15 / 45
15.魔法の正体
しおりを挟む
「どういうことだ!?
あの手紙は、何だ!?」
と、自宅に着くなり、信二は、テレビ電話の向こうにいる紘一に向かって、叫んでいた。
「それより、サバンナ行きは、どうなったんだ?
OKは出たのか?」
「ああ、出た。だから、聞いているんだ。
あの手紙は、何だ!?」
信二の問いに、紘一は、笑いながら答えた。
「あの手紙を書いたのは、スティーブンス・ガネリアという、ALS研究の第一人者だ。
アメリカでALSの研究をしている。
研究論文発表もしてるし、世界中から著名な研究者が集まる、ALS学会での公演もしている」
信二は、あっけにとられた。
「スティーブンスに手紙を書いてもらった。
シンジ・サトミのケアをするから、サバンナ行きを認めてくれってな」
「そんな偉い…先生が……」
「ただの生真面目なおっさんだけど、な」
と、紘一は、笑いながら言った。
紘一が、野生動物の写真撮影にフィリピンに向かった時、たまたまその年のALS学会による発表会が、フィリピンで行われた。
研究発表なので、誰でも入場料さえ払えば、見学ができる。
そこで、スティーブンス・ガネリア教授を見つけた紘一は、写真を撮らせてくれ、と話しかけた。
紘一は、すでにスティーブンス教授の著作を読み、彼の顔をよく知っていた。
要は、高名なスティーブンスを狙い撃ちしたのだ。
スティーブンスの写真を撮りながら、紘一はALSに関する質問を浴びせた。
紘一を単なるカメラマンだと思っていたスティーブンスは、紘一の深い知識に驚いた。
それを機会に、紘一とスティーブンスは、交友を深めたのだった。
紘一としては、してやったり、というところだろう。
が、そんな事情など、信二も清子も知る由もなかった。
「ああ、そうそう。親父のアフリカ行きには、スティーブンスもついていくから」
「そんな偉い先生に来てもらえるの…」
横で聞いていた清子も驚嘆した。
「そりゃ、そうだろ。
スティーブンスが随行するから、そっちの医者がOK出したんだ。
スティーブンスだって、自分の名前を出している以上、あとは知らない、というわけにもいかないだろ」
信二と清子は、二の句が継げなかった。
「ああ、スティーブンスたち医療スタッフの渡航費用も頼むぜ。
親父は、金を出してくれればいい。
あとは、全部こっちで手配する。
今回は、親父がスポンサーだから、存分に金を使えて助かるぜ。
じゃあな」
と、いつもの軽口を言って、紘一はテレビ電話を切った。
あの手紙は、何だ!?」
と、自宅に着くなり、信二は、テレビ電話の向こうにいる紘一に向かって、叫んでいた。
「それより、サバンナ行きは、どうなったんだ?
OKは出たのか?」
「ああ、出た。だから、聞いているんだ。
あの手紙は、何だ!?」
信二の問いに、紘一は、笑いながら答えた。
「あの手紙を書いたのは、スティーブンス・ガネリアという、ALS研究の第一人者だ。
アメリカでALSの研究をしている。
研究論文発表もしてるし、世界中から著名な研究者が集まる、ALS学会での公演もしている」
信二は、あっけにとられた。
「スティーブンスに手紙を書いてもらった。
シンジ・サトミのケアをするから、サバンナ行きを認めてくれってな」
「そんな偉い…先生が……」
「ただの生真面目なおっさんだけど、な」
と、紘一は、笑いながら言った。
紘一が、野生動物の写真撮影にフィリピンに向かった時、たまたまその年のALS学会による発表会が、フィリピンで行われた。
研究発表なので、誰でも入場料さえ払えば、見学ができる。
そこで、スティーブンス・ガネリア教授を見つけた紘一は、写真を撮らせてくれ、と話しかけた。
紘一は、すでにスティーブンス教授の著作を読み、彼の顔をよく知っていた。
要は、高名なスティーブンスを狙い撃ちしたのだ。
スティーブンスの写真を撮りながら、紘一はALSに関する質問を浴びせた。
紘一を単なるカメラマンだと思っていたスティーブンスは、紘一の深い知識に驚いた。
それを機会に、紘一とスティーブンスは、交友を深めたのだった。
紘一としては、してやったり、というところだろう。
が、そんな事情など、信二も清子も知る由もなかった。
「ああ、そうそう。親父のアフリカ行きには、スティーブンスもついていくから」
「そんな偉い先生に来てもらえるの…」
横で聞いていた清子も驚嘆した。
「そりゃ、そうだろ。
スティーブンスが随行するから、そっちの医者がOK出したんだ。
スティーブンスだって、自分の名前を出している以上、あとは知らない、というわけにもいかないだろ」
信二と清子は、二の句が継げなかった。
「ああ、スティーブンスたち医療スタッフの渡航費用も頼むぜ。
親父は、金を出してくれればいい。
あとは、全部こっちで手配する。
今回は、親父がスポンサーだから、存分に金を使えて助かるぜ。
じゃあな」
と、いつもの軽口を言って、紘一はテレビ電話を切った。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
愛した彼女は
悠月 星花
大衆娯楽
僕、世羅裕(せらゆたか)は、大手会社から転職したその日、配属された先で橘朱里(たちばなあかり)という女性と出会った。
彼女は大輪の向日葵のように笑う人で、僕の心を一瞬で攫っていってしまう。
僕は、彼女に一目惚れをしたのだ。
そんな彼女に、初めて会って30分もしないうちに告白をして玉砕。
当たり前だが……それでも彼女の側でいられることに満足していた。
年上の彼女、年下の僕。
見向きもしてくれなかった彼女が、僕に笑いかける。
いつの日か、彼女の支えとなるべく、今日も今日とて付き従う僕のあだ名は忠犬ワンコ。
彼女の笑顔ひとつを手に入れるため、彼女と一緒にお勤めしましょう。
僕は、考える。
いままでの僕は、誰にも恋をしてこなかったんじゃないかと……
橘朱里が、僕にとって、初めての恋だったのだと。
初恋は実らない?いんや、実らせてみせるさ!必ず、彼女を振り向かせてみせる。
もう、振られているけど……そんなのは……ちょっと気にするけど、未来を想う。
朱里さんが、彼女が、僕を選んでくれるその日まで……
ずっと、ずっと、彼女を支え続ける。
気持ち悪いだって……?彼女が気にしてないから、僕からは口に出さない。
僕が朱里さんと出会って初めて恋を知り、初めて愛を知った。
彼女となら……永遠さえ、あるのではないかと思えるほどである。
最初の恋を教え、最後に愛を残していってしまった人。
赦されるなら……ずっと、側にいたかった人。
今は、いないけど、そっちにいくまで、待っていてくれ。
必ず、迎えにいくからさ……朱里。
母の遺言と祖母の手帳 〜ALSお母さんの闘病と終活・後日談〜
しんの(C.Clarté)
エッセイ・ノンフィクション
母の遺品整理をしていたら祖母の手帳を発見。母から「棺に入れて燃やして」と頼まれていたが火葬まで数日猶予があるため、私は謎めいた祖母の手記を読み始める——
ノンフィクションエッセイ「嵐大好き☆ALSお母さんの闘病と終活」の後日談です。前作は画像が200枚に達したため、こちらで改めて。
▼前作「嵐大好き☆ALSお母さんの闘病と終活」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/394554938/525255259
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる