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サリーはエマに会いたいと手紙を書き、侯爵邸に呼び寄せ、エマが訪れると一目散に深く頭を下げ、エマは驚いた。
「どうか殿下の妻になってください」
「何を仰っているのですか?この前、協力者だったと話しましたよね」
「お願いします、どうか、どうか」
サリーは頭を下げたままだ。
「殿下が愛しているのはサリー様です」
「でも私の代わりをしていたんですよね?」
「それは、そうですけど…」
「殿下ではご不満ですか、ひとかけらも希望はありませんか」
「尊敬できる方ですが」
「では、どうかお願いします。ネイリー様は優秀だと聞いております。王太子妃教育も、爵位も殿下に頼めば養女にしてくれるところもあると思います」
「本当によろしいんですか」
「ええ、引き受けて下さるんですか?ありがとうございます!約束ですよ!」
サリーは満面の笑みでお礼を言い、エマは慌てて殿下に報告に上がった。
「どうしたらいいんだ、彼女なら分かってくれると思っていたのだ!君にサリーの代わりが出来るはずないだろう?代わりをしていたなんて、図々しいことを言ったのか?」
「言っておりませんが、そう解釈されたのではないでしょうか。破棄されたらどうですか?私に頭を下げるなんて」
「それは出来ないよ」
「このまま結婚されても不幸にするだけかもしれませんよ」
「前の気持ちを思い出してくれさえすればいいんだ」
サリーは王家にもエマ・ネイリーは自分の代わりが出来る人材だと、彼女も引き受けてくれると訴えるも、婚約解消は通じなかった。
その後、開かれた夜会では横領のことが公になり、サリーは殿下にエスコートされることになり、これまでのように放置されることもなく、エマ・ネイリーの周りにも人だかりが出来ていた。
殿下が離れると、筆頭公爵家のブレリア夫人が近づいて来た。
「驚きましたわ、ペルガメント侯爵令嬢」
「ええ、エマ・ネイリー様は私が足元にも及ばないほど優秀ですから、仕方のないことです」
「そうなのですか」
「はい、私が何年も努力してやっと出来ることを代わりに務められるのですから、素晴らしいと思いませんか」
「そんなに優秀なのですか?」
「ええ、ご自身で仰っていましたから、侯爵令嬢に嘘は申しませんでしょう?自分の不甲斐なさを実感する毎日でございます」
サリーはいかにエマ・ネイリーが優秀であるかを話し掛けて来る者に言い続けた。これで風向きが変わればいいと思ったが、逆にエマに縁談が持ち込まれたようで、サリーの作戦は失敗している。
仲直りするように殿下と出掛けることにもなってしまい、宝石店に入り、特に興味も無かったが、殿下と店員の視線に気づき、一応言葉を発した。
「まあ、綺麗ね」
「綺麗だな、どれだい?気に入ったか?」
「いえ、気を使って言ってみただけです」
「どれがいい?サリーはダイヤが好きだっただろう?」
「持ってますから要りませんわ」
「好きなのを選んだらいい」
「でしたらお腹がすきましたわ」
食事中も褒めたり、やはり贈り物をしたいと、機嫌を取ろうとする、にやけた顔に腹立たしさしかなかった。私が一生懸命、頑張った結果がこれなのか。こんな空虚な茶番にいつまで付き合わなければならないのか。
「もう止めませんか、こんな茶番」
「茶番なんかじゃない、傷付けたことは本当に悪いと思っている、あれが最善ではなかったかもしれないが、仕方がなかったんだ」
「ええ、それは理解しました」
「だったら」
「私の代わりはいるのですから、慰謝料として破棄していただけませんか」
「破棄すれば君は幸せになれるのか」
「ええ、そちらからが難しいのなら私の有責で構いません。適当に不貞でもでっち上げてください」
「…考えさせてくれ」
「承知しました。長い間、ありがとうございました」
殿下を置いて帰り、一人で戻った娘に両親は驚いた顔をしていた。
「婚約は無くなると思います」
「どういうことだ!結婚する以外ないんだ、拗ねるのもいい加減にしろ」
「後悔するだけですよ」
「後悔などしません」
「馬鹿なことばかり言うんじゃない!冷たくされたのは辛かっただろうが、全部嘘で、サリーを想ってくれているじゃないか」
「私には嘘が現実ですから」
「だったら殿下が他の方と結婚してもいいのね?」
「ええ、だからそう言っているじゃありませんか」
「殿下の横であなたじゃない令嬢が幸せそうに微笑むのよ?いいの?」
「今更です。何度言わせるのですか」
そんなもの、何度も、何処でも見せられた光景だった。今では嘘のように何も感じない。エマだけではないのだ、前にも女性に群がられる様も、親しい女性たちを見届けて来たのだ。今更、そんな言葉が響くとでも思っているのか。
「どうか殿下の妻になってください」
「何を仰っているのですか?この前、協力者だったと話しましたよね」
「お願いします、どうか、どうか」
サリーは頭を下げたままだ。
「殿下が愛しているのはサリー様です」
「でも私の代わりをしていたんですよね?」
「それは、そうですけど…」
「殿下ではご不満ですか、ひとかけらも希望はありませんか」
「尊敬できる方ですが」
「では、どうかお願いします。ネイリー様は優秀だと聞いております。王太子妃教育も、爵位も殿下に頼めば養女にしてくれるところもあると思います」
「本当によろしいんですか」
「ええ、引き受けて下さるんですか?ありがとうございます!約束ですよ!」
サリーは満面の笑みでお礼を言い、エマは慌てて殿下に報告に上がった。
「どうしたらいいんだ、彼女なら分かってくれると思っていたのだ!君にサリーの代わりが出来るはずないだろう?代わりをしていたなんて、図々しいことを言ったのか?」
「言っておりませんが、そう解釈されたのではないでしょうか。破棄されたらどうですか?私に頭を下げるなんて」
「それは出来ないよ」
「このまま結婚されても不幸にするだけかもしれませんよ」
「前の気持ちを思い出してくれさえすればいいんだ」
サリーは王家にもエマ・ネイリーは自分の代わりが出来る人材だと、彼女も引き受けてくれると訴えるも、婚約解消は通じなかった。
その後、開かれた夜会では横領のことが公になり、サリーは殿下にエスコートされることになり、これまでのように放置されることもなく、エマ・ネイリーの周りにも人だかりが出来ていた。
殿下が離れると、筆頭公爵家のブレリア夫人が近づいて来た。
「驚きましたわ、ペルガメント侯爵令嬢」
「ええ、エマ・ネイリー様は私が足元にも及ばないほど優秀ですから、仕方のないことです」
「そうなのですか」
「はい、私が何年も努力してやっと出来ることを代わりに務められるのですから、素晴らしいと思いませんか」
「そんなに優秀なのですか?」
「ええ、ご自身で仰っていましたから、侯爵令嬢に嘘は申しませんでしょう?自分の不甲斐なさを実感する毎日でございます」
サリーはいかにエマ・ネイリーが優秀であるかを話し掛けて来る者に言い続けた。これで風向きが変わればいいと思ったが、逆にエマに縁談が持ち込まれたようで、サリーの作戦は失敗している。
仲直りするように殿下と出掛けることにもなってしまい、宝石店に入り、特に興味も無かったが、殿下と店員の視線に気づき、一応言葉を発した。
「まあ、綺麗ね」
「綺麗だな、どれだい?気に入ったか?」
「いえ、気を使って言ってみただけです」
「どれがいい?サリーはダイヤが好きだっただろう?」
「持ってますから要りませんわ」
「好きなのを選んだらいい」
「でしたらお腹がすきましたわ」
食事中も褒めたり、やはり贈り物をしたいと、機嫌を取ろうとする、にやけた顔に腹立たしさしかなかった。私が一生懸命、頑張った結果がこれなのか。こんな空虚な茶番にいつまで付き合わなければならないのか。
「もう止めませんか、こんな茶番」
「茶番なんかじゃない、傷付けたことは本当に悪いと思っている、あれが最善ではなかったかもしれないが、仕方がなかったんだ」
「ええ、それは理解しました」
「だったら」
「私の代わりはいるのですから、慰謝料として破棄していただけませんか」
「破棄すれば君は幸せになれるのか」
「ええ、そちらからが難しいのなら私の有責で構いません。適当に不貞でもでっち上げてください」
「…考えさせてくれ」
「承知しました。長い間、ありがとうございました」
殿下を置いて帰り、一人で戻った娘に両親は驚いた顔をしていた。
「婚約は無くなると思います」
「どういうことだ!結婚する以外ないんだ、拗ねるのもいい加減にしろ」
「後悔するだけですよ」
「後悔などしません」
「馬鹿なことばかり言うんじゃない!冷たくされたのは辛かっただろうが、全部嘘で、サリーを想ってくれているじゃないか」
「私には嘘が現実ですから」
「だったら殿下が他の方と結婚してもいいのね?」
「ええ、だからそう言っているじゃありませんか」
「殿下の横であなたじゃない令嬢が幸せそうに微笑むのよ?いいの?」
「今更です。何度言わせるのですか」
そんなもの、何度も、何処でも見せられた光景だった。今では嘘のように何も感じない。エマだけではないのだ、前にも女性に群がられる様も、親しい女性たちを見届けて来たのだ。今更、そんな言葉が響くとでも思っているのか。
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