25 / 203
代償
しおりを挟む
「私は全ての代理は許容できませんが、なるべくサリーの気持ちに沿うようにさせたいと思います」
「っな!そんなこと、駄目よ。誕生祭なのよ、出席させなさい」
「そうなれば、代理を無くさなくてはならなくなります」
「そ、それは」
「母上も使ってますよね、サリーは一度も使っていませんでした」
王妃にも王太子妃と同様に代理の権利はある。ただ陛下の隣に自分以外の女性を立たせるのが嫌で、大臣など男性を代理に立てていたことも知っている。
「そんなこと関係ないわ、あなたが出ろを言えば出るべきでしょう」
「よく、自分の立場と同じだった人間にそのようなことが言えますね。自身は側妃も愛妾も許さず、アズラー夫人が脅威だったのでしょう?だから王太子妃の教育担当にした、目の届くところに置くために」
「っな!」
「アズラー夫人が王妃や側妃になりたかったかどうかは別にしても、確実に側妃試験に受かりますよね?」
王太子妃教育の担当のティファナ・アズラーは、王妃より三歳年下ではあったが、サリーには劣るが優秀であった。王妃も自らで得た地位ではあるが、子どもはリール一人しかいないことから、幾度となく側妃の打診があっただろう。それを王妃はアズラー侯爵と結婚させて、黙らせたのではないか。リールはそう考えている。
「元はと言えばあなたのせいでしょう!私は大事にしなさいと言ったはずよ」
「それは分かっています。だからこそ、償わなければならないのです。ミーラのところへは顔を出してくれるようになっただけもいい傾向なのです」
「憑き物が落ちたようだな」
「そうかもしれません。まず、グリズナー夫人には責任を取らせます」
グリズナー・トラスは王家の催しには出席させないと、通達を出すこととなった。それは社交界からの追放という意味を持つ。
あの日、邸に帰ったグリズナーは具合が悪いと部屋に閉じこもった。それは王宮で何かあったと言っているようなものだった。
そして、通達が出され、驚いたトラス伯爵はようやく話を聞くことになった。
「内容は話せないのですが、妃殿下に過去に話した発言が問題となったのです、結婚前の話です。私は前の夫が亡くなって、幸せそうな妃殿下を妬ましく思ってしまったのです。今となっては十歳以上年下の令嬢に、言ってはならないことでした」
「今さら問題になったのか」
「そのことで、王太子殿下の誕生祭の妃殿下の代理を頼まれたんです」
「代理?君が?」
代理のことは関係者以外にはまだ知られることはなく、交流会も他国の方だったので、母国には既に代理の指名をされていることまでは届いていなかった。
「はい、でもそれは代理という嫌がらせだったようで、謝罪はしたのですが、許されることではなかったのです。トラス家ではなく、私だけの処罰でまだ良かったと思っております。申し訳ございません」
「昔のことをなぜ今になって」
「離縁で構いません。ですが、フェアリーのことだけは守ってください」
フェアリーはトラス伯爵とグリズナーの娘で、まだ三歳である。
「っな、少し考えさせてくれ。何を言ったかはそんなに酷いことだったのか」
「当時は私もまだ若かったので、棘のある言い方をしました。妃殿下を傷付けたのは事実です」
「そうか…」
トラス伯爵は、確かに相手は悪いが、グリズナーも子爵家の出身の伯爵夫人、妃殿下も当時は侯爵令嬢。爵位は上ではあるが、女性の間ではよくあることではないのか。グリズナーからは聞いたことがなかったが、前の亡くなった妻もよく嫌味を言われたり、言ったりしていた。今さらなぜという気持ちの方が強かった。
よりにもよってトラス伯爵は、サリーに文を出して訪問してしまったのである。
「何の御用でしょうか」
「はい、妻のことで謝罪を」
「謝罪は受け入れません」
