物も開封だけして、何を貰ったか、手紙の内容も憶えていない。
胸が苦しくなって来た、これがサリーの苦しみだったのだろうか。
「もう、お伝えしておきましょう。あの頃から、私はあなたを見限ったのです。一切、期待するのを止めました。怪我のことも知らないと言われればそうでしょう、言ってくれていたらと言いますか?何も答えない、聞く耳を持たない者に、何を言えと言うのです?」
「すまない…見限られたのだと思ってはいた。どう償えばいいか分からず、逃げていた。今もそうだ」
「真実の愛を見付け、私など捨ててくれれば良かったのです」
「サリー以外と結婚する気なんてなかった!それだけは信じてくれ」
愚かな欲で、女性を抱いたのは事実だ。サリーのことは結婚してから、ずっと一緒なのだからと…何の言いわけにもならない理由にした。それでもサリーと結婚し、本来なら側妃も愛妾も娶る気はなかったのだ。でももはや何を言っても、言いわけにも、思っていただけでは証明も出来ない。
「そうですか。では、もういいですか」
「いや、なぜ、レベッカと一緒だったのだ?」
「レベッカからはきちんと謝罪を受け取りましたから」
「受け取った?」
「ええ」
「なぜだ?他の者の謝罪は受け取らなかったのに…」
「レベッカだけですよ。自分で非を認めて、私が理由を話す前に謝罪した人は。後は全員、謝罪をしたのは私が話した後でした。バレなければ謝罪しない、謝罪しなくてはいけないからの謝罪。そんなもの、受け入れるはずないでしょう」
「ああ…そうだな…」
私を含め、皆が謝ったのはサリーが話した後であった。
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