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驕傲
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邸に帰ったミアローズは荒れた、荒れに荒れた。馬車の中でも暴れていたのだが、まだ足りなかったようだ。
「何なのよ!どうして、私が退出させられないといけないの!」
「なぜ、語学を教えているなどと言ったのだ…」
「だって、そういえば、あの綺麗な男性と時間を作れるじゃない!リールもリールよ、何で私を庇わないのよ!引き立たせるべきでしょう!」
「殿下の誕生祭だぞ」
「えっ、あっ、それはそうだけど」
ミアローズはすっかり忘れており、ただの夜会の気分でいたのだ。しかも王太子妃の代理、離縁を払拭し、ミアローズが輝かしい場所に戻って来たと、アピールする絶好の機会だと思っていたのだ。
離縁してからは生家は変わらなかったが、公に場に出ると、同世代の男性は妻を伴っているので、昔のようには近寄って来れない。
何人かは妻を伴ってやって来たので、可愛らしい奥様だと言いながら、値踏みするくらいしか楽しみもなく、物足りなさを感じていた。だからこそ、真の価値を知らしめて、向こうから願わせようと考えていた。
「分かったわ、通訳が悪いのよ!」
「そうだな、報酬を渡して帰らせたから、もう姿を現さないよ」
「ふん!私が折角、雇ってあげたのに可哀想ね」
「しばらく大人しくしていなさい」
「そうね、傷付いたもの。静養させていただきますわ」
ミアローズは家族のいる邸ではなく、別の邸に移って、男性たちと楽しむことにした。ミアローズは色事を異常に好んでいる。
リール殿下とクリコットが離縁の理由が不貞だろうと言ったのも、色狂いであることを知っていたからである。
そして、ミアローズはこの一件で、僅かな友人の伴侶からミアローズ禁止令が出てしまい、夜会にも呼ばれなくなり、ますます色事にのめり込むこととなる。
ミアローズは幼い頃から、両家共に女の子はミアローズだけの環境で、自分がお姫様だと疑わなかった。しかし、本物のお姫様は王太子妃になってこそだと知り、自身がいずれなるのだと、周りも応援していた。
だが、家庭教師から三ヶ国語は無理だと言われ、さすがに公爵夫妻も王太子妃は難しいと結論を出した。お金や権力でどうにかなるものではない。しかし、ミアローズは納得できなかった、だから婚約者に選ばれたサリーを貶す発言をしている。
そして色事を覚えたミアローズは、すっかり虜になってしまった。見た目は美しいので、相手には困らない。王太子妃も、恋愛小説にあったように既成事実を作ってしまえばいいと思い、リール殿下に興奮剤を飲ませて、情事に及んだ。これが公にはされていない王家と公爵家の因縁である。
ミアローズは妊娠しているかもしれないと、殿下に責任を取るように迫ったが、なれても愛妾であることをようやく理解し、諦めたのだ。
もちろん、妊娠もしていなかった。
それからは殿下に迫って来るようなことはなかったが、昔から親しいのだとアピールをしたり、殿下には気持ちの悪い蟠りとなったが、ミアローズは何もなかったように接するのが、余計に関わりたくない相手となった。
ただし、王族に興奮剤を飲ませることは罪とされ、ミアローズは公爵の同伴者として王宮を自由に出入りしていたが、公にはなっていないが、公式な場で招待状がないと入れないこととなっている。
関わりたくなければ、王宮にいれば、安全である。サリーに会いに行くことも出来ないので、押し掛けて来る可能性はなかった。
ミアローズが二十二歳まで結婚しなかったのは、色狂いのこともあるが、三ヶ国語が必須ではない、別の国の妃を狙っていたからである。しかし、それでも他国となれば、それこそ語学力が必要になる。公爵も伝手を辿って、会わせることは出来ても、最初は美しい見た目と所作に好印象となるが、通訳を通して話すことになり、結局は婚約とまではならない。他国の高位貴族も同様であった。
