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腐敗
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邸に連れ帰られたルアンナはルイソードも今は怒っているだけ、もう一度話せば分かるはずだ、シュリアに会いたいと、泣き喚いていたが、翌日には両親に羽交い絞めにされて、領地に連れて行かれ、事情を両親と姉に打ち明けた。
祖父母に怒られたことがなかったルアンナは、泣き付こうとしたが、信じられない、侯爵家を潰す気か、曾孫に会えなくなったと、大層悲しまれるだけだった。
ルアンナは自身の行ったことを、きちんと反省するようにと客室に連れて行かれ、娯楽のない質素な部屋で過ごすことになる。
ルアンナとローサムの姉・スーミラは仲が悪いということはなかったが、スーミラの夫であるコドル前伯爵の不貞のことを知っており、不貞を人一倍憎んでいることも分かっているため、ルアンナは目を合わせられなかった。
祖父母は具合が悪くなったと、重たい足取りで部屋に戻って行き、スーミラは静かに怒りを灯し、燃え始めていた。
「不貞をする者は脳味噌が腐っているのです」
「はい」「はい…」
「ルアンナのことはとりあえず、私に任せなさい。どうなろうとも、まずはあなたたちは自分のすべきことを、行いなさい。それまでしっかりこちらで指導します」
「ありがとうございます」「お義姉様、申し訳ございません」
「謝るのは私にではないでしょう」
「はい、その通りにございます」
ティファナは厳しいスーミラを王妃様と同じくらい尊敬している。
暴言、暴力、不貞、スーミラが嫌う、不誠実てんこ盛り状態である。しかも相手は妃殿下。コドル伯爵夫人として、ティファナから聞いた話、妃殿下の素晴らしさは存分に知っている。ルアンナを引っ叩かなかったことが不思議なくらいである。
「確かに保護下にあった以上、あなたたちにも責任があるでしょう。ですが、隠れて行われたこと、相談されたわけでもない、気付くのは難しかったでしょう。どうすれば起こらなかったは、全て今さらです。考えることではありません」
「「はい」」
「殿下についてはこちらが何か言うことではありませんから、控えますが、妃殿下への暴言と暴力については、二人はきちんと理解できていますね?逆だったらと、立場を変えて考えましたか」
「はい、考えました。許せるものではありません」「はい」
「では、私から伝えたいのは…不貞には二種類あると言われています。本能の赴くまま不貞を行った者、好意を持って不貞をした者。私の夫は前者ではありますが、気持ちはないんだ、快感だけで行ってしまった。なぜ私が許さなくてはならないのでしょうか。一方、後者はどうしようもなく、愛してしまったんだ、すまない。こちらは離縁を望むか、愛人にするか、でしょうね。どちらが辛いと思いますか」
「それは気持ちがある分、いや」
ローサムはスーミラが傷付き、怒っていたことも痛いほど知っており、失言だったと目を合わせてしまった。
「私のことは考えなくていいです」
「では…好意がある方が、精神的に辛いのではないでしょうか」
「私も同じ意見です」
「いいえ、どちらも伴侶からすれば、不貞の事実は変わらないのです。気持ちなんて、見えるものではありませんからね。気持ちはないなんて証明出来ないでしょう?出来たとしても、だから何だという話です。違うと言いながら、どちらも同じです。私は皆に相談を受けることが多かったのです、ですから色んな話を聞きました」
「…はい」「はい」
スーミラは不貞を許したわけではなかったが、コドル伯爵家、子どものために今まで頑張って来た。不貞をした者がスーミラを見習えと言われてはいけないと、夫を一生許すことはない、苦しんで死んで欲しいと怒りも見せるようにした。
「不貞をされた者は皆、傷付き、悲しんでいます。いくら遊びだろうが、本気だろうが、全て不貞です。相手のことを考えていない。誠実に話したとしても、傷付けるのです。後にあんなこともあったなどと思えるには時間や、支えてくれる人や、自分で立ち上がる強い意志が必要になるのです。自分の罪なら自分で償えばいい、そうではないのです。勝手に与えられたことで、このようになるのです。時間が経ち、支えてくれる存在がいて、いくら自分は幸せだとしても、目の前で不貞を行った相手が幸せそうにしていたら、再び苦しむことになるかもしれません」
「はい」「はい…」
「傷付けられた記憶がなくなることは、記憶喪失にでもならないと難しいです。嫌なこと、恥ずかしいこと、忘れたいことの方がより濃く残ります。一般の人間でそうなのです、妃殿下の記憶力ならば、想像を絶します」
「はい…」「その通りだと思います」
「ですから脳味噌が腐っていると言ったのです。あなたたちは理解した上で、今後は妃殿下にも、ルイソード・クリジアン様にも、話をしなければなりませんよ!」
「「はい!」」
スーミラはまずは自覚することから始めると言い、毎日サリーへの発言をルアンナに向けられたものへと変換し、大きな声で音読し、復唱させられている。
『あなたと比べられるなんて、不本意だわ。本当なら、比べられる相手じゃないのよ。顔を見るだけでイラつくわ、本当にいい加減にして欲しいわ』
「あなたと…比べられるなんて…」
「はっきり話しなさい!」
『もう消えてくれない?気持ち悪い』
「伯母様、もう、もう、止めて…」
「あなたの発言よ!きちんと聞いて、復唱なさい!」
使用人にも聞こえるため、相手は伏せられているが、暴言、暴力、不貞行為を行って離縁されたことは話してあり、不潔にされるのは迷惑なので、最低限の支度はするが、使用人はルアンナに近づくことはない。
