戦士と腕輪

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第6章 暗き闇との邂逅

第57話 新たな武器

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戦士と腕輪 第57話 新たな武器

 古代洞窟での試練を達成した少年は金剛石を入手し、洞窟の主を新たに仲間に迎えて、ともに商業都市への道を進んでいた。

「キシャー。疲れたニョロ。また、肩の上に乗っけて欲しいニョロ。」

「わかりました。俺の肩に乗ってください。」

商業都市への道中、洞窟の主は長距離の移動に慣れておらず、疲れるとすぐに
少年の肩に乗せてもらっているのであった。少年もそれほど重くないので何度も乗せてあげた。一方、シスターは蛇が苦手なので洞窟の主を肩に乗せることはできなかった。少年は商業都市への道中、時間を持て余していたので肩に乗っている洞窟の主と話をし始めた。

「こうやって、古代洞窟の外へ出てこられたのは何年ぶりですか。」

「キシャー。そうニョロね。大体100年ぶりくらいニョロ。その間は、洞窟の中でまったりと生きていたニョロ。」

洞窟の主が100年ぶりに古代洞窟から出たと言うと、少年は驚いて、さらに詳しく聞いていくのであった。

「この街道も100年前はこれほど立派ではなかったですよね。」

「キシャー。前に通ったときはもっとでこぼこしていてこんなに広くなかったニョロ。時代の移り変わりを感じるニョロ。」

少年は洞窟の主から当時の話を少し聞くと、改めて、洞窟の主が生きた年月の長さに驚かされるのであった。話している最中、少年はあることを思い出して洞窟の主に質問した。

「そういえば、あなたは暗黒騎士のことをご存知だとおっしゃってましたが、昔に戦われたことがあるんですか。」

「キシャー。暗黒剣の使い手のことニョロか。まあ、知っているニョロ。」

少年が暗黒騎士のことを質問すると、洞窟の主は何かを知っている感じに答えるが、その後、何もしゃべらなかった。少年はさらに洞窟の主に詳しく問うのであった。

「俺もあんな強い奴と戦ったのは魔王以来です。何か知っていることがあれば、教えてください。次に会うときは勝ちたいんです。」

「キシャー。暗黒剣の使い手に関しては、おいおいと教えるニョロ。話が複雑でいっぺんにしゃべるとこんがらがるかもしれないニョロ。」

洞窟の主がそう言うと、少年は暗黒騎士の素性が込み入っていると感じて、それ以上聞くのをあきらめた。洞窟の主がおいおいと暗黒騎士のことを教えてくれると言っているので、少年はそれを信じるのであった。そうこう話をしていると、少年たちの目の前に商業都市の光景が入ってくるのであった。

「着きましたよ。あれが目的地の商業都市です。大きな都市でしょ。」

「キシャー。すごいニョロ。こんなにでっかい都市があるなんて、すごいニョロよ。建物もでっかいのばかりニョロ。」

洞窟の主は商業都市を見て、かなりびっくりしたようであった。100年近くも古代洞窟の中に引きこもっており、世情に疎くなっていたので、その驚きはすごかったのだ。

「商業都市の中もすごいですから、早速、入りましょう。」

少年が案内する形で商業都市の入り口まで歩いていった。いつもなら、そのまま商業都市の中へ問題なく入れるのであるが、今回はいつもと違った。

「おい。ちょっと待て。お前の肩に乗っているものはなんだ。」

「あっ。これは、その、あの。」

門番の兵士が少年の肩に乗っかっている洞窟の主を見つけるとすぐに声をかけてくるのであった。突然のことで、少年もどう説明したらいいか、困惑するのであった。

「これは、この方のペットの蛇です。小さくてかわいいでしょう。」

「かみついたり、毒を持っていたりしないだろうな。」

「はい。大丈夫です。おとなしくて、かみついたりもしないです。ましてや、毒なんて持っておりません。」

「キシャー。キシャー。」

困惑していた少年に代わって、シスターが洞窟の主のことを体良く門番の兵士に説明すると、門番の兵士は洞窟の主のかわいい鳴き声を聞いて納得したようであった。

「よし。大丈夫そうだな。通っても構わないぞ。」

「ありがとうございます。それでは失礼します。」

門番の兵士が洞窟の主をただのペットの蛇だと思ってくれたようで、少年たちの商業都市への通行を許すのであった。それを聞いた少年は一安心したようで商業都市の入り口を通っていくのであった。

「はあ。あぶなかった。もし、洞窟の主がしゃべれるなんてバレたら、厄介なことになっていたな。ありがとうございました。」

「いえ、とんでもありません。説明がうまくいって良かったです。」

「キシャー。久しぶりに外の世界に出たから、うっかりしていたニョロ。他の人間から見れば、我はとても珍しいモンスターになるニョロ。」

シスターの機転で商業都市の入り口を無事に通過した少年たち一行は目的の鍛冶屋に向かうのであった。鍛冶屋に行く途中、市場を通ると食料品が多数売られており、洞窟の主の目に入ってくるのであった。