そしてようやく結婚したのが、リカス・マーラ侯爵であった。
「何なのよ!どうして、私が退出させられないといけないの!」
「なぜ、語学を教えているなどと言ったのだ…」
「だって、そういえば、あの綺麗な男性と時間を作れるじゃない!リールもリールよ、何で私を庇わないのよ!引き立たせるべきでしょう!」
「殿下の誕生祭だぞ」
「えっ、あっ、それはそうだけど」
ミアローズはすっかり忘れており、ただの夜会の気分でいたのだ。しかも王太子妃の代理、離縁を払拭し、ミアローズが輝かしい場所に戻って来たと、アピールする絶好の機会だと思っていたのだ。
離縁してからは生家は変わらなかったが、公に場に出ると、同世代の男性は妻を伴っているので、昔のようには近寄って来れない。
何人かは妻を伴ってやって来たので、可愛らしい奥様だと言いながら、値踏みするくらいしか楽しみもなく、物足りなさを感じていた。だからこそ、真の価値を知らしめて、向こうから願わせようと考えていた。
「分かったわ、通訳が悪いのよ!」
「そうだな、報酬を渡して帰らせたから、もう姿を現さないよ」
「ふん!私が折角、雇ってあげたのに可哀想ね」
「しばらく大人しくしていなさい」
「そうね、傷付いたもの。静養させていただきますわ」
ミアローズは家族のいる邸ではなく、別の邸に移って、男性たちと楽しむことにした。ミアローズは色事を異常に好んでいる。
リール殿下とクリコットが離縁の理由が不貞だろうと言ったのも、色狂いであることを知っていたからである。
そして、ミアローズはこの一件で、僅かな友人の伴侶からミアローズ禁止令が出てしまい、夜会にも呼ばれなくなり、ますます色事にのめり込むこととなる。
ミアローズは幼い頃から、両家共に女の子はミアローズだけの環境で、自分がお姫様だと疑わなかった。しかし、本物のお姫様は王太子妃になってこそだと知り、自身がいずれなるのだと、周りも応援していた。
だが、家庭教師から三ヶ国語は無理だと言われ、さすがに公爵夫妻も王太子妃は難しいと結論を出した。お金や権力でどうにかなるものではない。しかし、ミアローズは納得できなかった、だから婚約者に選ばれたサリーを貶す発言をしている。
そして色事を覚えたミアローズは、すっかり虜になってしまった。見た目は美しいので、相手には困らない。王太子妃も、恋愛小説にあったように既成事実を作ってしまえばいいと思い、リール殿下に興奮剤を飲ませて、情事に及んだ。これが公にはされていない王家と公爵家の因縁である。
ミアローズは妊娠しているかもしれないと、殿下に責任を取るように迫ったが、なれても愛妾であることをようやく理解し、諦めたのだ。
もちろん、妊娠もしていなかった。
それからは殿下に迫って来るようなことはなかったが、昔から親しいのだとアピールをしたり、殿下には気持ちの悪い蟠りとなったが、ミアローズは何もなかったように接するのが、余計に関わりたくない相手となった。
ただし、王族に興奮剤を飲ませることは罪とされ、ミアローズは公爵の同伴者として王宮を自由に出入りしていたが、公にはなっていないが、公式な場で招待状がないと入れないこととなっている。
関わりたくなければ、王宮にいれば、安全である。サリーに会いに行くことも出来ないので、押し掛けて来る可能性はなかった。
ミアローズが二十二歳まで結婚しなかったのは、色狂いのこともあるが、三ヶ国語が必須ではない、別の国の妃を狙っていたからである。しかし、それでも他国となれば、それこそ語学力が必要になる。公爵も伝手を辿って、会わせることは出来ても、最初は美しい見た目と所作に好印象となるが、通訳を通して話すことになり、結局は婚約とまではならない。他国の高位貴族も同様であった。
そしてようやく結婚したのが、リカス・マーラ侯爵であった。
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