祖父母は少しやり過ぎではと思ったが、発言を身に沁み込ませ、忘れないようにすれば、どれだけ酷いことを言ったのか、ルアンナも私たちも身を持って感じることが出来るでしょうと言われて、黙るしかなかった。
祖父母に怒られたことがなかったルアンナは、泣き付こうとしたが、信じられない、侯爵家を潰す気か、曾孫に会えなくなったと、大層悲しまれるだけだった。
ルアンナは自身の行ったことを、きちんと反省するようにと客室に連れて行かれ、娯楽のない質素な部屋で過ごすことになる。
ルアンナとローサムの姉・スーミラは仲が悪いということはなかったが、スーミラの夫であるコドル前伯爵の不貞のことを知っており、不貞を人一倍憎んでいることも分かっているため、ルアンナは目を合わせられなかった。
祖父母は具合が悪くなったと、重たい足取りで部屋に戻って行き、スーミラは静かに怒りを灯し、燃え始めていた。
「不貞をする者は脳味噌が腐っているのです」
「はい」「はい…」
「ルアンナのことはとりあえず、私に任せなさい。どうなろうとも、まずはあなたたちは自分のすべきことを、行いなさい。それまでしっかりこちらで指導します」
「ありがとうございます」「お義姉様、申し訳ございません」
「謝るのは私にではないでしょう」
「はい、その通りにございます」
ティファナは厳しいスーミラを王妃様と同じくらい尊敬している。
暴言、暴力、不貞、スーミラが嫌う、不誠実てんこ盛り状態である。しかも相手は妃殿下。コドル伯爵夫人として、ティファナから聞いた話、妃殿下の素晴らしさは存分に知っている。ルアンナを引っ叩かなかったことが不思議なくらいである。
「確かに保護下にあった以上、あなたたちにも責任があるでしょう。ですが、隠れて行われたこと、相談されたわけでもない、気付くのは難しかったでしょう。どうすれば起こらなかったは、全て今さらです。考えることではありません」
「「はい」」
「殿下についてはこちらが何か言うことではありませんから、控えますが、妃殿下への暴言と暴力については、二人はきちんと理解できていますね?逆だったらと、立場を変えて考えましたか」
「はい、考えました。許せるものではありません」「はい」
「では、私から伝えたいのは…不貞には二種類あると言われています。本能の赴くまま不貞を行った者、好意を持って不貞をした者。私の夫は前者ではありますが、気持ちはないんだ、快感だけで行ってしまった。なぜ私が許さなくてはならないのでしょうか。一方、後者はどうしようもなく、愛してしまったんだ、すまない。こちらは離縁を望むか、愛人にするか、でしょうね。どちらが辛いと思いますか」
「それは気持ちがある分、いや」
ローサムはスーミラが傷付き、怒っていたことも痛いほど知っており、失言だったと目を合わせてしまった。
「私のことは考えなくていいです」
「では…好意がある方が、精神的に辛いのではないでしょうか」
「私も同じ意見です」
「いいえ、どちらも伴侶からすれば、不貞の事実は変わらないのです。気持ちなんて、見えるものではありませんからね。気持ちはないなんて証明出来ないでしょう?出来たとしても、だから何だという話です。違うと言いながら、どちらも同じです。私は皆に相談を受けることが多かったのです、ですから色んな話を聞きました」
「…はい」「はい」
スーミラは不貞を許したわけではなかったが、コドル伯爵家、子どものために今まで頑張って来た。不貞をした者がスーミラを見習えと言われてはいけないと、夫を一生許すことはない、苦しんで死んで欲しいと怒りも見せるようにした。
「不貞をされた者は皆、傷付き、悲しんでいます。いくら遊びだろうが、本気だろうが、全て不貞です。相手のことを考えていない。誠実に話したとしても、傷付けるのです。後にあんなこともあったなどと思えるには時間や、支えてくれる人や、自分で立ち上がる強い意志が必要になるのです。自分の罪なら自分で償えばいい、そうではないのです。勝手に与えられたことで、このようになるのです。時間が経ち、支えてくれる存在がいて、いくら自分は幸せだとしても、目の前で不貞を行った相手が幸せそうにしていたら、再び苦しむことになるかもしれません」
「はい」「はい…」
「傷付けられた記憶がなくなることは、記憶喪失にでもならないと難しいです。嫌なこと、恥ずかしいこと、忘れたいことの方がより濃く残ります。一般の人間でそうなのです、妃殿下の記憶力ならば、想像を絶します」
「はい…」「その通りだと思います」
「ですから脳味噌が腐っていると言ったのです。あなたたちは理解した上で、今後は妃殿下にも、ルイソード・クリジアン様にも、話をしなければなりませんよ!」
「「はい!」」
スーミラはまずは自覚することから始めると言い、毎日サリーへの発言をルアンナに向けられたものへと変換し、大きな声で音読し、復唱させられている。
『あなたと比べられるなんて、不本意だわ。本当なら、比べられる相手じゃないのよ。顔を見るだけでイラつくわ、本当にいい加減にして欲しいわ』
「あなたと…比べられるなんて…」
「はっきり話しなさい!」
『もう消えてくれない?気持ち悪い』
「伯母様、もう、もう、止めて…」
「あなたの発言よ!きちんと聞いて、復唱なさい!」
使用人にも聞こえるため、相手は伏せられているが、暴言、暴力、不貞行為を行って離縁されたことは話してあり、不潔にされるのは迷惑なので、最低限の支度はするが、使用人はルアンナに近づくことはない。
祖父母は少しやり過ぎではと思ったが、発言を身に沁み込ませ、忘れないようにすれば、どれだけ酷いことを言ったのか、ルアンナも私たちも身を持って感じることが出来るでしょうと言われて、黙るしかなかった。
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