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14.魔法の手紙

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 それから一週間が経ち、本当に手紙が届いた。
 アメリカからの国際郵便だった。
「本当にこんな手紙で、何とかなるのかしら?」
 清子が、手紙を信二に見せながら、不安を口にした。
 信二は、何も言わなかった。
 何とかなろうが、なるまいが、他に手立てはない。
 信二は、その場で、清子に病院の予約をさせた。
 それから、さらに一週間後。
 例の手紙をもって、信二と清子は、病院にいた。
「…あの。これを、先生に」
 と、清子は、オズオズと神経内科受付に、手紙を差し出した。
 受付前のソファに座った清子は、
「本当に大丈夫なのかしら」
 と、再び不安を口にする。
「……知らん」
 と、車椅子に座っている信二が、答えた。
 事実、信二には、他に答えようがない。
 診察室に呼ばれる時間が、長く感じた。
 だんだんと不安が膨らんでくる。
 ほんの二週間前に、喧々諤々けんけんがくがくとやりあったばかりだ。
 信二と清子は、一言も言葉を介さず、ただひたすら名前を呼ばれるのを待っていた。
「里見さぁん。里見信二さぁん」
 やっと名前を呼ばれ、信二と清子は緊張しながら、診察室に入った。
 そこで、二人が見たのは、上機嫌な医者の姿だった。
 逆に二人は、面食らった。
 デスクの上に、例の手紙を広げていた医者が言った。
「里見さん。スティーブンス教授と、お知り合いだったんですね」
 思わず信二と清子は、顔を見合した。
 信二は、素早く清子にウインクをして見せた。
 (余計なことを言うな)
 という、合図だった。
「ええ。そうなんです」
 と、信二が答える。
「そうですか。スティーブンス教授には、いつお会いに?」
 と、医者がたずねてきた。
「ええ、近いうちに」
 と、答えた信二を、医者は怪訝けげんそうに見た。
「……あの……その。今の私の状態を見ていただくことに……」
 と、信二は必死に取り繕った。
「ああ。なるほど。
 まあ、これまでの検査結果もスティーブンス先生に送らせていただきます。
 スティーブンス先生に診ていただけるのなら、間違いないでしょう」
 医者は、納得したように言った。
 清子は、恐る恐るたずねた。
「先生。それで、あの。サバンナ行きは…」
「スティーブンス先生の所見しょけん次第ですが……」
 と、医者は前置きした上で、
「よろしいんじゃないでしょうか」
 との言葉に、思わず信二と清子は、顔を見合した。
 まるで、魔法にでもかかったようだった。
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