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破壊
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グリズナー夫人は崩れ落ち、そのままサリーに向かい、膝をつき、床に頭を付けて謝罪している。
過去の言葉だとしても、自分が驕り、対象であった殿下の前で暴露にされるのが、こんなに恥ずかしいことだったとは想像していなかった。自身と妃殿下の言葉のどちらを信じるか、聞かなくても分かることだ。
「妃殿下を妬み、驕っていたのだと今なら分かります。申し訳ございませんでした」
「そう、でしたら代理、お願いね」
「えっ、いえ、私には出来ません」
「なぜ?」
サリーは首を傾け、心底不思議な顔をしている。
「サリー、私に誕生祭に他人の夫人を伴えというのか、伯爵に何て説明する?」
「伯爵には私が説明しますわ」
「困ります…夫には何も話していないのです」
「夫人の言ったことは、確かに度を過ぎており、サリーを意図的に傷付ける行為だ。だが閨の教育担当は公にすることはない、夫人も契約書に漏らさないとサインしたはずだ。なぜそのようなことを言った?」
グリズナー夫人は小刻みに震えており、サリーは素知らぬ顔で、再び何かやら考えているようで、頭を小さく振っている。
「でも私には話してくれたのよ?『本当はね、閨の教育って三回なの。でもとっても相性がいいみたいで、殿下も虜になってしまったんでしょうね。倍の六回に増やして欲しいって言われちゃったのよ。私の後があなただなんて殿下はお可哀想だわ』と、殿下の閨の教育の書類も確認しましたから、確かに嘘ではありませんでしたわ」
「もう、もう、止めて!」
「あなたが言ったことだわ、なぜ責任を取らないの?『愛している、美しいと何度も仰るのよ。私も罪な女よね、妻にはなれないのに』と仰っていたじゃない?妻ではないけど、代理していただけるわね?」
呆然とする殿下を見ながら、クリコットはこの様子に口も出せない立場だが、もはやサリー妃殿下の一人舞台だと思った。頭の中に手札が詰まっているのだろう。
「私が何か問題のあることを言っているかしら?正当な権利として、代理を何度も愛している、美しいと言った相手で、ご自身も相応しかったのにと、双方の要望をまとめているのよ?」
「愛しているとは言っていない」
憶えてもいないが、もしかしたら美しいとは言ったかもしれないが、愛しているなどと言った憶えはない。信じられない気持ちだった。
「まあ、そこは知らないわ。閨の教育を覗いたわけでもないから、夫人が言っただけだもの。嘘なの?そんなに私を蔑みたかったの?」
「…申し訳ございません」
「謝って許す許さないではないの。私はグリズナー夫人がサリー・オールソンの代理として、出席するまで続けます」
「待ってくれ」
「何ですの?あなたも関係者として、責任取るべきですわよね?私ね、忘れることが出来ないの。だからね、嘘も暴言も、蔑む言葉も大嫌いなの。ずっと残り続けるの、あなたに分かる?」
サリーが記憶力が良いことは分かっていた、だがそのような弊害があることを考えていなかった。
「一度代理をすれば、いいのか」
「一度かは分からないわ、正当な権利だもの。違う?とりあえず、この方が一番しつこかったの。私はまだあの当時は、殿下を支えなくてはと思っておりましたからね、酷く傷つきましたの。あなたは毎回、気持ちの良さそうな顔をしてらしたわね、そんなに楽しかったのかしら?」
「申し訳ございませんでした」
もはやグリズナー夫人はカエルのような姿になっており、悲惨である。
「謝るのもしつこいのね、あなたの答えは『承知しました。美しく、愛されている、相応しい私がお引き受けします』ですわよ、それ以外認めません。いいですね?で、私は忙しいんですの、もうそろそろ帰ってくださる?それとも、相応しいあなたが代わりにやってくださるのかしら?」
「今日はもう下がらせる。すまなかった」
『では、さようなら。良い、誕生祭を(ノワンナ語)』
力の入らないままのグリズナー夫人を馬車まで護衛に運ばせて、帰すことにした。
