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白状
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明後日、陛下の執務室で人払いをして、親子三人だけとなった。
殿下は女性たちの名前の一覧と、サリーの記した書類の写しを、聞きながらでいいので、自身の子どもが言われたと思って、そちらを読んで欲しいと渡すと、両陛下は眉をひそめて読み始め、しばらくすると殿下は意を消して話し出した。
「その一覧に名前のある女性は、全てサリーの代理に指名される者たちで、私の不貞の相手です。サリーは全てを知っておりました」
「は?」「えっ」
「私はマリーズ・ヒルダという男爵令嬢と関係を持っており、そのことでミアローズに脅されて、修道院行きを止めたのです。ルアンナは婚約者がいたので、最後までしていませんが、準ず行為を行い、サリーに目撃されておりました」
「何だと?」「っな」
「エマ・ネイリーはキスだけですが、その他は私が関係を持った者たちです」
「お前」「嘘でしょう…」
両陛下はサリーへの匂わせる発言や、薄々気付いていた部分はあったが、こんなにもいたとは思わなかった。
「元々自身が相応しいと思っていた者もおりますが、私と関係を持ったことで、相応しいと思った者もおります。そのせいで、サリーがいかに傷付いたか。サリーは母上に言われた通り、私には一切言いませんでした」
「お前はこんなにだらしのない…人間だったのか」「そんな…」
陛下は頭を抱えており、王妃はショックを受けて、言葉を失っている。
「はい、あなた方の一人息子は愚かで、本来なら婚約解消して、廃嫡にすべきだったでしょう。ですが、私しか子どもがいない。サリーは有耶無耶にされる可能性を考えていたのかもしれません」
「解消を許さなかった私たちにも責任はある」
陛下は認められないという喚く王妃とは違って、エマ・ネイリーの際に、何度も婚約解消を願い出たサリー以上に相応しい者はいないと静かに諫めたが、優秀な語学力を手放したくないのは明らかであった。
現在は弁えているが、誇らしかったと言えば聞こえはいいが、翻訳を安請け合いし、勝手に優先するように言ったり、通訳を押し付けることもしていたからだ。
「本来なら離縁することが責任を取るということでしょう。でも私がサリーがいない人生は考えられないのです。サリーは翻訳を優先したいと、国際会議は出席してくれると申しております。お許しいただきたいのです」
「それでは、王太子妃ではないじゃない!」
「利用していたのに、よくそんなことが言えますね」
王妃も陛下と似たような利用をしていた、本来は出席するような場ではないのに、翻訳する人形のように貸し出したこともある。優先度はあるが、サリーの翻訳の順番待ちは今も続いている。
「サリーが出たくないと言えば、リールが一人で出るというのか」
「はい、サリーは私の隣に並びたくもないはずですから。レベッカが身に付ければ、全て任せたいと言っておりましたが、あまり期待できません」
「そうか、側妃はもう娶らぬのだな?」
陛下は王子が生まれていることから、正妃は難しくとも、おそらく側妃を娶って、サリーと離縁も視野に入れているのだろう。
「はい、サリーとミーラのためにもこれ以上、負担を掛けたくないのです。私が死ぬまで、反省し、責任を負います。あとサリーの目に入ることがないように、ルアンナ・クリジアン、カリー・ロイルと、ミサモエス・ジーストは王家の招待客から外してよろしいですか」
「ああ、許可しよう。ミアローズとエマ・ネイリーはどうする?」
「その二人は様子見です。ミアローズは既に王宮には招待状がないとは入れませんし、頭も悪いですから、サリーに接触することはないでしょう。エマ・ネイリーは次はないと言ってありますから、再び現れれば罰を与えます」
「そうか、私は賛成しよう。王妃はどうだ?」
黙っていた王妃だったが、いくら読んでも、サリーは可哀想だとは思いはするが、王太子妃なら耐えればいい、陛下は女性の影などなかったのだが、嫌味を言われたことくらいはあるのだからと、リールの立場のことばかり考えている。
「サリーが出なくなれば、色々言われるのよ。語学力だって披露した方がサリーにも良いことでしょう?今まで通り、出るだけ出させればいいじゃない」
「私は代理をもう使わせたくないのです」
「招待できないからと、上手く言って、使わせなければいいのよ。ティファナも辞めると言ってるの、困るわ」