「キシャー。これはすごくおいしそうな食べ物がたくさん置いてあるニョロ。」

「ここには食材がたくさん売られてますよ。あとで見に行きましょう。でも、今は鍛冶屋にまず行くことが先決です。」

少年は洞窟の主の熱望をおさめて、鍛冶屋への道を急ぐのであった。しばらく歩くと、少年たちは鍛冶屋に到着するのであった。少年は早る気持ちを抑えつつ、鍛冶屋の扉を開くのであった。

「こんにちは。先日、折れた黒鉄剣の修復と強化で伺ったものです。」

「ガン、ガン。おっ。久しぶりじゃあないか。」

少年は懐から大事に抱えていた金剛石を取り出すと、すぐに鍛冶屋の親父に見せるのであった。

「折れた黒鉄剣を修復して強化するのに必要な金剛石を手に入れてきました。」

「うおー。そいつはすげぇな。あの古代洞窟を突破したってことだな。早速、金剛石を渡してくれないか。」

少年は金剛石を鍛冶屋の親父に渡すと、鍛冶屋の親父は受け取った金剛石をまじまじと見つめるのであった。

「よし。この量であれば、修復と強化も問題なくやれそうだな。早速、今から折れた黒鉄剣の修復と強化に入るが、まずは刀身を溶かして、この金剛石も入れて溶かして、新しい刀身を鍛えるぞ。」

「わかりました。どれくらいかかりそうですか。」

「そうだな。3日くらいは待ってもらえないか。」

鍛冶屋の親父が3日程度かかると答えると少年は納得して、店をあとにするのであった。少年たちは折れた黒鉄剣の修復と強化が終わるまで時間を持て余すことになるので、早速、洞窟の主の希望であった市場の観光を行うのであった。

「先ほど通った市場です。露天の店で色々な食材が売られていますよ。」

「キシャー。これはすごいニョロ。うまそうな食べ物が大量に、しかも種類もすごいニョロ。外の世界に出てきて正解ニョロ。」

「何か。買っていきますか。美味しい食材があれば言ってくださいね。」

洞窟の主は市場の食材に魅了されて、目を回すくらいに歓喜していた。シスターが欲しい食材があれば、購入すると言ったので、洞窟の主は周りを見渡して食べてみたい食材を探すのであった。

「キシャー。うまそうなものばかりで、目写りしそうだニョロ。どれがいいニョロか。あっ、あれは、りんごニョロか。まずはあれから、いただいてみるニョロ。」

「わかりました。あの赤いりんごですね。買ってきますね。」

洞窟の主は様々な食材の中からりんごに目をつけるとすぐに食べてみたいと言い出した。シスターは果物店に行って、りんごを1つ買ってくるのであった。

「りんごを買ってきましたよ。どうぞ、食べてみてください。」

「がぶり。がぶり。キシャー。このりんごは甘くてうまいニョロ。こんなにうまいりんごは久しぶりニョロ。」

洞窟の主はすぐにりんごにかぶりつくと、その味に感動して、喜ぶのであった。少年たちはこうして市場の中を散策しながら、時間を潰していくのであった。3日後、少年たちは折れた黒鉄剣の修復と強化を依頼していた鍛冶屋へ向かうのであった。

「キシャー。市場でいろいろなうまい食材が食べられたニョロ。満足ニョロ。」

「すごい。食べっぷりでしたね。結構、お金を消費してしまいましたね。俺の懐が結構削られた気がするな。」

「でも、みんなで楽しみながら市場を散策できて、いい気分転換になりましたよ。」

市場で洞窟の主が食べたいものを買わされ続けた少年であったが、シスターが楽しかったと言うと、少年の心は少し報われた気持ちになるのであった。そんなことを話しながら歩いていると、少年たちは鍛冶屋に到着するのであった。