執務室に戻った殿下は眉間に皺をよせ、ずっと黙っており、クリコットも言葉を発することは出来なかった。それほどに妃殿下の言葉は突き刺さるものであった。
過去の言葉だとしても、自分が驕り、対象であった殿下の前で暴露にされるのが、こんなに恥ずかしいことだったとは想像していなかった。自身と妃殿下の言葉のどちらを信じるか、聞かなくても分かることだ。
「妃殿下を妬み、驕っていたのだと今なら分かります。申し訳ございませんでした」
「そう、でしたら代理、お願いね」
「えっ、いえ、私には出来ません」
「なぜ?」
サリーは首を傾け、心底不思議な顔をしている。
「サリー、私に誕生祭に他人の夫人を伴えというのか、伯爵に何て説明する?」
「伯爵には私が説明しますわ」
「困ります…夫には何も話していないのです」
「夫人の言ったことは、確かに度を過ぎており、サリーを意図的に傷付ける行為だ。だが閨の教育担当は公にすることはない、夫人も契約書に漏らさないとサインしたはずだ。なぜそのようなことを言った?」
グリズナー夫人は小刻みに震えており、サリーは素知らぬ顔で、再び何かやら考えているようで、頭を小さく振っている。
「でも私には話してくれたのよ?『本当はね、閨の教育って三回なの。でもとっても相性がいいみたいで、殿下も虜になってしまったんでしょうね。倍の六回に増やして欲しいって言われちゃったのよ。私の後があなただなんて殿下はお可哀想だわ』と、殿下の閨の教育の書類も確認しましたから、確かに嘘ではありませんでしたわ」
「もう、もう、止めて!」
「あなたが言ったことだわ、なぜ責任を取らないの?『愛している、美しいと何度も仰るのよ。私も罪な女よね、妻にはなれないのに』と仰っていたじゃない?妻ではないけど、代理していただけるわね?」
呆然とする殿下を見ながら、クリコットはこの様子に口も出せない立場だが、もはやサリー妃殿下の一人舞台だと思った。頭の中に手札が詰まっているのだろう。
「私が何か問題のあることを言っているかしら?正当な権利として、代理を何度も愛している、美しいと言った相手で、ご自身も相応しかったのにと、双方の要望をまとめているのよ?」
「愛しているとは言っていない」
憶えてもいないが、もしかしたら美しいとは言ったかもしれないが、愛しているなどと言った憶えはない。信じられない気持ちだった。
「まあ、そこは知らないわ。閨の教育を覗いたわけでもないから、夫人が言っただけだもの。嘘なの?そんなに私を蔑みたかったの?」
「…申し訳ございません」
「謝って許す許さないではないの。私はグリズナー夫人がサリー・オールソンの代理として、出席するまで続けます」
「待ってくれ」
「何ですの?あなたも関係者として、責任取るべきですわよね?私ね、忘れることが出来ないの。だからね、嘘も暴言も、蔑む言葉も大嫌いなの。ずっと残り続けるの、あなたに分かる?」
サリーが記憶力が良いことは分かっていた、だがそのような弊害があることを考えていなかった。
「一度代理をすれば、いいのか」
「一度かは分からないわ、正当な権利だもの。違う?とりあえず、この方が一番しつこかったの。私はまだあの当時は、殿下を支えなくてはと思っておりましたからね、酷く傷つきましたの。あなたは毎回、気持ちの良さそうな顔をしてらしたわね、そんなに楽しかったのかしら?」
「申し訳ございませんでした」
もはやグリズナー夫人はカエルのような姿になっており、悲惨である。
「謝るのもしつこいのね、あなたの答えは『承知しました。美しく、愛されている、相応しい私がお引き受けします』ですわよ、それ以外認めません。いいですね?で、私は忙しいんですの、もうそろそろ帰ってくださる?それとも、相応しいあなたが代わりにやってくださるのかしら?」
「今日はもう下がらせる。すまなかった」
『では、さようなら。良い、誕生祭を(ノワンナ語)』
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執務室に戻った殿下は眉間に皺をよせ、ずっと黙っており、クリコットも言葉を発することは出来なかった。それほどに妃殿下の言葉は突き刺さるものであった。
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