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無縁
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妃殿下の心根を知ったルイソードの元へ、クイスラー侯爵家のアドルがやって来た。同級生ではあるが、正直、他の友人と一緒にいた際に、互いにその場にいたことがあるというべき間柄で、親しいとは言えないが、悪い人間ではない。
伺いを立てて、やって来たので、訪問を許可はしたが、内容は分かっている。
「離縁したって、本当なのかい?」
「ああ、事実だ」
「仲良くやっていたじゃないか、急にどうしたんだい?」
「何も聞いていないのか?」
「あっ、いや…」
「私の心配ではなく、自分の心配で来たんだろう?友人たちの中で、私を訪ねられる人間は限られるからね」
ルアンナと一緒にいたというステファー嬢とミンア嬢とカトレア嬢。アドルの妻が伯爵家のステファ―嬢である。皆、結婚しているが、アドルが一番爵位が高く、他の者は生家も含めても、伯爵家と子爵家である。
「皆に泣き付かれて、やって来たというところかな?だが、私は答えを持っていないから、答えようがない」
「待ってくれ、離縁の理由は何なんだ?」
「人間性の問題だよ、知っているのだろう?」
アズラー侯爵夫人が不貞のことを話しているとは思えない。殿下は口止めをしなかったが、相手探しになれば、面倒なことになるだろう。私も公にすることを望んではいない、妃殿下もあの口振りだと同じだろう。
「いや、ルアンナ嬢が妃殿下へ暴言を吐いていたというのは聞いたが、内容まではよく憶えていないと、詳しくは知らない」
全員を訪ねたと言っていた、おそらく三人の夫人たちは連絡を取り合ったのだろう。もしかしたら、ルアンナにも取ろうとしたのかもしれない。だが、アズラー侯爵夫妻が取らせることはないだろう。
「そうか。で、何だ?手短に話してもらいたい」
「ああ、すまない。どうして今さら問題になったのか、知りたくて」
「それなら先程、答えただろう?私は答えを持っていないと」
「だが、何か聞いたのではないか」
「何かって何だ?」
「いや、それは…」
実際、妃殿下からは何も聞いていない、ルアンナの暴言は書かれていたが、他の者の発言は書かれていなかった。だが、何度も一緒におり、おそらく咎めもせず一緒にいたような人間だ、何か言っている可能性は高い。
「奥方は何と言っているのだ?アズラー侯爵夫人が聞きに来ただろう?」
「暴言の書かれた紙を見せられて、事実かと聞かれたと、よく憶えてはいなかったが、王家に訊ねましょうかと言われて、認めてしまったと」
「裏付けが取れているではないか」
「責任を感じているんだ。自分が証言したせいで、離縁になったのではないかと」
「違うだろう?」
そんなはずはない、我々の心配などしていない。もはやルアンナの心配をしていればいい方だろう。アズラー侯爵夫人も巧みな聞き出し方である、三人を連絡を取らせない内に一気に訪問し、王家に訊ねると言われれば、大々的に調べられる可能性があるため、正直に話しただろう。
「えっ、違わないさ」
「奥方も問題にされるのではないか、自分に火の粉が降りかからないか、だろう?」
「問題になっているのか」
「だから、言っているじゃないか、私は答えを持っていない」
「だが、何か知っているのなら教えて欲しい。子どもも生まれたばかりなんだ、子を持つ親なら分かるだろう?」
確かに子どもは数ヶ月前に生まれたばかりだと聞いてる。男児であったため、ルアンナが次は男の子がいいと言っていたが、もう私には縁のない相手だ。
「私は本当に知らないが、謝罪に行くつもりなのか?」
「ああ、当然だ」
「ならば、そうすればいいじゃないか」
「だが、ステファーは同調したことはあったかもしれないと、言っていた」
アドルはステファー夫人を信じたいのか、愛しているのだろう。だが、私なら事実が知りたい。実際、これで良かったと思っている。
「だから怖くなった?憶えていないというのは便利な言葉だものな。妃殿下の記憶力でなくとも、された方は憶えているものだよ」
「そう、だな…」
「君も想像が付いているのだろう?元妻があれだけのことを言って、夫人は同調していなくとも、何度も一緒にいた、咎めもしなかったのではないか?私はそのような人間を妻にはできない。だから、私は離縁した。もういいか、商談があるんだ」
「ああ、時間を取らせてすまなかった…」
その後、何か行動を見せるかと思ったが、アドルも他の者も妃殿下に接触した様子はなかった。おそらく、全員で何かしらの結論を出したのだろう。
妃殿下がどこまで考えていたかのかは分からないが、私はアドルに毒を盛ることが出来ただろう。皆でビクビクしながら過ごせばいい。
ルイソードが思った通り、夫人たちは三人で集まって、大事になることを恐れ、口裏を合わせて、ルアンナは妃殿下を目の敵にしていたが、よく憶えていない、何か同調するようなことを言っていたとしても、爵位が下の私たちのことなんて、妃殿下は怒っていないかもしれない、もし咎められることがあれば、その際に必ず責任を持って、謝罪すると夫を説得した。
