戦士と腕輪

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第5章 新たなる旅路

第49話 森のモンスター退治

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戦士と腕輪 第49話 森のモンスター退治

 翌日、朝早くに少年とシスターは商業都市の宿屋を出発すると、クエストの目的地である森へと向かうのであった。2人は前日に武器屋や市場でクエストの準備を行なっており、その後、レストランでごちそうも食べているので、準備万端であった。

「ふあー。よく寝た。でも、久しぶりにこんなに朝早くに起きるとあくびも
出るなー。」

「朝早く起きるのはとても健康的なのでいいことですよ。それに、今日は1日中、森の中にいるので、早いうちに商業都市を出発した方がいいですよ。」

朝早かったせいか、少年はあくびをしながら歩くのであった。一方、シスターの方は早朝からでも目が覚めているようで眠気など一切見せなかった。2人は商業都市を出て、街道を黙々と2時間ほど歩くと目的の森へと近づくのであった。

「あれ。道の真ん中で誰かが立っているぞ。何をしているのかな。」

「本当ですね。何をなさっているんでしょうか?」

「お2人さん。こんなところで何をしているんだね。この先の森にはモンスターがたくさんいて、危険だよ。」

少年が道の真ん中に立っている人に気がつくと、先にその人が少年たちに声をかけて、この先は危ないと警告してくるのであった。少年はすぐに自分たちの事情を説明するのであった。

「我々は商業都市の斡旋所でこの先の森のモンスター退治のクエストを引き受けて、ここに来ました。」

「おー。あんたら。森のモンスター退治のクエストを引き受けてくださったのか。助かるよ。わしは村のもので、モンスターが村に向かわないかを見張っていたんだ。モンスターはこの先の森にいるよ。」

少年に声をかけてきたのは近くの村の村人のようであった。村人は少年とシスターが森のモンスター退治を引き受けてくれたと聞いて、少しホッとしたようであった。

「そうだったんですか。参考までに聞いておきたいのですが、村を襲ったモンスターはどんな奴でしたか?」

「それが、早朝や夜に一気に襲ってくるので、わしも直接見ていないんだが、ゴブリンが数匹いたとか、他の村人が言っていたんだ。」

少年は村人に村を襲ってきたモンスターのことを聞くがあまり詳しい情報は得られなかった。しかし、少年は村人の少ない情報からゴブリンであろうと推定した。

「なるほど、ゴブリンの群れが襲ってきたのか。じゃあ、余裕でなんとかなりそうだな。」

「私もゴブリンでしたら、前回の投石紐の試し打ちで倒しましたから、大丈夫です。」

少年とシスターはゴブリンの群れが今回のクエストのモンスターと思い、少し安心するのであった。まだ、シスターは投石紐の投石攻撃を覚えたばかりであり、少年はもし強力なモンスターだったら、やばいなと心の片隅で考えていたからである。

「我々が来たので、森のモンスターは必ず倒します。安心してください。」

「助かったよ。これで村が襲われることがなくなるよ。がんばってくれよ。」

少年たちは村人にそう言うと村人も安心したようであり、少年たちは再び森へと向かうのであった。

「あの森が今回のクエストの森だな。やはり、けっこう大きな森だな。」

「そうですね。森の端から端まで歩いて1時間はかかると斡旋所の職員さんが
言われてましたからね。」

少年とシスターは目的の森の前まで来ると辺りを見渡すのであった。森の端の辺りは静けさを保っており、モンスターの姿はどこにもなかった。2人はクエストの方針を相談し始めた。

「やはり、モンスターは森の中にいそうだな。森の中を隈なく捜索するしかないな。けっこう広い森だから時間がかかりそうだな。」

「そうですね。でも、朝早く出発して、この森にやって来ましたから、時間はたっぷりあります。じっくりとモンスターの捜索をしましょう。」

少年はモンスターの捜索に手間取りそうだと懸念を示すが、逆にシスターはモンスターの捜索に積極的に臨む姿勢であった。やはり、シスターは投石紐による投石攻撃を使用できるようになったので、早く実戦で使用したいと思い、やる気が少年よりかなり高かった。やる気のあるシスターに引っ張られる形の少年は気を取り直して、モンスターの捜索に臨んだ。2人はモンスターを捜索するために森の中へと進んでいくのであった。森の中は日差しが少し入りにくく、少し暗くなっており、木々の隙間から奥を見るので視界も遠くまでは確保できなかった。

「うーん。なかなかモンスターが見つからないな。村を襲うくらいだから、けっこうな数がいるだろうから、すぐに見つかりそうなものだけどな。」

「確かに声も聞こえてきませんね。でも、まだ森に入って、10分程度です。焦らずじっくり探しましょう。」

少年とシスターは森の中に入って、モンスターを探すのであるが、なかなか見つけられずにいた。さらに、森の奥へ2人は進んでいくと、シスターが何かに
気がつくのであった。