「おはようございます。頼んでいた黒鉄剣の修復と強化は終わりましたか。」

「おー。来たか。昨日の晩、なんとか仕上がったぞ。こっちに来てくれ。」

少年は折れた黒鉄剣の修復と強化の完了を聞いて、すぐに鍛冶屋の親父のところまで早足で行くのであった。

「ほれ。これが金剛石を使って、修復と強化をした黒鉄剣だぜ。どうだ。すごいだろ。切れ味と耐久性が前より格段に増しているぜ。俺の自信作だな。」

「本当だ。見ただけでも、前より強化されてるのがわかりますよ。」

少年は鍛冶屋の親父から修復と強化を施された黒鉄剣を受け取ると隅から隅まで見回して、切れ味や耐久性が強化されているのを感じとるのであった。

「どうだ。すごいだろ。というか。もうその剣は黒鉄剣とは呼べない代物だぜ。」

「じゃあ。なんて呼べばいいんですか。強化版黒鉄剣とか。黒鉄剣改とか」

「はは。名前はあとでお前さんが決めてくれ。ただし、ちゃんとした名前にしてやれよ。」

鍛冶屋の親父からそう言われた少年は新しい剣の名前を考え始めるのであった。話が一段落すると、鍛冶屋の親父が今回の仕事の料金を話してくるのであった。

「ところで、今回のお前さんの剣の修復と強化の料金だが、かなり費用がかかったから、高くつくぜ。」

「は、はい。覚悟はしています。これだけの仕事をしていただいたので高くついても構いません。」

少年が高い料金になっても払う覚悟があると言うと、鍛冶屋の親父が腕を組んでぶつぶつと独り言をつぶやき始めるのであった。しばらくすると、鍛冶屋の親父は口を開き始めた。

「よーし。決めたぞ。金剛石を入手して来てくれたから、サービスして、銀貨50枚だ。」

「ぎ、銀貨50枚。ちょうど今回のクエストの報酬と同じ額だ。あれだけがんばって、たくさんの報酬をもらったのに、ちょうどその額が剣の費用に飛んでしまうなんて。まあ。新しい剣が手に入ったし、よしとするか。」

少年は黒鉄剣が折れたときのクエストで支払われた報酬と同額の料金を鍛冶屋の親父から請求されて驚くが、新しい剣の出来栄えに満足していたので納得するのであった。少年たちは新しい剣を受け取ると料金を支払って鍛冶屋を出ていき、早速、新しい剣の出来栄えを確認するために近くの森へと向かうのであった。

「よし。早速、この剣の出来栄えを確認するぞ。切れ味が上がってるから攻撃力がかなり向上しているはずだぞ。」

「では、私たちはここで見守っておりますので、存分に新しい剣の威力を確認してきてください。」

シスターたちの声援受けて、少年は森の奥へと進んでいくのであった。商業都市の近くの森には強力なモンスターはいないが、ゴブリンはいるので戦闘をするには十分であった。しばらくすると、少年はゴブリンの集団に出くわすのであった。

「おっ。いたいた。全部でゴブリン3匹か。新しい剣の切れ味を試させてもらうぞ。とりゃー。」

「ウケ。ウケ。ズバーン。グフ。」

「す、すごい。軽く一振りしただけなのに、あんなに深い傷を与えて倒せるなんて。」

少年はゴブリンを軽く一振りで倒せたことで新しい剣の切れ味に驚き始めた。さらに、少年は残りのゴブリンにも攻撃を仕掛けるのであった。

「さらに新しい剣の切れ味を試すぞ。もう1匹、どりゃー。」

「ウケ。ガキン。ズバーン。グフ。」

少年はもう1匹のゴブリンに力を込めて攻撃を仕掛けるが、ゴブリンは棍棒で防御姿勢を取って、新しい剣を受け止めようとした。しかし、ゴブリンの棍棒が真っ二つに切れてしまい、新しい剣の斬撃がゴブリンの体に到達して、ゴブリンは倒されてしまうのであった。

「す、すごい。棍棒を真っ二つにして、ゴブリンごと切ってしまうなんて、なんて切れ味だ。すごすぎる。」

「ウケ。サッ。サッ。」

あまりの少年の新しい剣の威力を目の当たりにした残りのゴブリンは恐れをなして、逃げ去るのであった。少年は新しい剣の切れ味の凄さに驚嘆してしまうのであった。

「あの。新しい剣の切れ味はどうでしたか。遠くから見ていたのですが、かなり、すごかったように見えましたよ。」

「それが、この新しい剣はすごい切れ味で軽く振っただけでもゴブリンを一撃で仕留められましたし、力を込めれば、棍棒ごとゴブリンを切れましたよ。」

「キシャー。それはよかったニョロ。金剛石を提供した我の偉大さが証明できたニョロ。」

シスターや洞窟の主は遠くから少年の新しい剣の挙動を見ていたが、それでも、新しい剣の切れ味の凄さがわかるくらいであった。少年は新しい剣の出来栄えに満足するのであった。

「ところで、その剣のお名前はどうされるのですか。鍛冶屋の親父さんもあなたが考えてくださいとおっしゃってましたが。」

「うーん。そうですね。ずっと考えていたんですが、金剛石を使っているので、
新しい剣の名前は剛鉄剣にします。」

少年は折れた黒鉄剣を金剛石で修復と強化した新しい剣の名前を剛鉄剣と名付けた。少年は新たな武器を手にして、暗黒騎士に立ち向かうことになるのであった。
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