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再々非望2
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『では、皆が何を話したか、言ってみなさい(ノワンナ語)』
「普段は側近としてお側に、そして夜は愛される愛妾として側におります」
「は?」
「ふふふ」
殿下はあまりに言動に呆れたが、サリーは時が経ち、皆が成長しているのに、エマのあまりに変わっていない姿に、思わず笑いが零れていた。
『私が言うことではありませんが、さすがに酷いです(ノワンナ語)』
『ふふ、護衛は出来るのかしら?(ノワンナ語)』
『出来ないでしょう。私、聞いたことがあります。見合いの相手に、あの風貌で、女性は男性に守ってもらうものですからと言ったそうです(ノワンナ語)』
殿下の場合は護衛も別にいるが、側近は殿下を守る立場でもある、護衛の力も必要となるため、ノワンナ語だけでなれるものではない。
『まあ、何だかやっぱりちぐはぐね(ノワンナ語)』
『ちぐはぐ?(ノワンナ語)』
「ちぐはぐ」
「ありがとうございます」
サリーとレベッカは親しそうに、ノワンナ語の勉強を始めており、気にはなるが、殿下とクリコットはそれどころではない。
「ノワンナ語を理解も出来てもいない。私は側近に女性は取らない。護衛も出来ない者は側近にはなれない。愛妾も娶らない」
「そんな…ノワンナ語は分かります」
「分かっていないじゃないか、何を話しているか分かっていないのだろう?」
「あまり話す機会がなくて、緊張してしまって。落ち着けば話せますから」
「緊張で話せないのなら、意味がない。そんなことも分からないのか?」
「私にそんな厳しい言い方をしなくても、いいではありませんか」
エマは殿下をウルウルとした瞳で見つめ、口を挟まぬようにしていた、クリコットの苛立ちは爆発寸前であった。
「では、私が今から一つ言葉を言いますから、何と言っているか、答えてください」
「えっ…はい」
『男装もどき(ノワンナ語)』
「えっ、もう一度いいですか」
『男装もどき(ノワンナ語)』
「えっと、確か、可愛らしい、でしょうか」
「違います。やはり、理解できていませんね」
「何と言ったのですか」
「男装の麗人、と言いました」
「ああ、そうです、そうでした。すぐ思い出せなかっただけです」
「愚かですね」
最初に会った時は話すこともきちんとしていて、それが殿下に恋して、たった一度キスされたことだけで変わってしまったのか。恐ろしいものだ。
『クリコット様、性格がお悪いですよ。いじめているようではありませんか(ノワンナ語)』
『あったまがおっかしいそうですから、これでいいのです(ノワンナ語)』
『サリー様、今のところ、後で教えてください。私も一部、分かりませんでした(ノワンナ語)』
『あまり憶えなくてもいいものだけど、後で教えるわ(ノワンナ語)』
殿下はサリーとレベッカがまるで、姉というべきか、友人というべきか、親しく話している姿に違和感しかない。
「なぜ、ノワンナ語を取得したなどと嘘を言った?」
「えっ、だって、試験をしました」
「何の試験だ?」
「ですから、教本にあった試験です。七十点だったんですよ。これで、あなたもノワンナ語マスターだって書いてあって」
「何だそれは!」
「あははは!おっかしい!殿下、発言よろしいですか」
レベッカは大きな声で笑いながらも、小さく手を挙げ、殿下に許可を得た。
「教本に学習したらやってみましょうと、付属している試験があります。何点以上取れたら、褒める言葉として、先程言ったような言葉が書いてあるんです。子どもにやる気を出させる、類のものです。聞き取れていないようですので、おそらく、読み書きだけ覚えたのではありませんか?」
「それを取得したなどと言ったのか?」
「えっ、でも」
「子ども向けということだな?」
「ええ、私も使っていたのは、流石に幼い頃の話です」
「酷い!馬鹿にして、自分だって」
「黙りなさい。今、理解すら出来ていない者が向けていい言葉ではありませんよ」
サリーはエマを冷たい瞳で射貫きながら、諭す低い声であった。
「でも、だったらどうしたら…」
「はあ…一般的には語学検定試験を受けるんだ。それで、ようやく取得したと言える。通訳、翻訳家は取得しているだろう」
ただし、正妃、側妃試験に語学認定試験は必須ではない。レベッカは勿論、サリーも提出してはいない。王族として、きちんと理解し、訳せることよりも、話せるかが重要となることから、独自の試験があるのだ。
だが、王族でない者の場合は、証明として合格の証明書が必要となる。通訳、翻訳家は信用を得るために取得する理由となる。
「サリー様、いくつお持ちですか?」
「えっと、検定試験だけなら、十一個かしら?」
