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誕生祭2
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『あと一つ、失礼を承知で、お伺いしたいのですが(カベリ語)』
『こら、殿下に聞くのは止めなさいと言っただろう。失礼しました(カベリ語)』
『何でしょう?私で分かることであれば(カベリ語)』
『実は、コルボリットの最新刊は…(カベリ語)』
「はははは」
『殿下、妻が申し訳ございません(カベリ語)』
『いえいえ、構いません。現在、進行中と聞いております(カベリ語)』
「コルボリット」とはサリーが翻訳の担当をしている魔法とミステリーを融合した各国で大人気の小説である。
殿下も直接聞いてはいないが、情報だけはリビアナから収集している。
作者はビアロ語を母国語とするルアース・ベルアという貴族の女性で、サリーはこの本を読むためにビアロ語を取得した。
元々はルアース・ベルアは、翻訳は伝わらないことが不安だと難色を示していたが、出版社からサリーの存在を知り、二人は会うことになった。サリーが自身の小説のためにビアロ語を取得したこと、話す言葉も完璧だったこと、この描き方がとても良かったと一言一句間違えず、とんでもない記憶力に度肝抜いたそうだ。
そして翻訳を許可するのはサリーが取得している言語のみとし、サリー自身が最終の確認をしてくれるのなら、任せてもいいという条件を出し、サリーもファンとしては沢山の人に読んで貰いたいと、快く引き受け、五年前から各国で発売されている。
まず翻訳家が翻訳を行うが、その後、サリーが国に合わせた表現方法、抜け、誤字などは全ての確認を行う。表現方法は論文などと違い、難しいところで協議することは多いが、抜けや誤字はサリーの得意分野となる。
王家も他国にアピールするチャンスだと了承しており、王太子妃としては異例の肩書を持っている。同時にサリーは離縁しても困ることのない理由でもある。
翻訳された本のすべてにサリーの名前が記されており、ルアース・ベルアもサリーに感謝していると発言しており、ファンの間では有名人である。
『まあ、そうでしたか。アントアがどうしても、聞いて来てくれと煩かったものですから、申し訳ございません(カベリ語)』
『いえ、サリーも喜ぶと思います。もう一つの大事な顔ですからね(カベリ語)』
「小説のお話なら私も混ぜてくださいませ。訳して」
『小説の話なら私も混ぜてください(通訳カベリ語)』
紹介もされず、全く眼中にも入っていないことに、耐え切れずミアローズは、通訳を最後までちゃんと聞かないまま、割り込んで来た。紹介は先程、案内で済んでいるので、殿下は全くする気がなかった。
ファラス夫人は不憫に思ったのか、優しい微笑みで問い掛けた。
『どのような小説を読まれるのですか(カベリ語)』
「何て」「どのような小説を読まれるのですかと」
「私はやはり恋愛小説でしょうか。女性が愛されて、蝶のように美しくなっていく様は読んでいて、女性はこうあるべきだと思いますわね。訳して」
『私はやはり恋愛小説です。女性が愛されて、蝶のように美しくなっていく様は読んでいて、女性はこうあるべきだと思います(通訳カベリ語)』
内容も通訳も苛立ちしかない。訳されると思っているせいか、周りが見えていないのか、愚かさを隠さなくなったのか、言葉使いも非常に悪い。
『ええ、お若いご令嬢は憧れますわね(カベリ語)』
『若いご令嬢は憧れます(通訳カベリ語)』
「えっ、馬鹿にしてるの?訳さなくていいから」
「馬鹿にはしておりませんよ(トワイ語)」
ミアローズは目を見開いた、大臣夫妻はカベリ語で話しているが、トワイ語が分からないわけではない。
『大変失礼しました(カベリ語)』「君は黙っていてくれ。話が進まない」
「っな、私は本日、代理ですのよ!敬うべきでしょう」
「何を勘違いしているんだ?」
「通訳の紹介もなく、代理というのを履き違えているのではありませんか(トワイ語)」
『申し訳ございません、代理が大変失礼しました(カベリ語)』
『殿下の謝罪を受け入れます。妃殿下に無理はせず、ですが、皆が楽しみにしておりますと、お伝えくださいませね(カベリ語)』
『分かりました、必ず伝えます(カベリ語)』