トラス伯爵はまともに話したことはなかったが、いつも朗らかで、才女ということしか知らなかったが、あまりにハッキリ言い切る様に驚いた。
「妻が悪いことは本人も自覚して反省しております。ですが、なぜ今、妻の発言が社交界を追放されるほどの問題となったのかだけでも、教えていただくことは出来ますでしょうか」
「社交界を追放されたのですか?」
「はい、通達が来ました」
「それは私の与り知らぬことですね。リビアナ、殿下を呼んで来て貰えますか。時間が勿体ないので、一緒に話を付けましょう」
リビアナは了承して、すぐさま飛び出した。なぜ妃殿下に聞きに来るのだ、妻を問い詰めればいいではないかと、早歩きで愚痴りながら、執務室に辿り着き、私に出来ることは殿下とクリコットに、急いでくださいということだけだ。
「っな!そんなこと、駄目よ。誕生祭なのよ、出席させなさい」
「そうなれば、代理を無くさなくてはならなくなります」
「そ、それは」
「母上も使ってますよね、サリーは一度も使っていませんでした」
王妃にも王太子妃と同様に代理の権利はある。ただ陛下の隣に自分以外の女性を立たせるのが嫌で、大臣など男性を代理に立てていたことも知っている。
「そんなこと関係ないわ、あなたが出ろを言えば出るべきでしょう」
「よく、自分の立場と同じだった人間にそのようなことが言えますね。自身は側妃も愛妾も許さず、アズラー夫人が脅威だったのでしょう?だから王太子妃の教育担当にした、目の届くところに置くために」
「っな!」
「アズラー夫人が王妃や側妃になりたかったかどうかは別にしても、確実に側妃試験に受かりますよね?」
王太子妃教育の担当のティファナ・アズラーは、王妃より三歳年下ではあったが、サリーには劣るが優秀であった。王妃も自らで得た地位ではあるが、子どもはリール一人しかいないことから、幾度となく側妃の打診があっただろう。それを王妃はアズラー侯爵と結婚させて、黙らせたのではないか。リールはそう考えている。
「元はと言えばあなたのせいでしょう!私は大事にしなさいと言ったはずよ」
「それは分かっています。だからこそ、償わなければならないのです。ミーラのところへは顔を出してくれるようになっただけもいい傾向なのです」
「憑き物が落ちたようだな」
「そうかもしれません。まず、グリズナー夫人には責任を取らせます」
グリズナー・トラスは王家の催しには出席させないと、通達を出すこととなった。それは社交界からの追放という意味を持つ。
あの日、邸に帰ったグリズナーは具合が悪いと部屋に閉じこもった。それは王宮で何かあったと言っているようなものだった。
そして、通達が出され、驚いたトラス伯爵はようやく話を聞くことになった。
「内容は話せないのですが、妃殿下に過去に話した発言が問題となったのです、結婚前の話です。私は前の夫が亡くなって、幸せそうな妃殿下を妬ましく思ってしまったのです。今となっては十歳以上年下の令嬢に、言ってはならないことでした」
「今さら問題になったのか」
「そのことで、王太子殿下の誕生祭の妃殿下の代理を頼まれたんです」
「代理?君が?」
代理のことは関係者以外にはまだ知られることはなく、交流会も他国の方だったので、母国には既に代理の指名をされていることまでは届いていなかった。
「はい、でもそれは代理という嫌がらせだったようで、謝罪はしたのですが、許されることではなかったのです。トラス家ではなく、私だけの処罰でまだ良かったと思っております。申し訳ございません」
「昔のことをなぜ今になって」
「離縁で構いません。ですが、フェアリーのことだけは守ってください」
フェアリーはトラス伯爵とグリズナーの娘で、まだ三歳である。
「っな、少し考えさせてくれ。何を言ったかはそんなに酷いことだったのか」
「当時は私もまだ若かったので、棘のある言い方をしました。妃殿下を傷付けたのは事実です」
