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15.魔法の正体

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「どういうことだ!?
 あの手紙は、何だ!?」
 と、自宅に着くなり、信二は、テレビ電話の向こうにいる紘一に向かって、叫んでいた。
「それより、サバンナ行きは、どうなったんだ?
 OKは出たのか?」
「ああ、出た。だから、聞いているんだ。
 あの手紙は、何だ!?」
 信二の問いに、紘一は、笑いながら答えた。
「あの手紙を書いたのは、スティーブンス・ガネリアという、ALS研究の第一人者だ。
 アメリカでALSの研究をしている。
 研究論文発表もしてるし、世界中から著名な研究者が集まる、ALS学会での公演もしている」
 信二は、あっけにとられた。
「スティーブンスに手紙を書いてもらった。
 シンジ・サトミのケアをするから、サバンナ行きを認めてくれってな」
「そんな偉い…先生が……」
「ただの生真面目きまじめなおっさんだけど、な」
 と、紘一は、笑いながら言った。
 紘一が、野生動物の写真撮影にフィリピンに向かった時、たまたまその年のALS学会による発表会が、フィリピンで行われた。
 研究発表なので、誰でも入場料さえ払えば、見学ができる。
 そこで、スティーブンス・ガネリア教授を見つけた紘一は、写真を撮らせてくれ、と話しかけた。
 紘一は、すでにスティーブンス教授の著作ちょさくを読み、彼の顔をよく知っていた。
 要は、高名なスティーブンスを狙い撃ちしたのだ。
 スティーブンスの写真を撮りながら、紘一はALSに関する質問を浴びせた。
 紘一を単なるカメラマンだと思っていたスティーブンスは、紘一の深い知識に驚いた。
 それを機会に、紘一とスティーブンスは、交友を深めたのだった。
 紘一としては、してやったり、というところだろう。
 が、そんな事情など、信二も清子も知るよしもなかった。
「ああ、そうそう。親父のアフリカ行きには、スティーブンスもついていくから」
「そんな偉い先生に来てもらえるの…」
 横で聞いていた清子も驚嘆した。
「そりゃ、そうだろ。
 スティーブンスが随行ずいこうするから、そっちの医者がOK出したんだ。
 スティーブンスだって、自分の名前を出している以上、あとは知らない、というわけにもいかないだろ」
 信二と清子は、二の句が継げなかった。
「ああ、スティーブンスたち医療スタッフの渡航費用も頼むぜ。
 親父は、金を出してくれればいい。
 あとは、全部こっちで手配する。
 今回は、親父がスポンサーだから、存分に金を使えて助かるぜ。
 じゃあな」
 と、いつもの軽口を言って、紘一はテレビ電話を切った。

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