「「「え?」」」
エマは価値がよく分かっていないため、驚いたのはエマ以外の者たちである。
「普段は側近としてお側に、そして夜は愛される愛妾として側におります」
「は?」
「ふふふ」
殿下はあまりに言動に呆れたが、サリーは時が経ち、皆が成長しているのに、エマのあまりに変わっていない姿に、思わず笑いが零れていた。
『私が言うことではありませんが、さすがに酷いです(ノワンナ語)』
『ふふ、護衛は出来るのかしら?(ノワンナ語)』
『出来ないでしょう。私、聞いたことがあります。見合いの相手に、あの風貌で、女性は男性に守ってもらうものですからと言ったそうです(ノワンナ語)』
殿下の場合は護衛も別にいるが、側近は殿下を守る立場でもある、護衛の力も必要となるため、ノワンナ語だけでなれるものではない。
『まあ、何だかやっぱりちぐはぐね(ノワンナ語)』
『ちぐはぐ?(ノワンナ語)』
「ちぐはぐ」
「ありがとうございます」
サリーとレベッカは親しそうに、ノワンナ語の勉強を始めており、気にはなるが、殿下とクリコットはそれどころではない。
「ノワンナ語を理解も出来てもいない。私は側近に女性は取らない。護衛も出来ない者は側近にはなれない。愛妾も娶らない」
「そんな…ノワンナ語は分かります」
「分かっていないじゃないか、何を話しているか分かっていないのだろう?」
「あまり話す機会がなくて、緊張してしまって。落ち着けば話せますから」
「緊張で話せないのなら、意味がない。そんなことも分からないのか?」
「私にそんな厳しい言い方をしなくても、いいではありませんか」
エマは殿下をウルウルとした瞳で見つめ、口を挟まぬようにしていた、クリコットの苛立ちは爆発寸前であった。
「では、私が今から一つ言葉を言いますから、何と言っているか、答えてください」
「えっ…はい」
『男装もどき(ノワンナ語)』
「えっ、もう一度いいですか」
『男装もどき(ノワンナ語)』
「えっと、確か、可愛らしい、でしょうか」
「違います。やはり、理解できていませんね」
「何と言ったのですか」
「男装の麗人、と言いました」
「ああ、そうです、そうでした。すぐ思い出せなかっただけです」
「愚かですね」
最初に会った時は話すこともきちんとしていて、それが殿下に恋して、たった一度キスされたことだけで変わってしまったのか。恐ろしいものだ。
『クリコット様、性格がお悪いですよ。いじめているようではありませんか(ノワンナ語)』
『あったまがおっかしいそうですから、これでいいのです(ノワンナ語)』
『サリー様、今のところ、後で教えてください。私も一部、分かりませんでした(ノワンナ語)』
『あまり憶えなくてもいいものだけど、後で教えるわ(ノワンナ語)』
殿下はサリーとレベッカがまるで、姉というべきか、友人というべきか、親しく話している姿に違和感しかない。
「なぜ、ノワンナ語を取得したなどと嘘を言った?」
「えっ、だって、試験をしました」
「何の試験だ?」
「ですから、教本にあった試験です。七十点だったんですよ。これで、あなたもノワンナ語マスターだって書いてあって」
「何だそれは!」
「あははは!おっかしい!殿下、発言よろしいですか」
レベッカは大きな声で笑いながらも、小さく手を挙げ、殿下に許可を得た。
「教本に学習したらやってみましょうと、付属している試験があります。何点以上取れたら、褒める言葉として、先程言ったような言葉が書いてあるんです。子どもにやる気を出させる、類のものです。聞き取れていないようですので、おそらく、読み書きだけ覚えたのではありませんか?」
「それを取得したなどと言ったのか?」
「えっ、でも」
「子ども向けということだな?」
「ええ、私も使っていたのは、流石に幼い頃の話です」
「酷い!馬鹿にして、自分だって」
「黙りなさい。今、理解すら出来ていない者が向けていい言葉ではありませんよ」
サリーはエマを冷たい瞳で射貫きながら、諭す低い声であった。
「でも、だったらどうしたら…」
「はあ…一般的には語学検定試験を受けるんだ。それで、ようやく取得したと言える。通訳、翻訳家は取得しているだろう」
ただし、正妃、側妃試験に語学認定試験は必須ではない。レベッカは勿論、サリーも提出してはいない。王族として、きちんと理解し、訳せることよりも、話せるかが重要となることから、独自の試験があるのだ。
だが、王族でない者の場合は、証明として合格の証明書が必要となる。通訳、翻訳家は信用を得るために取得する理由となる。
「サリー様、いくつお持ちですか?」
「えっと、検定試験だけなら、十一個かしら?」
「「「え?」」」
エマは価値がよく分かっていないため、驚いたのはエマ以外の者たちである。
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