「そうか…」
トラス伯爵は、確かに相手は悪いが、グリズナーも子爵家の出身の伯爵夫人、妃殿下も当時は侯爵令嬢。爵位は上ではあるが、女性の間ではよくあることではないのか。グリズナーからは聞いたことがなかったが、前の亡くなった妻もよく嫌味を言われたり、言ったりしていた。今さらなぜという気持ちの方が強かった。
よりにもよってトラス伯爵は、サリーに文を出して訪問してしまったのである。
「何の御用でしょうか」
「はい、妻のことで謝罪を」
「謝罪は受け入れません」
トラス伯爵はまともに話したことはなかったが、いつも朗らかで、才女ということしか知らなかったが、あまりにハッキリ言い切る様に驚いた。
「妻が悪いことは本人も自覚して反省しております。ですが、なぜ今、妻の発言が社交界を追放されるほどの問題となったのかだけでも、教えていただくことは出来ますでしょうか」
「社交界を追放されたのですか?」
「はい、通達が来ました」
「それは私の与り知らぬことですね。リビアナ、殿下を呼んで来て貰えますか。時間が勿体ないので、一緒に話を付けましょう」
リビアナは了承して、すぐさま飛び出した。なぜ妃殿下に聞きに来るのだ、妻を問い詰めればいいではないかと、早歩きで愚痴りながら、執務室に辿り着き、私に出来ることは殿下とクリコットに、急いでくださいということだけだ。
660
お気に入りに追加
6,884
あなたにおすすめの小説
巻き戻り令嬢は長生きしたい。二度目の人生はあなた達を愛しません
せいめ
恋愛
「アナ、君と私の婚約を解消することに決まった」
王太子殿下は、今にも泣きそうな顔だった。
「王太子殿下、貴方の婚約者として過ごした時間はとても幸せでした。ありがとうございました。
どうか、隣国の王女殿下とお幸せになって下さいませ。」
「私も君といる時間は幸せだった…。
本当に申し訳ない…。
君の幸せを心から祈っているよ。」
婚約者だった王太子殿下が大好きだった。
しかし国際情勢が不安定になり、隣国との関係を強固にするため、急遽、隣国の王女殿下と王太子殿下との政略結婚をすることが決まり、私との婚約は解消されることになったのだ。
しかし殿下との婚約解消のすぐ後、私は王命で別の婚約者を決められることになる。
新しい婚約者は殿下の側近の公爵令息。その方とは個人的に話をしたことは少なかったが、見目麗しく優秀な方だという印象だった。
婚約期間は異例の短さで、すぐに結婚することになる。きっと殿下の婚姻の前に、元婚約者の私を片付けたかったのだろう。
しかし王命での結婚でありながらも、旦那様は妻の私をとても大切にしてくれた。
少しずつ彼への愛を自覚し始めた時…
貴方に好きな人がいたなんて知らなかった。
王命だから、好きな人を諦めて私と結婚したのね。
愛し合う二人を邪魔してごめんなさい…
そんな時、私は徐々に体調が悪くなり、ついには寝込むようになってしまった。後で知ることになるのだが、私は少しずつ毒を盛られていたのだ。
旦那様は仕事で隣国に行っていて、しばらくは戻らないので頼れないし、毒を盛った犯人が誰なのかも分からない。
そんな私を助けてくれたのは、実家の侯爵家を継ぐ義兄だった…。
毒で自分の死が近いことを悟った私は思った。
今世ではあの人達と関わったことが全ての元凶だった。もし来世があるならば、あの人達とは絶対に関わらない。
それよりも、こんな私を最後まで見捨てることなく面倒を見てくれた義兄には感謝したい。
そして私は死んだはずだった…。
あれ?死んだと思っていたのに、私は生きてる。しかもなぜか10歳の頃に戻っていた。
これはもしかしてやり直しのチャンス?
元々はお転婆で割と自由に育ってきたんだし、あの自分を押し殺した王妃教育とかもうやりたくたい。
よし!殿下や公爵とは今世では関わらないで、平和に長生きするからね!