ミアローズには通訳からまたサリーの話を聞かせられ、これまで全て男性にはやってもらって当たり前という立場しか知らないため、殿下が言ってくれれば済む話じゃないと激しく苛立っていた。
『こら、殿下に聞くのは止めなさいと言っただろう。失礼しました(カベリ語)』
『何でしょう?私で分かることであれば(カベリ語)』
『実は、コルボリットの最新刊は…(カベリ語)』
「はははは」
『殿下、妻が申し訳ございません(カベリ語)』
『いえいえ、構いません。現在、進行中と聞いております(カベリ語)』
「コルボリット」とはサリーが翻訳の担当をしている魔法とミステリーを融合した各国で大人気の小説である。
殿下も直接聞いてはいないが、情報だけはリビアナから収集している。
作者はビアロ語を母国語とするルアース・ベルアという貴族の女性で、サリーはこの本を読むためにビアロ語を取得した。
元々はルアース・ベルアは、翻訳は伝わらないことが不安だと難色を示していたが、出版社からサリーの存在を知り、二人は会うことになった。サリーが自身の小説のためにビアロ語を取得したこと、話す言葉も完璧だったこと、この描き方がとても良かったと一言一句間違えず、とんでもない記憶力に度肝抜いたそうだ。
そして翻訳を許可するのはサリーが取得している言語のみとし、サリー自身が最終の確認をしてくれるのなら、任せてもいいという条件を出し、サリーもファンとしては沢山の人に読んで貰いたいと、快く引き受け、五年前から各国で発売されている。
まず翻訳家が翻訳を行うが、その後、サリーが国に合わせた表現方法、抜け、誤字などは全ての確認を行う。表現方法は論文などと違い、難しいところで協議することは多いが、抜けや誤字はサリーの得意分野となる。
王家も他国にアピールするチャンスだと了承しており、王太子妃としては異例の肩書を持っている。同時にサリーは離縁しても困ることのない理由でもある。
翻訳された本のすべてにサリーの名前が記されており、ルアース・ベルアもサリーに感謝していると発言しており、ファンの間では有名人である。
『まあ、そうでしたか。アントアがどうしても、聞いて来てくれと煩かったものですから、申し訳ございません(カベリ語)』
『いえ、サリーも喜ぶと思います。もう一つの大事な顔ですからね(カベリ語)』
「小説のお話なら私も混ぜてくださいませ。訳して」
『小説の話なら私も混ぜてください(通訳カベリ語)』
紹介もされず、全く眼中にも入っていないことに、耐え切れずミアローズは、通訳を最後までちゃんと聞かないまま、割り込んで来た。紹介は先程、案内で済んでいるので、殿下は全くする気がなかった。
ファラス夫人は不憫に思ったのか、優しい微笑みで問い掛けた。
『どのような小説を読まれるのですか(カベリ語)』
「何て」「どのような小説を読まれるのですかと」
「私はやはり恋愛小説でしょうか。女性が愛されて、蝶のように美しくなっていく様は読んでいて、女性はこうあるべきだと思いますわね。訳して」
『私はやはり恋愛小説です。女性が愛されて、蝶のように美しくなっていく様は読んでいて、女性はこうあるべきだと思います(通訳カベリ語)』
内容も通訳も苛立ちしかない。訳されると思っているせいか、周りが見えていないのか、愚かさを隠さなくなったのか、言葉使いも非常に悪い。
『ええ、お若いご令嬢は憧れますわね(カベリ語)』
『若いご令嬢は憧れます(通訳カベリ語)』
「えっ、馬鹿にしてるの?訳さなくていいから」
「馬鹿にはしておりませんよ(トワイ語)」
ミアローズは目を見開いた、大臣夫妻はカベリ語で話しているが、トワイ語が分からないわけではない。
『大変失礼しました(カベリ語)』「君は黙っていてくれ。話が進まない」
「っな、私は本日、代理ですのよ!敬うべきでしょう」
「何を勘違いしているんだ?」
「通訳の紹介もなく、代理というのを履き違えているのではありませんか(トワイ語)」
『申し訳ございません、代理が大変失礼しました(カベリ語)』
『殿下の謝罪を受け入れます。妃殿下に無理はせず、ですが、皆が楽しみにしておりますと、お伝えくださいませね(カベリ語)』
『分かりました、必ず伝えます(カベリ語)』
ミアローズには通訳からまたサリーの話を聞かせられ、これまで全て男性にはやってもらって当たり前という立場しか知らないため、殿下が言ってくれれば済む話じゃないと激しく苛立っていた。
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