「何か。モンスターの声が聞こえてきましたよ。」

「ウケ。ウケ。」

「確かに、多分、ゴブリンですね。あっちだ。静かに行きましょう。」

2人は近くからゴブリンらしき声がするので、声のする方へと足音を消して、ゆっくりと進むのであった。2人は茂みの手前でかがむとその先の様子を伺うのであった。

「あ、あんなところにゴブリンが3匹もいるぞ。やった。やっと見つけたぞ。」

「本当にいましたね。早速、攻撃の準備をしますね。ちょっと待っていてください。」

やっとのことで見つけることができた少年は喜んで興奮気味にしゃべるが、シスターは冷静に攻撃の準備に入るのであった。さらに、2人は簡単に作戦を相談し始めた。

「では、私が1番手前にいるゴブリンを攻撃しますので、投石が当たったら、攻撃を始めてください。」

「わかりました。これが実戦での初めての投石攻撃になりますね。がんばってください。」

作戦を決めた後、シスターは小石を投石紐に包むと、紐の両端を持って、ブンブンと振り回すのであった。そして、遠心力をつけて、紐の片端を離すと、小石が勢いよく飛んでいくのであった。

「ブン。ブン。ブン。ヒューン。」

「ウケ。グフ。」

シスターの投石攻撃は投石紐購入時よりさらに威力が増しており、1番手前にいたゴブリンの頭部に着弾すると、ゴブリンはその場に倒れ込んでしまうのであった。どうやら、投石を受けたゴブリンは即死したようであった。この攻撃を合図に少年は茂みから勢いよく飛び出すのであった。

「行くぞ。うりゃー。とりゃー。」

「ウケ。グフ。」

「残り1匹。ため切り。どりゃー。」

「ウケ。グフ。」

茂みから飛び出した少年は2匹目のゴブリンに黒鉄剣による攻撃を加えると残りのゴブリンにも強烈な一撃を放って、そのゴブリンを仕留めるのであった。2人の素早い連携攻撃にゴブリンたちは反撃する時間すらなかった。少年とシスターによる先制攻撃は大成功を収めるのであった。

「やりましたね。うまくゴブリンたちを倒せましたよ。しかも、反撃もなく、こんなに素早く倒せるなんて、すごいですよ。」

「私もそう思います。この投石紐による投石攻撃はとても効果的です。私も戦闘でお役に立ててうれしいです。次もがんばります。」

2人は連携して攻撃できたことにとても喜び、初戦の勝利に歓喜するのであった。これでシスターも戦闘に積極的に参加できて、少年の負担もかなり減ることになるのであった。シスターも自信を深めたようであった。すぐさま、他にいるであろうゴブリンたちを探そうとするところであったが、ちょうど時間は昼前になり、朝早く商業都市を出たこともあるので、少年とシスターは早めの昼食を取ろうとするのであった。

「とりあえず、お昼になりそうだし、昼食を取りましょう。この近くにモンスターはいないようですから。」

「そうですね。私も先ほどの戦闘で少し疲れたので昼食を取って、リラックスしたいです。」

2人はそう言うと木の根元に腰掛けて、昼食を取り始めた。シスターがカバンから昨日買った四角いパンを取り出すと少年に渡して、2人で食べ始めるのであった。四角いパンは少々硬めであったが、なかなかのいい味であった。

「このパン。少し硬いけど、美味しいな。癖になりそうだな。」

「確かに柔らかくはないですが、歯応えがあって、とても美味しいです。買っておいて正解でした。」

少年とシスターは四角いパンを美味しくいただくのであった。さらに、シスターは四角いパンを食べ終えるとカバンからりんごと梨を取り出して、少年に渡すのであった。

「デザートにりんごと梨を食べてください。水分も補給できます。」

「ありがとうございます。ガブ。美味しいな。このりんご。甘くて、果汁があふれてきそうですね。」

「こちらの梨の方が、もっと果汁があふれてきてますよ。それに甘いです。両方とも買っておいてよかったです。」

2人はりんごと梨を食べながら、その味を堪能すると、束の間の昼食の時間を楽しむのであった。最後にシスターは皮の水筒を手に取るとカバンからコップを取り出して、水を注ぐのであった。

「食後に水を飲んでください。お茶が1番いいのですが、今日は火を焚いたりできないですから。これで済ませてください。」

「ありがとうございます。ゴク、ゴク。ふー。落ち着くな。」

「美味しいですね。皮の水筒を買っておいてよかったです。これで水分補給にも困らないで済みます。」

シスターは皮の水筒を買って、正解だと実感するのであった。食後に少年とシスターは皮の水筒の水を飲むと食事を終えるのであった。

「では、昼食も終えたし、モンスターをまた探しますか。多分、ゴブリンだけでしょうけど。」

「そうですね。残りのモンスターもパパッと倒していきましょう。」

昼食を終えた2人は引き続きモンスター退治を行うべく、森の中を進むのであった。日はてっぺんまで登っており、正午になっていた。
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