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謝罪
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数日経って、ようやく謝罪しようと心を決めたリール殿下は、サリーに会いに行き、潔く頭を下げた。
「申し訳なかった」
「何がです?」
「エマ・ネイリーのこと、あと女性を呼んでいたことも」
「どうでもいいですわ」
「私にチャンスを貰えないだろうか」
「いいえ、差し上げません。あなたは後悔しないと言った、そうでしょう?レベッカ様の費用は浮いたと聞いております。また側妃を取ればいいじゃないですか」
「いや、もう側妃は取らない」
殿下は両陛下、大臣たちにも側妃は娶らないと宣言した。試験があるため、うちの娘はいかがですかとはいかないので、無理やりということは出来ない。
もし誘惑して、懐妊したとなっても、愛妾となるだけで、いくら後ろ盾があっても、殿下の横には立てない。
「そうですか、ではレベッカ様に頑張っていただくしかないですね」
「もう無理なのか」
「そうですね、私はあなたの正義とやらに絶望したんです」
「それは、その通りだったと思う」
私たちは両陛下が決めた相手で、どちらかが見初めたものではなかったが、互いに切磋琢磨にして学んで来た。私は数字に強く、サリーは語学。互いの話に耳を傾け、不満を言うことはなかった。
物足りないと言えば、確かに物足りなかった。刺激がなかった。今ではそんなものは必要なかったことはよく分かる、でも当時は軽い気持ちだった。
エマ・ネイリーを面白いと思ったのは事実である。涼やかな顔立ちに長身で、男装の麗人と呼ばれて、ハキハキした令嬢だった。魅力的に映ったわけではない。正妃になどと言われて、勘弁してくれと思ったほどだ。
不正が許せなかったのは本当だった。復興支援のお金など、一番横領してはいけないお金ではないだろうか。
エマ・ネイリーによって、サリーに初めて素っ気なくして、不安そうな表情を見るのも一興であったのも、歪んでいるのかもしれないが、事実だった。
また前のように優しくすればいいだろうなどと考えていたが、サリーは一気に私を見捨てたようにも思う。
婚約が解消されないことも分かっていた、サリーのような才女はいないのだ。王家はみすみす手放すはずも、侯爵家が解消に応じるとも思えなかった。
サリーは結婚後、両親の面会を一切遮断し、公務で会っても、微笑むだけで声を掛けることもない。声を荒げたこともあるが、母国語ではない言葉で毎回『はしたない』と一言だけである。
両陛下も説得してくれたそうだが、『私では不適格です。申し訳ございません、離縁させてください』と頭を下げられて、何も言えなくなったそうだ。
「レベッカ様か、側妃を頑張って探すか、あなたにあるのはこの二択です。公務は私がしているのですから、そのくらいして貰ってもいいでしょう?」
「マリーヌは、レベッカがいくら頑張っても、厳しい立場になるだろう。お願いだ、一人でいい。産んでもらえないか」
「産んだら離縁してくださるのですか?」
「…それは出来ない」
「じゃあ、私ばかりが負担だわ。あなたは何も辛いことがないじゃない」
「どうしろと言うんだ!」
「愛妾はどうでしょう?せめて金銭的に負担にはなるでしょうから。孕んだ子はいないのですか?」
「避妊薬を飲ませていたから、そういったことはない」
「はあ…」
そんなことになったら、問題になることは分かっているはずなのに、役立たずとも言わんばかりである。
「いるのはあなたの血筋でしょう?私は別に誰が産もうがいいと思ってますの。マリーヌ王女でも本人が身に付けて、私や公爵が付けば皆も理解してくれるでしょう。レベッカ様も頑張ってらっしゃるのでしょう?」
「持ち帰って考えさせてくれ」
「ええ、私が関わらないのなら、勝手に決めていただいて構いませんから」
サリーは冷静だ、許す許さないではないことはよく分かった。
「申し訳なかった」
「何がです?」
「エマ・ネイリーのこと、あと女性を呼んでいたことも」
「どうでもいいですわ」
「私にチャンスを貰えないだろうか」
「いいえ、差し上げません。あなたは後悔しないと言った、そうでしょう?レベッカ様の費用は浮いたと聞いております。また側妃を取ればいいじゃないですか」
「いや、もう側妃は取らない」
殿下は両陛下、大臣たちにも側妃は娶らないと宣言した。試験があるため、うちの娘はいかがですかとはいかないので、無理やりということは出来ない。
もし誘惑して、懐妊したとなっても、愛妾となるだけで、いくら後ろ盾があっても、殿下の横には立てない。
「そうですか、ではレベッカ様に頑張っていただくしかないですね」
「もう無理なのか」
「そうですね、私はあなたの正義とやらに絶望したんです」
「それは、その通りだったと思う」
私たちは両陛下が決めた相手で、どちらかが見初めたものではなかったが、互いに切磋琢磨にして学んで来た。私は数字に強く、サリーは語学。互いの話に耳を傾け、不満を言うことはなかった。
物足りないと言えば、確かに物足りなかった。刺激がなかった。今ではそんなものは必要なかったことはよく分かる、でも当時は軽い気持ちだった。
エマ・ネイリーを面白いと思ったのは事実である。涼やかな顔立ちに長身で、男装の麗人と呼ばれて、ハキハキした令嬢だった。魅力的に映ったわけではない。正妃になどと言われて、勘弁してくれと思ったほどだ。
不正が許せなかったのは本当だった。復興支援のお金など、一番横領してはいけないお金ではないだろうか。
エマ・ネイリーによって、サリーに初めて素っ気なくして、不安そうな表情を見るのも一興であったのも、歪んでいるのかもしれないが、事実だった。
また前のように優しくすればいいだろうなどと考えていたが、サリーは一気に私を見捨てたようにも思う。
婚約が解消されないことも分かっていた、サリーのような才女はいないのだ。王家はみすみす手放すはずも、侯爵家が解消に応じるとも思えなかった。
サリーは結婚後、両親の面会を一切遮断し、公務で会っても、微笑むだけで声を掛けることもない。声を荒げたこともあるが、母国語ではない言葉で毎回『はしたない』と一言だけである。
両陛下も説得してくれたそうだが、『私では不適格です。申し訳ございません、離縁させてください』と頭を下げられて、何も言えなくなったそうだ。
「レベッカ様か、側妃を頑張って探すか、あなたにあるのはこの二択です。公務は私がしているのですから、そのくらいして貰ってもいいでしょう?」
「マリーヌは、レベッカがいくら頑張っても、厳しい立場になるだろう。お願いだ、一人でいい。産んでもらえないか」
「産んだら離縁してくださるのですか?」
「…それは出来ない」
「じゃあ、私ばかりが負担だわ。あなたは何も辛いことがないじゃない」
「どうしろと言うんだ!」
「愛妾はどうでしょう?せめて金銭的に負担にはなるでしょうから。孕んだ子はいないのですか?」
「避妊薬を飲ませていたから、そういったことはない」
「はあ…」
そんなことになったら、問題になることは分かっているはずなのに、役立たずとも言わんばかりである。
「いるのはあなたの血筋でしょう?私は別に誰が産もうがいいと思ってますの。マリーヌ王女でも本人が身に付けて、私や公爵が付けば皆も理解してくれるでしょう。レベッカ様も頑張ってらっしゃるのでしょう?」
「持ち帰って考えさせてくれ」
「ええ、私が関わらないのなら、勝手に決めていただいて構いませんから」
サリーは冷静だ、許す許さないではないことはよく分かった。
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