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陳謝
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アズラー夫人は、約束の日に顔色の悪いルアンナ・クリジアンを連れて、サリーの宮を訪れた。二人は髪の毛をきっちりまとめ、全身ブラック一色である。殿下とクリコットも見守るために同席している。
「妃殿下が私が決めたことではないと、おっしゃっているのにも関わらず、私こそが王太子妃に相応しいと、好き放題言って、誠に申し訳ございませんでした。勿論、許してもらえるとは思いませんが、謝らせてください」
相当、ルアンナはアズラー夫人に絞られ、言い聞かせられた様子で、アズラー夫人も一緒に深く頭を下げている。
『私は謝罪を望んでいるわけではありません。ですから受け入れません。発言の責任を取って、代理を行っていただければいいのです(アペラ語)』
「娘が申し訳ありませんでした、どのような気持ちでサリー様は私の授業を受けていたのかと、お詫びの仕様もございません」
『では代理、よろしくお願いします(アペラ語)』
「娘には無理です」
『無理だろうが、何だろうが、私に関係あるかしら?(アペラ語)』
「サリー、母国語で話してもらえないか」
『訪問されるのですから、アペラ語がいいと思いましたのに(アペラ語)』
『気持ちは有難いと思っている。あと、今回もあるのだろうか、彼女の発言を記したものは(アペラ語)』
サリーは新しい金庫から出した紙の束を殿下、ルアンナ、アズラー夫人に渡した。グリズナー夫人と同じくらいの枚数がある。
「ルアンナ・アズラーの発言が記してあります」
「っな、そんな」
「似たような発言が多かったです。黙って読んでくださいね、謝罪も不要です」
サリーが代理の理由に書いた発言以外は、攻撃と脅しの言葉ばかりであった。
『あなたと比べられるなんて、不本意だわ。本当なら、比べられる相手じゃないのよ。顔を見るだけでイラつくわ、本当にいい加減にして欲しいわ』
『勝ったつもりでいるのでしょう?でもお母様に言えば、どうとでもなるのよ?分かっているの?』
『もう消えてくれない?気持ち悪い』
『お母様はあなたの授業はとても不愉快だそうよ、帰って来ると気分が悪いっていつも言うの』
『あなた、消えてよ。あなたが消えれば、私しかいなくなるじゃない』
『殿下だって、私の方がいいっておっしゃってるのよ!本当、あなたなんて、生まれて来なければ良かったのに』
「何なの、これは!私は不愉快などと言ったこともなければ、ただのいじめじゃない…ルアンナ、あなたは」
ルアンナは最初の一部分を読むと、続きを読むことが出来ず、恐ろしくて顔を上げらなくなり、縮こまってしまっている。グリズナー夫人とは違う、人格を否定して傷付ける言葉の数々である。
さすがに結婚後のルアンナ・クリジアンとしての発言はない。
「これは事実なのか、サリーはこんな言葉を言われ続けていたのか」
「ええ、そうですよ。叩かれたのも、一緒にいた方も書いてありますでしょう?」
「平手打ち、突き飛ばし…転倒…」
「大した怪我はありませんでしたが、当時は王族の婚約者で、受ける義務がありましたので、一番後ろに当時の診断書の写しを付けてあります」
四枚は診断書で、だからグリズナー夫人と同じくらいの枚数あったのだ。
「サリー様、いえ、妃殿下、これは許されることではありません。嫌がらせなどと、軽い言い方をしてはなりません。暴行罪です、これは」
「お母様っ」
「妃殿下、どうか罪を償わせてください」
「あっ、ちが、ちが…」
アズラー夫人はルアンナに見向きもせず、サリーに深く頭を下げた。
「サリー、なぜ、誰かに相談しなかったのだ?」
「両親に言えば、慰謝料だ、むしり取ってやると、ニヤつく顔しか浮かびませんでしたので。そのお金が両親の宝飾品になるのですよ?夫人は一人か、ステファー嬢とミンア嬢とカトレア嬢と一緒で、学園全員というわけではありませんでしたから」
