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真暗

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 ミアローズにマリーズとの関係をばらしてもいいのか、もう近づかないから、出入り禁止だけにしてと脅されて、修道院に入れろという両陛下を説得した。

 マリーズは一つ年上で、偶然、図書室で知り合った令嬢だった。彼女はいずれこの国を出るつもりだからと言っており、お互い遊びだった。一時の恋のようなものを味わったに過ぎない。

 しかし、サリーが代理に指名するということは、何か言ったのか。

「何と、言われたのだ?」
「彼女は『私と殿下は想いあっているの。爵位以外は相応しいと言ってくれるだけど。でも心配なさらないで。私は卒業したらソアート帝国に行くの。でも殿下が離してくれるかは、分からないの。だから私が去ったら、しっかり捕まえておいてくださいね。もし、奪ってしまったらごめんなさい』だったわね」
「すまない、私はそんなことをサリーの口から言わせたいわけじゃなかった。ああ、すまない。私は想い合うようなことは言っていない、信じて欲しい。ミアローズに脅される前に、会うことはなくなっていたんだ。それからは一切会っていない」

 クリコットにもバレなければいいと思っているようだが、バレた時のことを考えるように何度も言われた。今がその時だ。

「そう、本当なら誕生祭は彼女だったのにね」
「国にいないから、指名しなかったのか」
「あなた知らないの?彼女ね、亡くなっているの。丁度マリーヌ王女が生まれた頃だったから、名前が似ているし、お気に入りだったのかと思ったのに、違ったの?」
「知らない、王女の名は母上がいくつか候補を出して、その中から選んだんだ。亡くなっていたのか」
「そう、帝国に行くのも、名残惜しいと思わせる嘘で、死因は性病ですって」
「え?」

 再び、血の気が失せた瞬間であった。下半身が瞬間的に縮こまるのを感じた。

「怖いわよね」
「私は患っていない!本当だ」

 検査も受けていたし、症状もなかった。サリーとの閨の前は侍医に執拗に調べられていた。サリーの指示だったというのか。

「でも患ったかもしれないでしょう?私も、その後の人も感染させられていたかもしれないでしょう?」
「ああ、そうだ、そうだな?その後の人も…?」
「ミサモエス・ラーダ、エマ・ネイリーは微妙ね、後は娼婦の方ね、リンダ・コンドラー、ナリア・フミル。あとはレベッカ」
「ははっ、離縁したがらない方がおかしいな」

 どうしようもないと笑いが出るというのは本当だ。極めて、乾いた声が笑いたくもないのに出ていた。

「離縁でよくてよ?」
「それだけはお願いだ、耐えて欲しい。私のことは近くに住む知り合いでいい。王子のことだけは見捨てないでやってくれ」
「まあ、私の心をようやくわかってくれたのね。では知り合いさん、そろそろ戻っていただける?」
「ああ、その前にグリズナー・トラスと、ルアンナ・アズラー以外の発言の記したものがあれば、貰えないか。こちらで必要なら処分を与える」
「今さらいいわよ」
「いや、私は把握して置きたいのだ。これは私の責任だ」

 サリーは金庫から選びながら取り出し、はいと渡したが、ズシンと重みがあり、吐き気がするほどの束であった。執務室に戻ると、クリコットも薄暗い中でどんよりと座り込んでおり、殿下も向かいに座った。

「ああ、殿下、どうでしたか。良いことはあるはずもないですが」
「サリーは私の不貞を全て知っていたよ。代理は不貞が行われた順番だったんだ」
「えっ、まさか…」
「クリコットが言っていた、バレた時のこと…痛いほど味わって来た。これに全ての発言が記してある、必要なら処罰すると貰って来た、サリーを煩わせず、最初から私が責任を取るべきだったんだ」
「殿下…」

 嘘と愚かさで身包みを剥されてしまった殿下は小さくなっており、机に置かれた束を見つめている。だが、責任を取るのは確かに殿下と女性たちだろう。妃殿下に咎めるところはない、そもそも謝罪を求めてすらいない。
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