夫たちは自分勝手な説得に、子どもがいたり、家同士の関係もあるため、一応は納得をしたが、妻への疑念は消えず、距離が出来るのは当然であった。
伺いを立てて、やって来たので、訪問を許可はしたが、内容は分かっている。
「離縁したって、本当なのかい?」
「ああ、事実だ」
「仲良くやっていたじゃないか、急にどうしたんだい?」
「何も聞いていないのか?」
「あっ、いや…」
「私の心配ではなく、自分の心配で来たんだろう?友人たちの中で、私を訪ねられる人間は限られるからね」
ルアンナと一緒にいたというステファー嬢とミンア嬢とカトレア嬢。アドルの妻が伯爵家のステファ―嬢である。皆、結婚しているが、アドルが一番爵位が高く、他の者は生家も含めても、伯爵家と子爵家である。
「皆に泣き付かれて、やって来たというところかな?だが、私は答えを持っていないから、答えようがない」
「待ってくれ、離縁の理由は何なんだ?」
「人間性の問題だよ、知っているのだろう?」
アズラー侯爵夫人が不貞のことを話しているとは思えない。殿下は口止めをしなかったが、相手探しになれば、面倒なことになるだろう。私も公にすることを望んではいない、妃殿下もあの口振りだと同じだろう。
「いや、ルアンナ嬢が妃殿下へ暴言を吐いていたというのは聞いたが、内容まではよく憶えていないと、詳しくは知らない」
全員を訪ねたと言っていた、おそらく三人の夫人たちは連絡を取り合ったのだろう。もしかしたら、ルアンナにも取ろうとしたのかもしれない。だが、アズラー侯爵夫妻が取らせることはないだろう。
「そうか。で、何だ?手短に話してもらいたい」
「ああ、すまない。どうして今さら問題になったのか、知りたくて」
「それなら先程、答えただろう?私は答えを持っていないと」
「だが、何か聞いたのではないか」
「何かって何だ?」
「いや、それは…」
実際、妃殿下からは何も聞いていない、ルアンナの暴言は書かれていたが、他の者の発言は書かれていなかった。だが、何度も一緒におり、おそらく咎めもせず一緒にいたような人間だ、何か言っている可能性は高い。
「奥方は何と言っているのだ?アズラー侯爵夫人が聞きに来ただろう?」
「暴言の書かれた紙を見せられて、事実かと聞かれたと、よく憶えてはいなかったが、王家に訊ねましょうかと言われて、認めてしまったと」
「裏付けが取れているではないか」
「責任を感じているんだ。自分が証言したせいで、離縁になったのではないかと」
「違うだろう?」
そんなはずはない、我々の心配などしていない。もはやルアンナの心配をしていればいい方だろう。アズラー侯爵夫人も巧みな聞き出し方である、三人を連絡を取らせない内に一気に訪問し、王家に訊ねると言われれば、大々的に調べられる可能性があるため、正直に話しただろう。
「えっ、違わないさ」
「奥方も問題にされるのではないか、自分に火の粉が降りかからないか、だろう?」
「問題になっているのか」
「だから、言っているじゃないか、私は答えを持っていない」
「だが、何か知っているのなら教えて欲しい。子どもも生まれたばかりなんだ、子を持つ親なら分かるだろう?」
確かに子どもは数ヶ月前に生まれたばかりだと聞いてる。男児であったため、ルアンナが次は男の子がいいと言っていたが、もう私には縁のない相手だ。
「私は本当に知らないが、謝罪に行くつもりなのか?」
「ああ、当然だ」
「ならば、そうすればいいじゃないか」
「だが、ステファーは同調したことはあったかもしれないと、言っていた」
アドルはステファー夫人を信じたいのか、愛しているのだろう。だが、私なら事実が知りたい。実際、これで良かったと思っている。
「だから怖くなった?憶えていないというのは便利な言葉だものな。妃殿下の記憶力でなくとも、された方は憶えているものだよ」
「そう、だな…」
「君も想像が付いているのだろう?元妻があれだけのことを言って、夫人は同調していなくとも、何度も一緒にいた、咎めもしなかったのではないか?私はそのような人間を妻にはできない。だから、私は離縁した。もういいか、商談があるんだ」
「ああ、時間を取らせてすまなかった…」
その後、何か行動を見せるかと思ったが、アドルも他の者も妃殿下に接触した様子はなかった。おそらく、全員で何かしらの結論を出したのだろう。
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ルイソードが思った通り、夫人たちは三人で集まって、大事になることを恐れ、口裏を合わせて、ルアンナは妃殿下を目の敵にしていたが、よく憶えていない、何か同調するようなことを言っていたとしても、爵位が下の私たちのことなんて、妃殿下は怒っていないかもしれない、もし咎められることがあれば、その際に必ず責任を持って、謝罪すると夫を説得した。
夫たちは自分勝手な説得に、子どもがいたり、家同士の関係もあるため、一応は納得をしたが、妻への疑念は消えず、距離が出来るのは当然であった。
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