「理由になっていないよ」
そんな理由で両親にも言わず、サリーには兄がいるが、当時はずっと隣国に行っており、アズラー夫人になんて言えるはずもない。
「妃殿下が私が決めたことではないと、おっしゃっているのにも関わらず、私こそが王太子妃に相応しいと、好き放題言って、誠に申し訳ございませんでした。勿論、許してもらえるとは思いませんが、謝らせてください」
相当、ルアンナはアズラー夫人に絞られ、言い聞かせられた様子で、アズラー夫人も一緒に深く頭を下げている。
『私は謝罪を望んでいるわけではありません。ですから受け入れません。発言の責任を取って、代理を行っていただければいいのです(アペラ語)』
「娘が申し訳ありませんでした、どのような気持ちでサリー様は私の授業を受けていたのかと、お詫びの仕様もございません」
『では代理、よろしくお願いします(アペラ語)』
「娘には無理です」
『無理だろうが、何だろうが、私に関係あるかしら?(アペラ語)』
「サリー、母国語で話してもらえないか」
『訪問されるのですから、アペラ語がいいと思いましたのに(アペラ語)』
『気持ちは有難いと思っている。あと、今回もあるのだろうか、彼女の発言を記したものは(アペラ語)』
サリーは新しい金庫から出した紙の束を殿下、ルアンナ、アズラー夫人に渡した。グリズナー夫人と同じくらいの枚数がある。
「ルアンナ・アズラーの発言が記してあります」
「っな、そんな」
「似たような発言が多かったです。黙って読んでくださいね、謝罪も不要です」
サリーが代理の理由に書いた発言以外は、攻撃と脅しの言葉ばかりであった。
『あなたと比べられるなんて、不本意だわ。本当なら、比べられる相手じゃないのよ。顔を見るだけでイラつくわ、本当にいい加減にして欲しいわ』
『勝ったつもりでいるのでしょう?でもお母様に言えば、どうとでもなるのよ?分かっているの?』
『もう消えてくれない?気持ち悪い』
『お母様はあなたの授業はとても不愉快だそうよ、帰って来ると気分が悪いっていつも言うの』
『あなた、消えてよ。あなたが消えれば、私しかいなくなるじゃない』
『殿下だって、私の方がいいっておっしゃってるのよ!本当、あなたなんて、生まれて来なければ良かったのに』
「何なの、これは!私は不愉快などと言ったこともなければ、ただのいじめじゃない…ルアンナ、あなたは」
ルアンナは最初の一部分を読むと、続きを読むことが出来ず、恐ろしくて顔を上げらなくなり、縮こまってしまっている。グリズナー夫人とは違う、人格を否定して傷付ける言葉の数々である。
さすがに結婚後のルアンナ・クリジアンとしての発言はない。
「これは事実なのか、サリーはこんな言葉を言われ続けていたのか」
「ええ、そうですよ。叩かれたのも、一緒にいた方も書いてありますでしょう?」
「平手打ち、突き飛ばし…転倒…」
「大した怪我はありませんでしたが、当時は王族の婚約者で、受ける義務がありましたので、一番後ろに当時の診断書の写しを付けてあります」
四枚は診断書で、だからグリズナー夫人と同じくらいの枚数あったのだ。
「サリー様、いえ、妃殿下、これは許されることではありません。嫌がらせなどと、軽い言い方をしてはなりません。暴行罪です、これは」
「お母様っ」
「妃殿下、どうか罪を償わせてください」
「あっ、ちが、ちが…」
アズラー夫人はルアンナに見向きもせず、サリーに深く頭を下げた。
「サリー、なぜ、誰かに相談しなかったのだ?」
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「理由になっていないよ」
そんな理由で両親にも言わず、サリーには兄がいるが、当時はずっと隣国に行っており、アズラー夫人になんて言えるはずもない。
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