ティファナ・アズラーはルアンナの行ったことを話して、既に辞職を願い出ていたが、王妃が止めていたのだ。
「サリーは望まないでしょうが、辞めるべきでしょう。その娘が行っていたのは罪ですよ、怪我まで負っています。その親に教わっている気持ちが分かりますか、母上なら耐えられますか?私もルアンナを見誤っていたのです」
「そ、それはそうだけど」
「サリーにこれ以上、負担を掛けたくないのです」
「分かったわ。でも時間を作るから、サリーと話をさせて頂戴」
殿下は女性たちの名前の一覧と、サリーの記した書類の写しを、聞きながらでいいので、自身の子どもが言われたと思って、そちらを読んで欲しいと渡すと、両陛下は眉をひそめて読み始め、しばらくすると殿下は意を消して話し出した。
「その一覧に名前のある女性は、全てサリーの代理に指名される者たちで、私の不貞の相手です。サリーは全てを知っておりました」
「は?」「えっ」
「私はマリーズ・ヒルダという男爵令嬢と関係を持っており、そのことでミアローズに脅されて、修道院行きを止めたのです。ルアンナは婚約者がいたので、最後までしていませんが、準ず行為を行い、サリーに目撃されておりました」
「何だと?」「っな」
「エマ・ネイリーはキスだけですが、その他は私が関係を持った者たちです」
「お前」「嘘でしょう…」
両陛下はサリーへの匂わせる発言や、薄々気付いていた部分はあったが、こんなにもいたとは思わなかった。
「元々自身が相応しいと思っていた者もおりますが、私と関係を持ったことで、相応しいと思った者もおります。そのせいで、サリーがいかに傷付いたか。サリーは母上に言われた通り、私には一切言いませんでした」
「お前はこんなにだらしのない…人間だったのか」「そんな…」
陛下は頭を抱えており、王妃はショックを受けて、言葉を失っている。
「はい、あなた方の一人息子は愚かで、本来なら婚約解消して、廃嫡にすべきだったでしょう。ですが、私しか子どもがいない。サリーは有耶無耶にされる可能性を考えていたのかもしれません」
「解消を許さなかった私たちにも責任はある」
陛下は認められないという喚く王妃とは違って、エマ・ネイリーの際に、何度も婚約解消を願い出たサリー以上に相応しい者はいないと静かに諫めたが、優秀な語学力を手放したくないのは明らかであった。
現在は弁えているが、誇らしかったと言えば聞こえはいいが、翻訳を安請け合いし、勝手に優先するように言ったり、通訳を押し付けることもしていたからだ。
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「それでは、王太子妃ではないじゃない!」
「利用していたのに、よくそんなことが言えますね」
王妃も陛下と似たような利用をしていた、本来は出席するような場ではないのに、翻訳する人形のように貸し出したこともある。優先度はあるが、サリーの翻訳の順番待ちは今も続いている。
「サリーが出たくないと言えば、リールが一人で出るというのか」
「はい、サリーは私の隣に並びたくもないはずですから。レベッカが身に付ければ、全て任せたいと言っておりましたが、あまり期待できません」
「そうか、側妃はもう娶らぬのだな?」
陛下は王子が生まれていることから、正妃は難しくとも、おそらく側妃を娶って、サリーと離縁も視野に入れているのだろう。
「はい、サリーとミーラのためにもこれ以上、負担を掛けたくないのです。私が死ぬまで、反省し、責任を負います。あとサリーの目に入ることがないように、ルアンナ・クリジアン、カリー・ロイルと、ミサモエス・ジーストは王家の招待客から外してよろしいですか」
「ああ、許可しよう。ミアローズとエマ・ネイリーはどうする?」
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「そうか、私は賛成しよう。王妃はどうだ?」
黙っていた王妃だったが、いくら読んでも、サリーは可哀想だとは思いはするが、王太子妃なら耐えればいい、陛下は女性の影などなかったのだが、嫌味を言われたことくらいはあるのだからと、リールの立場のことばかり考えている。
「サリーが出なくなれば、色々言われるのよ。語学力だって披露した方がサリーにも良いことでしょう?今まで通り、出るだけ出させればいいじゃない」
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