しかし、私は気付いていなかった。
自分以外にも、一度目の記憶を持つ者がいることに…。
一度目は暗めですが、二度目の人生は明るくしたいです。
誤字脱字、申し訳ありません。
相変わらず緩い設定です。
あなたが望んだ、ただそれだけ
cyaru
恋愛
いつものように王城に妃教育に行ったカーメリアは王太子が侯爵令嬢と茶会をしているのを目にする。日に日に大きくなる次の教育が始まらない事に対する焦り。
国王夫妻に呼ばれ両親と共に登城すると婚約の解消を言い渡される。
カーメリアの両親はそれまでの所業が腹に据えかねていた事もあり、領地も売り払い夫人の実家のある隣国へ移住を決めた。
王太子イデオットの悪意なき本音はカーメリアの心を粉々に打ち砕いてしまった。
失意から寝込みがちになったカーメリアに追い打ちをかけるように見舞いに来た王太子イデオットとエンヴィー侯爵令嬢は更に悪意のない本音をカーメリアに浴びせた。
公爵はイデオットの態度に激昂し、処刑を覚悟で2人を叩きだしてしまった。
逃げるように移り住んだリアーノ国で静かに静養をしていたが、そこに1人の男性が現れた。
♡注意事項~この話を読む前に~♡
※胸糞展開ありますが、クールダウンお願いします。
心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。
※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義です。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。イラっとしたら現実に戻ってください。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
裏切りの代償
志波 連
恋愛
伯爵令嬢であるキャンディは婚約者ニックの浮気を知り、婚約解消を願い出るが1年間の再教育を施すというニックの父親の言葉に願いを取り下げ、家出を決行した。
家庭教師という職を得て充実した日々を送るキャンディの前に父親が現れた。
連れ帰られ無理やりニックと結婚させられたキャンディだったが、子供もできてこれも人生だと思い直し、ニックの妻として人生を全うしようとする。
しかしある日ニックが浮気をしていることをしり、我慢の限界を迎えたキャンディは、友人の手を借りながら人生を切り開いていくのだった。
他サイトでも掲載しています。
R15を保険で追加しました。
表紙は写真AC様よりダウンロードしました。
どうやら婚約者が私と婚約したくなかったようなので婚約解消させて頂きます。後、うちを金蔓にしようとした事はゆるしません
しげむろ ゆうき
恋愛
ある日、婚約者アルバン様が私の事を悪く言ってる場面に遭遇してしまい、ショックで落ち込んでしまう。
しかもアルバン様が悪口を言っている時に側にいたのは、美しき銀狼、又は冷酷な牙とあだ名が付けられ恐れられている、この国の第三王子ランドール・ウルフイット様だったのだ。
だから、問い詰めようにもきっと関わってくるであろう第三王子が怖くて、私は誰にも相談できずにいたのだがなぜか第三王子が……。
○○sideあり
全20話
【完結】愛も信頼も壊れて消えた
miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」
王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。
無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。
だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。
婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。
私は彼の事が好きだった。
優しい人だと思っていた。
だけど───。
彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。
※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。
あなたへの想いを終わりにします
四折 柊
恋愛
シエナは王太子アドリアンの婚約者として体の弱い彼を支えてきた。だがある日彼は視察先で倒れそこで男爵令嬢に看病される。彼女の献身的な看病で医者に見放されていた病が治りアドリアンは健康を手に入れた。男爵令嬢は殿下を治癒した聖女と呼ばれ王城に招かれることになった。いつしかアドリアンは男爵令嬢に夢中になり彼女を正妃に迎えたいと言い出す。男爵令嬢では妃としての能力に問題がある。だからシエナには側室として彼女を支えてほしいと言われた。シエナは今までの献身と恋心を踏み躙られた絶望で彼らの目の前で自身の胸を短剣で刺した…………。(全13話)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる